物語の概要
公爵令嬢スカーレット・エル・ヴァンディミオンは、宰相ゴドウィンの不正の証拠を掴むため、奴隷オークションに潜入する。悪徳貴族たちを打ち倒し、ついに黒幕であるゴドウィンと対峙するが、突如、敵国ヴァンキッシュ帝国の“紅天竜騎兵団”が立ちはだかる。スカーレットは、国をあげての一大行事“聖地巡礼”の儀に参加することとなり、その道中で新たな敵と対峙することになる。
主要キャラクター
• スカーレット・エル・ヴァンディミオン :本作の主人公。ヴァンディミオン家の公爵令嬢で、“氷の薔薇”と称される美しくも冷たい容姿を持つ。婚約者であった第二王子カイルから婚約破棄を言い渡されるが、彼女の真の姿は武闘派であり、悪徳貴族たちを拳で制裁する。 • ジュリアス・フォン・パリスタン :パリスタン王国第一王子。優秀な王位継承者で、眉目秀麗な容姿から女性にも人気がある。スカーレットに興味を抱き、彼女を支援する。 • レオナルド・エル・ヴァンディミオン :スカーレットの兄で、ヴァンディミオン家の長子。王宮秘密調査室の室長を務め、第一王子ジュリアスの得力助手でもある。妹の行動に頭を悩ませる苦労人。 • ナナカ :獣人族の少年。とある理由からスカーレットに付き従う。 • カイル・フォン・パリスタン :パリスタン王国の第二王子。スカーレットの元婚約者で、舞踏会の最中に婚約破棄を言い渡す。実際は宰相ゴドウィンの傀儡である。 • テレネッツァ・ホプキンス :ホプキンス男爵家の令嬢。庇護欲をそそる可愛らしい雰囲気を持ち、カイルの新たな婚約者となる。
物語の特徴
本作は、悪役令嬢として扱われた主人公スカーレットが、理不尽な扱いに対して拳で制裁を加える痛快なファンタジー作品である。従来の悪役令嬢ものとは一線を画し、スカーレットの武闘派な一面が魅力となっている。また、第一王子ジュリアスとの関係性や、敵国との対立など、政治的な駆け引きも描かれており、物語に深みを与えている。
書籍情報
最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか 2 著者:鳳ナナ 氏 イラスト: 沙月 氏 出版社:アルファポリス (レジーナブックス ) 発売日:2020年6月30日 コミカライズ:作画:ほおのきソラ、既刊9巻(2024年10月現在) アニメ化:2025年秋にTVアニメ放送予定。制作:ライデンフィルム京都スタジオ
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あらすじ・内容
勘違いヒロインが復讐しにやってきたので、華麗に苛烈に返り討ちいたします。 公衆の面前で第二王子カイルから婚約破棄され、彼とその取り巻き達を拳で制裁したスカーレット。裏で糸を引いていた悪徳宰相ゴドウィンも断罪し、スッキリした気分で休暇を満喫していた。そんなある日、彼女は第一王子ジュリアスとともに国をあげての一大行事“聖地巡礼”の儀に参加することに。ところがその道中、行く手を阻む敵が現れた! なにやら怪しい魔導具を駆使して襲ってくる彼らの正体は――? 究極の『ざまぁ』系悪役令嬢ファンタジー、第2弾! 文庫だけの書き下ろし番外編も収録!
最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか
感想
前巻で国内の腐敗した貴族たちを拳で成敗したスカーレットが、今度は宗教勢力に向けて遠慮のない鉄拳を振るう痛快作となっていた。 聖地巡礼という格式ばった儀式の最中に、他宗教の異端審問官の鉄球を素手で受け流してカウンターをしたり、他宗教の女神像を解体して投擲武器としてぶん投げたりと、その行動はもはや「爽快」を超えて「無茶苦茶」の域に達していた。
一方、ヒーロー側のジュリアスの「お約束すぎる加護」には思わず笑ってしまう場面も多く、特にスカーレットのキスによって彼の「英雄譚」の加護が完全発動するくだりは、あまりにも王道すぎて逆に清々しかった。 王子らしからぬ腹黒さと、たまに見せる真っすぐな言葉のギャップも健在で、彼のキャラの妙味がますます際立っていた。
シリーズの持ち味である「拳によるざまぁ」の醍醐味は今巻でも健在であり、「殴って解決」の潔さは唯一無二である。 スカーレットが敵対者に向ける拳は、正義の象徴でも人道的介入でもなく、あくまで「ムカついたから」という私的な感情に基づいており、その姿勢が却って心をスッとさせる。 理屈より感情、理論より拳。 それでいて爽快感を損なわないのは、登場人物たちの背景と関係性が丁寧に描かれているからだろう。
総じて本作は、物語としての厚みが増しつつ、読者の予想を良い意味で裏切る破天荒な展開で魅せてくれる続巻であった。 宗教・神・加護といった壮大な要素も登場するが、最後にはやはり「拳で解決」に帰着する構図が本シリーズらしく、実に小気味よかった。次巻では、いよいよ国政レベルでの改革や敵国の動きなど、さらに広がる舞台での活躍が見られることを期待してやまない。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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展開まとめ
第一章 私にだって、可愛げくらいありますわ?
