- 婚約破棄から徴兵、初恋、そして敵将討ち取り。小玉の人生が濃すぎる
- 始まりは十五歳の小玉への婚約破棄
- 婚約破棄されたと思ったら今度は兄が徴兵される
- 「女でも兵士になれるらしい」から本当に兵士になる女
- でも最初から天才兵士だったわけではない
- 農作業の経験がそのまま武器の扱いにつながるのも面白い
- そして何気なく初めて人を殺す展開が重い
- でも、この事件が沈閣下との出会いにつながる
- 褒美に「実家からの手紙を読んでください」
- 小玉、沈閣下の従卒になる
- ああ、これは惚れるわ
- でも小玉の初恋だから妙に納得できる
- 初恋でほのぼのしていたら戦争が始まる
- 本人だけが自分の才能を分かっていない
- そして合戦が普通に血なまぐさい
- しかも手柄を取られても気にしない
- そして初恋にも別れが来る
- 「言わなくていい」が優しい
- 婚約破棄された少女が、自分の人生を歩き始める話だった
- 伝説の始まりなのに、本人は何も伝説を始めようとしていない
- 小玉は「そういう星の下に生まれた」としか思えない
- まとめ|婚約破棄された十五歳の少女から、伝説の軍人・関小玉へ
物語の概要
■ 作品概要
十五歳の関小玉は、許婚から一方的に破談を告げられ、故郷の村で未来を失う。
直後、幼少期の怪我で足が悪い兄・長に徴兵命令が下ったため、村の老人の助言を得て兄の身代わりとして志願入隊する。
右玉鈐衛に配属された小玉は、後宮警備の雑務や厳しい訓練を通じて兵士としての基礎を築く。
夜間の後宮逃走事件で不逞の輩二人を斬殺したことで、後処理を担当した宦官の武官・沈賢(沈中郎将)に素質を見出され、異例の右鷹揚衛異動を経て彼の従卒となる。
沈賢のもとで各種武器の訓練を受け、手紙の代読や上質な櫛の進呈といった気遣いに触れる中で密かに恋心を自覚する。
天鳳帝即位に伴う国境派兵では、自軍の布陣の欠陥を事前に見抜き、激しい夜襲戦において敵の将官級の武将を討ち取る戦果を挙げる。
戦後、手柄の帰属を巡る議論を経て軍内での手柄の扱いと責任を学んだ小玉は、康との国境防衛のため新設軍へ赴任する沈賢から男性兵統制上の理由により同行を拒絶される。
告白を制止されて別れを受け入れた小玉は、託された左武威衛の王将軍のもとで、沈賢から独立した一人の軍人として歩み始める。
■ 主要キャラクター
関小玉
- 立場・所属 : 農村の娘 → 右玉鈐衛(後宮警備)の従卒・兵卒 → 右鷹揚衛(沈中郎将の従卒) → 左武威衛
- 主人公との関係 : 本人(主人公)
- この巻での主な役割 : 破談をきっかけに兄の身代わりで入隊し、愚直な訓練と実戦を経て兵士として成長する。
- 重要な変化や行動 : 後宮逃走阻止事件で初めて人を殺め、その後の国境での夜襲戦で敵将を倒す。沈賢に淡い恋心を抱くが、新設軍への不同行(別れ)を受け入れ独立した軍人として歩む。
沈賢(沈中郎将)
- 立場・所属 : 中郎将(武官・後宮に仕える宦官)
- 主人公との関係 : 小玉の上官・選抜者・(小玉が心を寄せる相手)
- この巻での主な役割 : 小玉の手柄や資質を見抜き、自身の従卒として引き上げて鍛える。康との国境防衛のために新設軍へ赴任する。
- 重要な変化や行動 : 小玉の手紙の代読や短髪に配慮した上質な櫛のプレゼントなどを通じて気遣うが、男性兵主体の新設軍統制のため、小玉を連れて行かない決断を下し、王将軍へ託す。
柳銀葉(柳隊正)
- 立場・所属 : 右玉鈐衛の隊正(小玉の最初の上官)
- 主人公との関係 : 直属の上官・指導者
- この巻での主な役割 : 新兵である小玉たちの訓練と管理を担当。小玉の素質を早くから見抜き、手厚く手入れや個別指導を行う。
- 重要な変化や行動 : 後宮逃走事件後に動揺する小玉を気遣い、沈中郎将からの申し出に応じて小玉を異動させる。
関長
- 立場・所属 : 小玉の兄
- 主人公との関係 : 兄
- この巻での主な役割・行動 : 幼少期の怪我で足が悪い。徴兵のくじを引き当ててしまうが、小玉が代役として出立することを悲しみつつ見送る。
三娘
- 立場・所属 : 兄、関長の妻(小玉の兄嫁)
- 主人公との関係 : 兄嫁・親友
- この巻での主な役割・行動 : 小玉の花嫁衣装を一緒に刺繍していた。小玉が出立する際、幼少期からのへそくりが詰まった財布を託す。
李阿蓮
- 立場・所属 : 右玉鈐衛の同室兵卒
- 主人公との関係 : 先輩・同室の仲間
- この巻での主な役割・行動 : 軍の生活に疎い小玉の面倒を見る。農具と武器の類似性を指摘し、小玉の武器習得のきっかけを作る。小玉が高熱を出した際、付きっきりで看病した。
陳叔安
- 立場・所属 : 沈中郎将の従卒仲間(武官の少年)
- 主人公との関係 : 稽古仲間・同僚
- この巻での主な役割・行動 : 武術で自分を打ち負かした小玉を、魏光から吹聴された不当な噂(上役への擦り寄り)もあって当初敵視していた。夜襲戦での手柄放棄に対して激怒するが、沈賢の助言を受けた小玉からの謝罪と対話を経てわだかまりを解消する。
魏光
- 立場・所属 : 右鷹揚衛の兵卒(小玉の同僚)
- 主人公との関係 : 同僚
- この巻での主な役割・行動 : 普段は気質の良い同僚として親しく接しながら、小玉について「上役に取り入って従卒になった」という嘘の噂を叔安らに吹き込んでいた。夜襲戦の混乱に乗じて、小玉が倒した敵将の手柄を横取りして自身の武勲とした。
書籍情報
紅霞後宮物語 第零幕 一、伝説のはじまり
著者:雪村花菜 氏
イラスト:桐矢隆 氏
出版社:KADOKAWA(富士見L文庫)
発売日:2016年9月15日
ISBN:9784040709376

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あらすじ・内容
伝説の皇后の語られなかった過去が、いま紐解かれる――
関小玉。希代の天才と呼ばれた軍人であり、後に神格化された皇后である。しかし、後宮に入る以前の彼女の記録は少ない。どのように生きて軍人となり、皇帝と出逢ったのか。彼女の伝説のはじまりを語るとしよう――
感想
婚約破棄から徴兵、初恋、そして敵将討ち取り。小玉の人生が濃すぎる
『紅霞後宮物語 第零幕 一、伝説のはじまり』を読了。
本編では皇后となり、さらに後世では伝説として語られる関小玉。
そんな彼女にも当然ながら少女時代がある。
今回は皇后になるずっと前。
まだ十五歳だった小玉の物語である。
婚約破棄。
兄の徴兵。
身代わりで入隊。
新兵生活。
初めて人を斬る。
沈閣下との出会い。
初恋。
そして戦争。
こうして並べると、
十五歳の人生としては濃すぎないか?
