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小説「目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので 15」感想・ネタバレ

物語の概要

本作は、異世界×SF×ハーレム要素を融合させたスペースオペラ系ライトノベルである。前巻までに整った傭兵団を率いて自由気ままに生きていた主人公・ヒロが、第15巻では皇帝の命を受け、帝国と連邦の境界宙域へ赴く。そこで因縁ある伯爵領に踏み入った一行は、宙賊討伐を完遂したものの、伯爵の策略によってセレナ大佐が毒薬を盛られ囚われてしまう。覚醒したヒロは、その圧倒的な「サイオニックパワー」を以て怒涛の反撃に転じる。

主要キャラクター

  • ヒロ(佐藤孝弘):本作の主人公。宇宙船を駆り、サイオニックパワーと最強装備で戦う傭兵団長である。
  • セレナ大佐:帝国軍サイオニック使いであり、ヒロの戦友。第15巻では毒薬によって囚われの身となる重要な役割を果たす。

物語の特徴

本作の特徴は「異世界(宇宙)×最強主人公×地に足のついた傭兵生活」という希少な組み合わせにある。圧倒的な力を持ちながらも、「家を買う」という現実的な目標のもとで行動するヒロの等身大の姿が魅力である。第15巻では、セレナの救出という緊迫したドラマと、サイオニックパワーが炸裂する戦闘が読者の興奮をかき立てる。他の異世界作品にありがちなファンタジー色を排し、SFとしてのリアルな宇宙戦が描かれる点も差別化されている。

書籍情報

目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい 15
著者:リュート
イラスト:鍋島テツヒロ
出版社:KADOKAWA(カドカワBOOKS)
発売日:2025年7月10日
ISBN:9784040759845

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あらすじ・内容

まさかのセレナ大佐が悪徳貴族の囚われの身に!?
皇帝直々の勅命により、帝国と連邦の紛争宙域星系へと向かうことになったヒロ一行。そこはヒロと因縁のあるイクサーマル伯爵家の管轄下の場所だった。セレナと共に共同作戦にあたり、謎に装備の良い宙賊の討伐をサクサク展開していたものの、伯爵に招かれた晩餐会で薬を盛られ、セレナまでもが囚われの身になってしまった!

目覚めたヒロは、覚醒したサイオニックパワーで、人間離れした怒りの反撃を開始する!!

目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい 15

感想

今巻では、ファ⚫︎⚫️ンエンペラーの意図で前線に送り込まれたヒロたち。
帝国軍の補給線を攻撃する宇宙海賊を狩り、襲撃分布を分析してさらに狩りまくる展開は、読んでいて爽快感があった。
しかし、そんな彼らを前線基地の司令官である悪徳貴族が呼び出したことから、物語は急展開を迎える。
まさか前線基地の貴族が裏切っているとは、本当に終わっている。
しかも、その貴族がなかなかゲスな趣味の持ち主だったらしく、セレナ大佐があれな薬に侵されてしまうとは……。
まるでエロ漫画のような展開に驚きを隠せない。
何て不幸なセレナ大佐。
またそれが似合う。
宇宙海賊と繋がりがあると噂されてる悪徳貴族が食事に睡眠薬を盛ってヒロを拘束するも、彼は「サイオニックパワー」で拘束具を引きちぎり大暴れ。
同席していたセレナ大佐は謎の薬を盛られてしまい、その後はショーコ先生によるアレコレな説明が……。
あぁ、遂に大佐が……という展開に、、
良かったねセレナ大佐!

最後までお読み頂きありがとうございます。

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展開まとめ

プロローグ

起床と朝の支度

主人公ヒロは情報端末のアラームで目覚め、同じベッドのミミと共にシャワールームへ向かったである。目覚めの内省では、ミミを傭兵生活へ巻き込んだ罪悪感が一瞬よぎったが、行動には移さず日課を優先したである。

食堂でのクルーとの交流

シャワー後に食堂へ向かったヒロとミミは、銀髪エルフのエルマが肉料理を頬張る姿を目撃したである。さらにドワーフ姉妹ティーナとウィスカも登場し、激戦に備えた物資補充や嗜好品の仕入れ状況を報告したである。ヒロは必要物資のリスト作成を命じ、朝食を取りながら結束を固めたである。

船内ルーティンと医務室の検診

ヒロは規則正しい生活を重視し、トレーニングと船内巡回をこなしたである。医務室では船医ショーコがヒロの健康状態を確認し、狐人クギの遺伝子研究に没頭していたである。ヒロはクギに修練後の面会を約し、巡回を続けたである。

メイとの操舵確認

コックピットではメイドロイドのメイが航行を管理していたである。目的地まで五十二時間と報告を受けたヒロは感謝を伝え、メイの要望で抱擁を交わしたである。メイは多岐にわたる業務を担い、ヒロはその献身に頭を下げたである。

クリーオン星系への航行背景

一行はパンデミック騒動を経て、グラッカン帝国とベレベレム連邦の係争宙域に位置するクリーオン星系へ向かったである。同星系は資源こそ平凡ながらも紛争の火種となり、傭兵にとっては収入源であり危険地帯であると説明されたである。本来は宙賊討伐が主眼だが、今回は皇帝直々の勅令により帝国航宙軍へ協力を余儀なくされたである。

物資集積基地でのセレナ大佐との再会

クリーオン星系の物資集積基地に到着したヒロは、皇帝の勅令を携えるセレナ大佐と再会したである。大佐は表向き笑顔を保ちながらも厄介事を匂わせ、ヒロは皇帝への不満を抱きつつ任務への従事を余儀なくされたである。

#1 : 帝国航宙軍クリーオン星系物資集積基地

前線拠点への到着と物資調達の調整

帝国航宙軍クリーオン星系物資集積基地に到着したヒロ一行は、セレナ大佐の出迎えを受け、戦艦レスタリアスに向かった。基地は軍事要塞として強固に武装されており、民間人の出入りは厳しく制限されていた。ミミがブラックロータスに積み込んだ嗜好品は、セレナ大佐の艦隊によって正規予算で引き取られることになり、後方兵站を潤す形で調整が進められた。

イクサーマル伯爵家の存在と政争の火種

ヒロはこの基地の治安に関してセレナ大佐に問いかけ、不穏な雰囲気がただよう現状を聞かされる。防衛を担っているのはかつての因縁相手・イクサーマル伯爵家であり、彼らは実質的に前線で磨り潰される懲罰的任務を与えられていた。セレナ大佐は過去にイクサーマル家と関わった経緯を説明し、現在の不安定な状況との関連を暗示した。

皇帝の意図と裏切りの可能性

ヒロは皇帝による勅命の裏にある意図を探り、伯爵家の連邦側への寝返りを危惧した。セレナ大佐とエルマはそれを否定したが、ヒロは過去の経験を踏まえ、最悪の事態を想定する重要性を説いた。実利的な面からも、貴族にとって帝国の裏切りは大損失であると分析されたが、現状では完全な否定は難しいとされた。

宙賊の活動と作戦の提案

ヒロは、宙賊の装備や行動が組織的である点に着目し、スポンサーの存在を疑った。セレナ大佐は戦艦を含む艦隊の足が遅いために有効な対策を講じられていないことを明かし、ヒロは艦隊を小分けにして各星系のハイパーレーン突入口に展開する「網を張る」戦術を提案した。この柔軟な戦術にセレナ大佐は理解を示し、戦力を分割しての対応を検討することとなった。

兵站破壊の実態と帝国の対応

宙賊の主な標的は軍の主力兵站ではなく、嗜好品を運ぶ民間船であることが明かされた。ハイパーレーンの安定化装置が機能していないため宙域の把握が困難であり、帝国側も十分な警戒網を展開できていなかった。後方撹乱は損害としては小さいが、継続すれば戦意に影響を及ぼすため、早期の対応が求められていた。

情報収集と作戦実行に向けた準備

ヒロは宙賊の行動範囲を制限し、情報を収集することで敵の拠点を突き止める作戦を提示した。セレナ大佐もこれに同意し、艦隊の配置と情報分析を開始した。ヒロは戦力や艦種ごとの特性を考慮し、現場での即時撃破や索敵の手順を具体化させた。

傭兵団への共有と今後の展望

ブラックロータスに帰還したヒロは、全クルーに現状と今後の任務を共有した。敵の装備が高性能であるため注意が必要とされつつも、任務の基本は従来通りであると確認された。クギは捕虜の尋問におけるサイオニック支援を申し出ており、ヒロは状況に応じて活用する意向を示した。最後に、セレナ大佐の作戦準備が整うまで一時待機とし、次なる出撃に備えて鋭気を養うこととした。

#2:宙賊(自称)狩り

哨戒任務とセレナ大佐からの命令

セレナ大佐との会談後、ヒロたちはクリーオン星系近隣のボークス星系にて宙賊掃討任務を開始した。これは再編成中の帝国艦隊に代わり、レスタリアスが拠点とする予定の星系の露払いを命じられたためである。報酬は日数単位で支払われ、補給費用は軍側が負担し、撃破艦の鹵獲も自由であった。

救難信号と宙賊艦隊との交戦

哨戒中、亜空間センサーに救難信号を受信し、現場に急行すると、護衛艦2隻と輸送艦が宙賊9隻に襲撃されていた。ヒロたちは宙賊の装備が高品質であることを確認しながら、迅速に攻撃を開始。散弾砲や重レーザー、ブラックロータスの火力によって敵艦を次々と撃破し、最終的には逃走を試みた宙賊もグラビティジャマーによって足止めされ、全艦を撃退・殲滅した。

サルベージとコロニーへの帰還

戦闘終了後、サルベージを行い、中型宙賊艦を鹵獲。コロニーに帰還し、護衛艦の船長から感謝を受けた。鹵獲艦内部の安全はボットで確保され、私物や情報端末からのデータ回収も進められた。セレナ大佐にはその報告と共に、データの分析を依頼する旨を伝えた。

傭兵ギルドでの情報収集

ボークス星系の傭兵ギルドにて、ヒロは職員たちと情報交換を行い、宙賊襲撃に関する座標や行方不明船の航路情報を入手。データから襲撃パターンを独自に分析し、宙賊のねぐらがザイラム星系にある可能性を示唆した。彼の分析はギルド職員たちを驚嘆させ、再度の解説を求められるほどであった。

エリート宙賊の存在と軍の無策

ヒロの分析により、宙賊の中には綿密な作戦を立てて行動する「エリート宙賊」が存在することが示された。セレナ大佐はその存在を初耳とし、これまでの軍の分析や教育にはこの概念が欠けていたことに愕然とした。捕虜となった宙賊の多くは10歳以前の記憶を持たず、出自や本拠地についての情報は一切得られていないことも共有された。

宙賊掃討作戦の準備と連携

その後、宙賊の殲滅を目的としたローラー作戦の打ち合わせが行われ、ヒロたちは勢子(猟犬)として行動することとなった。帝国の高火力主義によって余剰となった駆逐艦などの小型艦が投入され、掃討部隊が編成された。ヒロの戦術は軍の定石とは異なるが、実績により受け入れられつつあった。

宙賊捕獲と慎重な対応

戦闘中、破壊を免れた宙賊艦を発見し、生存者がいる可能性があることから非殺傷での制圧を指示。捕虜として拘束し、情報収集に利用することとした。ミミやクギはこの対応にも慣れ、戦闘後の対応を手際よく進めた。

急変する戦況と新たな命令

作戦の進行中、帝国がベレベレム連邦との戦端に直面し、セレナ大佐から任務中断とクリーオン星系への集結が命じられた。ヒロたちは集めた情報の分析に集中することとなったが、状況の急変により新たな戦いが迫っていることを予感させた。

#3:後末、あるいは束の間の平隠

捕虜調査と鹵獲艦の解析

掃討戦で捕えた宙賊の一団はブラックロータス船内で尋問と診察を受け、セレナ配下の調査班が艦内部のデータストレージを徹底的に解析していた。鹵獲した中型艦は二十年以上前に倒産したベレベレム連邦製シップメーカーの古い護衛艦と判明し、拡張性の低さゆえ市場評価は低かったが、護衛任務には最低限耐え得る性能を保持していた。整備士姉妹は安全処理後、蓄えていた部品でレストアを開始したである。

物資集積基地での待機と独立艦隊の拘束

前線の増援に備えるべく帝国軍はクリーオン星系物資集積基地を要衝に指定し、対宙賊独立艦隊を警備に充てた。ヒロの部隊は実質的に“待機任務”となり、固定報酬に日当が加算される状況であったが、イクサーマル伯爵家からの要請で晩餐会への出席が打診されたことから、ヒロは罠の可能性を懸念して船番の配置と非常対応を手配したである。

シミュレーター訓練と艦内賭博騒動

暇を持て余した帝国パイロットたちはヒロを相手に模擬戦を挑み、小額エネル賭博を行った。ヒロは連勝してチップを山積みにしたが、セレナ大佐は規律乱れを危惧して以後の賭博を禁止し、勝ち取ったチップのみお仕置きとして黙認したである。

剣戟稽古と真意の告白

セレナ大佐は模擬戦で発散できなかった鬱憤を晴らすべくヒロに剣術勝負を挑み、数度の試合で圧倒された。ヒロは第二法力による予知めいた感覚を活かして大佐の動きを封じ、稽古後に自身の来歴を明かした。彼は上位世界からの落ち人であり、ターメーン星系で目覚めた経緯とサイオニック能力、そしてミミと既に婚姻関係にある事実を語ったである。

セレナ大佐の求愛とヒロの拒絶

来歴を聞いたセレナ大佐は改めてヒロを配下に迎えようとし、侯爵家の後援や領地相続の利を示したが、ヒロは気ままな傭兵生活と多妻的な現状を理由に即座に断った。大佐は涙目で抗議しつつも引き下がり、互いに譲れない立場を再確認して稽古を終えたである。

晩餐会決定と警戒態勢

翌日開催と通知された伯爵家主催の晩餐会に備え、ヒロはメイを船に残して全自動防衛体制を敷き、クルーたちと警戒方針を共有した。好機と罠が交錯する中、彼らは緊張を孕みながらも次なる波乱を待ち構えたである。

#4 : 修羅と化す

旗艦マジェスティックへの招待

ヒロはミミ・エルマ・クギを伴い、イクサーマル伯爵家主催の晩餐会に出席するため旧式戦艦マジェスティックへ乗艦したである。外観は角張った年代物の巨艦であったが、内部は華美な応接空間に改装され、私兵たちは最新装備で警備に当たっていた。案内役に導かれた一行は、当主デイビット伯爵と息子ヴィンセント、そして既に到着していたセレナ大佐らと対面し、新たな出会いを祝う乾杯に応じたである。

晩餐会での裏切りと監禁

提供された食事には睡眠薬が混入されており、ヒロとセレナ側の参加者全員が昏倒したである。目覚めるとヒロは椅子に拘束され、セレナ大佐は別室で吊り下げられていた。ヴィンセントは女たちを人質にヒロを従わせようと脅迫したが、ヒロは秘められたサイオニック能力を解放し、念動力で拘束を破壊してヴィンセントの首を刎ねたである。残る私兵二名からミミたちの所在を聞き出したのち、艦内の制圧に乗り出した。

ヒロの暴走と艦内制圧

ヒロは両手の剣と念動力で私兵らを次々に殲滅し、壁さえ切り開いて最短経路を突破した。戦闘の最中、時空と運命を捻じ曲げる新たな能力が覚醒し、敵の攻撃は彼に当たらず、剣の一振りで複数の首を落とす理不尽な必殺が可能となったである。メイドロイド部隊と対宙賊独立艦隊の海兵も突入し、艦内は惨禍と化した。ヒロは途中で趣味の悪い“プレイルーム”を発見し、凍結保存された女性囚人と薬物器具を目にして激昂したである。

クギの救出行動と伯爵の尋問

一方、クギは目覚めと同時に見張りをテレパシーで無力化し、ミミ・エルマ・副官エマを解放して情報端末を掌握したである。合流後、ヒロは反逆当主デイビットを捕縛し、クギは強力な精神操作で伯爵から計画を吐かせた。反逆の内容は、ゲートウェイ工作とセレナ大佐・ヒロを戦利品にしてベレベレム連邦へ寝返り、前線星系を引き渡すという大規模叛逆であったである。

反逆者の企図と収拾への動き

デイビットが用いた薬剤によりセレナ大佐の異物除去インプラントは限界に達しており、彼女は医療チェックを要したが指揮権移譲のため艦橋制圧を決意したである。ヒロはメイが届けた装備で再武装し、クギに人員制圧を一任した。独立艦隊の海兵とメイドロイドが制圧を続行する中、ヒロとセレナ大佐は反逆の残滓を掃討し、司令所掌握と前線状況の把握に動く準備を整えたである。

#5 :一難去りて

反逆者拘束と基地掌握

セレナ大佐は旗艦マジェスティックの艦橋から演説し、反逆を企てたデイビット・イクサーマル伯爵を拘束した事実と証拠を提示して私兵を含む基地兵力を降伏させたである。後継者たるヴィンセントをヒロが討っていたため求心力は失われ、抵抗勢力は海兵隊が制圧に移行したである。

大佐の体調悪化と医療手配

デイビットから投与された不明薬剤の影響でセレナ大佐は発熱・震えに苛まれ、戦艦レスタリアスの医療体制では対処困難と判明したである。ヒロはブラックロータスのショーコ医師に受け入れを要請し、薬剤サンプル付きで大佐を搬送する準備を整えた。

デイビット尋問と叛逆計画判明

クギは催眠尋問でデイビットから全計画を聴取したである。内容はゲートウェイ妨害により帝国増援を遮断し、前線星系とセレナ大佐・ヒロを“戦利品”としてベレベレム連邦へ献上する大規模寝返りであった。証言は録取され、帝国への報告体制が組まれた。

戦闘後の疲弊と精神制御

ヒロは白兵戦で大量殺害と新たな時空・運命操作能力の覚醒により精神が暴走しかけたが、クギが事前に用意した精神経路を介して鎮静させたである。クギは危急時には第二法力を行使し、最悪の場合に恒星系崩壊を招く暴走を防ぐ役割を自認したである。

今後への懸念と小休止

ヒロは貴族殺害の法的影響を懸念したが、エルマは情状酌量とコネの活用を助言したである。ミミ・エルマ・クギとともに船内で消毒と休息を取り、クギの尻尾ブラッシングで和んだ後、ショーコ医師からの緊急呼び出しを受け、ヒロは大佐の治療支援へ向かったである。

#6: そんなエロ漫画みたいなことある?