温泉旅行を巡る兄妹の攻防
スカーレットは、加護の力の消耗から体調の回復を目的として温泉旅行を希望した。これに対し、兄のレオナルドは彼女の言動を疑い、旅の真意を問い詰めた。スカーレットは無邪気なふりをして誤魔化そうとしたが、兄の疑いは深く、かつての武力制裁の実績を引き合いに出して警戒した。ナナカも兄の意見に同調し、スカーレットは温泉旅行への出発許可を得たものの、兄の懸念は拭いきれなかった。
婚約破棄と制裁の過去
二ヶ月前、スカーレットは舞踏会の場で第二王子カイルから一方的に婚約を破棄された。さらに彼が他の令嬢との婚約を宣言したことで、彼女は長年の鬱憤を爆発させ、王子派の貴族たちを加護の力を使って殴り倒した。この事件を通じて、彼女が加護――神クロノワの祝福による時を操る力――の保持者であることが明かされた。王家の庇護を受けていたため、事件後も一切の処罰はなかった。
ナナカとの出会いと過去の事件
事件後、スカーレットの暗殺を企てた獣人の少年ナナカが現れた。彼は悪徳貴族の奴隷であり、奴隷紋によって強制的に動かされていた。スカーレットはナナカの奴隷紋を加護で消す代わりに、暗殺の首謀者を明かさせた。その後、首謀者である宰相ゴドウィンを追い詰めて制裁し、ナナカはヴァンディミオン家の執事として迎え入れられた。
ジュリアス王子との因縁
ゴドウィンを倒す過程では、第一王子ジュリアスが情報収集や警備隊の指揮を担当し、スカーレットと共闘することとなった。優秀ながら腹黒い性格のジュリアスは、スカーレットにとって信頼と反感の入り混じった存在であった。彼は事件後も頻繁に彼女をからかい、精神的に揺さぶりをかけていた。
加護の影響と療養の必要性
スカーレットは、加護を酷使した影響で髪の一部が黒く染まり、体力も完全には回復していなかった。療養を兼ねた温泉旅行の必要性をレオナルドに訴え、複数の温泉地を訪ねる計画を示した。これに対して、兄は毎年この時季に旅行に出かける理由が別にあるのではと問い詰めた。
聖女ディアナと宗教勢力
パリスタン王国には、パルミア教とディアナ聖教という二大宗教が存在する。ディアナ聖教は建国当初からの由緒ある宗教であり、聖地巡礼という一大行事を主導していた。スカーレットはこの巡礼行事と聖女に関心を持ちつつも、暴力的制裁の対象にすべきではないと主張した。
真の目的と偽装された出発
スカーレットが温泉旅行と称して出発した真の目的は、聖女ディアナを伴う聖地巡礼への参加であった。彼女は幼少期から巡礼に関わっており、その事実は関係者以外には秘匿されていた。兄には詳細を伏せたまま屋敷を抜け出し、王家の馬車で現れたジュリアスと合流して王都グランヒルデへ向けて出発した。
腹黒王子との再会
王都での合流予定であったはずのジュリアスが屋敷前で待機していたことから、彼の腹黒い性格が再確認された。スカーレットは温泉旅行という名目で許可を得たことを語るが、ジュリアスはその真意を即座に見抜き、スカーレットの兄が真実を知ったときの反応を楽しみにしていた。こうして二人は、王都を目指して旅立った。
第二章 死ぬほど痛いだけですわ。
道中の雑談と聖地巡礼の秘匿
スカーレットとジュリアスは王都グランヒルデへ向かう馬車での旅路を退屈に感じていた。ジュリアスはスカーレットから兄レオナルドが温泉旅行に反対した経緯を聞き、そのやり取りを愉快がった。スカーレットは巡礼への同行を兄に明かさなかったが、ジュリアスはその事実を隠していた理由を冗談交じりに語った。レオナルドが王宮秘密調査室の室長となった今も、ジュリアスは彼への情報開示を渋り、周囲の情勢が不穏であることを理由に警戒を促した。
王都到着と聖教区の壁
馬車は王都中央を抜け、聖地巡礼の起点である聖教区へと到着した。巨大な白壁に囲まれた聖教区は、俗世の穢れを遮断するという名目で建設されたが、その威圧感と資源の浪費にスカーレットとジュリアスは憤りを感じていた。この区域にはディアナ聖教とパルミア教の本部があり、特に後者の教皇サルゴンが築いた壁は、政教癒着の象徴として認識されていた。
ゴドウィンの影響と宗教勢力の対立
パルミア教の国教化は、かつての宰相ゴドウィンが議会を動かし、貴族たちの支持を得て実現させたものであった。ディアナ聖教は国防において重要な役割を担いながらも、権力集中を危惧されて国教化を見送られていた。結果として、現在のパルミア教は王家に匹敵する権力を持ち、政治と宗教の癒着が深刻化していた。
聖門での対峙と異端審問官の出現
聖教区の門が閉鎖されていたことで一行は足止めを食らい、門兵との口論が発生した。その場に現れたのは、パルミア教の異端審問官ジャルモウであった。彼は女神の名を騙って暴力を正当化し、異端者の排除を宣言した。ジュリアスは彼の発言を魔道具で記録し、後にパルミア教を糾弾する材料とした。
聖門の破壊と戦闘の開始
