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小説「偽典・演義 3 ~とある策士の三國志 ~ 第二章 反董卓連合」感想・ネタバレ

どんな本?

「偽典・演義 ~とある策士の三國志~」は、日 本の社畜サラリーマンが突然古代中国に転生する物語。

転生先は三国志きっての策士である李儒。

彼は成り上がり者の大将軍・何進の部下に就活し、黄巾の乱が勃発する中国全土で自分の出世のチャンスを迎える。

この時に、後に暴君と呼ばれる董卓が現れ、物語は妄想炸裂な展開を向かえる。

このシリーズは、三国志の歴史的背景をユニークな視点から描いており、李儒の活躍や周囲のキャラクターたちのドラマが楽しめる。

読んだ本のタイトル

偽典・演義~とある策士の三國志~ 3
著者:仏ょも 氏
イラスト:流刑地アンドロメダ  氏

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あらすじ・内容

何進が謀殺された宮中では、
その跡目争いが繰り広げられる。
李儒はいち早く霊帝の息子、
劉協と劉弁を手中に入れ、
事件の弾劾裁判を開いた。
董卓を担ぎ上げ、関係者を次々と粛清。
その血なまぐさい結末とは…!?

「俺たちの戦いはこれからだ!」
ついに李儒が、本領を発揮する!!
第2回アース・スターノベル大賞奨励賞受賞作!

偽典・演義 3 ~とある策士の三國志 ~

一六 洛外でのこと

中平六年、洛陽郊外にて、李儒は何進の死に激怒し、復讐の準備を進めた。彼は涼州勢と合流し、劉弁と劉協の一団を保護したが、張譲は不在であった。李儒は袁紹の暴走に怒り、洛陽へ戻る決意をした。数日後、洛陽で粛清が始まることを予見していた。

一七 洛中でのこと

洛陽大将軍府で、孫堅と曹操は李儒の帰還を待ち、その間に袁紹の暴走が明らかになった。淳于瓊が西園軍を率いて洛陽に戻り、禁軍を殲滅する計画が実行された。李儒の指示に従い、粛清が進行し、袁紹とその支持者への対策が議論された。

一八 弾劾裁判

李儒は会議で袁紹の逃亡に対する責任を袁隗に追及し、袁家の討伐を主張した。趙忠が水銀中毒で死亡し、李儒は新帝劉弁の療養のために弘農へ下ることを決意した。袁紹とその支持者の粛清が進行し、袁隗は責任を問われることとなった。

一九 人事のこと

李儒は孫堅に南郡都督と三郡の太守職を命じ、曹操を大鴻臚に、董卓を大将軍に任命した。これにより、董卓の権力基盤が強化され、李儒の策が進行した。荀攸は李儒の計画に疑問を抱きつつも、董卓の任命を受け入れることとなった。

二〇 反董卓連合の足音

初平元年、袁隗と名家の粛清が行われ、反董卓連合が結成された。董卓は反董卓連合の動きを警戒しつつも、李儒の策に従っていた。呂布が名家の粛清に参加し、荀攸は反董卓連合の形成を予測していた。李儒の計画は漢の再興を目指して進行していた。

弘農でのこと

李儒は何進からの任務を果たし、董卓と合流して洛陽へ戻った。弘農の人々は不満を抱いていたが、李儒の弟子である司馬懿と徐庶は、紙の制作に従事しつつ詩の制作にも取り組んでいた。この出来事は後に英雄となる若者たちの一幕であった。

高祖の風

青州で袁紹が反董卓連合を結成しようとしている頃、劉備と簡雍は戦場で死んだふりをして逃れた。劉備は幽州の公孫瓚のもとで働くことを決め、義兄弟の関羽と張飛と合流した。簡雍は劉備の決断に懸念を抱きつつも、彼の説得を諦めた。

その頃の孫家

長沙郡では孫策が父孫堅の代理として執務を行っていた。孫策は周瑜の助けを得て業務をこなし、江南の現実を見て書簡処理の重要性を理解した。孫堅が帰還後、零陵、武陵、桂陽の統治を任され、荊州刺史の劉表と対立する南郡都督となった。