医務室での診断と選択の提示

ショーコ医師は、セレナ大佐の症状の原因がナノマシン製剤によるものであると説明し、それが自己複製機能を持つ極めて悪質な品であることを明かした。すでにナノマシン自体は無力化され、代謝と異物除去インプラントによって残留物の処理が進められていたが、効果的なカウンター薬剤の完成には丸一日を要する見込みであった。その間、鎮静剤では耐えきれず、対応しなければセレナは死に至るという状況であった。

苦渋の決断と感情の告白

薬剤の効果により、セレナは肉体的かつ精神的に極限状態にあり、医師の説明では「男性との性行為」によってのみ衝動を一時的に抑えられるように改造されていた。傭兵としての立場やこれまでの関係を考慮しつつも、彼は最終的にセレナを救う道を選び、自ら行動する決意を固めた。

行為の余波と二人の変化

行為の後、正気を取り戻したセレナは強い羞恥と後悔を表明しつつも、彼に対する好意を自覚し始めた。一方で彼もまたセレナへの好意を認め、関係の変化を受け入れていた。セレナは自らを「面倒な女」と称しながらも、彼との関係を深化させることを選んだ。

日常への一時的な回帰と武器の再検討

セレナは周囲の仲間たちに囲まれながら一時の休息を過ごし、彼は武器のメンテナンスに取り組んだ。彼は自身の装備を見直し、戦況や敵に応じた剣の使い分けを検討した。鹵獲したヴィンセントの剣や名もなき貴族兵の剣を手に取り、その性能を冷静に比較しながら、戦術に応じた選択肢として整理した。

前線への出撃と作戦の準備

セレナの通信により、物資基地の掌握が完了し、ベレベレム連邦の攻勢が迫る中、前線への迅速な増援が必要と判断された。彼は傭兵としての報酬と危険を秤にかけつつ、実戦への投入に備えた。正規軍との戦闘が主に砲撃戦であるため、中・小型艦の出番が限られることにも留意していた。

未来への約束と個人的関係の深化

セレナは、今後の行動として帝都への同行と実家への挨拶を彼に求め、責任を明確にした。彼は渋々ながらもこれを受け入れ、皇帝への報告や戦果の正当性確保のためにも同行を決意した。やり取りの中でセレナは羞恥と怒りを入り混ぜた感情を見せたが、最終的には互いの絆を確認する形で収束し、彼らの関係がより強固なものとなったことが示唆された。

#7 : 缶詰少女

前線の膠着と遅滞戦術

帝国航宙軍はゲートウェイ破壊による増援遅延の中、対FTLトラップ艦と長距離砲撃で連邦軍を牽制し、星系内を後退しながら縦深防御を実施したである。この状況下で傭兵ヒロらは突撃艦隊へ編入され、小惑星帯での伏撃準備を命じられたである。

小惑星帯での奇襲作戦

連邦軍は指揮系統の混乱から密集陣形のまま小惑星帯へ進入し、帝国側の一斉奇襲を受けたである。ヒロのクリシュナは対艦反応魚雷と散弾砲で戦艦級四隻を行動不能にし、同調した突撃艦隊が混乱を拡大させたである。敵の統制射撃は封じられ、局地的乱戦に持ち込まれて壊滅的損害を被ったである。

敵艦隊壊滅と掃討・戦利品確保

戦闘は帝国側の大勝に終わり、損害比は一〇倍以上となったである。ヒロ隊は生存者探索と並行して兵器・物資を鹵獲し、多数の光学兵器やエネルギーパックを回収したである。その後、遅滞戦で奪還した領域を確保しつつ増援艦隊を迎え、クリーオン星系に後退して修理と補給に入ったである。

缶詰少女の発見

戦場残骸の探索中、生命反応を示す大型円筒容器を回収したである。容器を開封すると、全身にチューブと端子を挿入された白褐色の小柄な少女が封入されていたである。メイは接続ポートを通じて電子戦を制圧し、少女を医療ポッドへ移送したである。

少女の医学的評価と政治的波紋

ショーコ医師は少女を連邦製生体指揮ユニットと断定し、臓器・筋骨の発育を阻害された状態で余命一年未満と診断したである。救命には高性能医療ポッドと五百万エネル相当の改修ナノマシンが必要と提示されたである。セレナ大佐は証拠として帝国へ引き渡す意向を示したが、連邦が存在を否認する可能性が指摘され、最終的にヒロが暫定保護者として治療を負担する方針となったである。

戦果集計と今後の展望

クリシュナは戦艦級四隻撃破を含む多数の戦果で八千万エネル近い報酬を得たである。イクサーマル伯爵は反逆罪で帝都へ送致され、物資基地の指揮はセレナが継続したである。ヒロは獲得資金の使途として母艦増強や居住拠点購入を検討しつつ、缶詰少女の治療と連邦の非人道行為の追及に備えることを決意したである。

エピローグ

戦後の休息とセレナの通い詰め

任務完了後、ヒロは補給のためブラックロータスをクリーオン星系へ帰港させ、セレナは暇を見つけては艦に通い酒宴や甘えを繰り返したである。クルーに負傷はなく艦も無事であったため、ヒロは今回の仕事を無事と評価したである。

帝都同行の確約

イクサーマル伯爵家に斬撃を振るった件と大戦果の勲章授与に伴い、ヒロはセレナの後任着任後に帝都へ同伴する約束を受諾したである。セレナは婚姻を視野に実家への挨拶まで求め、公私混同に戸惑うヒロに執着を見せたである。

生体指揮ユニットの治療と保護

ショーコ医師とメイは捕獲した少女型生体指揮ユニットの治療に専念し、延命には高額のナノマシン処置が必要と判断したである。連邦が存在を否認した場合、ヒロに保護義務が発生する可能性が提示され、ヒロは医療費負担と彼女の庇護を決意したである。

補給業務と勲章準備

セレナは物資集積基地で後方補給の責任者となり多忙を極め、ヒロは契約外として補給作業を断りパトロールに徹したである。大勝の戦果によりクリシュナ隊は約八千万エネルの報酬と新たな勲章授与が確定したである。

後任着任と帝都への転進

帝都から新任指揮官が到着し、セレナは任を引き継いで帝都帰還の途に就いたである。ヒロはクルーとともに随行し、セレナ・クリス両家の板挟みを予感しつつも新たな外交と裁定に臨む覚悟を固めたである。

同シリーズ

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その他フィクション

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小説「水属性の魔法使い 第三部 東方諸国編1」感想・ネタバレ

物語の概要

ライトノベル『水属性の魔法使い』は、異世界へ転生した青年・涼を主人公とするファンタジー作品である。本書はシリーズ累計70万部突破の第三部開幕編で、涼と剣士アベルが魔人ガーウィンとの戦いの余波で、遥か東方諸国へと強制転移させられる──そこから漂流しながら王女亡命の任務を引き受け、中央諸国へ戻るための旅路が始まる冒険譚である。
ジャンルは異世界ファンタジーであり、魔法、剣術、冒険、そして政治的陰謀が絡む重厚な世界観が展開される。

主要キャラクター

  • :異世界転生者。水属性の魔法使いであり、隠しスキル「不老」を備えた最強クラスの魔法使いである。
  • アベル:天才剣士で、実は国王。涼と行動を共にし、彼のバディとして物語を牽引する。

物語の特徴

本作は“水属性”魔法を軸に、マイペースかつ上昇志向の主人公によるスローライフとシリアスな戦闘・陰謀が融合している点が際立つ。涼の気ままな魔法エピソードと、アベルとの“王と魔法使い”コンビによる政治絡みのドラマが他作品との差別化要素である。また、“漂流”、“亡命”、“異文化交流”など、第三部ならではの新しい舞台設定も読者を引きつける魅力となっている。

書籍情報

水属性の魔法使い 第三部 東方諸国編1
著者:久宝忠 氏
イラスト:天野英 氏
出版社:TOブックス(TOブックスノベル)
発売日:2025年3月19日
ISBN: 9784867945100

gifbanner?sid=3589474&pid=889458714 小説「水属性の魔法使い 第三部 東方諸国編1」感想・ネタバレブックライブで購入 gifbanner?sid=3589474&pid=889059394 小説「水属性の魔法使い 第三部 東方諸国編1」感想・ネタバレBOOK☆WALKERで購入 gifbanner?sid=3589474&pid=890540720 小説「水属性の魔法使い 第三部 東方諸国編1」感想・ネタバレ

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あらすじ・内容

涼とアベルの強制転移先は――遥か遠くの東方諸国!?
最強水魔法使いの気ままな冒険譚、第三部開幕!
シリーズ累計60万部突破!(電子書籍含む)
涼とアベルは魔人ガーウィンとの死闘の末、暴走した魔力に巻き込まれて転移させられてしまった。ついた場所は常夏の亜熱帯、誰もいない砂浜!? なんとか辿り着いた最寄りの街で判明したのは、ここが東方諸国と呼ばれる場所で、中央諸国へ戻るには別の大陸を経由する長旅になるということだった。アベルは国王だ。一刻も早く王国に帰らなければならないが、遠い異国からの帰還はあまりに無謀。商人に海を渡る手助けを求めるが、引き換えにと持ちかけられた仕事は、王女様の亡命の手助けで──?
愛する仲間の元へ帰るため、二人の漂流譚が始まる!
最強水魔法使いの気ままな冒険譚、第三部開幕!

水属性の魔法使い 第三部 東方諸国編1

感想

涼とアベルが転移魔法によって見知らぬ大陸へと飛ばされてしまう、波瀾万丈な物語。
魔人ガーウィンとの激闘の末、暴走した魔力に巻き込まれてしまった二人が辿り着いたのは、常夏の亜熱帯の砂浜だった。
そこから始まる、故郷への帰還を目指す二人の珍道中が、今作の大きな魅力となっている。

第一部を彷彿とさせる展開に、思わず笑みがこぼれてしまった。
あの頃と比べて二人は確かに偉くなった。
しかし、その言動は変わらず、どこか抜けているところが引きつける。
最強の魔法使いと剣士であるはずなのに、どこか憎めない、そんな涼とアベルのキャラクター性が、この作品の核となっていると感じる。

物語は、砂浜への転移から始まる。
氷の潜水艦を製作し、海底に眠る島を探索したり、不在中の王国や周辺国との連絡手段を準備したりと、二人が通った後の後継には目を見張るものがあった。
コマキュタ藩王国マニャミャに到着し、末弟バンヒューと出会う場面や、『蒼玉亭』でのやり取りも、物語に彩りを添えている。
生存連絡を試みる二人の姿に、故郷への強い想いが感じられ。
それを受け取った故郷の者達の安堵にもホッとしたが、彼女たちの出番はそれだけ。

物語は、スージェー王国第六イリアジャ姫の亡命を手助けするという展開へと進む。王都ワンニャへの移送を『蒼玉商会』に依頼したり、次男バンソクスの護衛を依頼したりと、物語はますます複雑さを増していく。
バシュテーク号とダオ船長、ロックデイ提督、モンラシュー司令の登場は、物語に緊張感をもたらし。
連邦内戦、姫と護国卿カブイ・ソマルの会談、そして姫の帰還と即位式で、クライマックスを飾る。
ズルーマやプラボといったキャラクターも、物語に深みを与えており。
最終的に、二人は自由都市クベバサへと辿り着く。
全体を通して、『水属性の魔法使い 第三部 東方諸国編1』は、異世界での珍道中を描いた、笑いあり、冒険ありのエンターテイメント作品であった。
涼とアベルの活躍はもちろんのこと、個性豊かなキャラクターたちが織りなす人間ドラマも、見逃せない魅力の一つであり。
故郷への帰還を目指す二人の旅は、まだまだ続く。今後の展開が楽しみでならない。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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展開まとめ

プロローグ

海岸での目覚めと状況確認
涼は砂浜で目を覚まし、アベルと共に見知らぬ海辺にいることを確認した。身につけていた装備類や魔道具に異常はなく、状況把握に努めた。アベルは困惑していたが、涼は魔人ガーウィンの魔力の暴走による空間転移の可能性を指摘した。二人はどこか遠くに飛ばされたと理解し、元の場所へ戻る方策を考える必要に迫られていた。

海の脅威と水の魔石の価値
涼はこの海を越えるには避けがたい戦いがあると予見し、海中の魔物の強大さと水属性魔法の無力さを論じた。特にクラーケンの存在が警戒され、水中戦における戦術的不利が強調された。水の魔石は希少で高価であり、涼が身に着けるイヤリングに使われたそれも王立錬金工房でも年に数個しか手に入らない代物であると語られた。

試作の日々と錬金術の応用
涼は海中戦に備え、氷製の潜水艦「ロンド級二番艦ニール・アンダーセン」を錬金術によって完成させた。これは魔法制御を外部から奪われない構造であり、失敗に終わった一番艦ロンドとは異なる特徴を持つ。潜水艦の内部は二人乗りで設計され、操縦や兵装起動が可能である。潜水・浮上の機構には圧縮空気と錬金術を用い、浮力や水圧対策も施された。

海中進行と魔物除けの工夫
二人は潜水艦に乗り込み、海中の探索を開始した。氷製の船体は視界を遮らず、アベルはその美しさに感嘆した。艦には西方諸国で学んだ水属性の魔法式による魔物除けが刻まれており、一般的な魔物の接近を防いでいた。一方、強大な個体には効果が薄く、クラーケンの出現が予期されていた。

クラーケンとの戦闘と勝利
クラーケンとの交戦が始まり、水属性魔法は通用せず、魔法制御を奪われる事態となった。そこで涼は錬金術による外装を起動し、防御を維持しながら機動戦に突入した。ニール・アンダーセン号は三次元機動を駆使し、クラーケンの触腕をかわしつつ接近し、魚雷や氷の槍による攻撃で損傷を与えた。最終的に船体からの全方位攻撃と捕獲装置により、クラーケンから魔石を奪い、撃退に成功した。

戦いの終結と決意
クラーケンは魔石を失って撤退し、涼はかつて失われた一番艦ロンドの仇を討ったと宣言した。アベルはこの潜水艦と涼の錬金術に感銘を受け、二人は新たな展開を見据えていた。涼はこの戦いを通じて錬金術の可能性に確信を深め、さらなる構想へと歩みを進める意志を固めたのである。