聖門は神聖な結界で守られていたが、スカーレットは加護の力を用いてそれを一撃で打ち砕いた。門兵たちはその力に恐れをなし、スカーレットの異名と過去の武勇に戦意を失った。ジュリアスは彼女を「救国の鉄拳姫」として紹介し、兵士たちの動揺を誘った。
ジャルモウとの交戦と撃退
ジャルモウは「神なる雷槌」と称する武器を振るい、スカーレットを攻撃したが、自らの鉄球で味方を傷つけるなど混乱を招いた。スカーレットは門兵から借りた槍を用いて鉄球を打ち返し、彼の腹に直撃させた。さらに彼女は拳を叩き込み、ジャルモウを空高く吹き飛ばした。だが、彼は「聖少女の首飾り」と呼ばれる魔道具により復活を果たした。
聖女守護騎士団の到着と撤退
騎士団の到着によって戦況は一変し、ジャルモウは退却を余儀なくされた。ディアナ聖教の実力に恐れを抱いた彼は、捨て台詞を残して逃亡した。スカーレットはその様子に怒りを覚え、再戦を誓った。ジュリアスは彼女の行動を皮肉交じりに評価し、事態の波乱を予感して章を締めくくった。
聖堂への到着と騎士団の迎え
スカーレットとジュリアスは聖門での混乱を経て、守護騎士団に護送されながらディアナ聖教団の本拠地であるディアナ聖堂へと到着した。迎えに現れたのは聖女守護騎士団の団長パラガスであり、聖教区内ではパルミア教の信者による暴動が発生していたと説明した。パルミア教はディアナ聖教の影響力拡大を快く思わず、聖地巡礼の中止を狙って妨害を試みていたことが判明する。守護騎士団は暴徒を鎮圧し警備隊へ引き渡したが、真の狙いは別にあるとの見解を共有した。
軽薄な新参騎士ディオスの登場
騎士団の場に突然登場したのは、ハーフエルフの筆頭騎士ディオスであった。軽薄な態度でスカーレットに求婚までしてみせた彼は、団長パラガスらにたしなめられるが、奔放な言動を改めようとはしなかった。その態度にジュリアスも呆れを見せる一方で、スカーレットに対しては不機嫌な素振りで守ろうとする姿を見せた。ディオスはその後、仲間の騎士たちに取り押さえられて連行された。
聖女ディアナとの再会と密かな呼び名
スカーレットとジュリアスは聖女ディアナの元へ案内される。儀礼に則り間接的な対話を交わしたのち、会合室に移動して話し合いを開始する。そこに聖女本人が現れ、スカーレットに駆け寄って抱きついた。ディアナはスカーレットを心から慕い、再会を喜んだ。会話の中で、ディアナは自身が本当は「サーニャ」と呼ばれていたことを打ち明けるが、直後にお付きの者に遮られた。スカーレットはその想いを尊重し、去り際に「サーニャ様」と声をかけた。
信仰の起源と聖地巡礼の意義
聖地巡礼の由来は、三百年前に魔物の脅威から国を救った少女にある。彼女は破魔の力で国境に結界を張り、王国を守った。以降も同様の力を持つ少女が現れ、「聖女ディアナ」として信仰の対象となった。巡礼はその結界を再び浄化するために行われる儀式であり、現代では聖女ディアナが国境の大聖石を巡り穢れを払うことが主目的となっている。
式典準備とディアナの葛藤
巡礼の出発にあたり盛大な式典が予定されていたが、ディアナは表向きの役割に不満を見せる。彼女はすでに聖女としての力を失っており、自身が無力であることに悩んでいた。ジュリアスが不用意にその事実に触れてしまい、スカーレットが諫める一幕もあった。ディアナは明るく振る舞いながらも、心には複雑な想いを抱えていた。
夜の語らいとディアナの真実
その夜、スカーレットはディアナと二人きりで語り合い、ディアナが男性を嫌う理由や、理想の人物像について打ち明けられた。さらに彼女は「サーニャ」と名付けられた本来の名前に触れ、名前に込められた父の想いを語った。聖女としての生活に抑圧されていたディアナにとって、スカーレットとの時間は心の安らぎであった。
スカーレットの誓いと過去の決意
スカーレットは、聖女としての力を失って落ち込んでいたディアナの姿を一年前に目の当たりにしていた。ディアナが放った「生きてる価値なんてない」という言葉に心を痛めたスカーレットは、その瞬間から彼女を守ることを決意していた。ディアナを支えるために力を尽くす覚悟は揺るがず、彼女の敵には拳をもって対処する覚悟を示していた。
不穏な予感
翌日の出発式典を控え、スカーレットは何事も起きぬことを願っていた。だが彼女の内には、予期せぬ事態への警戒と覚悟が静かに宿っていた。
聖地巡礼の準備と式典への出発
スカーレットは聖教区に滞在して一週間が経過し、ついに聖地巡礼の出発日を迎えた。式典の衣装に着替えを済ませた彼女は、妹分のディアナや関係者らと和やかな会話を交わしながら準備を整えた。ジュリアスも登場し、皮肉を交えながらスカーレットの装いを賞賛した。厳重な警備が敷かれた中、式典は盛大に始まり、神輿に乗ったディアナが聖なる儀式を執り行った。
式典中の混乱と砲撃の発生
盛大な演出に民衆は歓喜したが、突如として砲撃音が響き渡り、場は混乱に陥った。空砲と判明したが、パニックにより将棋倒しの危険が発生した。スカーレットは現場の収拾を警備隊に任せ、自ら砲撃源と思われるパルミア教総本部に向かうことを決意した。