弟子たちの考察

先帝の死後、洛陽の権力構造は変化した。袁紹の暴走により、名家閥は追い詰められ、董卓、王允、楊彪が権力を握った。反董卓連合が結成されたが、その行動は愚行と映り、司馬懿と徐庶は李儒の計画が漢を揺るがすものと確信していた。

感想

この本は、李儒の冷徹な策謀と、その計画が次々と実行される様子が印象的であった。
彼の指示に従う董卓や、その背後で動く名家たちの動きが緻密に描かれていた。
特に、袁紹の反董卓連合がどのように結成され、どのように進軍していくかが緊張感を持って描かれている点が非常に面白い。

何進の死後の権力闘争と、その背後に潜む李儒の陰謀を描いていた。
李儒が董卓を利用して権力を握り、宦官たちを巧妙に粛清する様子が非常に生々しく描かれていた。
李儒が宦官に水銀を飲ませて殺すシーンでは、その冷酷さが際立っていた。
また、劉弁が愚鈍と言われていた原因が水銀中毒であったことが明らかになる部分も驚きであった。

荊州の孫堅や無職の曹操が新たな役職に就くシーンも興味深い。
孫堅は南部の郡長として抜擢され、曹操も役職を与えられる。
彼らが新たな役職でどのように活躍するかが期待される一方で、袁紹が反董卓連合を結成し、洛陽へ兵を進める展開も緊張感を高めていた。

この物語は、歴代の漢皇帝に早死にが多い理由として、宦官たちによる水銀中毒説を取り入れている点が新鮮であった。
また、欲にまみれた宦官や名家たちの心理描写が非常に滑稽であり、彼らの自己顕示欲がいかに肥大しているかがよくわかった。

主人公の李儒がワーカホリックのように働き、三国志のアノ英雄たちに書類という武器を手にパワハラをかます姿も見どころであった。
彼の策謀がどのように展開し、どのような結末を迎えるのか、最後まで目が離せない作品であった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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備忘録

一六  洛外でのこと

中平六年(西暦189年)9月、洛陽郊外にて。
何進の死により苦労が水の泡になったことに怒りを覚える李儒が、董卓率いる涼州勢を迎える準備をしていた。
李儒が何進に仕官したのは、彼が最強の勝馬と確信していたからである。

最初は曹操や袁紹に仕官を考えたが、彼らの下積み期間が長く無駄な苦労が多いと判断したため、何進に全てを賭けた。
何進は名家や宦官に蔑まれ、孤立していたが、その潜在力を見抜いた李儒は、彼の下で仕事を続けた。

しかし、何進が死んだことで、李儒は怒りに満ちていた。この怒りは、策を潰した者たちと自分の愚かさへの怒りであった。
彼は復讐の対象として張譲を選び、彼らを痛めつけることを決意した。

董卓ら周囲の人々は、李儒の怒りに戸惑いながらも、彼の指示に従っていた。

弘農で董卓と合流し洛陽へ急ぐ中、洛陽から逃げ出してきた一団を発見した李儒は、それが張譲により連れ出された劉弁と劉協のいる一団だと判断し、即席で収容の準備を整えた。
李儒の配下である李厳が率いる禁軍が一団を迎え入れたが、その中に張譲どころか宦官は一人も居なかった。
状況を把握するため、李儒は李厳から洛陽での出来事を聞いた。

袁紹が暴走し宮中に武装侵犯したことが明らかになった。
李儒は、袁紹が何進が殺された後に宮中へ武装侵犯した史実と重ね合わせ、その行為が完全なる犯罪行為であることを認識していた。
李儒は禁軍の指揮権を持つ袁紹を野放しにした失敗を痛感した。

李厳から伝えられた何進の遺言で、李儒は何進の孫の面倒を見ることを決意した。
何進の孫は何晏であり、李儒は彼を弘農で育てることにした。
董卓に対しては、李儒の指揮下に入るよう命じ、董卓はこれを受け入れた。

李儒は、淳于瓊に対して禁軍を拘束するよう命じ、李厳には劉弁と劉協に事情を伝えるよう指示した。
董卓には涼州勢の指揮権を与え、皇帝と皇弟を守る近衛兵とするよう指示した。