海底に眠る島

クラーケン討伐後の安堵と新たな懸念
完全勝利を収めた涼とアベルは、安堵と空腹に包まれたが、アベルはクラーケンが集団で行動する可能性に言及し、新たな懸念が生まれた。涼はクラーケンから得た大きな青い魔石を見せ、戦果の大きさを示した。その後、魚を捕まえるためにベイト・ボールを探す過程で、アベルが沈没船らしきものを発見し、調査に乗り出すこととなった。

海底に沈んだ空の船の正体
海底に沈んでいたのは、空に浮かぶべきサントゥアリオの巨大艦であり、ゴールデン・ハインドで突入した旗艦と同規模であった。アベルと涼は、紫髪の空の民についての知識を再確認し、敵の情報を得る重要性を共有した。浮遊の原理に関心を持つ涼は、魔石の構造や特性に興味を抱いた。

光ケーブルによる海底照明と調査準備
涼はニール・アンダーセン号から光ケーブルを伸ばし、海面から光を集めて海底を照らした。これは魔法ではなく、光ファイバーの原理を応用した科学技術であった。照らされた艦は「島」と表現されるほど巨大で、至る所にタコのような生物が付着していた。二人はそれが魔物か否かに留意しながら、慎重に島への侵入を決めた。

艦橋への突入と潜水服の使用
ニール・アンダーセン号を艦橋に接舷させた後、涼は氷の潜水服を生成してアベルと共に船外へ出た。島内は長年の海水による腐食で情報の取得は困難であったが、涼は錬金術でも情報の復元が困難であると認めたため、内部の探索を継続することにした。

会議室と沈没船の内部構造の調査
島の内部構造は、かつて突入した別の旗艦と類似しており、第一会議室なども存在していた。扉の多くは開かず、設備も破損していたが、涼とアベルは情報や戦利品の取得を期待して探索を続けた。金銭的なお宝は空の民が地上を対等と見ていなかった点から、積載されていない可能性が高いとされた。

弾薬庫の発見と武装の確認
探索の中で発見された広間には大量の金属製の筒が保管されており、涼はそれを砲弾と認識した。これは島が物理攻撃手段も有していた証拠であり、今後の戦いに向けて有益な情報とされた。アベルも島の武装に対する認識を改め、今後の戦略に反映する意識を強めた。

島の墜落要因と海中戦の困難
島がクラーケンの攻撃により沈んだ可能性について検討がなされ、魔法や砲撃が通用しない海中戦の困難さが改めて浮き彫りとなった。涼は新たな防御魔法の発想を語ったが、アベルからは既存の氷の壁で十分ではないかとの指摘も受けた。

死と食物連鎖に対する二人の見解
島内には遺体の痕跡がなく、魔物や魚によって処理された可能性が示唆された。アベルは命の循環としての受け止めを示したが、涼は死生観の違いに戸惑いを見せた。二人の価値観の差は明確であったが、互いを否定することはなかった。

最深部で発見された動力炉
島の最下層に到達した涼とアベルは、海水のない巨大な部屋を発見した。その中央には天井まで届く巨大な装置があり、内部には火・水・風・土の四属性の巨大魔石が同時に稼働していた。涼はこれを動力炉と認識し、空の民の錬金術技術が極めて高度であることを実感した。特に複数魔石の同時稼働は極めて難しく、サントゥアリオの技術水準の高さを証明するものであった。

戦闘ゴーレムとの交戦と情報収集
突如として起動した一体のゴーレムが出現し、アベルはこれと交戦する。目的は戦力分析であり、王国軍が将来対峙する可能性を見越した情報収集であった。剣と盾を巧みに扱うゴーレムに対し、アベルは潜水服の防護に支えられながら、力と技の特性、関節の弱点などを見抜いていく。途中、両肩から火属性魔法を発射する能力も判明し、戦闘能力の多様さが明らかとなった。

機体の自己破壊と技術的分析
アベルの投擲によって魔法発射機構を破壊され、ゴーレムは機能停止寸前に自壊した。この自己破壊機構からも、機密保持の徹底と技術の重要性が示唆された。ゴーレムが地上制圧用兵器である可能性も指摘され、空の民の本格侵攻を予感させる。動力炉の四属性魔石も放置されることになり、環境への影響やリスク回避が優先された。

大ダコとの遭遇と脱出戦
島から脱出しようとした二人の前に、巨大な大ダコが出現する。島内部での戦闘音が原因で覚醒したと推測され、さらに後方からはタコの群れの接近が確認された。涼はローリング突撃を選択し、錬金外装と氷の槍によって敵を牽制、突破口を開いた。墨の中での奇襲やソナーによる索敵を活用し、見事な操艦で包囲を脱した。

砂浜への帰還と食事の喜び
無事に出発地点の砂浜へ戻った二人は、帰路で捕獲したベイト・ボールの魔物を塩焼きにして空腹を満たした。イワシ状の魔物から取り出された小さな魔石は、『魂の響』と同等のものと判明した。魔物の方が動物より美味であるという共通認識も語られ、涼はその理由を魔力の浸透にあると考察した。

森の探索と新たな発見
食後、森の中の様子を確認するために涼は上空へ飛び、森の奥に街らしきものを発見した。その結果、自分たちが島ではなく半島の先端にいることが判明する。涼は街に近づくことに消極的だったが、アベルは帰還手段や位置把握のために訪問を主張する。結局、二人の本質が冒険者であるがゆえに、街への探索を避けることはできなかった。

間章 残された人々

消失直後の混乱と対応
魔人大戦終結直後、涼とアベルが突然姿を消した戦場では、一時的な混乱が広がった。だが、最初に動いたのは天才錬金術師ケネス・ヘイワード子爵であった。彼は即座にアベルの識別タグを使って位置を探索し、二人が転移したと推測。通信手段として涼が所持する「魂の響」を活用する可能性を見出し、王都への帰還と通信機器の準備に取り掛かった。

王妃とセーラの決意
王妃リーヒャは、セーラの慰めと共に立ち直りを見せ、国を守る決意を固めた。二人は空位となった王と筆頭公爵の不在を埋めるべく、政務と防衛に取り組む覚悟を共有する。王国周辺の脅威を想定し、最初の対応として宰相ハインラインの助力を求めることが合意された。

王国騎士団とワルキューレ騎士団の復活
王国騎士団では、団長ドンタンが速やかに指揮権を明示し、王妃リーヒャの指示に従う体制を構築。これにより騎士たちは混乱を脱し、組織として再起を図った。ワルキューレ騎士団でも、団長イモージェンが親友ミューの叱咤で立ち直り、副団長や幹部の支援を得て士気を取り戻す。一方、救護隊長スカーレットは未だ涼の喪失に動揺を見せるが、徐々に平常心を取り戻していった。

王国外の反応と混乱
援軍として参戦していた勇者ローマンと魔王ナディアも、涼とアベルの消失に驚愕するが、ナディアは直感的に二人が無事であると感じていた。また、魔人マーリンは転移に使用された謎の棺桶の存在に困惑し、涼が説得した相手の協力を得られず西方への帰還を断念した。

王都での再構築とセーラの就任
王都ではケネスが「中継器」と魂の響を接続する準備を進めていた。やがてリーヒャは、セーラにかつてリチャード王しか就かなかった「総騎士団長兼筆頭騎士」の任命を打診。これによりセーラは王国軍の最高指揮権を持つこととなり、王国の求心力は保たれた。

連合と他国の動向
一方、連合ではストラ侯国が盗賊追撃を口実に王国領へ侵攻。オーブリー執政は、王国の罠に嵌ったことを即座に察し、宰相ハインラインの謀略を見抜いた。目的は王国の防衛力を示すことであり、ストラ軍は短時間で包囲殲滅された。二千人超の捕虜がレッドポストに移送され、王国の政治的勝利が確定した。

戦後処理と軍制強化
セーラは王国軍の練度向上を目指し、王国騎士団の訓練増加を提案。騎士団内でも若手騎士ザックが過剰な提案をするなど、熱意ある声も上がった。また、セーラはかつて指南したルン騎士団の訓練法を共有し、継続的な強化策として六十分連続戦闘などを導入していたことが明かされた。

王都での静かな異物と未来の兆し
王都には、マーリンの後をついてくる棺桶が定着しつつあった。その正体や機能は不明なままだが、涼の存在が様々な形で王国に影響を与えていることを象徴していた。魔王ナディアの存在も、王国の抑止力として重要視され、マーリンと共に王都に滞在することとなった。

こうして、筆頭戦力を失ったナイトレイ王国は、王妃・セーラ・宰相ハインラインを軸に体制を再構築し、外敵への備えと内政の安定化を進めていくこととなった。

最初の街へ

ジャングルの踏破と街への到着
涼とアベルは森を抜けて一時間後、ついに街の入口へと到達した。街には城壁が存在せず、中央諸国との文化的相違が明らかとなる。平和な環境下であることが城壁不要の理由とされ、二人はその安穏な様子に安堵した。

街中での食事と地図の重要性
地図を見つけ次第すぐ出発するという宣言とは裏腹に、二人は現地の炒めご飯の美味しさに舌鼓を打ち、店主との身振り手振りでの交流を楽しんだ。アベルは所持金がなく、支払いは涼が担当する形となった。貨幣価値が共通であることも、文化圏を越えた利便性を実感させた。

現地少年バンヒューとの出会い
現地語が通じない中、中央諸国語を話す少年バンヒューが現れ、二人を宿『蒼玉亭』へと案内する。宿には周辺地図があり、宿泊客には閲覧可能という方針から、二人はそのまま宿泊を決定する。ウェルカムドリンクとして出されたブレンドコーヒーの完成度に、涼もアベルも感嘆した。

周辺状況の把握と帰還の困難
街の位置が中央諸国から遠く離れていることが周辺地図により判明し、即時帰還が困難であると理解された。涼は国元への連絡の必要性を主張し、『魂の響』の改良によって一方通行の伝言送信機能を実装する。

錬金術による通信と王都への伝達
涼の調整により、アベルが王都へ向けた伝言を送信し、王都ではケネスが中枢通信機で受信に成功。国王の無事が確認され、王都は歓喜に包まれた。

翻訳機の購入と現地適応
二人は言語の壁を越えるため、錬金道具店で「翻訳機」を購入する。これにより、会話・読み書き・視認文字の即時翻訳が可能となり、現地文化への対応力が一気に向上した。

翻訳機の解析と翻訳不能の障壁
涼は翻訳機の内部構造を解析するが、記述が未知の文字であったため解読に至らず、改めて言語の壁の高さを実感する。一方、宿に設置された中央諸国語の文庫本を手に取って、読書を楽しむ時間も生まれた。

王道展開を夢見る涼と現実主義のアベル
街の港から都への船便を待つ中、涼は海賊による襲撃という「王道展開」を期待するも、アベルは現実的な軍備と秩序を語り、その可能性を否定した。だが涼はなおも、私掠船や歴史的背景に夢を馳せ、物語的展開への淡い期待を抱き続けるのだった。

イリアジャ姫

雨上がりの異変と飛行船の墜落

雨が上がると同時に、マニャミャの街中に非常警報の鐘が鳴り響いた。住民が広場に集まる中、涼とアベルも騒動の中心である港へと足を運び、そこで墜落した巨大な飛行船を目撃した。地上には存在しないとされる飛行船の技術に驚いた二人は、自分たちが東方諸国にいると確信した。

飛行船の正体と第六王女の亡命

墜落したのはスージェー王国の王室専用船であり、乗っていたのは旧王家の第六王女イリアジャ姫であった。スージェー王国では三ヶ月前に第一海軍卿カブイ・ソマルが反乱を起こし、国土の九割を制圧。イリアジャ姫は南部タマコ州に視察中であったために難を逃れ、現地勢力の支援を受けて三ヶ月にわたり抵抗を続けていたが、ついに脱出を決断し、亡命先としてマニャミャを選んだ。

マニャミャ行政府の苦悩と政治的緊張

マニャミャは藩王直轄地であり、行政長官レメンゲサスは都の指示に従い、姫ら亡命希望者の受け入れ対応に追われた。だが都からの指示は曖昧であり、「移送をせよ。方法は任せる」との内容に、現場は混乱する。マニャミャに百人以上を一度に運べる船はなく、分乗を要求すれば護衛たちの反発は必至であった。

イリアジャ姫一行の警戒と宿泊施設への収容

イリアジャ姫と供の者百名は、街で最大規模の宿『麗しの泉亭』に収容された。宿の周囲は守備隊三百名によって厳重に警備され、街全体が緊張感に包まれる。宿泊客として滞在する涼とアベルは、この騒動が今後の行動に影響を及ぼすことを懸念した。

政治判断と現場の葛藤

都の決定に従わざるを得ない立場にありながらも、レメンゲサス長官は指示の現実性のなさに憤りを抱いた。部下である首席補佐官ニージュも同様であり、都の官僚たちが数字しか見ていないことへの警鐘を鳴らす。最終的に、現場の判断で唯一の解決策として蒼玉商会への協力要請が決定されるが、それは新たな火種ともなりうる政治的賭けでもあった。

蒼玉商会との交渉と決断

行政長官レメンゲサスは、亡命希望者百名の一括移送のため、蒼玉商会長バンデルシュに唯一の大型船バシュテーク号の提供を要請した。バンデルシュは、護衛として三百名の海兵と二十艘の護衛艦の派遣を条件に了承したが、万一の事態に備え、自らの商会員の安全を最優先とすることを強く主張した。その責任を重く受け止めたレメンゲサスは、自身と一族の名誉に懸けて船の防衛を誓った。

家族会議と次男バンソクスの同行決定

蒼玉亭に戻ったバンデルシュは、四人の子どもたちを集め、現状と依頼の危険性を説明した。次男バンソクスは自ら船に同行することを申し出、船員たちの不安を和らげるため、護衛隊長として共に乗船する覚悟を示した。彼は王女の保護よりも船員の安全確保を優先事項とし、可能な限りの準備と人員の確保を求めた。

涼とアベルへの依頼と交渉成立

バンソクスは、宿泊中の涼とアベルの戦闘力を高く評価し、彼らを護衛に雇うことを提案。バンデルシュ商会長は二人に詳細を説明し、報酬として金貨百枚+成功報酬、さらに帰還支援を約束した。涼は条件として、蒼玉亭特製ブレンドコーヒーの大量積載を求め、交渉は無事成立した。

情報提供と帰還経路の確認

バンデルシュは、涼とアベルに東方諸国から中央諸国への帰還ルートについて概要を伝えた。目指すべきは大陸南端のゲギッシュ・ルー連邦であり、そこから西への出口を経て中央諸国へ向かうのが現実的な行程であった。情報は乏しいが、蒼玉商会の協力を得られることで、旅の見通しが立った。

スージェー王国の正式抗議と情勢の緊迫

スージェー新政府がイリアジャ姫の引き渡しを正式に要求し、藩王国政府は亡命者として受け入れた上で、都での審問を理由に即時引き渡しを拒否した。この発表により、姫の都移送が敵に知られ、襲撃の可能性が飛躍的に高まる。バンデルシュは報酬の増額を申し出、両者は改めて合意に至った。

出発準備と街での補給

出発を控えた涼とアベルは、蒼玉商会の費用負担で必要装備の補修や錬金術書の購入を行った。アベルの革鎧は職人により魔法・錬金術的技術で完璧に修復され、涼は専門書店で興味深い書籍を入手した。二人はその待遇と対応に満足し、船旅への準備を整えた。

出航と新たな仲間たちとの邂逅

出航日、港でバンソクスおよび船長ダオと合流した涼とアベルは、巨大な三層甲板船バシュテーク号に乗船した。両者の人柄や職人気質に親しみを感じた二人は、正式な護衛任務を開始する。そこへイリアジャ姫一行が到着し、港には緊張が走る。

任務の性質と涼の小さなこだわり

戦闘時のみの任務であることを告げられ、涼は安堵した。移送艦隊は旗艦ロコモコ号に随行する形で出港する予定であり、任務の実態は極めて危険であるが、涼とアベルは状況を理解した上で快諾した。蒼玉亭のコーヒーが船に積まれたことにも満足し、船上でのひとときを楽しむ余裕も見せた。

冒険者の不在と多島海の平和

多島海地域では冒険者の存在がほとんどなく、陸地の密林と魔物の少なさ、海上交通の発達がその背景にあると語られた。冒険者に似た商会員や船員たちとの交流の中で、涼とアベルは懐かしさと平和な土地柄への感慨を覚えた。