と思ってしまう。
しかも小玉本人は、何か大きな野望を持っているわけではない。
目の前の問題に対して、
「じゃあ、こうすればいいんじゃない?」
と行動しているだけ。
ところが、その行動が妙に重要人物の目に留まる。
そして人生がまた大きく動く。
本人は天然。
でも妙に肝が据わっている。
さらに軍人としての才能まである。
後に伝説になる人間とは、若い頃からこういうものなのだろうか。
そういう星の下に生まれたとしか言いようがない。
始まりは十五歳の小玉への婚約破棄
物語の始まりから結構ひどい。
十五歳の小玉は結婚を控えていた。
相手は幼馴染の許婚。
このまま村で結婚して暮らしていく。
小玉自身も、そんな未来を当たり前のように考えていた。
ところが。
許婚から突然、
婚約をなかったことにされる。
地主の娘との縁談が持ち上がったのである。
小玉に何か問題があったわけではない。
それでも結婚直前に男から捨てられた娘というだけで、村では傷物のように扱われてしまう。
理不尽である。
当然ながら家族も怒る。
母も怒る。
兄も怒る。
兄嫁の三娘も怒る。
小玉も怒る。
一家総出で、
「ふざけるな!」
状態である。
本人にとっては人生が変わるほど深刻な出来事なのに、家族全員で怒っている光景がどこかコミカルなのも『紅霞後宮物語』らしかった。
婚約破棄されたと思ったら今度は兄が徴兵される
婚約破棄だけでも十分大事件。
ところが小玉の人生は止まらない。
今度は兄の長に徴兵命令が来る。
しかも兄は幼少期の怪我で足が悪い。
さらに新婚である。
これは困る。
そこで小玉が考えた。
「私が代わりに行けばいい」
いやいやいや。
普通そこに行き着くか?
ただ、小玉からすると筋は通っている。
自分は婚約がなくなった。
このまま村にいても将来が見えない。
一方で兄には妻がいる。
足も悪い。
だったら自分が行く。
なんとも小玉らしい。
「女でも兵士になれるらしい」から本当に兵士になる女
もちろん当時の小玉には軍の知識なんてほとんどない。
それでも村の老人から、
「昔、女でも兵士になった人がいた」
という話を聞く。
それを知った小玉。
じゃあ私も行けるじゃん。
行動が早い。
家族は当然反対する。
それでも徴兵役人を説得し、本当に兄の代わりとして軍へ入ってしまう。
後に皇后となる女性の軍歴が、
「軍人になりたかったから」
ではなく、
「婚約がなくなったし、兄ちゃんの代わりに私が行くか」
くらいの巡り合わせから始まっているのが面白い。
人生というのは分からない。
でも最初から天才兵士だったわけではない
ここは意外だった。
後の小玉を知っていると、
「新兵時代から無双するんだろう」
と思ってしまう。
しかし最初は普通に苦労している。
走れば遅れる。
文字も読めない。
軍の常識も知らない。
分からないことだらけ。
ただし、小玉には妙な素直さがある。
訓練がきつい。
普通なら、
「なんで私だけこんな目に」
と思いそうなところを、
「足りないところを鍛えてくれているんだな」
と受け止める。
そして本当にやる。
言われたことを愚直に続ける。
すると、どんどん伸びる。
本人は、
「私は遅れているから余計に訓練させられている」
くらいに思っている。
ところが上官からすると、
伸びるから負荷をかけている。
本人と周囲の認識が全然違う。
この頃からすでに小玉である。
農作業の経験がそのまま武器の扱いにつながるのも面白い
武器の扱いでも最初は苦戦する。
しかし仲間から、
農具の扱いと似ている。
と教えられる。
すると急に感覚をつかむ。
農村育ちがこんなところで生きるのか。
後世から見れば「伝説の軍人の才能が開花した」と格好良く語れそうな場面。
でも実際には、
畑仕事で体に染み込んだ動きが武器にも使えました。
という話でもある。
この妙な生活感が好きだった。
伝説というものも、最初から伝説らしい姿で始まるわけではないのだ。
そして何気なく初めて人を殺す展開が重い
新兵生活は賑やかで、仲間とのやり取りも楽しい。
ところが突然、空気が変わる。
小玉が夜間に偶然、後宮から逃げようとしている男女と遭遇する。
口封じのため襲われる。
そして反撃。
二人を殺す。
ここで一気に、
軍人になるとはどういうことなのか
を突きつけられる。
それまで訓練していた武器が、本当に人を殺すために使われる。
小玉も平然としているわけではない。
初めて人を殺した衝撃は大きく、体調まで崩してしまう。
このあたりから本作の血なまぐささが見え始める。
でも、この事件が沈閣下との出会いにつながる
人生とは分からないものである。
後宮で人を斬った。
普通なら人生最悪クラスの出来事だろう。
ところが、その後処理を担当した人物が沈賢。
沈中郎将である。
そして沈閣下は小玉の資質に気づく。
小玉本人からすると、
偶然事件に巻き込まれた。
襲われたから反撃した。
生き残った。
それだけ。
でも沈閣下からすると、
「この娘、何かおかしくないか?」
となる。
ここから小玉の人生がまた変わる。
本当にこの人、人生の転機で重要人物を引き当てる能力でも持っているのだろうか。
褒美に「実家からの手紙を読んでください」
そして個人的に、
最高に小玉らしい。
と思ったのがここ。
事件の功績について褒美を聞かれる。
相手は沈中郎将。
高位の武官である。
普通なら金。
昇進。
何か価値のあるもの。
いろいろ考えられる。
しかし小玉は文字が読めない。
実家から手紙が届いている。
そこで、
「これ読んでください」
である。
沈閣下に。
実家からの手紙を。
読んでもらう。
そりゃ沈閣下も笑う。
でも、これこそ小玉なのだと思う。
相手がどれだけ偉いか。
こんなことを頼んでいいのか。
そういう余計な計算がない。
今、自分が困っている。
手紙が読めない。
この人なら読める。
じゃあ頼もう。
本人には何の打算もない。
だからこそ妙に相手の印象へ残ってしまう。
小玉、沈閣下の従卒になる
その後、小玉は異例の異動を経て沈閣下の従卒となる。
ここから武器の訓練も本格化。
様々な武器を扱うようになっていく。
そして沈閣下も小玉を気にかける。
その象徴的な出来事が櫛だった。
小玉は事件の後、血で汚れた髪を短く切っている。
沈閣下は、その髪が伸びたときに使えるよう上質な櫛を贈る。
……。
これは十五歳の少女には効く。
ああ、これは惚れるわ
沈閣下。
美しい。
偉い。
強い。
自分の才能を認めてくれる。
訓練もしてくれる。
実家からの手紙まで読んでくれる。