李儒は袁紹の行動に怒りを覚えつつ、洛陽に戻り策を練ることを決意した。
数日後、洛陽には粛清の嵐が吹き荒れることになる。

李儒は、劉弁と劉協がいる一団を収容する準備を整えたが、張譲は見当たらなかった。
董卓が急いで天幕から出ようとするのを止め、今後の予定を説明した。
洛陽で袁紹が暴走し、何進や張譲が死亡している可能性が高い状況で、李儒は董卓に洛陽へ入城し、宮中に入る計画を伝えた。

李儒は自身が光禄勲として禁軍を統べる資格を持つため、董卓とその配下を近衛兵として任命できると説明した。
そして、袁紹が使った理屈を利用し、自分が禁軍を裁いた後に董卓に自分を裁かせる計画を立てた。
これにより袁隗や袁紹の逃げ道を断つ狙いがあることを説明した。

董卓はこの計画に納得し、李儒の指示に従うことを了承した。
李儒は淳于瓊に禁軍を拘束するよう命じ、李厳には劉弁と劉協に事情を説明させた。
董卓の配下にも、近衛兵としての役割を徹底するよう指示を出した。

李儒は、自身の罷免と袁隗や袁紹の処刑を通じて計画を実行することを決意し、董卓もその計画に全面的に協力することを約束した。
董卓は、この計画が自身の将来にどのような影響を与えるかを理解しながらも、李儒の指示に従うことを選んだ。
後に董卓は、洛陽での政治闘争に苦しむことになるが、それはまだ先の話である。

李儒は劉弁と劉協に挨拶し、袁紹の件について謝罪した。
劉弁は李儒の謝罪を受け入れたが、劉協は納得せずに抗議した。
李儒は自分が不在だったとはいえ、袁紹の行動の責任を負うと述べ、罷免と謹慎処分を提案した。
これにより、袁隗や袁紹を逃げ道なく追い詰める計画であることを説明した。

劉弁と劉協は李儒の提案に同意し、袁紹やその一族を処罰することを決めた。
さらに李儒は、劉弁が毒に冒されていることを告げ、治療を提案した。
劉弁は最初は驚いたが、最終的に李儒に治療を任せることにした。

李儒は劉弁の療養に付き添うことを大義名分に、袁隗たちの連座を避けることに成功した。
劉弁の治療に全力を尽くしつつ、李儒はこれからの行動を決意した。
彼は何進を殺した袁紹に対する復讐を誓い、外道としての新たな一歩を踏み出したのである。

一七  洛中でのこと

洛陽大将軍府で孫堅は曹操と再会した。孫堅は先帝の葬儀に参加するために上洛し、何進の死についての説明を求めるため大将軍府を訪れた。
そこで出迎えたのが曹操であった。曹操は現在の洛陽の状況を説明し、大将軍府が動けない理由は劉弁と劉協の安否確認と、李儒の帰還を待っているからだと述べた。

孫堅はこれに納得し、大人しく待つことにした。その間、大将軍府の幹部たちは李儒が権力を欲していないことを知っており、李儒の判断を待っていた。

そして二日後、淳于瓊が洛陽に帰還し、洛陽を揺るがす事態が訪れた。曹操と孫堅は、この情報を元に自分たちの行動を考え始めた。
袁紹が引き起こした事件は、多くの英雄たちを巻き込みながら次の段階へと進んでいくこととなる。

西園軍の旗を掲げて入城した淳于瓊は、宮城ではなく大将軍府を訪れた。
周囲は一瞬緊張したが、李儒の書簡を持って荀攸へ報告に来たことが分かり、安心した。
李儒は劉弁と劉協を洛外で確保し、禁軍を捕えよと命じていた。

荀攸は劉弁と劉協が宮中から抜け道を使って逃れていたことに驚いたが、洛陽でその予想をしていた者はおらず、誰も荀攸を責めることはできなかった。
曹操も同様に、宮中に匿われていると考えていたため、抜け道を使った逃亡は想定外であった。