護衛依頰

護衛艦隊とバシュテーク号の構成

涼とアベルは、バシュテーク号上で王女イリアジャ一行に護衛として紹介された。乗船者は船員40名、王女一行100名、マニャミャ駐留海軍海兵隊100名、蒼玉商会護衛隊30名、さらに涼とアベルの二人を加え、総勢約300名に及んだ。荷の積載量も多く、船の安定性が保たれていた。

海戦様式と風属性魔法の優位性

涼は地球における帆船の歴史と比較しつつ、ファイ世界の船舶と海戦の在り方を再考した。特に風属性魔法の存在により、帆船は常に望む方向へ航行可能となっており、海戦も大砲の存在を伴わない接舷戦や白兵戦が主であった。艦隊陣形はバシュテーク号を中心とした輪形陣が採られ、その構成は地球の空母打撃群にも似ていた。

海兵隊との作戦会議と航路説明

移送開始後、バシュテーク号上甲板にて海兵隊長ラジャトンによる作戦会議が開かれた。イリアジャ姫や執事長ロンク、バンソクスらと共に、涼とアベルも参加した。作戦では四日目・十日目・十四日目に襲撃の可能性が高いとされ、二十日間の航海の間は警戒が必要と確認された。ラジャトンは落ち着いた指揮官であり、会議は円滑に進行した。

王女との交流と距離の縮小

作戦会議後、イリアジャ姫はロンク執事長と共に涼とアベルの元を訪れた。他者と距離を感じるという姫の率直な悩みに対し、二人は気兼ねなく接し続けることを約束し、姫は久しぶりに心からの笑顔を見せた。アベルの自己犠牲的な言動と涼の軽妙なやり取りが姫の心を和ませ、三者の信頼関係が深まっていった。

船上の日常と魔法の応用

上甲板では、涼が読書や魔法の研究に勤しみ、アベルは剣の鍛錬を行っていた。涼は魔法によって椅子やテーブルを生成し、アイスクッションの開発に成功した。アベルによる座り心地の試験も問題なく、船上生活の快適さが向上した。

バンソクスとの交流と水属性魔法の利便性

護衛隊長バンソクスが涼のコーヒーに誘われて加わり、蒼玉亭特製ブレンドを楽しみながら、水属性魔法の利点について語り合った。バンソクスは父バンデルシュも水属性使いであると明かし、涼と意気投合する。水属性魔法は真水を生成できることから商業的優位性が高く、荷の積載量を増やせる点でも利を得ていた。

魔力感知と涼の制御技術

話題は魔力の感知へと及び、涼は「完全シャットアウト」を習得しており、魔力の漏出をゼロにできると語った。この技術は中央諸国の詠唱魔法体系とは異なり、涼独自の修練によるものであった。また、強力な魔法使いほど魔力の圧力が周囲に漏れることも話題となった。

再びの王女来訪と親密な交流

イリアジャ姫が再び訪れ、涼とアベルは茶会に誘った。アイスクッションの快適さに姫も驚き、涼はアベルの犠牲によって完成したと冗談交じりに語った。和やかなやり取りの中で、姫は二人の人柄に改めて親しみを覚える。また、中央諸国から来た理由を問われた際、二人は複雑な事情から魔法の暴走で転移したと説明を濁すが、姫は深く追及せず、温かく受け入れた。

想定を外れた静寂と疑念

十一日目まで、移送艦隊はスージェー王国からの襲撃を受けることなく順調に航行していた。四日目・十日目と、最も襲撃の可能性が高いと予測されていた日を超えても平穏が続いたことで、緊張は緩みつつあった。艦隊内ではコーヒーを囲んでの雑談が続き、警戒の空気は徐々に緩和されていった。

現地語の習得と錬金術の進展

アベルが多島海語を習得していたことが判明し、涼は刺激を受けて学習意欲を新たにした。また、錬金術の研究においては、アベルの革鎧修復の技術を理論的に理解し、再現可能性を見出したことで達成感を得た。実用には更なる研鑽が必要であったが、涼は自信と希望を持って取り組みを継続した。

静寂の破れと敵艦隊の出現

十五日目、予測されていなかったタイミングで艦隊に鐘の音が響き、ついにスージェー王国の襲撃が始まった。現れたのは、既存の帆船とは全く異なる「ガレアス船」と呼ばれる古式の軍船であり、機動性に優れ、ラム(衝角)を用いた攻撃で護衛艦を撃沈し始めた。

包囲陣形と戦術的劣勢

スージェー王国の艦隊は、ガレアス船による正面攻撃に加え、通常の帆船を側方から回り込ませて移送艦隊の背後を制圧する戦術を展開した。これにより移送艦隊は前後を挟まれ、包囲される形となった。涼はこの戦術を「玉ねぎ剥き」と形容し、外縁から順に各艦を沈め、最終的に中心のバシュテーク号を狙う意図を明確に見抜いた。

姫の登場と士気の回復

混乱が広がる中、イリアジャ姫は自ら船首に現れ、危険を顧みず全乗員の前に姿を現した。その行動は、味方艦の乗員たちの士気を一気に高め、歓声が艦内に響き渡った。涼は姫を防御するために20層のアイスウォールを生成し、彼女の安全を確保した。

王の姿勢と支持の本質

アベルは、姫の行動を「王の姿に従う」という言葉で肯定し、自らも王である立場からその意味を理解・賞賛した。姫の姿勢は、士気を回復させる強い象徴として、全艦隊の結束力を高める効果をもたらした。

旗艦強襲

三度目の突撃と艦隊の損耗

スージェー王国海軍のガレアス船が二度目の突撃を敢行し、移送艦隊の護衛艦がさらに四隻沈没した。既に合計八隻が沈み、一隻が接舷戦闘中であり、無傷の艦は十一隻にまで減少していた。しかし、イリアジャ姫の船首登場により士気は高く、沈没艦の乗員もバシュテーク号へ引き上げられて戦意を維持していた。

旗艦の特定と強襲作戦の決断

涼は敵艦の中から金色の船首像を備えた艦を旗艦と見抜いた。指揮官排除のため、バシュテーク号から敵旗艦まで氷のトンネル《アイスゲート》を作成し、アベルと蒼玉商会護衛隊が突撃する体制を整えた。敵艦は反応が遅れ、氷の橋による突撃を阻止することができなかった。

バシュテーク号への逆襲と戦闘

突撃とほぼ同時に、スージェー王国艦隊の後方六隻から兵士が飛翔してバシュテーク号に強襲上陸した。空から飛来する敵に対し、マニャミャ海兵隊やダオ船長が応戦したが、精鋭部隊である敵兵の猛攻に押され気味となる。涼は船尾の船員と姫を保護するため、氷の壁《アイスウォール20層》を展開し守備を固めた。

旗艦上での死闘とモンラシューの迎撃

アベルとバンソクス隊は敵旗艦に突入し、中央海軍直属の精鋭・第一突撃団と交戦した。中でも指揮官モンラシュー司令は、圧倒的な連撃速度を誇り、アベルと剣戟を繰り広げた。しかし、アベルの技量は防御においても群を抜いており、戦闘は徐々にアベル優位に傾いていった。

ロックディ提督の魔法介入と反撃

戦況が不利になったことで、艦隊指揮官ロックディ提督が介入。魔法による石の槍でアベルに重傷を負わせた。腹部と足に深手を負ったアベルは一時的に行動不能となるが、隙をついて反撃し、ロックディとモンラシューの両者に致命傷を与えた。旗艦への攻撃は成功し、敵の指揮系統に重大な打撃を与えることとなった。

正体の露見と動揺

アベルがロックディにとどめを刺そうとした瞬間、モンラシュー司令がその正体が艦隊の提督であることを暴露した。ロックディは、護国卿の右腕として国家の要を担う人物であり、死んではならない存在と語られた。この暴露によって、ロックディ提督の命運と、戦局に新たな展開が生まれることとなる。

停戦の成立と旗艦制圧の帰結

旗艦に掲げられた停戦の旗により、スージェー王国海軍全体へ停戦が伝わり、戦闘は終息に向かった。アベルは重傷を負いながらも戦闘を制し、艦隊指揮官ロックディ提督を降伏させた。護衛隊長バンソクスと共に、氷橋を用いてロックディをバシュテーク号へと連行した。ロックディはアベルから特製ポーションを受け取り、重傷を癒すことに成功。さらに、アベルの許可により、重傷の突撃団司令モンラシューにも治癒が施された。

降伏艦隊の取扱いと戦後処理

スージェー王国の襲撃艦隊は形式的に降伏したが、その扱いに移送艦隊は頭を悩ませた。生存した護衛艦は11隻で、そのうち2隻は航行不能に近く、実質的に機能するのは9隻とバシュテーク号のみであった。完全に無傷な襲撃艦隊の12隻に随伴されることを懸念し、最終的には3隻のみを同行させ、残りの14隻は自主的にコマキュタ藩王国の港へ向かわせた。

捕虜ロックディ提督との交流と情報戦

翌日、ロックディ提督はアベルと涼の元を訪れ、氷の椅子に座ってコーヒーを共にした。会話の中で、涼が氷橋を架けた魔法使いであることを見抜かれたが、提督も自らが魔法を用いた事実を認め、互いに敬意を交わした。また、ロックディは指揮官であるモンラシューを守るため魔法を放った経緯を語った。

涼はロックディに「スージェー王国の落としどころ」について尋ね、提督は「切り捨ての可能性」について仄めかしたが、最終的にそれは虚偽であると認めた。

護国卿カブイ・ソマルへの忠誠と人物像

ロックディ提督は、スージェー王国の新体制を築いた護国卿カブイ・ソマルについて、深い尊敬と忠誠の念を示した。提督にとっては命を捧げるに値する存在であり、涼もその心情に共感を示した。

涼とアベルの会話から浮かび上がる政体論

戦後の読書と雑談の中で、涼とアベルは王政・共和制の違い、君主制の理想と現実について語り合った。イリアジャ姫がスージェー王国で民衆や軍に人気があった背景や、反乱前後の王政内部の腐敗が言及され、涼は共和制の可能性と難しさについて考察した。

イリアジャ姫の命の扱いと真の狙いの疑念

涼は、戦闘中にイリアジャ姫が魔法や遠距離攻撃の標的にされなかったことに着目し、「生け捕り」が本来の目的であった可能性を指摘した。公開処刑など象徴的手段による権威誇示が想定される中、アベルはそのような残酷さに嫌悪を示した。

移送艦隊の都ワンニャ到着

戦闘から二十一日後、移送艦隊はコマキュタ藩王国の都ワンニャに到着した。戦闘後に大きな問題は発生せず、目的地に無事到達した。

王都ワンニャ

軍港への到着と見送りの場面

移送艦隊のバシュテーク号は、都ワンニャの広大な軍港に到着した。イリアジャ姫は船員や海兵たちに見送られながら上陸し、バンソクスやダオ船長、アベル、涼らに感謝の言葉を述べた。彼女は今後の不安を口にしつつも、再会の可能性を尋ね、二人はそれを肯定的に受け止めた。

商会での報酬と滞在手配

アベルと涼は、バンソクスとダオ船長に連れられて、蒼玉商会ワンニャ支店を訪問した。支店長バントンは若きながらも有能な人物であり、護衛任務の完全成功により、報酬は一人金貨三百枚と倍額支払われた。さらに、大陸渡航までの間、宿泊や生活支援も蒼玉商会によって全面的に手配されることとなった。

渡航延期の事情と情勢変化

大陸渡航の時期について、支店長バントンから説明があり、南端のゲギッシュ・ルー連邦で内戦が発生したことが判明した。そのため、商会としても状況を見極めた上で、渡航の判断をすることになると伝えられた。

コマキュタ藩王国の政治的動揺と会議

一方、コマキュタ藩王国では、イリアジャ姫の処遇を巡って御前会議が開催されていた。姫の亡命受け入れと、その後の襲撃事件、さらには捕虜となったロックディ提督の存在によって、会議は混迷を極めていた。カブイ・ソマルの意志の強さとスージェー王国の再興を予感させる行動に、藩王国は慎重な対応を求められていた。

官僚ドスナジの憂慮と現実

会議に参加していた外務省第五次官ドスナジは、省庁内の無関心と責任回避に失望していた。スージェー王国南部を担当する立場から、かつての異常事態を察知しようと試みたが、中央官僚からは黙殺された経緯があった。国の将来と官僚制度の機能不全に危機感を抱いていた。

護国卿カブイ・ソマルの電撃訪問

会議の最中、藩王付き侍従長が持ち込んだ報により、スージェー王国護国卿カブイ・ソマルが都ワンニャに到着し、藩王への拝謁を求めていることが明かされた。この突如の来訪により、会議は騒然とし、参加者全員が「何をしに来たのか」という疑念に包まれたまま、緊張の度を高めていくのであった。

護国卿カブイ・ソマル、謁見に現る

コマキュタ藩王国王宮にて、スージェー王国の護国卿カブイ・ソマルが謁見に臨んだ。彼の目的は、移送艦隊との武力衝突の処理と、イリアジャ姫の身柄引き渡し交渉であった。コマキュタ藩王国側は姫の扱いを保留すると答え、交渉の余地を残した。カブイ・ソマル一行は王宮近くの高級宿『平和の海亭』に投宿した。

『蒼玉亭ワンニャ』での滞在と不思議な再会

アベルと涼は、蒼玉商会が運営する宿『蒼玉亭ワンニャ』で贅沢な滞在を楽しんでいた。宿の大浴場やカフェは高級感に満ち、彼らは心から満足していた。そんな中、二人は商港に停泊する一隻の船を目にし、驚愕する。それはかつてナイトレイ王国で建造され、消息を絶った「レインシューター号」であった。船は現在、スージェー王国に接収され「ブラルカウ号」と呼ばれていた。

船の真相を探るための奔走

レインシューター号の持ち主と接触を試みるため、涼は『平和の海亭』を訪ねるが、守備兵からは詳細を聞き出せなかった。その後、蒼玉商会ワンニャ支店を訪ね、護国卿が宿泊しているとの情報を得る。アベルと涼は、艦隊戦の影響やイリアジャ姫の問題が交渉の核心であることを再確認した。

自己紹介の“奇策”と相手の反応

涼は「護国卿が来たのはアベルのせいだ」とあえて叫び、注意を引こうとする大胆な策を取った。その言葉は護国卿カブイ・ソマルの耳に届き、「アベル」「レインシューター号」という名前に反応を示す。副官ナルンに調査を命じ、ロックディ提督への情報収集を進めた。

ゴラン監獄での密談と情報収集

その夜、ロックディ提督の独房にはスージェー王国側の訪問者が現れた。彼は、艦隊戦の詳細とアベル・リョウの能力について報告を受ける。特に、涼による二百メートルの氷の橋の魔法構築と、アベルの剣術によるモンラシュー司令の撃破が強調され、二人の脅威度が高く評価された。

コマキュタ王宮、混迷する会議

王宮では連日の会議が続いていたが、藩王の体調不良により混迷が深まっていた。イリアジャ姫の処遇と、カブイ・ソマルの面会希望についての議論が繰り返されるが、結論は出なかった。

その最中、スージェー王国海軍がコマキュタ藩王国国境に艦隊を展開し、その規模は四百艦に及んだ。これは圧力を加えるための“押し”の一手であり、会議は騒然となる。

カブイ・ソマルの関心と方針

夜、カブイ・ソマルはナルンからの報告を受け、アベルとリョウが蒼玉商会の「特別な客」であることを知った。両名の実力に強い関心を抱きつつも、当面の最優先事項はイリアジャ姫との面会であるとし、翌日の再参内を決断するのであった。

朝の手紙とイリアジャ姫からの招待

涼とアベルは、宿「蒼玉亭ワンニャ」での朝食の美味に満足していた。その折、イリアジャ姫からの手紙が届けられる。手紙には、大陸から仕入れた茶葉を用いた茶会への誘いと、相談したい事柄がある旨が記されていた。二人は姫のもとを訪ねる決意を固め、王宮の迎賓館へと向かった。

迎賓館での再会と厳重な警備

迎賓館は非常に厳重な警備体制が敷かれており、二人はその警戒ぶりに驚きを隠せなかった。だが、案内に従い姫のもとに通されると、イリアジャ姫は変わらぬ様子で彼らを迎えた。テラスでのお茶会では、多島海地域の伝統菓子「カエルプラ」と香り高い緑茶が振る舞われた。