そして櫛まで贈ってくれる。
そりゃ惚れる。
むしろ惚れない方がおかしい。
小玉自身も、ここで自分の気持ちを自覚する。
本編の小玉を知っているだけに、
「ああ、小玉にもこんな初恋があったんだな」
というのが新鮮だった。
でも小玉の初恋だから妙に納得できる
ただ、甘い恋愛物語という感じではない。
相手は沈閣下。
上官である。
小玉は部下。
しかも軍人。
だから二人の関係には最初から明確な線がある。
それでも小玉が沈閣下へ惹かれていく流れにはかなり納得できた。
何より、
小玉が好きになりそうな相手だな
と思えるのである。
小玉は肩書や甘い言葉に惹かれたわけではない。
自分をきちんと見てくれる。
能力を評価する。
必要なことを教える。
そして何気ないところで気遣ってくれる。
小玉らしい初恋だと感じた。
初恋でほのぼのしていたら戦争が始まる
ここまでなら、
「若き日の小玉と沈閣下」
という青春物語である。
しかし小玉は軍人。
やがて国境へ派兵される。
ここから急に血なまぐさくなる。
小玉は兵士たちの話を聞きながら、石を使って布陣を考える。
本人としては、
なんとなく考えていただけ。
ところが。
夜襲されたら危ない場所を見抜いてしまう。
そして本当に夜襲される。
おい。
本人だけが自分の才能を分かっていない
これも面白かった。
小玉からすると、
「みんなの話を聞いて石を並べていたら、なんか変な気がした」
くらいの感覚。
沈閣下からすると、
一兵卒が軍全体の布陣の問題を見抜いた。
評価が全然違う。
小玉は自分が天才だと思っていない。
野心もない。
出世したいわけでもない。
ただ、
「これ危なくない?」
と思ったことを言っているだけ。
でも、その「なんとなく」が当たる。
後に伝説的な軍人となる片鱗が、すでに出始めている。
そして合戦が普通に血なまぐさい
夜襲が始まる。
ここからは笑えない。
小玉は混戦の中で孤立する。
武器が壊れる。
別の武器を拾う。
また戦う。
折れた棒で敵の目を突く。
さらに戦う。
最後には敵の巨漢武将へ自分から飛び込み、
小刀で首をかき切る。
おお……。
思っていたより生々しい。
本編で小玉が強いことは知っている。
でも「伝説の将軍の若き日の活躍」と格好良くまとめられるような戦いではない。
必死。
泥臭い。
怖い。
とにかく生き残る。
その結果として敵将まで倒してしまう。
小玉本人に、
「大戦果を挙げてやろう」
なんて気持ちはない。
死にたくないから必死で戦ったら敵将を倒していた。
恐ろしい新人である。
しかも手柄を取られても気にしない
さらに小玉らしい。
倒した敵将の手柄を同僚に横取りされる。
普通なら激怒するところ。
でも小玉。
あまり気にしない。
生き残ったんだからいいじゃないか。
欲しい人が持っていけばいい。
くらいの感覚。
いやいやいや。
それは駄目だ。
当然、周囲から怒られる。
沈閣下からも、
手柄を放置することが軍の秩序を乱すのだと教えられる。
ここも興味深かった。
小玉は戦う才能がある。
でも、
軍人として完成しているわけではない。
軍隊は個人で戦う場所ではない。
功績。
責任。
秩序。
組織。
そういうものを一つずつ学んでいく。
天才だから全部最初から分かっています、ではないところが良かった。
そして初恋にも別れが来る
戦いが終わる。
しかし沈閣下は新設軍へ移ることになる。
小玉としては当然、
自分も従卒としてついていく。
そう思っていた。
ところが。
連れていってもらえない。
理由も軍人らしい。
新設軍は男性兵が多い。
そこへ若い女性である小玉を連れていけば統制に影響する。
だから連れていけない。
小玉は邪魔なのかと尋ねる。
沈閣下は誤魔化さない。
そして小玉が気持ちを伝えようとすると、
それも言わせない。
ここは切なかった。
「言わなくていい」が優しい
沈閣下も何も分かっていないわけではない。
小玉の気持ちに気づいている。
だからこそ言わせない。
下手に希望を持たせない。
曖昧な言葉で繋ぎ止めることもしない。
自分から離れた後も小玉が軍人として進めるよう、次の場所まで用意している。
恋愛として見れば実らなかった。
でも、
沈閣下らしい誠実な別れだった
と感じた。
そして小玉も、それを受け入れる。
婚約破棄のときとは違う。
最初の男からは一方的に未来を奪われた。
沈閣下との別れは悲しい。
それでも今度は、小玉自身に次へ進む道がある。
この違いはかなり大きい。
婚約破棄された少女が、自分の人生を歩き始める話だった
最初の小玉には、
結婚する人生しかなかった。
幼馴染と結婚する。
村で暮らす。
それがなくなった瞬間、
「自分にはもう未来がない」
と思ってしまう。
ところが兄の徴兵をきっかけに軍へ入る。
仲間と出会う。
人を斬る。
沈閣下と出会う。
武器を学ぶ。
恋をする。
戦争へ行く。
敵将を倒す。
そして沈閣下とも別れる。
気づけば、
婚約破棄された十五歳の村娘は、一人の軍人になっている。
ここが一番印象に残った。
伝説の始まりなのに、本人は何も伝説を始めようとしていない
タイトルは、
『伝説のはじまり』。
確かに後世から見ればその通りである。
後に将軍となり、皇后となり、神格化までされる関小玉。
しかし本人には、
「今日から私は伝説になります」
なんて意識は当然ない。
婚約を破棄された。
兄が徴兵された。
じゃあ自分が行く。
訓練がきつい。
でも必要ならやる。
襲われた。
生きるために斬る。
手紙が読めない。
読める人に頼む。
沈閣下が好き。
でも別れなければならない。
戦場で敵が来た。
死にたくないから戦う。
一つ一つを見ると、小玉は目の前のことへ対応しているだけなのだ。
でも、それが全部未来へ繋がっている。
小玉は「そういう星の下に生まれた」としか思えない
改めて読むと、小玉の人生は巡り合わせがすごい。
婚約破棄。
徴兵。
軍への入隊。
偶然の事件。
沈閣下との出会い。
従卒への抜擢。
初恋。
国境での戦争。
そして新しい配属先へ。
転機のたびに重要人物と出会う。
しかも本人の何気ない言動が相手の印象へ強烈に残る。
狙ってやっているわけではない。
打算もない。
本人は天然。
だから余計に強い。
もう、そういう星の下に生まれたとしか言いようがない。
まとめ|婚約破棄された十五歳の少女から、伝説の軍人・関小玉へ
『紅霞後宮物語 第零幕 一、伝説のはじまり』は、本編ではすでに大人物となっている小玉の原点を知ることができる一冊だった。
婚約破棄から始まるのがまず面白い。
幼馴染との結婚がなくなる。