袁紹が抜け道を発見できなかった理由は多々あり、彼の注意力の欠如、興奮状態、抜け道の隠蔽、死体の多さ、友人の負傷などが重なった結果であった。
これにより、李儒が幼い皇帝とその弟を確保することに成功し、袁隗らは頭を抱えることとなった。

荀攸は李儒が劉弁と劉協を洛外で確保したことを確認し、禁軍の捕縛に協力することを決定。
淳于瓊と協力して宮中を囲み、西園軍が禁軍を捕えるという作戦を立てた。
淳于瓊もこの方針に同意し、準備を進めることとなった。

荀攸は李儒の精神状態を気にしていたが、淳于瓊は李儒が「ただで死ねると思うな」と呟いていたことを伝えた。
これは明らかに袁紹とその支持者に向けられたものであり、荀攸はこれから起こるであろう惨事を想像し、袁家の近くにいる身内を避難させる決意を固めた。

李儒の命令を受けた淳于瓊が率いる西園軍は、宮中に踏み込み禁軍を殲滅した。
李儒の命令は捕縛ではなく滅ぼすことであり、禁軍は圧倒的な戦力差で一方的に殺された。
西園軍の兵は名家出身者で、実戦経験豊富で訓練された精鋭だったが、禁軍には実戦経験のない者が多く、練度や指揮官の差が大きかった。

淳于瓊が率いる西園軍は、禁軍を完全に殲滅し、宮中の秩序を回復した。
李儒と荀攸の指導の下、大将軍府は迅速に対応し、禁軍を排除するための準備を整えた。
曹操と孫堅はその手際の良さに感心し、大将軍府の組織力を再確認した。

荀攸は淳于瓊に宮中の不穏分子を排除させ、李儒の指示に従って行動を進めた。
袁家への対応については、皇帝の帰還を待ち、慎重に進める方針であった。
曹操と孫堅は、袁家が皇帝の前に現れるかどうかを懸念しつつも、袁隗が交渉の余地を求めるだろうと予想した。

最終的に、袁家がどのような対応をするかに注目が集まり、李儒と大将軍府の動向が重要な鍵となった。
袁紹が逃亡する可能性もあり、曹操はその状況に備え、情報を集めていた。

西園軍による宮中の粛清後、洛陽は表面的に落ち着きを取り戻したが、各勢力の策謀は続いていた。
袁家は助命を求め、李儒に責任を転嫁しようとしていた。
対して大将軍府や軍部は組織の自浄や諸侯の対応に追われていたため、動きが鈍かった。
そんな中、李儒は洛陽から弘農に下がると宣言し、荀攸を驚かせた。

李儒の狙いは、何進の策を実行し、袁家と宦官を滅ぼすことであった。彼の辞任がその鍵となり、劉弁や董卓の許可を得ていた。
また、劉弁の療養のために弘農に下がることも理由であった。
荀攸は李儒の提案に疑問を抱くが、劉弁の病状を聞かされて納得せざるを得なかった。

李儒は劉弁が水銀中毒に侵されていると説明し、荀攸を驚愕させた。
彼の策略により、洛陽の情勢はさらに複雑化していくこととなる。

李儒は荀攸に対して、水銀中毒による劉弁の療養のために洛陽を離れる意図を説明していた。
荀攸は当初驚きつつも李儒の提案に理解を示したが、同時に劉弁の療養中も引き続き李儒に書簡を送る必要性を指摘した。
このことで、李儒は隠居を諦めざるを得なくなった。

李儒は劉弁の療養を理由に洛陽を離れたいと考えたが、荀攸の引き継ぎに関する指摘によって、その計画は頓挫した。
李儒は結局、現職のまま職務を続けることとなり、荀攸の思惑通りに事態が進んだ。

李儒が役職を返上できないことに失望している中、荀攸は大将軍府での作業に集中していた。
一方、董卓の元には袁紹が訪れ、董卓を責め立てた。
董卓は袁紹を相手にせず、背後にいる袁隗の策略に警戒した。
袁隗は袁紹を利用して粛清対象を増やそうとしていると考えたのである。