パルミア教本部への突入と制裁
スカーレットは女神像の槍や部位を使い、空砲の発信源を攻撃した。その結果、総本部の建物は誘爆により全壊した。彼女は教徒の男を問い詰め、異端審問官と名乗る男をも一撃で気絶させ、魔道具を没収した。その後、本部内に侵入し、神殿を破壊した責任を追及しに現れた教徒達とも交戦に至った。
教徒たちの抵抗と制裁の実行
教徒たちはスカーレットを非難しつつ、異端審問官の不在を知ると一転して土下座して許しを請うたが、彼女が王都の混乱と怪我人の発生を指摘すると、再び逆上し始めた。スカーレットはその発言に激怒し、次々と教徒を殴打して瓦礫に叩きつけた。最終的に彼女は三十二人の教徒を気絶させ、警備隊に引き渡した。
式典の後処理と民衆の治療
聖門前に戻ったスカーレットは、多くの負傷者が治療を受けている様子を確認した。死者はいないものの、多くの怪我人が発生していた。王宮直属の治癒術士が出動していたことから、ジュリアスの采配による対応と察せられた。
ディアナの落下と白馬の騎士の登場
突如、神輿の支柱が崩れ、ディアナが落下する事態が発生した。守護騎士ディオスが救助に向かったが間に合わず、そこに現れたのは白馬に乗ったレオナルドであった。彼は華麗な身のこなしでディアナを救い、周囲の女性達から喝采を浴びた。スカーレットはその様子を冷静に見守り、レオナルドの行動に一息ついた。
第三章 断固としてお断りです。
王都出発と巡礼の同行者
聖地巡礼の一行は、人目を避けてひっそりと王都を出発した。ジュリアスは王都に残り、パルミア教への追及にあたる予定で、後から合流する手筈となっていた。スカーレットは、同行していた兄レオナルドから厳しく問い詰められるが、加護に関わる重要任務があることを明かし、やむを得ず同行していると理解されるに至った。
パルミア教の悪行と王家の対応
レオナルドは、パルミア教が信者を独占する目的で他宗教を排斥し、ついに王都で大砲を使った騒乱を起こしたことに強い憤りを見せていた。王宮議会では以前から問題視されていたが、今回の事件でついに逃れられなくなったという見解を示した。捕縛された教徒たちは「銀髪の悪魔」の存在に怯えていたが、スカーレットは知らぬ存ぜぬを貫いた。
ディアナの異変と恋の悩み
夕方、スカーレットはディアナの付き人に呼ばれ、テントで奇妙な悲鳴を上げるディアナの様子を確認した。彼女はスカーレットを見た途端に取り乱したが、それはレオナルドへの恋心が原因であった。式典で彼に助けられたことがきっかけで一目惚れしたと告白し、スカーレットは彼女を慰めつつ、その恋を成就させるために尽力することを決意した。
夜の恋愛作戦と温泉宿の到着
巡礼一行はメンフィスの温泉街に到着し、毎年利用している高級宿へ宿泊することとなった。スカーレットは、ディアナに風呂上がりの“ギャップ萌え”作戦でレオナルドをデートに誘うよう助言した。使用人のナナカからの情報で、レオナルドが入浴に向かうと知った二人は、行動を開始した。
ディアナとレオナルドの夜の逢瀬
町娘風の服装をしたディアナは、勇気を振り絞ってレオナルドを夜の街へ誘い、彼は快く応じた。二人は仲睦まじく街へ出かけ、スカーレットは護衛をナナカに任せ、自身も夜の散策に繰り出した。
ジュリアスの不意の登場と同行開始
スカーレットは一人で観光を楽しむつもりでいたが、偶然街でジュリアスと遭遇した。彼は父王の帰国により任を解かれ、巡礼の監督として合流したと語った。スカーレットは同行を拒否するが、ジュリアスは自然な流れで共に行動し始めた。
街歩きと反発する心情
スカーレットは、ジュリアスと共に繁華街を歩きながら、彼が次々と商品に文句をつける姿にうんざりしていた。ジュリアスが何かの贈り物を探していると察しつつも、気にしないふりをしていた。途中で髪の変化を話題にされた際には、唐突に接近されて周囲の視線を浴び、恥ずかしさに苛まれた。
噂の治療者を訪ねて
スカーレットは温泉療法のほかに、初代聖女の再来と呼ばれる治癒能力者のもとを訪ねるつもりであったが、ジュリアスはその話に興味を示して同行を申し出た。スカーレットは断ろうとするも無駄で、やむなく案内を引き受けることとなった。
皮肉交じりの諦念
彼女はジュリアスの無遠慮な行動に苛立ちつつも、彼の鈍感さと強引さには抗えないことを悟り、半ば諦めながら同行を続けた。彼の含み笑いに呆れつつも、強く抗うことができない自分自身に苦笑いを漏らしていた。
胡散臭い聖女診療所の訪問
スカーレットとジュリアスは、噂の「なんでも治す聖女」が営む診療所を訪れた。路地裏に不釣り合いな豪華な外観と、挙動不審な店主テレサの様子に、ジュリアスは不信感を露わにした。スカーレットの髪色の副作用治療を願い出るも、店主は「男性限定」の方針を理由に拒否した。ジュリアスは納得せず詰め寄るが、スカーレットが場を収めて店を後にした。