将来がなくなる。
その直後、兄が徴兵される。
なら私が行く。
その判断から、小玉の人生は大きく動き始める。
軍へ入っても、小玉は小玉だった。
世間知らず。
文字も読めない。
軍の常識も知らない。
でも素直。
愚直。
そして異常に伸びる。
本人は普通に頑張っているだけなのに、上官たちはその才能に気づいていく。
何より面白かったのは、
本人だけが自分のすごさをよく分かっていないところ。
兵卒なのに布陣の問題を見抜く。
初陣同然なのに敵将を討ち取る。
でも本人は、
「必死に生き残っただけ」
くらいの感覚。
後の小玉そのものである。
そして沈閣下との初恋。
褒美を聞かれて、
「実家からの手紙を読んでください」
と頼む。
そこから従卒になり、武術を学び、櫛を贈られて恋を自覚する。
あまりにも小玉らしい初恋だった。
ただ、その恋も実らない。
沈閣下とは別れることになる。
それでも小玉には、もう次の道がある。
物語の最初では、婚約を破棄されただけで人生そのものを失いかけていた少女。
それが最後には、
自分の足で軍人として次の場所へ向かっている。
ここが良かった。
ただし。
途中から普通に血なまぐさい。
人を斬る。
首を落とす。
戦場で孤立する。
武器が壊れたら拾った武器でまた戦う。
最後には敵将の首をかき切る。
本編で豪快に戦う小玉を知っていると忘れそうになるが、その強さは最初から完成していたわけではない。
怖い。
苦しい。
それでも生きる。
その経験を積み重ねて、あの小玉になっていく。
婚約破棄。
徴兵。
新兵生活。
初めての殺人。
沈閣下との出会い。
初恋。
初陣。
そして別れ。
十五歳にしては人生が濃すぎる。
しかし、これでもまだ始まり。
後に皇后となり、さらに伝説として残る女性の人生を考えれば、
確かにこれはまだ「第零幕」なのである。
最後までお読み頂きありがとうございます。

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考察・解説
ストーリー・プロット
第1幕:破談と身代わりとしての入隊
十五歳の小玉は、許婚から「愛してくれる人と結婚したい」と一方的に破談を言い渡される。地主の娘に見初められた相手側の都合であったが、村では傷物扱いされ再婚の道が途絶える。
その矢先、幼少期の怪我で足が悪い兄・長に徴兵命令が届く。兄の身を案じる小玉は、痴呆の進んだ村の王じいさんから「昔、自身の伯母が軍に入った」という実例を聞き、兄の身代わりとして出兵を決意する。
家族の大反対や喧嘩を経て、小玉は「兄が不在では家が立ちゆかない」「後宮警備なら危険は少ない」と徴兵役人を説得。目端が利く点も買われて志願が認められる。
出立の日、兄嫁の三娘から幼少期からのへそくりが詰まった財布を託された小玉は、無事に帰ったら土産を買う約束をし、元許婚の存在にも気づかぬまま、未来を求めて故郷の村を後にする。
第2幕:右玉鈐衛での訓練と軍生活への適応
右玉鈐衛に配属された小玉は、後宮周辺警備の雑務に従事する。当初は体力不足で走り込みにおいて大きく遅れていたが、訓練の意味を理解し素直に努力を重ねる。
直属の上官である柳隊正(柳銀葉)は小玉の体の使い方や頭の回転の早さといった潜在能力を見抜き、能力を伸ばすために個別の負荷(追走や薬の授与)を与えていた。同寮の阿蓮ら仲間に恵まれ、軍生活に適応していく。
不慣れな棒術訓練では、阿蓮から「畑作業の農具の扱いと同じ」と指摘されたことで感覚を掴み、一気に才能を開花させる。文字が読めない不便を感じつつも、実家から届いた手紙の存在を支えとし、短期間で同輩を上回る走力と兵士としての基礎能力を身につけていく。
第3幕:後宮逃走事件と初めての殺人
訓練中に忘れた官給品の剣を取りに夜間の厠へ向かった小玉は、つまずいた石を不意に投げたことで、後宮から脱走を図る男女(妃と男)に遭遇する。
口封じのために剣を抜いて襲いかかってきた男を咄嗟の反撃で刺殺し、直後にパニックになり刃物で襲いかかってきた妃の首を薙ぎ払って二人を殺害する。
初めて人を殺めた強烈な精神的ショックと、血の臭いが残る過酷な環境から高熱を出して伏せるが、阿蓮の看病、医師の手当て(血汚れを落とすための首元での切髪と丸薬の給付)、実家からの手紙により快復する。
事件の後処理を担当した宦官の武官・沈賢(沈中郎将)は、小玉の優れた資質と、惨状を引きずらない精神的な逞しさに強い関心を抱く。
第4幕:右鷹揚衛への異動と沈中郎将の従卒勤務
事件の功績により褒美を問われた小玉は、軍の慣例を知らず「実家から届いた手紙の代読と代筆」を要求し、沈賢を爆笑させ強い印象を残す。
この手紙で兄嫁の懐妊を知った小玉は、実家へ戻らず軍で生き抜く決意を固める。
沈賢は小玉の資質を買って右鷹揚衛へ異動させ、自身の従卒へと抜擢。
小玉は鞭や錘など多様な武器の訓練を受けつつ雑用をこなす。沈賢は手紙代読の礼として、小玉の短く切った髪が伸びて結べるようになる時期を見越し、高位武官に選ばせ上質な櫛を贈る。
この細やかな気遣いに触れた小玉は、彼への強い恋心を自覚する。やがて天鳳帝の即位に伴い寛・康との国境へ派兵が決定し、小玉は死への恐怖を抱えつつも沈賢に従軍して前線へと向かう。
第5幕:国境出兵と激化する夜襲戦
国境へと出兵した小玉は、兵士たちの噂話や情報の断片から自軍の「布陣」の構造的欠陥を小石を用いて見抜き、沈賢に夜襲の危険性を指摘する。
その予測通り陣地への夜襲が発生し、沈賢の精鋭の輪から押し出され孤立した小玉は、必死で生き残るため死闘を繰り広げる。
槍が折れると折れた棒で敵の目を突き、拾った武器を替えながら奮闘。遭遇した敵の巨漢将官に対し、自ら身を投げて体当たりし、小刀で首をかき切って討ち取り、大刀を奪って生還する。死の恐怖を乗り越え、限界を超えた戦闘力と機転を発揮して激戦を生き延びた小玉だったが、討ち取った敵将の手柄は放置された隙に同僚の魏光によって横取りされてしまう。
第6幕:戦後の手柄と沈賢との別れ
手柄を奪われながら無頓着な小玉に対し、魏光のデマを信じていた陳叔安は激怒する。
小玉は沈賢から「手柄の放置はごみを焼き場に捨てず放置して野良猫や鳥に荒らさせるようなものであり、軍の秩序を腐らせる」と諭され、自身の無責任さを悟り叔安に謝罪して和解する。
その後、康との国境防衛のため新設軍へ赴任が決まった沈賢は、男性兵の動揺を防ぐため「お前は邪魔になる」と小玉の同行を拒絶。