カブイ・ソマルからの面会申し入れ

お茶会の途中、姫にカブイ・ソマルからの面会要請の手紙が届く。イリアジャ姫は了承し、二人にも会談の同席を求めた。姫の震える手に気づいた涼は、家族を奪われた姫の心情を思いやり、同席を快諾する。アベルもそれに続き、二人は護衛として会談に立ち会うこととなる。

謁見とカブイ・ソマルの真意

カブイ・ソマルが現れると、姫は毅然と応対し、彼の「一対一での会談」要望を断った。彼は、姫を女王として擁立することが自らの使命であると語り、その行動の背後にあったのが、亡き国王の「勅命」であったことを明かす。彼は王命の証である書面を姫に渡し、全てが王の意志によるものであったと主張した。

スージェー王国王家壊滅の真相

カブイ・ソマルは、王太子が外国勢力と通じて国王を害し、その混乱の中で他の王族が暗殺されたと説明した。アティンジョ大公国が背後にあり、彼らの狙いは王太子の遺児ジョルトを王位に据え、摂政となる王太子妃ライナを通じてスージェー王国を支配することであったと語る。

イリアジャ姫の決断と盟約

話を聞き終えたイリアジャ姫は、国王の勅命と国家の現状を受け入れ、自らが女王となって国に戻る決意を固める。そして、カブイ・ソマルに支援を求めると、彼もまた忠誠を誓った。姫はさらに、アベルと涼にも同行を願い出る。二人は一度は逡巡するが、最終的には「戦友」として姫を助けることを誓った。

スージェー王国帰還への準備と策略

姫の帰還には、亡命先であるコマキュタ藩王国の承認が必要である。しかし、姫は半ば人質同然の立場にあるため、簡単には許可が下りないと見られていた。これに対しカブイ・ソマルは、タカ派のグス提督を利用して、「出て行け」と言わせる策略を講じる意向を示した。

帰還

出航準備と別便手配

イリアジャ姫と共にスージェー王国へ戻ることを決めたアベルと涼は、蒼玉商会ワンニャ支店で出航準備を整えた。姫と行動を共にする百人の支持者のうち、近衛兵十名が姫と共にレインシューター号に乗船し、残りは蒼玉商会の手配する別便で送還されることとなった。

グス提督の“追放工作”と行政論

カブイ・ソマルは、イリアジャ姫と自身の「国外追放」という名目での出発を実現させるべく、藩王国の高官を巧みに動かして手続きを完了させた。アベルはその手際を評価する一方で、自国ナイトレイ王国への外部干渉の可能性と、行政の理想について涼と語り合った。

船上での再会と「レインシューター号」の由来

レインシューター号に乗り込んだ涼とアベルは、その設計と由来をカブイ・ソマルと確認し合った。この船は元来ナイトレイ王国が建造し、海洋調査中に消息を絶ったものだった。海賊に奪われたのち、スージェー王国に接収され、現在に至る。涼はこの船を「船の女王」と称し、その価値と尊厳を重んじた。

国境突破と敵船襲来

国境間近で、ゴーウォー船五隻が航路を塞ぐように出現した。それらは魔法使いによる遠距離砲撃を搭載しており、国籍旗を掲げない「海賊」とみなされる存在であった。カブイ・ソマルは強行突破を検討するが、涼は船体損傷を拒み、自ら防衛を志願した。

涼による防衛魔法の発動

涼は「複層氷(ヘアイスウォール)」によって船を堅牢に保護し、「動的水蒸気機雷(アクティブ)」で移動中の防衛機構を展開。さらに「アイシクルランスシャワー“扇”」を用いて船のみを精密に破壊し、敵兵には被害を与えず全艦を撃沈させた。これは、レインシューター号を守るという彼の強い執念の表れであった。

英雄視される涼と海戦の終結

無傷で戦場を離脱したレインシューター号に乗員たちは安堵し、カブイ・ソマルは深く感謝の意を表した。イリアジャ姫も涼の功績を称え、涼は「船の女王レインシューター号の伝説の一頁を刻んだ」と語った。伝説は、船を守るという強い意志と魔法の力によって成し遂げられたものであった。

王都の熱狂とイリアジャ姫の帰還

スージェー王国の王都ピューリでは、イリアジャ姫の帰還と女王即位の噂が急速に拡散され、港は民衆の歓声で満ちた。四百隻の艦隊を従えて帰還した姫は、民に圧倒的な歓迎を受け、女王としての期待が高まっていた。涼はこれを見て「プロパガンダ」と評しつつも、姫の人望と正当性に感銘を受けた。

王城の生活と東屋での安寧

イリアジャ姫は王城内の「白の離れ」に居を構え、アベルと涼は付属する東屋に宿泊することとなった。設備は豪華で、侍女たちも丁寧な対応を見せた。二人は高品質なコーヒー「ケンジャ」を味わい、平穏なひとときを過ごす。

謀略の影とアティンジョ大公国の介入

アティンジョ大公国大使館では、ズルーマとプラボがイリアジャ姫の帰還と失敗した襲撃を嘆いていた。彼らは王太子妃ライナを操ることで、ジョルトを擁立し王国を掌握する計画を推進していたが、現場の不手際に苛立ちを見せた。姫の排除は即位前に完了させるつもりであった。

イリアジャ姫の警護と毒物講習

アベルと涼には姫の警護が任され、城内でも丁重な扱いを受けていた。毒物対策として、治癒師ボイズナンによる講義が行われ、シュリンやチリルカリルといった致死毒の特徴と対策が教えられた。シュリンの毒はカブイ・ソマルがかつて中毒したもので、致命的な危険性を持っていた。

残された謎と迫る陰謀

涼はジュビジュビの毒を試験目的で入手し、さらなる研究に着手。カブイ・ソマルは副官ナルンから、大公国籍の船が王太子宮にシュリンの毒を運び込んでいたという報告を受け、王太子妃とアティンジョ大公国の結託を疑った。また、故国王の体内からチリルカリルの毒が検出されたことも明らかとなり、毒による病死の疑惑が浮上した。

即位式を前にした緊張

イリアジャ姫の即位式は四日後に迫っており、貴族たちの到着と共に、王都では何らかの動きが起きることが予想されていた。涼は姫の寝室全体を氷の壁で防御する措置を講じ、カブイ・ソマルも二人の存在を姫の「秘めた力」と評した。誰もが、次に起きる事態に備えていた。

王太子妃からの招待と毒の懸念

即位式の準備中、イリアジャ姫のもとにライナ王太子妃からの招待状が届いた。これを受け、イリアジャ、涼、アベル、カブイ・ソマルらは対策を検討した。毒の可能性が高いと判断し、涼は姫に不可視の防御魔法《アイスアーマーミスト》を施した上で、毒を無効化する策を講じた。

王太子宮での毒酒と涼の介入

王太子宮では、ライナ妃がイリアジャ姫に毒入りの酒を勧めた。涼は絶妙なタイミングで介入し、姫の盃を自らの特異体質によって無毒化した。ライナ妃は毒の効果が発現しないことに焦燥し、事態の流れを完全に読み違えていた。

呪法による襲撃と防衛戦

突如、窓から石の槍が射出されるという襲撃が発生。涼は《アイスウォール複層氷》を連続展開して姫と一行を守り抜いた。さらに、「呪符」と思しき紙片による魔術攻撃が加わり、全方位からの石の雨が降り注いだが、これも防ぎ切った。最終的に部屋は崩落し、姫らは辛くも離脱に成功した。

防御魔法の無効化と呪法の脅威

今回の攻撃では、氷の防壁が短時間で崩壊させられるなど、通常の魔法とは異なる現象が見られた。涼はこの現象を、呪符を使う大陸の「呪法使い」の仕業と推測。呪符による遠隔魔法や霊的存在の使役が可能な呪法使いの存在が浮上し、その脅威が認識された。

毒の真相と涼の特異体質

涼は自らの身体が毒を無効化する特性を持つと語り、実際にジュビジュビの毒を用いた実験でアベルを犠牲にして効果を検証していた。イリアジャ姫の杯に毒が仕込まれていた可能性は高いが、涼の対処により無効化されていた。

襲撃者の正体と即位式への懸念

今回の襲撃は、ライナ妃の関与ではなく、第三者、恐らくアティンジョ大公国の呪法使いの仕業であるとイリアジャ姫は判断した。急な招待であったため、襲撃者は内部潜入を諦め、外部からの攻撃に切り替えたと考えられる。次なる襲撃は、日程と場所が明確な「即位式」で起きる可能性が高いと、四人は警戒を強めた。

王太子宮襲撃失敗とズルーマの苛立ち

王太子宮での襲撃失敗を受け、アティンジョ大公国のズルーマ第二書記官は苛立ちをあらわにした。呪法使いプラボの報告によれば、強力な魔法使いの介入により、呪符攻撃は阻止された。ズルーマはイリアジャ姫を警戒し、次なる一手として即位式での暗殺計画を再確認した。

大陸への異動と暗殺部隊の配備

ズルーマは、大公からの勅命により大陸への異動を命じられた。仕上げのための最終段階に向かうためである。後を任されたプラボには、「黒装束」と呼ばれる暗殺部隊十人が託され、即位式での暗殺任務の遂行を厳命された。プラボ自身の生存は最優先とされ、失敗は許されぬ状況となる。

呪法対策のための学習と準備

涼はカブイ・ソマルに提案し、呪符・呪法の専門家として治癒師ボイズナンの指導を受けることとなった。涼は知識を吸収することに喜びを感じつつ、イリアジャ姫を守るため真剣に学習を進めた。さらに、イワシ型の海魔から得た青い魔石を用い、錬金道具の制作を開始する。

魔力線の乱れと呪符の効果分析

アベルの問いかけにより、涼は王太子宮で起きた《アイスウォール》崩壊の理由を明かした。それは魔法制御の奪取ではなく、「魔力線のずれ」によるものだった。呪符が魔力供給の方向をずらし、魔法の制御が失われる現象であった。この対策として、魔力供給源と防御対象を密着させた錬金道具の開発が進められた。

即位式に備えた新たな防御策

涼は、魔法式を錬金道具に写し込み、姫に密着させることで、呪符の干渉を最小限に抑える新戦術を計画した。即位式ではアベルと涼は来賓席に座るため、姫に直接防御魔法を施すことはできない。そのため、独立型の錬金装置を用いた防御が鍵となる。

正装準備と式典への緊張感

アベルと涼には式典用の衣装が用意され、アベルは格式高い正装に、涼は妖精王から授かったローブで臨むこととなった。いよいよ迫る即位式に向けて、準備は最終段階を迎えつつあった。

即位式

即位式前の朝と防御準備

女王即位式当日の朝、涼とアベルはイリアジャ姫不在の中で朝食を共にしていた。王の霊的象徴性から、即位者は当日の朝食を摂らないという慣習があるためである。涼は即位式に備えて、姫に贈るブレスレット型の防御用錬金道具を完成させた。このブレスレットには、姫の身を氷で包み守る《アイスアーマーミスト》が組み込まれていた。

謀略の背景と大陸勢力の意図

アベルと涼は、王太子妃ライナとジョルト王子を擁立するアティンジョ大公国の意図について議論した。即位妨害の動機は、スージェー王国の混乱を通じて、多島海地域から大陸南部の戦争への介入を防ぐためと推察された。スージェー王国の強化は、ゲギッシュ・ルー連邦や大公国の都合に合わないため、妨害工作が繰り返されていると結論付けられた。

女王即位式と襲撃の開始

正午、王城の「大謁見の間」にて、イリアジャ姫の即位式が挙行された。姫が赤絨毯を進む中、突如として短剣が襲来し、《動的水蒸気機雷》によって阻止された。続いてストラゴイもどきのような不死の存在と、死霊の騎士が多数出現し、会場は混乱に陥った。

暗殺者との接触と三人の活躍

近衛騎士の護衛を突破した三名の黒装束が姫を襲撃するも、アベル、カブイ・ソマル、そして涼がそれぞれを一瞬で撃退した。涼はその直後、会場上部に多数の呪符が展開されていることを発見。これらの呪符は空間を歪ませており、魔法の効果が届かなかった。

怪物の降臨と氷の封印

天井に設置された霊符から死霊や魔物が出現し、涼は《ウォータージェット》や《パーマフロスト》を駆使して怪物を凍結。さらに《フローティングマジックサークル》による魔法陣を展開し、天井全体を氷の世界に変え、生み出される怪物を封じ込めた。

呪法使いとの決戦とアベルの捕縛

涼は呪符で守られた白仮面の呪法使いプラボと対峙し、アベルは突如現れた呪符の罠により石棺に閉じ込められた。涼は「魂の響」を通じてアベルの無事を確認し、再び冷静さを取り戻した。

呪法への対応と勝利の瞬間

涼は白仮面の動揺を誘発し、氷の槍で足を封じ、呪符による防御を突破。《ウォータージェットスラスタ》を用いた奇襲で白仮面を気絶させた。その後、呪符や霊符が突然自動的に剥がれ、空中で燃え尽きるという現象が発生し、異変の終息が確認された。

護送中の死亡と即位の決断

捕らえられた白仮面の呪法使いプラボは護送中に謎の炎によって死亡し、すべての証拠が消失した。イリアジャ姫はなお即位を強行することを宣言し、式は成功裏に完了した。

謀略の残滓と今後の動向

事件後、アベルと涼は、謀略による支配と抵抗の構図を再認識しつつ、今後の大陸への移動を「自由都市クベバサ」経由で行うことを決定した。カブイ・ソマルからは、三週間後に出航する中央海軍の戦闘艦が用意されていると告げられた。

女王との日々と涼の執筆活動

即位後、イリアジャ女王はたびたび涼とアベルのもとを訪れ、また二人をお茶会に招いた。三人は穏やかな時間を共有し、涼は一時的に謎の執筆活動に没頭した。その内容は当初伏せられていたが、後に明らかとなる。

王の孤独とアベルの信条

ある日、イリアジャ女王が「王は孤独か」と問うた。アベルは、王を家長に喩え、民を家族と見なすことで孤独ではないと答えた。その信念に、イリアジャ女王は深く共鳴し、自らの王としての覚悟を新たにした。

出発の準備と贈り物の数々

出航日が近づく中、涼とアベルには王国からさまざまな贈り物が贈られた。涼には、彼が執筆した『そんなアベルは、腹ペコ剣士』の原著が出版され、初版本としてアベルに手渡された。さらに、王室禁書の写本『錬金術の深』が贈られ、涼は大いに感激した。

一方アベルには、まず涼著の小説が贈られた後、王国からの正式な礼として高品質な短剣が与えられた。これは涼の提案によるものであり、冒険者時代を知る彼の配慮が込められていた。

女王の見送りと正体への確信

涼とアベルは中央海軍の遠洋巡航艦に乗って出航した。港では、イリアジャ女王とカブイ・ソマル護国卿が最後まで見送った。その際、護国卿は涼とアベルに王国残留を打診したが、イリアジャ女王は「あの二人はこの地に留めることはできない」と明言した。

さらにイリアジャ女王は、アベルこそがナイトレイ王国国王「アベル一世」、涼こそが同国筆頭公爵「ロンド公リョウ・ミハラ」であることを確信していた。吟遊詩人の詩の中で語られる「水の魔法で十万の大軍を打ち破る魔法使い」の描写が、涼の力と一致していたからである。

希望と別れ

イリアジャ女王は、「いつかまた、一人には会える気がする」と静かに呟き、旅立つ二人を見送った。スージェー王国での使命を終えたアベルと涼は、次なる地、自由都市クベバサを目指して、再び動き出したのである。

エピローグ

白き空間の管理者

舞台は、すべてが白に包まれた世界。そこには、「ミカエル(仮名)」と呼ばれる存在がいた。彼は日常的に複数の世界の管理を行っており、その手元には操作端末となる石板があった。

三原涼の動向確認

ミカエル(仮名)は石板を通じて、三原涼が多島海地域に到達したことを確認した。彼はスペルノ──人々が「魔人」と呼ぶ存在──との接触を懸念しながらも興味を抱いていた。過去の接触から、彼らと関わることで起こる影響を理解していたためである。

新たな出会いへの期待

涼がこれから出会う存在について、ミカエル(仮名)は中央諸国や西方諸国にはいない「珍しい者たち」であると認識していた。彼は、それらとの邂逅によって涼が何を感じ、どう変化していくのかに興味を持っていた。

地球との断絶と微笑

ミカエル(仮名)は、すでに地球とはあらゆる点で異なる世界に適応している涼に対し、今さら驚くこともないかもしれないと独りごちた。そして、次なる運命の交差点を見届けるかのように、穏やかに微笑んでいた。

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小説「ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~ 2」感想・ネタバレ

物語の概要

本作は異世界ファンタジー小説であり、やり込みゲーム好きな主人公が「ヘルモード」という高難度設定を選び、農奴として転生後に召喚士として成長する物語である。2巻では主人公アレンが貴族の従僕として仕えつつ、召喚獣の能力を検証・強化しながらモンスター狩りに没頭する日々を送る。その中でセシルの兄ミハイとの再会や、グランヴェル家に忍び寄る陰謀に巻き込まれていく展開である。

主要キャラクター

  • アレン(Allen):農奴として転生した元廃ゲーマー。召喚士としてストイックな育成を行い、どんな難敵にも立ち向かう。
  • セシル(Cecil):グランヴェル家のワガママなお嬢様。アレンの仕える主であり、兄ミハイとの交流を通して彼女も変化していく。
  • ミハイ(Mihai):セシルの兄。学園都市から帰省し、物語の核心に迫る存在としてアレンと交わる。

物語の特徴

本作は“廃設定異世界”という舞台設定が最大の魅力である。攻略本も掲示板も存在しない環境で、ゲーム的思考を駆使して手探りで最強を目指す点が際立っている。2巻では特に、召喚獣の能力検証やモンスター狩りの描写が丁寧でリアルかつ戦略的である。また、単なる英雄譚ではなく、陰謀・貴族関係のドラマが絡むことで物語に奥行きを与えている。

書籍情報

ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~ 2
著者:ハム男 氏
イラスト: 氏
出版社:アース・スターノベル
発売日:2021年10月12日

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あらすじ・内容

貴族の従僕となったアレンの、新たな冒険が始まる!!