正体不明の聖女の素顔
店主テレサは、かつてスカーレットに婚約破棄の件で殴られた元令嬢テレネッツァであった。彼女は異世界から転生してきた元女子高生で、女神パルミアから魅了の加護を授かっていた。転生後は第二王子との関係を築くも、スカーレットの暴力的制裁によって身分を失い、追放された経緯を明かした。
再起を狙う元令嬢の策略
辺境の街メンフィスで魅了の加護を使い診療所を開いていたテレネッツァは、スカーレットの来訪に焦るも、正体が露見しなかったことに安堵した。しかし彼女の正体を見抜いていたスカーレットは、警告の手紙を残していた。危機を察したテレネッツァは街を逃れ、新たな標的として、偶然出会ったパルミア教の司祭ラッセンに取り入る道を選んだ。
浄化の大聖石への巡礼と山道登攀
翌日、巡礼一行は大聖石を目指して険しい山道を登った。ディアナは体力的に苦しみながらも、レオナルドの励ましを受けて気力を取り戻した。守護騎士団もスカーレットの激励により奮起し、活気を取り戻した。道中ではジュリアスやディオスとのやり取りが交わされ、スカーレットはディオスの執拗な求愛を突風魔法で一蹴した。
浄化の儀直前の告白
大聖石の前に到着した一行は、浄化の儀の準備を進めた。スカーレットは兄レオナルドに、自分こそが「本当の聖女」である事実を打ち明けた。ディアナは自身は代替可能な「副聖女」であり、スカーレットの時を巻き戻す加護こそが大聖石を清める真の力であると説明した。レオナルドは驚きながらも妹を信じ、真実を受け入れた。
正体の公表と兄の理解
国王やジュリアスがスカーレットに執着する理由も、この能力にあることをレオナルドは理解した。スカーレットは兄にこの事実の口外を禁じ、レオナルドはその約束を固く誓った。ジュリアスはこの場面を面白がりながら見守り、スカーレットは禊の準備へと向かった。真の聖女としての役目を果たすべく、儀式の開始が迫っていた。
浄化の儀・真伝の実施
スカーレットは禊を終え、聖衣を身にまとい浄化の儀「真伝」を開始した。真っ黒に穢れた大聖石に触れ、時を巻き戻す加護を発動することで、瘴気を取り除いて青白い本来の姿へと戻した。聖衣の浄化効果によって悪影響を防ぎつつ、儀式は二分で無事に完了した。
ディアナの補助と着替え
儀式後、ディアナはスカーレットの着替えを手伝いながら、聖地巡礼の進行を気遣っていた。スカーレットは、順調な進行に安堵しつつも、パルミア教の背後にある利権目的の思惑に懸念を抱いていた。ディアナ聖教を潰そうとする行為は、この国の安定を脅かす危険な企てであると考えていた。
聖地巡礼の今後と結界の儀
ディアナは自身の浄化の儀を披露できなかったことを残念がったが、スカーレットは彼女を励まし、慰めた。浄化の儀「本伝」は全大聖石の浄化後に執り行われる予定であり、ディアナはそのときに結界を張る役目を担うこととなる。今回は公開が中止となったが、翌年への期待を胸に、二人は次なる巡礼へと気持ちを切り替えた。
第四章 正直、昂ぶりを抑えられません。
北の街スノーウィンドへの到着と異変
一行は巡礼のため、メンフィスを出て北の街スノーウィンドに向かい、四日ほどで到着した。到着時、歓迎の挨拶がなく、住民の視線にも困惑が見られた。領主館の前には兵士が待ち構えており、歓迎の意志は見られなかった。
領主パドラック伯爵の敵対的態度
聖女ディアナを騙る偽物として一行が糾弾され、領主パドラック伯爵が激昂して対峙した。守護騎士団がディアナ本人の存在と証を示しても、伯爵は認めようとせず、金銭目当てで巡礼していると断じた。
偽聖女テレネッツァの登場と過去の因縁
新たな聖女としてパルミア教のテレネッツァが現れ、彼女はスカーレットが過去に制裁を加えた人物であった。彼女の加護「魅了」によって男性陣は次々と理性を失い、守護騎士団の多くが戦闘不能に陥った。
テレネッツァとの一騎討ちと加護の無効化
魅了が女性には効かないことが判明し、スカーレットは一人で立ち向かった。敵の魔法を赤水晶の耳飾りで無効化しつつ、力技で兵士や教徒を次々に制圧した。パドラック伯爵も制裁を受け、偽りの魅了被害を訴えるも見抜かれて撃退された。
テレネッツァの敗北と反撃不能
スカーレットはテレネッツァを徹底的に叩きのめし、魅了に依存した彼女の限界を露呈させた。彼女は戦意を喪失し、魅了の効果が解除されたことで兵士と教徒たちは正気を取り戻した。
捕縛の矢先、ディオスの乱入
すべてが終息しかけた時、行方不明だったディオスが現れ、ディアナを人質に取り出現した。彼は守護騎士団に潜入していたパルミア教の異端審問官であり、正体を明かして取引を持ちかけた。
取引成立とディオスの逃走
レオナルドの判断でテレネッツァとディアナの人質交換が行われ、取引は成立した。ディオスは風魔法で包囲を突破し、テレネッツァを連れて姿を消した。
戦後の処理とスカーレットの限界