溢れる悲しみから小玉が恋心を打ち明けようとした瞬間、沈賢は「それは、言わなくていい」と優しく遮り、双方の想いを察しながらも軍人としての線を引く。
小玉はその真意と誠実さを諦念と共に受け入れ、託された王将軍の左武威衛へと移り、沈賢から独立した一人の軍人として新たな歩みを始める。
主要な転換点
1:許婚からの破談と兄への徴兵
- それ以前の状況 : 村で幼なじみと結婚し、農家として生きていく予定であった。
- 出来事 : 許婚からの不当な破談により傷物とされ、直後に足の悪い兄・長に徴兵のくじが当たる。
- 変化 : 村にいても未来がないと悟り、王じいさんの「伯母が兵士になった」という言葉をきっかけに兄の身代わりとして志願入隊を決意した。
- 次への影響 : 小玉が村を出て右玉鈐衛に入隊し、軍人としての歩みが始まる。
2:後宮逃走阻止事件(二人を斬殺)
- それ以前の状況 : 後宮警備の雑用や基礎訓練を行う一兵卒であり、実戦や殺人の経験はなかった。
- 出来事 : 厠へ向かった際、後宮から逃亡しようとする男女と遭遇し、襲撃されたため反撃して二人を殺害した。
- 変化 : 初めて人を殺めた精神的ショックで高熱を出すが、後処理を担当した沈中郎将に武芸の伸びしろと惨状を引きずらない資質を注目される。
- 次への影響 : 沈中郎将との面談につながり、右鷹揚衛への異例の異動と従卒抜擢へ発展する。
3:褒美としての「手紙代読の依頼」と「櫛の拝受」
- それ以前の状況 : 沈中郎将からの問いかけに対し、軍の慣例や作法を知らない状態であった。
- 出来事 : 功績に対する褒美を問われ、小玉は金品ではなく「実家から届いた手紙の代読と代筆」を要求。後日、沈賢から短髪に配慮した上質な櫛を進呈される。
- 変化 : 沈賢に人間的な健全さと強い印象を残し、彼の従卒となる。さらに細やかな気遣いに触れたことで、小玉は沈賢への恋心を自覚する。
- 次への影響 : 沈賢から直接各種武器の指導を受け、従軍して前線へ向かう関係性を築く。
4:国境での夜襲戦と敵将の討伐
- それ以前の状況 : 後方支援や雑務を中心に担当し、前線での本格的な戦闘経験はなかった。
- 出来事 : 陣地が夜襲を受け、沈賢の精鋭から押し出された小玉は、必死で戦い敵の将官級の武将を討ち取ったが、手柄を魏光に横取りされた。
- 変化 : 限界を超えた実戦を生き延びて戦闘力を示した一方、手柄の帰属を巡り叔安から説教を受け、沈賢の「ごみの例え」によって自身の無責任さを自覚した。
- 次への影響 : 手柄の帰属についての理解を深め、叔安と和解して軍組織における手柄の扱いと責任を学んだ。
5:沈中郎将の新設軍赴任と不同行の宣告
- それ以前の状況 : 沈中郎将の従卒として常に彼の側に仕え、彼に同行して軍人生活を送ると思っていた。
- 出来事 : 康との国境に新設される軍へ沈賢が赴任することになり、小玉は男性兵の混乱を避けるため同行を拒絶され、思いを告げようとした瞬間も沈賢に制止される(「それは、言わなくていい」)。
- 変化 : 沈賢への淡い恋心と同行の希望は打ち砕かれたが、それが余計な希望を持たせないための彼の誠実さであると受け止めた。
- 次への影響 : 王将軍の左武威衛へ預けられ、沈賢から独立した一人の軍人として次のステップへ進むこととなった。
関小玉を中心とした人物関係の変化
元許婚
- 開始時 : 幼なじみであり、結婚を間近に控えた婚約関係。
- 主な出来事 : 許婚から「愛してくれている人と結婚したい」と言われ破談。地主の娘のもとへ婿入りして村を去る。村を出る小玉と道ですれ違うが小玉は気づかない。
- 巻末時 : 過去の無関係な存在となり、小玉の関心から完全に外れる。
沈賢(沈中郎将)
- 開始時 : 見知らぬ雲上の高位武官(宦官)。
- 主な出来事 : 事件報告、手紙の代読、従卒としての指導、櫛の拝受、国境での戦い、恋心の自覚、別れの宣告(告白の制止)。
- 巻末時 : 憧れと恋心を抱く対象であったが、新設軍への不同行(拒絶)と告白の制止を経て、離れた場所から互いを認める元上官と部下の関係へ。
陳叔安
- 開始時 : 武術の手合わせで負かしたことや、魏光による「上役に取り入った」というデマを信じ込まされていたことで、叔安から一方的に敵視・忌避される関係。
- 主な出来事 : 夜襲戦での小玉の戦いを目撃。手柄を無頓着に放り投げた小玉に激怒し説教する。デマの解氷と「ごみの例え」を経た小玉からの真摯な謝罪を受け入れる。
- 巻末時 : 誤解や嫉妬が解け、手柄や軍事についての意見を交わす対等な仲間・理解者となる。
主人公の認識と周囲の評価
主人公自身の認識 :
- 自分は貧しい村出身の世間知らずで、体力も知識も読み書きも不足している下っ端兵卒である。
- 破談によって行き場をなくし、兄の身代わりとして軍にいるに過ぎず、嫌な出来事に対しても立ち直りが早すぎる(どこか人間として冷めているのではないか)と考えている。
- 戦場では必死に生き残ろうとしているだけで、特別な野心や成果を求めているわけではない。
周囲からの評価 :
- 柳隊正 : 小柄だが体の使い方を熟知しており、頭の回転が早くやる気があり、驚くほど伸びしろが大きい逸材。
- 沈中郎将 : 愚直で素直、「健全」に育っているが惨状を引きずらない図太さがあり、訓練の吸収が早く、自力で全軍の構造的欠陥を見抜くほど武才・軍略に長けた存在。
- 陳叔安 : ぽっと出の女子だが武術の腕が立ち、つかみどころがないが突き抜けて真っ直ぐな人物。
認識の差が現れた場面 :
- 稽古・走り込み : 小玉は「自分は遅れているから余計に走らされている」と真面目に受け止めているが、周囲(柳隊正ら)は能力をさらに伸ばすための個別教育として負荷を与えていた場面。
- 自軍の布陣に対する分析(陣地の不備) : 小玉自身は「噂話を元に小石で遊んでいただけ(勘違いしているだけ)」と思っていたが、沈中郎将は「兵卒でありながら独力で全軍の布陣の構造的欠陥と夜襲のリスクを完璧に見抜いた並外れた軍事才能」と評価した場面。
- 戦場での手柄放棄 : 小玉は「命があるだけでありがたい、首級など欲しい人が持っていけばいい」と思っていたが、叔安や沈賢からは「手柄の放棄は軍の秩序を腐らせる行為」であり、実際には激戦区で敵将を一人で討ち取るほど凄まじい戦果を上げていた場面。
突然の婚約破談
紅霞後宮物語第零幕において描かれる突然の婚約破談は、後に希代の武将を経て伝説の皇后へと上り詰める関小玉の生涯における最大の分岐点に位置づけられる。寒村で平穏な農婦として生涯を終えるはずだった少女が軍人への道を歩み出す直接の契機となった一連の経緯を整理する。