開拓村の農奴からグランヴェル家の従僕となったアレンは、ワガママお嬢様のセシルに振り回されながらも、自由に街の外に出れるようになったことでモンスター狩りに熱中していく。
召喚獣たちとともにストイックにレベル上げに勤しむアレン。ゴブリンやオークを狩り続け、召喚獣もアレンもどんどん成長していく。
一方グランヴェル家の従僕としてもアレンは順調に信頼を獲得していた。従僕生活も順調かと思われたが、男爵家を狙う隣領の子爵の暗躍により、不穏な空気が流れ始める。
男爵の娘であるセシルを狙う魔の手に対し、アレンは

「セシルお嬢様を必ず守ると約束しました。約束は守りますよ」

自らのスキルと召喚獣をフル活用し、巨悪へと挑むのだった。

ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~ 2

感想

この世界は、魔王の脅威に晒されている。隣国は、その侵略を食い止めるために尽力しているけれど、どうやら一枚岩ではないらしい。国内には、その状況を政争の道具にしようとする動きもあるようで……。そんな複雑な事情が絡み合う中で、グランヴェル家の嫡男までもが戦死してしまうなんて、本当に悲しい。

そんな世界で、アレンは『ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~ 2』で、開拓村の農奴からグランヴェル家の従僕へと身を立て、セシルお嬢様に振り回されながらも、着実に力をつけていく。まさに「やり込み好き」のゲーマー魂を燃やし、モンスター狩りに熱中する姿は、読んでいて爽快感がある。ゴブリンやオークを狩り続け、召喚獣もアレン自身も成長していく様子は、わくわくせずにはいられない。

物語は単なるレベル上げだけでは終わらない。ミスリル鉱脈のある山の問題を巡り、隣領の子爵がセシルを誘拐するという事件が発生するのだ。一体、何が目的なんだろう……。

でも、アレンは諦めない。共に誘拐されたアレンが、命懸けで娘を救出してくれた。ありがとう、アレン……! あなたの「セシルお嬢様を必ず守ると約束しました。約束は守りますよ」という言葉に、胸が熱くなった。

誘拐を企てた子爵家は、当然お取り潰しとなった。でも、これで終わりじゃない。黒幕はまだ潜んでいる。油断はできない。これから、どうなっていくんだろう……。

『ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~ 2』は、アレンの成長物語、裏設定の深み、そして魅力的なキャラクターたちが織りなす人間関係が楽しめる、おすすめの作品だ。次巻では、黒幕との戦いがどのように展開していくのか、今から非常に楽しみである。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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展開まとめ

第一話  グランヴェル家での日々

グランヴェル家での新生活

10月末、アレンは領主であるグランヴェル男爵の館に到着し、従僕としての生活を始めた。使用人の上下関係や貴族の家族観について、先輩の従僕リッケルから学び、アレン自身が男爵家の「家族」とみなされていることを理解した。彼は農奴の出自ながら異例の昇進を果たしており、その背景には父ロダンの功績と男爵の厚遇があった。

セシルとの関係と雑用の日々

アレンは男爵の娘セシルの専属従僕に任命され、日々の雑用や世話をこなしていた。セシルは勝気でお転婆な性格で、アレンに何かと絡んでくる。肩車で果実を取らせる一幕では、彼女の意外な一面と従僕としての苦労が描かれた。従僕の仕事は厳しくも雑多で、食事の給仕まで任されるようになり、アレンは自身の容姿と態度から高評価を得る一方で、セシルからの干渉に悩まされていた。

飛行船と魔導具の発見

買い出しの途中で巨大な飛行船を目撃したアレンは、世界の広さと魔導技術の存在を実感する。使用人仲間との会話を通じて、飛行船が魔導具によって動いており、王都との間を往復していること、館内の設備にも魔導具が使われていることを知った。

冒険者ギルドでの調査

休みを利用して冒険者ギルドを訪れたアレンは、自身がまだ冒険者になれない年齢であることを知る一方、魔獣の情報を得るために壁に貼られた討伐依頼を確認した。魔獣はランク別に分けられており、街から離れるほど強力な個体が出現すること、また特定の魔獣が特定地域に集中していることを知った。白竜の討伐依頼は報酬が高額であるにも関わらず、誰も引き受けていなかった。

屋根裏部屋と魔力訓練

アレンは使用人の部屋が足りないことから屋根裏の物置を個室として与えられていた。そこに召喚獣の草Fと草Eを育て、魔力回復やスキル訓練に役立てていた。草Fのアロマ効果により魔力回復時間が短縮され、スキル経験値の効率的な獲得が可能になっていた。

執事との交渉と決意

アレンは週2日の半休を1日にまとめることで週1日の完全休暇を得ようと執事に交渉した。当初執事は難色を示したが、アレンの働きぶりや意志の強さを評価し、最終的に了承した。執事はアレンの父ロダンが新たな村の村長候補であることを明かし、アレンにも将来性があることを諭したが、アレンは従僕のまま終わるつもりはなく、レベル上げと自己強化のために戦う覚悟を示した。

こうしてアレンは、目標に向かって一歩踏み出すための休暇を勝ち取り、従僕としての日常と並行して、冒険者への道を模索し始めたのであった。

第二話  グランヴェル領での狩り

狩りの準備と早朝の出発

アレンは休日の早朝、装備や召喚カードを確認し、館から街を抜けてグランヴェル領の外へと向かった。使用人の紋章によって門を通過できた彼は、広大な草原に足を踏み入れた。最初の狙いはDランクの魔獣であった。従僕である以上、武器の携帯は禁止されていたが、こっそりと短刀を収納に忍ばせていた。

召喚獣の検証と索敵

まずは鳥Eの召喚獣を呼び出し、知力が高いと指示に従うことを確認した。一方、獣Eは知力が低く、指示を理解しなかった。召喚獣の知力が操作性に直結することが明らかになった。複数の鳥Eを同時に索敵に飛ばし、効率を上げた。やがて魔獣が見つかり、5体のゴブリンと遭遇することとなった。

集団戦と特技の活用

アレンは獣Eの召喚獣10体を前後から展開し、ゴブリンを包囲して攻撃させた。さらに虫Eの召喚獣の特技「鱗粉」によって睡眠の状態異常を付与し、戦闘を有利に運んだ。実戦の中で、虫系統の特技には敵ランクに応じて必要召喚数が増えること、成功率は100%ではないことなどが検証された。

魔石の回収と狩りの成果

ゴブリンの心臓付近から魔石を採取し、経験値と魔石を得るとともに、獣Eの耐久不足も課題として明らかとなった。さらに命の草の特技効果による回復検証を念頭に置き、角ウサギの狩りも交えて魔石収集を進めた。ゴブリン80体、角ウサギ5体の討伐により、レベルは9から12へと成長した。

鉄球の導入と装備計画

石ころの破損に対応するため、アレンは武器屋に鉄球の製造を依頼していた。火打ち魔導具や防具の購入計画も進めており、給金の少なさに対して狩りでの収入を補う意志が見られた。従僕としての月給は銀貨50枚であり、金貨換算では年間6枚程度であった。

執事との対話と素行調査

遅い帰館を理由に執事に呼び出されたアレンは、素直に魔獣狩りの事実を打ち明けた。ロダンの息子として狩りを生きがいにしていると語り、執事からも一定の理解を得た。角ウサギの肉をグランヴェル家が銀貨1枚で買い取ることが決まり、活動の一部が公認された。

救出劇と命の草の効果

翌週の狩りの最中、鳥Eの召喚獣が冒険者の危機を知らせ、アレンは急行した。冒険者リタたち3人がゴブリンに囲まれており、アレンは鉄球と短剣で戦闘に介入、彼らを救出した。重傷のレイブンとリタには、命の草による回復を施し、その効果がミュラーゼの花に匹敵するものであると判明した。

魔石の依頼と経験値検証

礼として、ゴブリンの魔石の回収とEランク魔石100個の調達をレイブンに依頼したアレンは、経験値配分の検証も実施した。複数人での戦闘における経験値の取得率が明確化され、召喚獣なしでの戦闘でもDランク魔獣に勝利可能な実力を確認した。

自我を持つ召喚獣の存在

戦闘後、鳥Eの召喚獣ホークに命令無視の理由を問うたアレンは、彼が他者を救いたいという意思で行動したことを知った。召喚獣に自我が存在するという事実は、アレンにとって想定外であり、召喚獣の在り方に対する見解を大きく変える出来事となった。

こうしてアレンは、召喚獣の特性と自己強化に対する理解を深めながら、異世界での成長をさらに加速させていくのであった。

第三話  狩猟番

角ウサギ狩りと料理長との交流

アレンは12月下旬、再び狩りに出かけて角ウサギを捕らえ、合計で10体を男爵家に持ち帰った。Eランク魔石も着実に収集しており、執事からは高く評価された。料理長はアレンの活躍を知り、特別な肉をスープに加えて与えるようになった。アレンの狩猟能力が目立つ一方、リッケルはその待遇に嫉妬を示した。

館内での仕事と騎士団長との対話

アレンは通常業務としてセシルの世話をしつつ、館内の様々な雑務をこなした。その最中、騎士団長ゼノフが男爵家を訪れ、クレナ村でのボア討伐完了を報告した。アレンの父・ロダンがその討伐を主導していたことも確認され、アレンもその事実を再認識することとなった。

食糧事情とトマスの願望

男爵家では冬季にもかかわらずボア肉が食卓に上がらず、トマスが不満を漏らした。男爵や夫人は質素な新年会になることを憂い、トマスはホワイトディアの肉を望んでアレンに狩猟を依頼した。アレンは依頼を受け、Cランクの魔獣であるホワイトディアの討伐を決意した。

ホワイトディア討伐作戦

雪深い森へと出向いたアレンは、召喚獣たちの協力を得て、巧みにホワイトディアを落とし穴へ誘導した。挑発によってホワイトディアを誘い込み、落とし穴に落とした後、自らの手で首に短剣を突き立てて討伐を成功させた。処理を終えた後は、800キログラム近い死体を背負い、館へ帰還した。

館内の混乱と称賛

ホワイトディアを担いで門を通ったアレンは、魔獣の襲来と誤解されて一時騒動を引き起こした。しかし自らの身元と任務を明かすと、館中は驚きと称賛に包まれた。料理長は興奮気味に解体を開始し、アレンも魔石の回収のためにこれに協力した。

アレンの実力への再評価

ホワイトディアの捕獲を目の当たりにした男爵は、アレンの過去を改めて調査するよう命じた。執事も驚愕し、調査のためにクレナ村へ使者を送ることを決定した。従僕でありながら狩猟においても圧倒的な成果を挙げたアレンの存在は、男爵家中に強い印象を与えた。

狩猟番任命と報酬

その後、執事よりアレンに銀貨100枚の袋が手渡され、内訳として月給50枚とホワイトディア討伐分50枚が含まれていた。割に合わないと感じたアレンだったが、狩猟番としての役職を新たに与えられたことで納得した。狩猟番の仕事は、魔獣の討伐と民の保護の2つであり、アレンはそれを週1日行うこととなった。

新たな職務と将来の展望

狩猟番の任命は、使用人たちからの強い要望によって実現したものであった。アレンが狩った魔獣により食卓が潤ったことから、さらなる活躍を期待する声が高まっていたのである。執事は狩猟番の仕事を任せつつ、将来的に従者への昇進も視野に入れていると述べた。こうしてアレンは、従僕、給仕、狩猟番の三役を担うこととなり、館での存在感を一層強めていった。

第四話  ミハイとの出会い

狩猟番としての活動と魔獣の供給

年明けからアレンは狩猟番として週2日の狩りを許され、ゴブリン狩りに励んだ結果、レベルは13から19へ上昇した。新年会ではホワイトディアの肉が供され、以後も月1体のペースで狩猟を続けた。庭師の指示により、魔獣を置くための専用の板が設置された。3月に入り、角ウサギやホワイトディアに加え、春の魔獣も活動を始めたため、アレンは今後の狩猟計画を練っていた。

ミハイとの初対面と学園生活の話題

ミハイを迎えるため、アレンはセシルに付き添い魔導船の発着場へ向かった。ミハイは王都の学園都市から帰省し、妹セシルと再会を果たした。アレンはミハイから従僕としての言葉を掛けられ、従僕の役割と将来性について自覚を深めた。ミハイは学園の厳しい課題であるダンジョン攻略の体験を語り、剣聖ドベルグの指導を受けたことも明かした。セシルは兄の話に夢中になり、兄妹の仲の良さが際立った。

狩猟の成果と試合への招待

ミハイの帰省後初の狩猟番の日、アレンはビッグトード、角ウサギ、あばれどりを狩猟し、召喚獣の強化レベルを上げる方針を固めていた。魔獣を担ぎ帰宅したアレンは、庭でミハイと騎士団長の模擬試合を目撃した。試合後、ミハイはアレンにも対戦を持ちかけ、アレンはミスリルの剣を借りて挑んだ。

ミハイとの模擬戦と実力差の認識

試合では、ミハイの攻撃速度と力にアレンは圧倒された。ヘルモードのアレンでは太刀打ちできず、剣をはじかれ喉元に刃を突きつけられて敗北した。ミハイはアレンの力量を認めつつも余裕の態度を見せた。アレンはノーマルモードとの成長速度の差を痛感し、次回の再戦に向けて奮起した。

館での待遇改善と使用人への恩恵

春休みが明け、ミハイは学園都市へ戻った。アレンの狩猟によって、館では毎日の食事に肉料理が追加され、使用人たちの待遇が向上した。半年の在館を経て、アレンの貢献は確かなものとなっていた。

カルネル子爵の来訪と領地間の対立

ある日、隣領のカルネル子爵がグランヴェル家を訪問した。表面上は礼を尽くしていたが、子爵は執拗に嫌味を交えた会話を繰り返し、両家の緊張関係が垣間見えた。両家は白竜山脈を挟んで隣接しており、ミスリル鉱脈の利権を巡って代々反目していた。現在は白竜がグランヴェル領側にいるため、カルネル領がミスリル採掘の恩恵を受けていた。

貴族社会における「才能」の価値観

子爵は末娘が「才能なし」と診断されたことを誇らしげに語った。貴族にとって才能ありは義務や学費など負担の増加を意味するため、むしろ才能なしのほうが望ましいという価値観があった。一方で、農奴や平民にとっては才能ありが喜ばしいものであり、その落差にアレンは違和感を覚えた。カルネル子爵はこの報告のためだけに訪れ、満足げに帰っていった。

第五話   Cランクの魔獣

マッシュの才能と街での休日

アレンは休日を利用し、街で買い物をすることに決めていた。執事からはマッシュに「槍使い」の才能があると知らされ、それを喜んだ。また、グランヴェルの街での活躍もマッシュを通して伝えられていた。街では以前助けた商人や冒険者たちから声をかけられるようになり、名が広まりつつあった。