戦いの反動でスカーレットは倒れかけたが、ジュリアスに支えられた。ディアナを奪還できたことで一段落し、逃げたディオスとテレネッツァの追跡はナナカに託された。ジュリアスの言葉に安心しながら、スカーレットは意識を失った。
白い世界と神の呼びかけ
スカーレットは意識を失ったまま、白い霧に包まれた空間で目を覚ました。そこには神話に描かれる天国のような景色が広がり、彼女は自分が死んだのではないかと疑った。やがて響いてきた声と音に導かれ、彼女は時計が浮かぶ奇妙な空間の奥で、時空神クロノワと出会った。
クロノワ神からの依頼
クロノワはスカーレットに、女神パルミアによって奪われたディアナの加護を取り戻してほしいと依頼した。理由は嫉妬によるもので、クロノワ自身が直接手出しできないことから、スカーレットに白羽の矢が立ったという。神の世界の規則ゆえ、彼女は人間の力で加護を取り戻すよう託された。
魔道具の授与とパルミアの巫女の正体
クロノワは加護を奪った相手がパルミア教の巫女であり、それがスカーレットの知る人物だと告げた。そして、その加護を取り戻す鍵となる「時空神の懐中時計」をスカーレットに託した直後、場面は地上へと転じた。
スカーレット昏睡とディアナの裏切り
地上では、スカーレットが眠り続ける中、ジュリアスが彼女を看病していた。そこへ現れたディアナに対し、ジュリアスは彼女がパルミア教と通じていた事実を突きつけた。王都での騒動以降、彼女とディオスの密会は王宮の調査で明らかになっていた。
裏切りの事情と処遇の決定
ディアナの裏切りを知りながら泳がせていた理由は、敵の目的と情報源を探るためであった。しかし結果的にスカーレットが負担を負うこととなり、ジュリアスは苦い決断を迫られた。政治的な影響も踏まえ、彼はディアナの裏切りを不問に付すことを選んだ。
未明の異変と浄化の大聖石の消滅
その夜、街の外で大規模な爆発が発生し、空には巨大な光の柱が立ち上がった。大聖石が砕けて消滅し、結界の崩壊によって無数の魔物が街へ向かっていた。ジュリアスとレオは住民の避難を迅速に指示し、騎士団も動員された。
単独行動と襲撃者の出現
ジュリアスは危険を承知で状況確認に向かい、途中で魔力による魅了を受けた。強力な加護の力に抗えず意識を失った彼の前には、再び現れたテレネッツァの姿があった。彼女の狙いが本格的なものとなり、事態はさらに混迷を深めていった。
第五章 私も好きですよ。
聖女としての目覚めと戸惑い
ディアナは農村で生まれ育った普通の少女であったが、七歳のある日、夢の中で聖女の力を継承し、聖女ディアナとして目覚めた。最初はその力に興奮し、家族に披露したが、当初は信じてもらえなかった。しかし結界の力を見せることで周囲の認識は一変し、村中から崇められる存在となった。だがそれにより人々との距離が生まれ、孤独を感じ始めた。
聖女としての召喚と別離
聖女としての力が公になってから二週間後、聖教の騎士と神官たちが現れ、ディアナを迎えに来た。村人たちは喜び、彼女は王都へ連れて行かれた。先代の聖女の死と、ディアナの役割が告げられる中、家族や故郷からの疎外感により、彼女は聖女として生きる決意を固めた。
スカーレットとの出会いと憧れ
王都で聖女としての生活を始めたディアナは、公爵令嬢スカーレットと出会い、その美しさと人柄に魅了された。スカーレットは地位や能力のみならず、思いやりに満ちた人物であり、ディアナを常に気遣ってくれた。聖地巡礼においても、緊張するディアナを支え続けた。
劣等感と嫉妬、そして裏切り
自分の価値を聖女の力にしか見出せなかったディアナは、力を失った際に精神的に追い詰められ、パルミア教のスパイであるディオスの誘いに乗ってしまう。力を取り戻す代償として、ディアナは一年間パルミア教に情報を流すことを承諾した。自らの裏切りに後悔を抱えながらも、加護を取り戻す執着心にすがっていた。
改心と抵抗の決意
暴動の被害を目の当たりにしたディアナは、裏切りをやめる決意を固め、ディオスに別れを告げた。しかし彼に脅迫される中、スカーレットを守るため短剣を手に立ち向かうも、逆に拘束されてしまう。自らの無力さに苦しみながらも、彼女は自身の過ちと向き合い、命を懸けてスカーレットを守ろうとした。
スカーレットの覚醒と決別
ディオスがスカーレットに危害を加えようとした瞬間、彼女が目覚め、瞬時にディオスを撃退した。ディアナは涙ながらにこれまでの過ちを告白し、スカーレットはそれを受け止め、厳しくも温かく諭した。ディアナは謝罪と贖罪の覚悟を決め、スカーレットに全ての経緯を語った。
二人の絆と未来への覚悟
ディアナの孤独や絶望を受け止めたスカーレットは、自らの責任にも言及しながら彼女を抱きしめ、共に乗り越えると誓った。ディアナもまた、彼女に導かれながら己を取り戻し、前を向いて進むことを誓った。
砂漠の街への行軍と新たな情報