婚約破談の経緯と要因
・許婚側からの理不尽な通告
十五歳を迎えて婚礼を目前に控えていた小玉に対し、幼馴染であった相手方の一族から一方的な破談が言い渡される。女性らしい気配りや家事の手際を欠くといった一方的な言動を名目に掲げられ、婚姻の誓約が一方的に反故にされる。
・農村社会における致命的な風評
祝言直前の破綻は共同体の中で女性側に不都合な噂を呼び、村内での居場所を著しく狭める結果を招く。世間体や将来の展望が大きく閉ざされる事態へ直面する。
家族の猛烈な怒りと団結
・家族総出による激しい反発
不当な破談宣告に対し、当人以上に激しい憤りを露わにしたのは母親、怪我を抱える兄、そして新婚の義姉をはじめとする一家となる。理不尽な侮辱に対して強い団結を見せ、相手方の身勝手な振る舞いを徹底して糾弾する姿勢をとる。
・悲壮感を打ち消す家族の活力
深刻な事態でありながら一家の反応は陰鬱な悲壮感に染まることなく、持ち前の力強さと騒がしいまでの結束力によって悲憤を吹き飛ばす。家族の温かい包容力と威勢の良さが、小玉を過度な絶望から救い上げる防波堤となる。
運命の転換と従軍への決断
・徴兵令の到来と身代わりの決意
破談の混乱が収まらない折、関家に対して軍への徴兵通知が下される。足を痛めている新婚の兄を過酷な戦場へ送るわけにはいかないと考えた小玉は、破談によって村内に留まりにくくなっていた境遇を逆手に取り、自ら兄の身代わりとして軍籍に就く方針を選択する。
・伝説の起点となる出立
不当な破談という災難と家族を救おうとする大胆な覚悟が交差し、名もなき田舎娘から精鋭の軍人へと変貌を遂げる旅路が幕を開ける。この不条理な出来事がなければ後年の偉業は存在せず、運命を大きく反転させる決定的な契機となる。
まとめ
突然の婚約破談は、一見すると不遇な災難でありながら、過酷な逆境を跳ね返して自らの道を切り拓く関小玉の不屈の胆力を象徴する。閉塞した境遇を脱して雄飛するきっかけとなったこの出来事は、波乱に満ちた英雄譚の幕開けを告げる重要な原点として機能する。
兵士への道
紅霞後宮物語第零幕において描かれる兵士への道は、名もなき田舎娘であった関小玉が家族を守るために軍門に下り、過酷な鍛錬と実戦の洗礼を経て一人の武人へと脱皮していく軌跡を示す。理不尽な境遇を跳ね返して従軍を決意した発端から、過酷な訓練の日々、後宮での初陣に至る一連の歩みを整理する。
入隊の決意と身代わりの志願
・負傷した兄に届いた徴兵令
理不尽な婚約破談に見舞われた直後、足を痛めていた新婚の兄に対して兵役の召集が下される。怪我を抱える兄が戦地に赴けば生還は望めないと考え、強い危機感を抱く。
・村の言い伝えと家族への説得
破談の影響で村内に留まりにくくなっていた状況も重なり、女性でも志願が可能という長老の言葉を手がかりに自ら軍へ赴く方針を固める。家族を懸命に説得し、兄の身代わりとして志願入隊を果たす。
新兵訓練における試練と上官との邂逅
・身体的格差と知識不足の克服
屈強な男性兵士の中に混ざり、体格や基礎体力の面で大きな遅れを取りながら訓練に臨む。当初は読み書きすら覚束ない状態であったものの、旺盛な負けん気を発揮して泥臭い努力を重ね、兵士としての技能を身につけていく。
・沈中郎将との出会いと学び
新兵時代に直属の上官である沈閣下と出会い、その指導を仰ぐ。格式高い美貌の上官を前にしても物怖じせず、実家から届いた手紙の代読を率直に依頼するなど、独特の度胸と人懐こさで強い印象を刻む。上官の庇護と教えを受けながら、軍規や知識、兵士としての心構えを吸収していく。
後宮警備任務と過酷な初陣
・後宮警備部隊への配置
過酷な練成期間を終えた後、帝都における後宮の警備を担う部隊へ配属される。気心の知れた戦友たちと共に日々の巡察に励み、平穏な軍務をこなす。
・刺客との遭遇と初実戦
夜間に後宮へ侵入を図った不審者と突如として遭遇戦に突入する。極度の混乱と恐怖に晒されながらも必死に槍を振るい、敵を討ち倒して危機を脱する。凄惨な初陣を経験したことにより、一介の少女の殻を脱ぎ捨て、生死の責務を負う真の武人として覚醒を遂げる。
まとめ
関小玉が歩んだ兵士への道は、肉親を慈しむ覚悟と数々の試練を糧に自らの力で未来を掴み取る成長の過程を浮き彫りにする。泥にまみれながら基礎を叩き込み、命のやり取りを潜り抜けて得た経験は、後に天下に名を轟かせる名将へと飛翔するための揺るぎない礎を形作る。
軍での生活
紅霞後宮物語第零幕において描かれる軍での生活は、過酷な規律や身体的な試練に直面しながらも、集団生活の中で仲間と絆を育み、主人公が資質を開花させていく過程を浮き彫りにする。男性に混ざって始まった新兵訓練の苦労から仲間との交流、後宮警備の日常、そして突如として訪れる実戦の衝撃に至る足跡を以下に整理する。
新兵訓練における身体的苦難と勉学
・男性に混ざる環境と生活上の制約
男性兵士に囲まれる中で軍務を開始し、体格や筋力の差異から体力面で周囲に後れを取る。食事や入浴、排泄といった日常の基本動作においても細心の配慮と工夫を強いられる。
・文字の習得と知識の拡張
入隊当初は文字の読み書きができず、故郷から届いた書状すら自力で確認できない境遇に置かれる。上官に代読を依頼した出来事を契機として文字の学習に励み、兵士として必要な教養や見聞を広げていく。
同僚たちとの連帯と集団生活
・寝食を共にする仲間との絆
厳しい訓練の日々を通じて同僚の新兵たちと寝食を共にし、強固な連帯感を育む。裏表のない素朴な人柄が周囲に受け入れられ、規律の厳しい環境下でありながらも温かみのある生活空間を築き上げる。
後宮警備部隊における平穏な日常
・帝都の警備任務
練成期間を終えた後に配属された先は、帝都の後宮警備を受け持つ後衛部隊となる。最前線の過酷な戦場とは異なり、華やかな宮廷の外縁を巡回する任務は比較的平穏であり、仲間と言葉を交わしながら警備に励む日々が続く。
初陣がもたらした平穏の崩壊
・侵入者との突発的な遭遇戦
和やかな警備生活は、夜間に後宮への侵入を企てた刺客との遭遇によって一変する。暗闇の中で必死に応戦し、初めて敵の命を奪う経験を経て、穏やかな日常から生死を分かつ冷酷な現実へ引き戻される。
まとめ
軍における日々の営みは、単なる過酷な勤労の連続にとどまらず、素朴な少女が仲間や上官との関わりを通じて知性と胆力を培い、真の武人へと脱皮していく重要な形成期を形作る。泥臭い集団生活と実戦の洗礼を経て得た知見は、後年に至る飛躍の揺るぎない土台となる。