レイブンたちとの再会と情報収集

街でレイブン、リタ、ミルシーと合流し、昼食を共にしたアレンは、Cランクの魔獣についての情報を求めた。彼らもCランクの冒険者であり、その体験談を通してアレンは鎧アリの危険性などを学んだ。理由は、ゴブリンが激減したことや、ステータス抑制が緩和される9歳の誕生日が迫っていること、魔石の備蓄が十分であることなど、複数にわたった。

防具の購入と装備の選定

食後、アレンは初めて防具を購入するため防具店を訪れ、性能重視で「デススパイダーのマント」を選んだ。ブレス耐性を備えた軽装であり、移動の妨げとならない点が評価された。マントは冒険者レイブンの助言による選択であり、実用性を重視するアレンの価値観にも合致していた。

鎧アリとの初戦と敗北の分析

新たな装備を身に着け、アレンはCランクの魔獣狩りに出発した。索敵の結果、単体の鎧アリを発見し、獣Eの召喚獣による集団攻撃を試みたが、鎧の硬さにより攻撃が通らず苦戦した。虫Eの召喚獣の特技「鱗粉」による睡眠効果で一時的に無力化し、体をひっくり返して急所に短剣で攻撃を加えたが、武器の性能不足により魔石の回収すら叶わなかった。効率面から鎧アリ狩りは断念せざるを得なかった。

オークとの戦闘と勝利

その後、別の召喚獣に導かれオークを発見。獣Eの強化された攻撃「ひっかく」が有効であり、召喚獣のみで撃破に成功した。アレンはこれにより、Cランクの魔獣に通用する戦力が整いつつあることを確認した。さらにオークの体から魔石を回収できたこともあり、狩猟対象としての現実性を見出した。

成長への実感とヘルモードの限界

過去のゴブリン狩りとの比較から、アレンは自身の成長を実感した。しかし、ミハイとの模擬戦での敗北や、学園出身者との能力差を思い出し、ノーマルモードでの成長速度の優位性を痛感した。学園を卒業した才能持ちが最も強く、その下に様々な段階の人材がいるという知識を得て、自身の立ち位置を冷静に認識した。

本格的なCランク狩猟の開始

その後、アレンは1日で鎧アリ1体、オーク15体を討伐し、経験値25,500を獲得した。オークに対しては、特技と連携すれば3体組までの討伐が可能であることを確認した。ゴブリンの減少に伴う狩場変更と戦術の確立により、Cランクの魔獣狩りがレベル上げの新たな主軸となった。この日を境に、アレンのCランク魔獣狩猟が本格的に始まったのである。

第六話  マーダーガルシュとの戦い

セシルからの褒美と魔法の授業

アレンは従僕1周年の褒美としてセシルから魔法の授業を受けることになった。講師は老齢の魔法使いで、アレンに対して丁寧に教鞭をとった。授業では魔法の才能の有無が使用条件であることや、魔法を使うには特有の記号を暗記しなければならないという基本が説明された。アレンは魔力や魔法に関する理解を深めたが、水晶による鑑定の結果、魔法の才能がないと判定された。一方でセシルは水晶を光らせ、魔導士の才能を証明した。

アレンの落胆とステータスの自覚

魔法が使えないと分かり、アレンは大きな落胆を味わった。自身の高い知力が召喚士としての能力に活かされず、他ステータスの低さとのバランスも取れていないと感じた。そのため、召喚士という職業に対して疑念を抱き、「ネタ職」だと自己評価した。

冬の男爵家と狩猟番の責務

12月になり、アレンは狩猟番として冬でも魔獣の狩猟を続けていた。男爵家の食糧事情は改善されたが、食べ過ぎるトマスの行動が新たな悩みとなっていた。アレンは家族との日常を穏やかに過ごしていたが、突如街の鐘が鳴り響く。

マーダーガルシュの接近と男爵家の対応

街に大型魔獣マーダーガルシュが接近しているとの報が入り、騎士団長不在の中、男爵は冒険者ギルドに緊急依頼を出す決断を下した。アレンは自ら狩猟番として討伐への参加を申し出る。男爵はアレンの覚悟と職務意識を認め、出動を許可した。

危険な突撃と魔獣の誘導

アレンは魔力がゼロのまま出動し、マーダーガルシュが人を襲う現場に到着する。親子が乗る馬車が襲われていたため、アレンは鉄球で魔獣の注意を引き、自身に向かわせることに成功する。追撃されながらも巧みに逃げ、白竜山脈方向へと魔獣を誘導していった。

召喚獣による作戦と無力さの実感

アレンは召喚獣の力を使って戦おうとするが、マーダーガルシュにはデバフ効果が通用しなかった。召喚獣を消耗しつつもアレンはひたすら逃走を続けた。3日間にわたる死闘の末、ようやく撒くことに成功し、街へ帰還する。

意識不明からの帰還と報告

北門で倒れたアレンは屋敷へ搬送され、意識を取り戻した後、執事に経緯を報告する。その後、騎士団長と共に男爵の前でマーダーガルシュとの遭遇について詳細に説明を行った。男爵はアレンの行動を高く評価し、褒美として金貨10枚を与えた。

救出者からの謝礼とアレンの希望

さらに、救出された馬車の主人からも謝礼として金貨10枚が届けられ、アレンは合計20枚の金貨を手にした。これにより、彼が望んでいたミスリル製の剣の購入が現実的となった。今回の出来事はアレンにとって自身の力量を再確認する機会となり、今後の成長と覚悟を促す契機となった。

第七話  召喚レベル 5

ミスリルの剣と魔獣への考察

アレンはマーダーガルシュとの戦いの報酬で手に入れた金貨を使い、ミスリル製の短剣を購入した。その切れ味を試すため、鎧アリを相手に戦いながら旧来の装備との性能差を確認した。また、魔獣の強さとランクの対応関係に違和感を覚え、経験則から実際の強さがランクに見合わないことに気付き始めていた。

召喚獣の情報共有に関する検証

アレンは鳥Eの召喚獣を用いた実験を通じて、召喚獣が情報を共有していることを確認した。特定の個体が見た情報を、新たに召喚された同種の召喚獣が即座に認識している事例や、逆に異種や既存の召喚獣には伝達されていないことから、情報の同期は同種間に限られると結論付けた。この発見により、召喚獣同士が知識を継承し続けていることが明らかとなった。

ミハイとの剣術試合と成長差の実感

春を迎え、学園都市から帰省したミハイと再戦したアレンは再び敗北を喫した。ヘルモードにより経験値の取得効率が著しく悪いアレンは、ノーマルモードで成長してきたミハイとの間に歴然とした差を感じていた。試合後の和やかな会話の中で、ミハイからマーダーガルシュとの戦闘について興味を持たれた。

白竜移動の報と領内再開発への期待

白竜が寝床を移動したという報告を受け、男爵は歓喜した。騎士団からの報告により、白竜がいなくなればミスリル鉱の採掘が再開できる可能性が高まった。男爵は早期の採掘再開を望むが、騎士団長は白竜の所在確認を優先すべきと主張した。白竜の移動先は最終的にカルネル子爵領側であることが判明した。

召喚レベル5の到達と新スキル「共有」

アレンは召喚レベル5に達し、新スキル「共有」を獲得した。これにより、召喚獣の視界と感覚を共有できるようになり、50メートル以上離れた召喚獣にも直接指示を与えることが可能となった。実験により、同時に共有できる召喚獣は最大5体であり、この上限はアレンの知力に依存することが判明した。

スキル「共有」の詳細とその可能性

視覚と聴覚を同時に複数召喚獣と共有できる「共有」は、召喚獣の特技までもアレンが感知可能とし、遠隔地からの魔獣狩りや索敵行動の効率化を大きく押し上げた。さらに、共有している状態であれば距離制限を超えて召喚獣のカード化や指示が可能であり、経験値も取得できることから、アレンは召喚士として飛躍的な成長の可能性を感じ取った。

知力の本質と召喚士の進化

魔法を使えず、無意味に思われていた知力ステータスの高さが、「共有」スキルによって召喚獣の管理能力として発揮されることが明らかとなった。複雑な情報の把握と即応的な指示は高い知力によって支えられており、これによりアレンは召喚士としての自らの適性と可能性を確信するに至った。彼はその後、さらなる検証のため、Dランク召喚獣の分析に取りかかるのだった。

第八話   Dランクの召喚獣

Dランク召喚獣の検証と戦術構築

アレンは朝からDランクの召喚獣の検証に取り組み、昼過ぎまでにさまざまな系統の召喚獣の特技や能力を確認した。獣Dは攻撃特化で、特技「かみ砕く」により鎧アリの装甲を破壊でき、虫Dは粘着性の高い糸で敵の動きを封じる「蜘蛛の糸」を有し、デバフ要員として機能した。鳥Dは夜間に有効な「夜目」を持ち、日中の鳥Eと交代で索敵を担うことが期待された。草Dは特技発動後に魔力回復アイテムとなり、魔力を1000回復する効果が確認された。また、魚Dは移動不能と思われたが、特技「飛び散る」により地中を泳ぎ、範囲内の味方に物理・魔法の回避率上昇のバフを付与する効果が判明した。

狩りの進展と資源の有効活用

Dランク召喚獣によって鎧アリの狩猟が安定し、アレンはオークに代わる獲物として鎧アリを採用した。魔石の回収や鎧の利用により、収益性も向上した。鎧アリの鎧を素材運搬用の容器として活用し、さらに金貨1枚で売却できることが分かったため、使用人に販売を依頼する体制も整えた。これにより時間の節約と利益の確保を両立させた。

召喚獣のみでの狩りと経験値の取得条件の検証

アレンは知力1600に達し、8体の召喚獣と共有可能になったため、それらを単独で狩りに向かわせる実験を行った。構成は獣D4体、虫D・鳥D・鳥E・魚Dが各1体で、デバフ・バフ・索敵・攻撃の役割が分担されていた。索敵は昼は鳥E、夜は鳥Dが担い、戦闘は虫Dの「蜘蛛の糸」で足止めし、獣Dがとどめを刺す戦術であった。しかし、アレンが睡眠中には経験値が自身に入らないことが確認された。

「共有」能力の遠隔活用と郷里への想い

アレンは「共有」を利用し、遠方のクレナ村の様子を鳥Gの召喚獣を通して確認した。懐かしい村の風景や成長した友人たち、母テレシアの姿を視認し、感慨にふけった。そして、さりげなく金貨を母のもとに届けた。

ミスリル鉱採掘地調査の報告と戦略的判断

騎士団長による白竜山脈の調査報告により、採掘地周辺には多数の魔獣の巣窟が存在し、採掘開始までには最低でも3〜5年の時間が必要であることが判明した。男爵は北部から段階的な採掘開始を提案し、それにより北から順に魔獣の掃討が決定された。アレンは「鷹の目」で現地の状況を把握し、鳥Eを用いてゴブリン村や鎧アリの巣の位置を調査した。

白竜の索敵能力とカルネル領の状況

カルネル領では白竜の怒りを買って労働者が壊滅したとの情報が報告された。白竜の索敵能力が広範囲に及ぶこと、遮蔽物により感知が妨げられる可能性が示唆された。グランヴェル領では山脈を遮蔽物とすることで白竜の注意を回避していると考えられた。

今後の目標と決意

アレンは、男爵家への感謝の意を示すため、2年以内に白竜山脈に存在する魔獣の拠点を掃討することを決意した。ゴブリン村から順に討伐を開始し、騎士団に先んじて経験値を獲得しようと計画した。

第九話  ミハイとの約束

Dランク召喚獣の検証

アレンは朝から共有スキルの検証を行い、昼過ぎまでかかった。食事をとった後、Dランクの召喚獣を次々に召喚して検証を進めた。獣Dの召喚獣「ベアー」は高い攻撃力を持ち、「かみ砕く」により鎧アリの装甲を破壊可能であった。虫Dの「スパイダー」は「蜘蛛の糸」で敵の動きを封じ、デバフ役を担っていた。鳥Dの「ホロウ」は夜間索敵能力「夜目」があると期待され、日中の「ホーク」と補完しあう存在となる。草Dは回復効果を持つ「魔力の実」に変化し、魔力を1000回復するアイテムとして有用であった。石Dの召喚獣「ブロン」は大盾を持ち、防御役としての可能性を示したが、アレンの狩りスタイルには適合しなかった。

魚Dの召喚獣とバフ効果の発見

新たに追加された魚Dの召喚獣「ハラミ」は、見た目に反して特技「飛び散る」によって地中を移動し、味方全体に物理・魔法回避率上昇のバフを付与できる能力を持っていた。その効果は半径50メートル以内に及び、24時間継続することも確認された。これにより、召喚獣の生存率向上と魔石消耗の抑制が期待できる。

鎧アリの狩猟と素材活用

Dランク召喚獣の活用により、鎧アリの狩猟が安定化したことで、アレンは素材回収にも注力するようになった。鎧アリの装甲は壊さずに頭部のみを攻撃するよう召喚獣に指示し、胴体から魔石を回収後、その鎧を金貨1枚で売却可能であることを知った。防具屋への売却を使用人に依頼する体制を構築し、時間の有効活用にも努めた。

狩りの自動化と召喚獣隊の運用

アレンは共有スキルを活かし、知力1600により8体の召喚獣と同時にリンク可能となった。虫D、獣D、鳥E・D、魚Dで構成された召喚獣隊は、デバフ・攻撃・索敵・バフと役割分担が明確であり、他冒険者への干渉を避けるよう指示した。初戦ではオーク2体を糸で拘束し、「かみ砕く」で撃破。共有により連携速度と正確性が向上し、召喚獣自身にも経験値が蓄積されていった。ただし、アレン自身は睡眠中に得られる経験値がないことを確認した。

クレナ村への遠隔視と感傷

後日アレンは、鳥Gの召喚獣「インコ」を通じて遠隔視を行い、クレナ村の様子を観察した。かつての仲間クレナやドゴラたちの成長を見守り、母テレシアと妹ミュラの姿に心を熱くした。家にはこっそりと金貨を置いて立ち去った。

グランヴェル領の採掘計画と白竜の脅威

10歳となったアレンは給金が増え、館での生活も3年目に入った。男爵と騎士団長は、ミスリル鉱の採掘再開に向けた会議を食堂で実施。白竜山脈の採掘地周辺には多数の魔獣の巣があり、完全な採掘再開には最低でも5年を要するとの報告がなされた。男爵は最北の採掘地から段階的な開発を提案し、それでも3年を要すると理解する。アレンは共有スキルを使い、鳥Eの召喚獣で現地を上空から調査していた。

白竜の索敵能力とカルネル領の失敗

カルネル領では白竜の怒りを買い、採掘現場が壊滅していた。アレンは白竜の索敵能力が「鷹の目」と同様、遮蔽物の影響を受けると推測し、共有視認を避けた。グランヴェル領が白竜の住処に近いにもかかわらず許容されている点について、山脈の存在が遮蔽になっている可能性を考察した。

魔獣掃討への決意

会議の結果、今後は北から魔獣討伐を開始する方針となった。アレンはこれを受け、2年後に館を去る前に、感謝の意として白竜山脈の魔獣掃討を開始することを決意した。自身の経験値を確保するため、騎士団に先んじて狩りを始める構えであった。

第十話  セシル、家出をする

オーク村の制圧と採掘地整備の進展

アレンは11歳を迎え、着実にオーク村を制圧していた。これまでに約20の村を潰し、最終的にはすべてを制圧するつもりであった。白竜山脈北部のミスリル鉱の採掘再開を目的に、予定より1年早く整備が進んでいた。

王家の使いの訪問と悲報の到来

ある日、王家の使いが男爵家を訪問した。使者は国王の言葉を借りて男爵を讃えた後、息子ミハイからの手紙を届けた。それは遺書であり、ミハイの死が告げられていた。男爵とその家族は激しく動揺し、特にセシルは衝撃を受けた。

セシルの怒りと家出

セシルは父親に強く詰め寄り、ミハイの死に対する説明を求めた。怒りと失望の中、彼女は食堂を飛び出し、翌朝には姿を消した。アレンが「鷹の目」で探索した結果、スラムに近い裏路地でセシルを発見した。

セシルとアレンの対話と提案

アレンは従僕としてセシルに同行し、怪我の手当や食事の提供を行った。涙を見せるセシルに対し、アレンは共に街を出る提案をした。セシルは驚きつつも、次第に心を開いた。最終的に館に戻る決意をし、アレンに背負われて帰宅した。