ディアナたちは次なる目的地サハスギーラへ向けて行軍を続けたが、道中で砂嵐の情報を商人から得た。計画に狂いが生じる中、兄ジュリアスと共に最善策を協議していたところ、ディオスから近道の情報提供が申し出られた。疑念を抱きながらも、彼らは話を聞く決断を下した。
ディオスの寝返りと告白
捕縛されたディオスは、パルミア教から寝返る理由として、サーニャ(ディアナ)への情を吐露した。彼はサーニャの異母兄であり、彼女の笑顔を守るために行動していたと明かした。ディオスの供述に一応の筋は通っていたが、彼の態度や性格を鑑みて、スカーレットたちは慎重に対応する姿勢を崩さなかった。
地下道への案内と進軍
ディオスは、砂嵐を回避するための抜け道として、遺跡群に存在する地下道の存在を示した。一行はサハスギーラに急ぐ必要性から、その案内を受け入れた。遺跡の神殿から地下へ降りると、トロッコの残る広い道が続いており、彼の案内は事実であることが確認された。スカーレットはディオスを警戒しつつ、先行して地下道を進んだ。
街への到着と小休止
地下道を抜けた一行は、夜のサハスギーラの街に到達した。スカーレットが扉を破壊して脱出したことで騒ぎが起きたが、街の住人たちにはお兄様が状況を説明し、騒動は収束した。一行はオアシスに向かい、水浴びなどの休息を取ることとなった。
ディアナの動揺と兄妹の対話へ
ディアナは魔道具により、スカーレットとレオの会話を聞いており、自身がディオスの妹であることを知ってしまっていた。彼女は混乱しつつも、兄と話す決意を固めた。スカーレットは背中を押し、ディアナはようやく本来の明るさを取り戻し始めた。
偽ジュリアスの出現と見破り
スカーレットのもとに現れたジュリアスを名乗る人物は、言動や態度に違和感があった。彼女はその正体を、ジュリアス本人には見られない爽やかすぎる笑顔により見破り、関節技で偽者を拘束した。正体はナナカによる幻影であり、テレネッツァに操られていたことが示唆された。
本物のジュリアスの登場
本物のジュリアスはグリフォンに乗って現れ、ナナカを捕縛して地上に降り立った。彼はスカーレットに、自分の本心を偽っていたことを詫びつつ、すべての問題を解決したと告げた。その様子はいつもと異なり、スカーレットにとってはかえって違和感を覚えるものであった。彼の頭痛や素直な態度から、何かが起きている可能性が暗示された。
第六章 貴方達にとっての悪魔となりましょう。
空飛ぶ絨毯とグリフォンによる出発
スカーレットたちはサハスギーラの街を出発し、大聖石を目指して砂漠を横断した。魔力を消費する空飛ぶ絨毯が投入され、スカーレットは人数不足のためジュリアスの背を借りてグリフォンに騎乗した。王族の騎獣であるグリフォンを使用することに一部特別な事情が伴っていたが、やむを得ない処置とされた。砂上を高速で進む絨毯の加速により、一部の騎士が振り落とされる場面もあったが、隊列は無事出発した。
ジュリアスの報告とテレネッツァの破壊行為
合流したジュリアスは、砕けた大聖石付近でパルミア教団とテレネッツァに遭遇した経緯を報告した。魔物を操っていたのは魅了の加護によるものであり、テレネッツァがパルミア教本部の宝具「パルミアの槍」を使用して大聖石を破壊したと推測された。王都から派遣された討伐隊の働きもあり、魔物の被害は最小限に抑えられていた。新たな大聖石の設置も進められており、状況は一定の安定を見せていた。
スカーレットとジュリアスの感情の交差
スカーレットは、自身の過去の判断が今回の事態を招いたのではないかと自責したが、ジュリアスはそれを否定し、彼女の行為がむしろ正義に基づくものであったと擁護した。スカーレットは彼の真意を察し、普段の辛辣な態度の裏にある温かさに気づいた。一方ジュリアスは照れ隠しの態度を見せつつも、彼女への思いを否定できなかった。
パルミア教団との戦闘と無力化
大聖石付近でパルミア教団の一団が発見され、絨毯部隊が突撃した。教徒たちは魔法での反撃を試みたが、ジュリアスの「王帝印の指輪」による魔法制限により無力化された。戦闘はあっけなく終結し、教徒たちは容易に捕縛された。スカーレットは戦闘の機会を逃したことに一抹の残念さを覚えたが、被害を出さずに収めた成果を評価した。
大聖石の浄化と捕虜の尋問
スカーレットの遡行により大聖石は浄化され、儀式は無事完了した。捕らえたパルミア教徒たちは尋問に応じなかったが、そのうちの一人が突然激昂し、テレネッツァたちが南の街に向かっていることを明かした。これにより、今回の襲撃が陽動であったことが判明し、彼らは敵の作戦に出し抜かれたことを悟った。
今後の方針とグリフォンによる先行策
敵の真の狙いが南にあることを受けて、スカーレットとジュリアスがグリフォンで先行する案が浮上した。反対意見も出たが、彼らの戦闘力と判断力が最も信頼できるとの判断から、この案が採用された。レオは条件付きでその出発を認め、無茶な行動をしないよう厳しく釘を刺した。