沈中郎将との出会い
紅霞後宮物語第零幕において描かれる沈中郎将との出会いは、新兵時代の関小玉にとって軍人としての見聞を広げ、文字や教養を習得する契機となった重要な節目を指す。雲の上の上官と一介の新兵という身分差を越えた交流の始まりから、文字の学習、淡い情愛、そして武人としての成長に至る歩みを以下に整理する。
沈中郎将の人物像と初対面
・美貌と厳格さを兼ね備えた指揮官
沈中郎将は若くして高位に就く端麗な美貌の持ち主となり、軍人として極めて厳格かつ優秀な手腕を発揮する。
・物怖じしない新兵の行動
周囲の兵士たちが気圧される上官に対し、小玉は過度に身構えることなく対峙する。入隊当初は文字の読み書きができなかったため、郷里の母や兄から届いた書状を手に沈中郎将のもとへ直接赴き、内容を読み聞かせてほしいと率直に依頼する。
書状の代読と教養の獲得
・代読から始まった特別な交流
一介の新兵が高位の上官に手紙の代読を求める前代未聞の事態に対し、沈中郎将は小玉の物怖じしない素直さと実直さに興味を抱き、要請を受け入れて書状を読み聞かせる。
・文字の学習と視野の拡張
この出来事を契機として、小玉は沈中郎将から文字の読み書きや語彙を直接教わる機会を得る。軍務に必要な基礎知識にとどまらず、社会の構造や広い視野を吸収し、武人としての資質を磨き上げていく。
胸に秘めた淡い慕情
・言葉にしない敬愛
気高く美麗な上官に対し、小玉は密かに強い憧れと淡い恋心を宿す。自らの置かれた立場や身分差、そして相手が遠からず去っていく存在であることを弁えていたため、想いを言葉にして伝える選択は避ける。
・小玉らしい納得の初恋
分不相応な望みを抱かず、相手の幸福を願いながら陰から敬い続ける姿勢を貫く。飾り気のない小玉の人柄と現実的な視線が色濃く表れた、切なくも温かい幕引きを迎える。
まとめ
沈中郎将との邂逅は、無知な田舎娘に過ぎなかった少女が知性と教養を備えた本物の軍人へと成長する強力な原動力として作用する。過酷な軍旅において得た学びと淡い思い出は、後に天下へ名を轟かせる英雄へと飛翔するための確固たる礎となる。
登場キャラクター
関家(関一族・小玉の実家)
関小玉
本作の主人公であり、農村の出身から軍人への道を歩み始めた女性となっている。不器用ながら実直な姿勢を見せる。
・所属組織、地位や役職 宸国軍・新兵(後衛部隊所属)。
・物語内での具体的な行動や成果 婚約破談の後、足を痛めた兄の身代わりとして軍へ入隊した。厳しい訓練を経て後宮警備に配属され、夜間に侵入した刺客を退治した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 農家の娘から宸国軍の新兵となり、初陣を経て本物の兵士へと成長を遂げた。
小玉の母
小玉の母親であり、身内の理不尽な扱いに対して激しく憤る姿を見せた。
・所属組織、地位や役職 地方の農家・母親。
・物語内での具体的な行動や成果 小玉の祝言直前における婚約破談に際し、相手の陳家へ向けて激しい怒りを爆発させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 娘の立場を守るため家族全員で抗議を行い、関家の団結を支えた。
関長
小玉の兄であり、足に障害を抱える農家の長男に位置づけられる。
・所属組織、地位や役職 地方の農家・長男。
・物語内での具体的な行動や成果 結婚直後に徴兵通知を受けたものの、足の負傷により従軍が困難となっていた。小玉が代わりに志願したことで出征を免れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 自身への徴兵が契機となり、妹である小玉が軍へ入隊する直接の引き金となった。
三娘
小玉の兄と結婚したばかりの義理の姉となっている。
・所属組織、地位や役職 地方の農家・長女(長男の妻)。
・物語内での具体的な行動や成果 小玉の婚約破談が起きた際、関家の一員としてともに怒りを示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 新婚早々に夫の徴兵問題に直面したが、小玉の入隊によって家庭の危機を回避した。
陳家(許婚の家)
陳一家(陳一族)
小玉の故郷の村に居住する家系となっている。祝言直前に勝手な都合で婚約を反故にした。
・所属組織、地位や役職 地方の農村世帯。
・物語内での具体的な行動や成果 小玉の家柄や不器用さを理由に挙げ、一方的に婚約破棄を突きつけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 小玉を村で孤立させ、彼女が軍志願へ向かう要因を作り出した。
陳一族の息子(小玉の元の許婚 / 幼馴染)
小玉の幼馴染であり、元の許婚であった男性に該当する。
・所属組織、地位や役職 地方の村人・長男。
・物語内での具体的な行動や成果 祝言の直前になって小玉との婚約を破棄した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 身勝手な破談により小玉の人生の転機を引き起こした。
村の人々(小玉の故郷の村)
王老人(王じいさん)
小玉の故郷の村に暮らす老人となっている。痴呆が進んだ状態が見られる。
・所属組織、地位や役職 地方の村人・長老。
・物語内での具体的な行動や成果 小玉に対して女子でも志願すれば兵士になれるという助言を与えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 小玉が家族を説得して軍へ志願するための口実とヒントを提供した。
宸国軍・軍方(官軍・後衛部隊など)
沈(沈中郎将 / 沈閣下)
宸国軍の中郎将を務める人物となっている。美しい容姿と厳格さを兼ね備える。
・所属組織、地位や役職 宸国軍・中郎将(沈閣下)。
・物語内での具体的な行動や成果 文字が読めない小玉から手紙の代読を頼まれ、これに応じた。小玉に文字や教養を指導した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 小玉にとって軍人としての見聞を広げる最初の恩師となった。
新兵たち(小玉の同僚兵士たち)
小玉とともに訓練を受け、警備任務にあたる集団となっている。
・所属組織、地位や役職 宸国軍・新兵部隊。