家族の再会とセシルの決意

館に戻ったセシルは両親と再会し、男爵は採掘権の献上によって彼女の勤めを免除する計画を明かした。しかしセシルはそれを拒否し、自らの意思で家の勤めを全うすると宣言した。

アレンの仕送りと家族の様子

後日、アレンは「共有」を通じて鳥型召喚獣に仕送りと手紙を託して実家に届けさせていた。文字を学び始めたマッシュが手紙を読み、家族はアレンの気遣いに感謝した。

セシルの謝意とアレンへのご褒美

数日後、セシルはアレンを自室に呼び、家出の際の助力に対して菓子を振る舞い褒美とした。彼女はアレンに対し、将来的に従者へ昇格できるよう父に働きかけていると述べ、笑顔で感謝の言葉を述べた。

第十一話  鎧アリの巣への挑戦

セシルの変化と王国情勢の確認

ミハイの死から半年が経過し、セシルは回復の兆しを見せていたが、より一層の努力を重ねるようになった。狩りへの同行を望むが、男爵の許可が下りず断念されている。アレンは、ミハイの死因となった任務の詳細が依然不明であることや、王国と他国との戦争状態がないとリッケルから再確認したことを振り返っていた。また、隣接する帝国との和平状態が続いていることも明らかにされた。

ゴブリン・オーク殲滅とミスリル採掘準備

2月末にオーク村の殲滅が完了し、冒険者が職を失う反面、ミスリル採掘の人員は予定通り確保された。アレンは、魔獣討伐の必要性と犠牲者を見た経験から、行動が正しかったと信じていた。春から村への入植が始まり、夏には採掘が開始される予定であったが、カルネル子爵領の沈黙に不気味さを覚える描写があった。

鎧アリの巣への初動と召喚獣による攻撃

白竜山脈で鎧アリの巣を発見したアレンは、召喚獣6体を用いて巣の外に鎧アリをおびき出し戦闘を開始した。さらに20体の獣D召喚獣を追加して大量の鎧アリと交戦させ、頭部への集中攻撃で数を減らしていったが、連携の甘さが課題となった。知力に応じた召喚獣の判断力と連携能力に着目し、知力400以上の鳥D召喚獣が他の召喚獣に指示できる仕組みを実証した。

巣の構造調査と連携型攻略の模索

巣穴の内部を調査するため、鳥D召喚獣4体を投入し、「共有」スキルで地図作成を進めた。行き止まりや分岐が多く、探索は困難を極めたが、巣穴の構造を把握し、遭遇した鎧アリを順次駆逐する作戦を展開した。召喚獣の再召喚や死骸の移動に苦労しながらも、アレンはゲーム的な感覚で地道に攻略を進めていった。

女王鎧アリの発見と大規模戦闘の準備

巣の最深部で女王鎧アリを発見したアレンは、知力400以上の召喚獣に「共有」して指示を送り、バフをかけた8体での攻略を開始した。暗闇の巣内では視界が制限されるため、アレン自身も鳥Dの召喚獣と共に突入し、大量の獣D召喚獣を現地で召喚して物量戦に持ち込んだ。

女王鎧アリ討伐とその影響

柔らかい腹部を狙った攻撃が功を奏し、召喚獣の集中攻撃により女王鎧アリを討伐することに成功した。規則違反の外泊となったが、復活のリスクを避けるためのやむを得ない行動であった。鎧の回収や巣内で光を反射する石を採取し、翌日帰館した。

討伐の報告と周囲の反応

帰館後、アレンは男爵らに女王鎧アリ討伐を報告した。男爵や執事、騎士団長はいずれも女王鎧アリを見たことがなく、討伐不可能とされていた魔獣であることが明かされた。討伐は多大な犠牲が必要なため現実的ではなく、過去に攻略例がなかったことから皆の驚きが強調された。

ミスリル鉱石の発見と採掘権の授与

アレンが持ち帰った石がミスリル鉱石であることが確認され、巣の位置も採掘地として好条件であることが分かった。アレンは、魔導書の記録をもとに迷宮の簡易地図を作成し、巣の管理に貢献した。これによりミスリルの第一発見者として認められ、採掘権の3割が与えられた。

富と責任の獲得

実際の収益は整備費や税などで減ることが説明されたが、それでも11歳にして莫大な権利を得たアレンは、正式にミスリル鉱脈の発見者として地位を確立することとなった。

第十二話  襲撃

ミスリル鉱脈と不安定な自由

アレンは12歳となり、グランヴェル館に来て4年が経過した。自ら討伐した鎧アリの巣は騎士団の管理下に置かれ、新たなミスリル鉱脈も豊富であることが判明した。採掘は翌年以降になる予定であり、将来的な不労所得も見込まれている。しかし、アレンはこの安定が本当に望んだものなのか疑問を抱いていた。過去の狩猟生活と比較し、目的の希薄さを感じていた。

王家の使者とカルネル子爵の来訪

館に王家の使者が訪れた際、カルネル子爵が同席していた。王家の使者は、両家が白竜山脈を共同管理する契約書を提示した。内容は領土およびミスリル鉱脈の利益を折半するものであった。男爵は困惑し、王都での確認を申し出たが、王家の使者はこれを拒絶し、圧力をかけた。使者と子爵は高圧的な態度で館を後にした。

館への襲撃とセシルの誘拐

アレンが雑務中に館内で悲鳴が上がり、セシルの部屋に武装した侵入者3名が現れた。セシルは拘束され、アレンが応戦するも圧倒された。従者を命の草で救った後、召喚獣による連携で反撃を試みたが、敵の煙幕によりアレンは意識を失い、誘拐された。

魔導船内での覚醒と情報収集

アレンは倉庫のような場所で拘束され目覚めた。視界を利用し鳥型召喚獣を召喚し、セシルが無事であることと、同じく拘束されていることを確認した。賊たちの会話から、館への襲撃が計画的であり、首謀者として「ダグラハ」という殺し屋の存在と、カルネル子爵が背後にいることが判明した。

魔導船の構造探索と陰謀の露見

召喚獣の探索で魔導船の構造を把握したアレンは、乗客エリアでカルネル子爵と王家の使者が密談している様子を確認した。会話の中で、契約強要と法務大臣の地位を巡る貴族間の権力争い、セシル誘拐による男爵への圧力、そして王都での告発阻止を狙った策略が明かされた。

拘束からの脱出と敵との戦闘

セシルが目覚めて暴れたことで状況が動き出す。アレンは召喚獣を駆使して賊を無力化し、次々と敵を戦線離脱させた。残る強敵ヘルゲイに対しても、バフやデバフを組み合わせて追い詰め、最終的に撃破した。

暗殺者ダグラハの出現と窮地

戦闘終了直後、ダグラハが現れ、アレンは彼の一撃で重傷を負う。「声まね」スキルでカルネル子爵の声を模倣し、隙を突いて逃走を図るも、ダグラハの圧倒的な戦闘力に追い詰められる。アレンはセシルを連れて魔導船の外扉へ向かい、地上までの距離を確認する。

飛翔による脱出決行

セシルの反対を押し切り、アレンは召喚獣の力と自身の耐久力を信じて魔導船からの飛び降りを決断した。カルネルの街への着陸直前、アレンはセシルを抱え、満天の星の下へと飛び出したのであった。

第十三話  逃避行

魔導船からの脱出と負傷の回復

アレンはセシルを抱えたまま100メートル以上の高さから魔導船を飛び降り、着地の衝撃で両足の骨を折ったが、命の草を用いて即座に回復した。セシルは無傷であり、アレンは耐久力の効果について再認識した。拘束を解いたのち、魔導船が着陸する前にその場を離脱し、アレンはセシルを背負って走り出した。

索敵と逃走、追跡者の正体

召喚獣による視界共有を通じて、アレンは魔導船内の状況を把握し、ダグラハが脱出に気付いたことを知る。ダグラハは斥候系の職業で、足跡を追う索敵スキルを用いてアレンの後を追跡し始めた。アレンは召喚獣のカード構成を調整し、逃走ルートを工夫することで追跡をかわし続けた。

街への潜入とダグラハの追従

アレンは街門で金貨を用いて夜間入城を果たし、宿には泊まらず路地を使ってダグラハを巻こうと試みた。屋根の上を移動することで索敵スキルを攪乱することに成功し、街外へ脱出。足跡を消す手段として石の召喚獣を用いた飛び石移動を活用した。

グランヴェル領への到達と追跡の再開

アレンはセシルを背負ったまま白竜山脈北端の関所を抜け、グランヴェル領へ入る。だがその直後、追跡していたダグラハが召喚獣の視界から消失し、アレンは警戒を強めた。セシルは逃亡に疲弊し気弱になるが、アレンは守ると約束し、再度索敵を強化した。

魔獣マーダーガルシュとの再戦

アレンは過去に戦ったマーダーガルシュが接近していることを察知し、セシルを避難させた上で迎撃に臨んだ。召喚獣による物量戦で戦況を優位に進めたが、最後はマーダーガルシュに捕らえられ、圧殺寸前まで追い込まれた。だが耐久力と命の草による回復で耐え抜き、短剣で片目を突き刺し、最終的に討伐に成功した。

ダグラハとの対峙と苦戦

直後、アレンはダグラハに再発見され交戦するが、速度と攻撃力に圧倒され、セシルも気絶させられた。アレンはスキルの仕組みと才能の本質について考察を深めながら、命の草を駆使して耐え続ける。スキル発動に魔力が必要であること、才能の有無がスキル習得に関与することを確信した。

騎士団長ゼノフの介入と決着

ダグラハとの戦闘が長引く中、アレンが召喚獣を通じて呼び寄せた騎士団長ゼノフが到着。ゼノフは剣豪としての圧倒的な耐久と力でダグラハの攻撃を受け止め、エクストラスキルによって一刀のもとに両断した。こうして、三日間に渡るアレンとダグラハの逃走と追跡の攻防は、ゼノフの一撃によって終焉を迎えたのであった。

第十四話  クエストの始まり

セシルの帰還とアレンの負傷

アレンとセシルは、ダグラハ討伐後にグランヴェルの街へ戻り、男爵家に再び迎え入れられた。感動の再会の中で注目されたのは、瀕死の状態で帰還したアレンであった。全身に負傷を負いながらも生還したアレンは、自身の回復と今後の備えについて思索を巡らせた。

クエストの真相とアレンの提案

晩餐の席でアレンは、誘拐事件の経緯とカルネル子爵の陰謀を報告した。男爵は怒りに震え、王城へ赴く決意を固めるが、アレンは採掘権の譲渡によって王家に働きかける「貴族の戦い方」を提案した。その姿に打たれた男爵は、自らの過去と信念を見つめ直し、アレンの提案を受け入れて王城へ向かった。

貴族の戦いと「グランヴェル家の変」

後に「グランヴェル家の変」と呼ばれる騒動が王国内で勃発し、カルネル子爵および関係者が処罰された。男爵は娘の復讐のために鉱脈の採掘権を全て王家に譲渡し、貴族間の不正を暴いた。王家と貴族の信任を得た男爵は、子爵へと昇格した。

館での生活とグランヴェル家の「勤め」

男爵の王都行きの間、アレンはセシルの護衛を務めた。騎士団による厳重な警備の中で、アレンは魔法の講師から世界情勢と魔王史、そしてグランヴェル家の「勤め」について教えを受けた。魔王による「大厄災」や5大陸同盟の成立、兵役義務と学園制度の成り立ちなど、壮大な歴史が語られた。

魔王の脅威と学園制度の背景

112年前に現れた魔王は世界を滅ぼす存在であり、魔王軍の侵攻によって幾つもの国家が滅亡した。勇者ヘルミオスの登場により反撃の兆しが見えるも、依然として戦況は厳しい。各国は兵力を養うため学園制度を整備し、貴族と王族に3年間の兵役義務を課した。

セシルの軍役とアレンの決意

男爵は国王にセシルの軍役免除を願い出たが拒絶された。そのため、男爵はアレンに、セシルとともに学園へ行き戦場で彼女を守ってほしいと依頼する。アレンはその願いを正式なクエストと捉え、命を懸けて受けることを宣言した。

平民としての誓いと子爵家の客人

アレンは従僕の身分を辞し、平民としてセシルとともに戦うことを望んだ。男爵はこれを受け入れ、アレンにグランヴェル子爵家の「客人」としての地位を与えた。これはアレンの行動に対して家が全責任を負うという強い信頼の証であった。

ヘルモードの真意と新たな旅立ち

アレンは、自身がヘルモードを選び転生した理由に気付き始めていた。それは滅びゆく世界を救う使命に他ならなかった。勇者に続く存在として、仲間探しと冒険を開始すべく、アレンは新たな一歩を踏み出した。

こうして、アレンはグランヴェル家の従僕から客人となり、舞台は学園都市へと移るのであった。

特別書き下ろしエピソード  英雄を目指す少年

初めてのボア狩りと特別な槍

アレンが村を離れて二年が過ぎたある秋の日、ドゴラは初めてのボア狩りに参加することとなった。父が鍛えた全鋼鉄製の四メートルの槍を与えられ、彼は後方からの攻撃役として戦列に加わることになった。村では、アレンが提案した戦法が今なお受け継がれており、ドゴラはその流儀の中で成長を始めた。

少年少女の同行と狩りの準備

狩りに向かう村人たちの中で、まだ十歳のドゴラとクレナだけが子供であった。クレナが狩りに出ると聞き、ドゴラもそれに続いたのである。ロダンやゲルダといった熟練の大人たちが指導するなか、村人たちはボア狩りの場へと向かって進んだ。途中、ゴブリンの減少が原因でボアが増えたのではないかという噂が語られ、不安を感じさせる一幕もあった。

ボアとの戦闘と才能の発現

狩りの現場では、予想以上に多くのボアが現れ、緊張が走った。グレイトボア三体の突撃に対し、ロダンやゲルダを中心とした防衛陣形が築かれた。その混戦の中、クレナが先走って敵に向かい、ドゴラもそれに続いた。彼らは槍を突き立てるも、ボアの厚い皮に阻まれて苦戦を強いられた。

経験値と成長の実感

戦闘が進む中、仲間が倒したボアによって二人は経験値を得て、身体能力が向上していった。クレナの槍が折れた後、彼女はドゴラの槍を共に握り、協力して攻撃を続けた。彼らの連携の結果、額を貫いてグレイトボアを討ち倒すことに成功した。額からの貫通による撃破はこれまで誰も成し遂げたことのないことであり、周囲の大人たちを驚愕させた。

才能の差と芽生える決意

同じ槍を握っていたからこそ、ドゴラはクレナの力が自分よりも遥かに上であることを理解した。目の前で繰り広げられたその才能に、彼は焦燥と羨望を覚える。クレナやアレンのような特異な存在に触れたことで、かつて騎士を目指していた彼は、英雄を目指すという新たな目標を見出すに至った。そして彼は、己の拳を強く握りしめながら、英雄への道を歩む決意を新たにしたのであった。

特別書き下ろし  キール学園へ行く

教会での生活と回復の才

年明けの寒さが厳しい中、とある町の教会では、少年キールがシスターと共に教会に訪れる人々の手助けをしていた。腕を負傷した男に対してキールは魔法「ヒール」を施し、治癒させた。教会では彼の働きが評価され、小さな子供たちの世話も含めて日々を真面目に過ごしていた。シスターから食費の助けとして銀貨を受け取り、教会の外で食料を買って帰路についた。

異変の訪れと不穏な訪問者

帰宅したキールは、自身の住む掘っ立て小屋の前に停まる豪華な馬車と騎士を伴う一団を目撃した。中に入ると、妹ニーナと子供たちが怯えた様子で男に囲まれていた。男は高価な衣装を身にまとい、明らかに貴族階級の人間であった。剣に手をかける騎士たちによって小屋の中は一時緊迫したが、キールが冷静に応対したことで場は沈静化した。

学園入学の打診と謎めいた提案

男はキールに対して僧侶の才能を持つことを確認すると、突如として学園への入学を命じ、渡航費および受験料として金貨十数枚を提示した。驚くキールに対し、男はその理由を語り始め、さらにキールの働き次第では将来的な見返りもあると暗示した。キールはその提案を受け入れ、学園への入学を決意するに至った。

こうして、貧しい教会で生活していた少年キールは、突如現れた貴族の意向により、学園都市への進学という新たな道を歩むこととなった。

その他フィクション

e9ca32232aa7c4eb96b8bd1ff309e79e 小説「ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~ 2」感想・ネタバレ
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