ナナカへの信頼と汚名返上の機会
ナナカは過去の魅了事件により沈んだ様子を見せていたが、スカーレットは彼の責任感を理解し、耳元である提案を伝えて汚名返上の機会を与えた。彼の態度を改める一歩とするため、スカーレットは積極的に彼を信頼し、再び前を向かせようとしていた。
南の大聖石への偵察と奇襲回避
スカーレットとジュリアスは、グリフォンに乗って南の大聖石がある島へ向かった。上空からの偵察中、スカーレットは突如として強烈な光の攻撃を予知し、グリフォンの進路を変更することで回避した。幼い頃から危機を感じると未来が視えるというスカーレットの能力が発動した結果であった。光の放たれた場所から、敵が既に島に上陸していることが判明し、ふたりは突入を決断した。
急襲とテレネッツァの撃破
島に突入したスカーレットは、光を振りまくテレネッツァを視認し、グリフォンから飛び降りて急襲した。パルミア教徒の囲みの中で槍を掲げるテレネッツァを強襲し、シールドを破って顔面に一撃を叩き込んだ。さらに教徒たちを一人ずつ殴り倒し、全員を戦闘不能に追い込んだ。異端審問官ジャルモウも倒され、教団の教義が魔道具によって支えられていた事実が明らかとなった。
魅了と英雄譚の加護の発動
ジュリアスは魅了の影響下にあり、スカーレットと敵対する形で立ちはだかった。模擬戦では見せなかった本気の攻撃が交差し、ふたりは激しくぶつかり合った。テレネッツァは大聖石を破壊すると脅すが、スカーレットはジュリアスにキスをし、彼の「英雄譚」の加護を完全発動させた。この加護により、ジュリアスは魅了から解放され、あらゆる敵対魔法を無効化できる力を得た。
テレネッツァの敗北と逮捕
圧倒的な力を前にテレネッツァは抵抗を試みるも、ジュリアスに武装を奪われ、平手打ちと共に反逆罪で拘束された。スカーレットは大聖石破壊を狙った彼女の最後の抵抗を読み切り、ナナカの協力で槍を無力化した。テレネッツァが持っていた加護は、スカーレットが「時空神の懐中時計」で吸収し、完全に無力化した。最後は拳で吹き飛ばされ、地に突き刺さる形で敗北した。
すべての終幕と帰還の決意
テレネッツァの脅威が完全に排除され、スカーレットは一連の因縁に終止符を打った。ナナカも任務を全うし、褒められた。魅了の残滓である白い羽根が舞い降りる中、スカーレットは皆の待つ場所へ帰還することを決意した。ジュリアスはスカーレットへの想いをやや婉曲的に語り、彼女もまた揺れる心情を抱えながら、次の一歩を踏み出そうとしていた。
第七章 首を洗って待っていてくださいな。
温泉での休息と儀式の延期
聖地巡礼を終えたスカーレットたちは、南の街サウスビーチに滞在し、温泉で旅の疲れを癒していた。聖女としての役割を終えたスカーレットは、ディアナの懐中時計に封じられた時空神の加護が復旧するまで、儀式の延期を決定していた。北の大聖石の破壊や教団の断罪など、国としての課題も残されており、当面は静養を優先する方針となった。
ディアナの想いとスカーレットの洞察
ディアナは過去のスパイ行為に責任を感じていたが、スカーレットはその悩みを受け止めつつ、彼女の成長を認めた。一方、スカーレットはお兄様の早期出発を予想していたが、宿で鉢合わせる。会話の中で、お兄様がディアナの告白に対し、成人まで返答を保留していた事実が明らかになった。スカーレットは、ジュリアスが自身を利用して加護を発動させた可能性に思い至り、怒りを募らせた。
王都での断罪と教皇サルゴンの追い詰め
王都グランヒルデでは、ジュリアスの指揮のもと、教皇サルゴンの私邸が制圧されていた。かつては証拠不十分で追及できなかったが、拘束中の教徒たちが一斉に教会による洗脳を証言し、流れが変わった。ジュリアス自身も聖女に操られた経験を語り、物的証拠と共にサルゴンを追い詰めた。
自爆未遂とスカーレットの突撃
追い詰められたサルゴンは自爆を図るが、そこへスカーレットが馬で突撃し、彼を壁に叩きつけて阻止した。ジュリアスはその暴挙に呆れながらも、彼女の無邪気な行動に思わず微笑みを浮かべる。スカーレットは、断罪の瞬間を見届けるために王都まで駆けつけたと説明した。
軽妙なやり取りと拳による制裁
スカーレットはジュリアスの策略と無遠慮な発言に対し、怒りをこめて拳を振るい、彼を天窓から吹き飛ばした。その姿はまるで絵に描いたような滑稽な結末であったが、ジュリアスはこの体験を通して彼女への感謝と愛情を再認識した。ふたりのやり取りには、策略と想いの交錯があったが、最終的には平和と日常が戻った。
物語の結末と未来の予感
空中を舞う中で、ジュリアスはスカーレットへのプロポーズを考えるに至り、逆転した役割の童話的展開を自嘲気味に語った。物語は王子と姫の幸福な未来を予感させながら、典型的な結びの言葉で締めくくられている。
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