・物語内での具体的な行動や成果 小玉と寝食を共にし、日々の厳しい訓練や後宮警備に従事した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 集団生活を通じて互いに助け合い、小玉の軍生活を支えた。
上官たち / 訓練官たち
新兵たちの指導や部隊の運用を担当する指揮官層となっている。
・所属組織、地位や役職 宸国軍・教官および幹部。
・物語内での具体的な行動や成果 入隊した小玉たちへの訓練を行い、後宮警備の任へ割り振った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 小玉たち新兵を育成し、実戦対応可能な部隊へと仕上げた。
皇宮・後宮(宮城関係)
刺客たち / 不審者たち(夜間に後宮へ侵入を図り小玉と交戦した集団)
夜間に後宮へ侵入を試みた不審者集団となっている。
・所属組織、地位や役職 所属不明・侵入者集団。
・物語内での具体的な行動や成果 夜陰に乗じて後宮への侵入を図ったが、警備中の小玉たちと遭遇した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 小玉に実戦での戦闘を強め、彼女の初陣における交戦相手となった。

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展開まとめ
伝説のはじまり
破談と閉ざされた将来
十五歳の関小玉は、同じ村で育った幼なじみとの結婚を目前にしていた。しかし許婚は、自分を愛してくれる相手と結婚したいとして一方的に破談を申し出た。地主の娘に見初められたことが原因であり、小玉に落ち度はなかったが、男側から結婚直前に捨てられた娘というだけで傷物と見なされ、新たな縁談も断られ続けた。
家族は小玉を責めず、兄嫁の三娘も未完成だった花嫁衣装を仕上げようとした。小玉もそれに加わったが、結婚の見込みは戻らなかった。家族の優しさに救われる一方、このまま実家に残り続ければ、いつか疎まれるのではないかという不安が強まった。村を出て自活しようにも、世間を知らない娘が一人で生きる方法を思いつけず、小玉は将来を決められないまま過ごした。
兄への徴兵と兵士への道
そんな中、小玉の家にも徴兵の知らせが届いた。対象となった兄の長は幼少期の怪我で足が悪く、妻の三娘もいた。小玉は自分が代われないことを悔やんだが、村の王じいさんから女でも兵士になれると教えられ、自ら兄の代わりに軍へ入る道を見いだした。
家族は小玉を心配したものの、彼女の決意を受け入れた。出立の日、小玉は家族から金を託され、無事に戻ったら土産を買うと約束した。村を離れる途中には元許婚もいたが、小玉はその存在にも気づかず、未来だけを見て歩き続けた。先が明るいかは分からなくても、何もなかった未来に初めて進むべき道が生まれていた。
軍での新生活
入隊した小玉は右玉鈐衛に配属され、同期の女性兵たちと訓練を始めた。最初は体力不足で走るだけでも遅れたが、足りないものを補うための訓練だと素直に受け止め、懸命に取り組んだ。読み書きもできず、軍の常識にも疎かったが、分からないことを学びながら新しい生活に適応していった。
訓練が厳しくなるにつれて怪我や体調不良にも見舞われたが、小玉は兵士としての日々を続けた。実家から届いた手紙も自分では読めなかったため、文字を読める柳隊正に頼ろうとした。故郷を離れても家族とのつながりは小玉の支えとなっていた。
沈中郎将との出会い
柳隊正に連れられた小玉は沈中郎将と対面した。身分や軍の仕組みに疎い小玉は相手の立場すら十分理解していなかったが、沈中郎将との関わりによって後宮警備だけだった軍務が変化していった。
小玉は戦いの中で手柄を立て、沈中郎将の目に留まった。褒美を与えられることになっても、自分の望みより実家からの手紙に関わることを頼むなど、小玉の価値観は変わらなかった。沈中郎将はそんな小玉を気にかけ、後には本来与える予定だった褒美の代わりとして上質な櫛を用意した。短く切った髪が伸びたときに使えるよう考えられた品であり、小玉は自分のために手間をかけてくれたことを喜んだ。
右玉鈐衛からの異動
小玉は右玉鈐衛で後宮警備に従事していたが、沈中郎将の意向によって別の衛へ異動することになった。女性兵が衛を越えて異動すること自体が異例であり、小玉には何を期待されているのか分からなかった。柳隊正は、戦功だけでなく小玉自身に沈中郎将の心を動かす何かがあったのではないかと考えていた。
小玉は沈中郎将のもとで訓練と雑務をこなし、それまで女性兵にはほとんど縁のなかった軍務へ踏み込んでいった。身分の高い武官たちとも接するようになり、村娘だった頃には想像もできなかった世界へ進んでいった。
沈中郎将との別れ
やがて沈中郎将は、康との国境防衛を目的として新設される守備軍へ赴くことになった。小玉は当然自分も同行できるものと思ったが、沈中郎将は彼女を連れて行かないと告げた。新設軍は練度の低い男性兵が大半を占め、女性が一人加われば兵たちの動揺を招き、練兵に支障が出る可能性があったためである。
小玉は自分が邪魔なのかと尋ね、沈中郎将は曖昧に慰めることなく、それを認めた。小玉は傷つきながらも、その言葉が自分に余計な希望を持たせないための誠実さだと受け止めた。沈中郎将は小玉を左武威衛の王将軍に託しており、小玉には新たな道が用意されていた。それでも小玉は、沈中郎将とはもう会えないかもしれないという寂しさを抱えた。
王将軍のもとでの新たな一歩
小玉は沈中郎将と離れ、王将軍のもとで軍人として歩み続けることになった。破談によって故郷で未来を失い、兄の身代わりとして始まった兵士生活は、すでに単なる徴兵の代役ではなくなっていた。
軍に入った当初の小玉は、体力も知識も文字の読み書きも十分ではなかった。それでも与えられた訓練に意味を見いだし、戦場では自分にできることを考えて行動し、その姿勢によって周囲から認められていった。沈中郎将との出会いと別れを経た小玉は、さらに広い軍の世界へ進んでいった。
かつて結婚以外の人生を知らず、破談によって自分には未来がないと考えていた少女は、自ら選んだ軍人という道を歩み始めていた。その歩みはやがて、一兵卒から女性初の将官へ出世し、さらに皇后となって後世に武威皇后と呼ばれる女性の伝説へつながっていくことになった。
紅霞後宮物語 第零幕






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