洛陽内部での袁紹の評価は二極化していた。宦官たちは彼に対して複雑な感情を抱き、名家や軍部は敵視していた。
特に何進の死によって、彼に対する怒りは強かった。
大将軍府の内部でも、何進の部下と単なる所属者で反応は異なったが、基本的には袁紹に対して否定的であった。

荀攸は漢の再興を目指しており、袁紹の行動に怒りを感じていたが、法を破るほどではなかった。
李儒もまた、何進の死によって計画が狂ったことに怒りを覚えていた。

最終的に、袁紹の動きが袁隗の策であると誤認され、諸勢力は警戒を強めた。
袁紹は謹慎を命じられながらも、自由に動き回っていた。

大将軍府で孫堅は曹操に袁紹の動きの意図を尋ねた。
曹操は、袁紹が被害を拡大させることで粛清を躊躇させる策略を取っていると答えた。
しかし、なぜ大将軍府がそれを黙って見過ごしているのかはわからなかった。
孫堅は、大将軍府が新年の式典や諸将の迎え入れの準備に忙しいため、粛清を保留している可能性を示唆した。

曹操はこの考えを考察し、袁家の関係者を全て粛清すれば、朝廷の文官が大量に失われ、各種行事の執り行いが難しくなることを理解した。
新年の宴や新帝の即位に影響を与えることを避けるため、大将軍府が一時的に動かずにいることも説明がつくと考えた。

孫堅の仮説によれば、袁家は新帝即位に絡めて恩赦を引き出すことを狙っている可能性が高い。
これにより、地方にいる袁家の関係者も洛陽に呼び込むことができる。
もし交渉が決裂すれば、地方の人間まで巻き込んだ大粛清が起こる可能性があると曹操は考えた。

しかし、曹操と孫堅が導き出した答えは正解ではなかった。
数日後、曹操は更なる驚きを経験することになる。

李儒は袁紹を「天才一家に生まれた馬鹿のボンボン」と評価している。
袁家は絶大な権力を持つ名家であり、袁紹も優れた教育を受けたが、能力を活かせなかった。
袁隗が過剰に愛情を注ぎ過ぎたため、袁紹は自分が袁家の正統な世継ぎと勘違いして育った。
そのため、袁術に従うことを拒否し、何進の下に送られた際も、自分が軍部を掌握するべきだと誤解し、何進と張譲を殺害した。
結果として袁家内部で袁紹への不満が増え、彼の行動は大将軍府の制裁を受けることになった。

袁紹は洛陽から逃亡し、曹操がその逃亡を幇助したことが判明。
曹操はその責任に苦しみ、職務を休まざるを得ない状態に陥った。
一方、袁隗は若い男に頭を下げ、袁紹の失態に対する責任を問われる立場に追い込まれていた。
かつて政治の化生と称された袁隗も、今やその権勢を失ってしまった。

一八  弾劾裁判

一一月上旬、洛陽で流血事件の後片付けが済み、何進が呼び寄せた諸侯への対応も一段落した。
ある日、宮城内の臨時協議場に、現在の洛陽(漢帝国)を動かす要人たちが集まり、今後の方策を議論することとなった。

集まったのは、九卿の李儒、軍部の王允、大将軍府の荀攸、宦官の趙忠、文官の袁隗である。
この会合では、特に先日発生した「袁紹の逃亡」事件が議題とされていた。
李儒が会議の冒頭で袁隗に対し、「袁紹を逃がしたこと」に関して責任を追及する発言をすると、袁隗は深く頭を下げるしかなかった。
王允や趙忠も、袁隗を責め立て、袁紹および袁家の討伐を強く主張した。

荀攸は、討伐軍を編成する前に、袁紹を逃がした協力者の特定が必要であると提案した。
趙忠や王允もこれに同意し、罪状の明確化と協力者の排除を進めるべきとした。
しかし、李儒が袁隗に「なぜ袁紹を自由にさせていたのか」と質問すると、袁隗は困惑した表情を見せた。
袁隗は、袁紹を自由にさせたのは、袁家を守るためであったが、それを正直に話すことはできなかった。

袁紹が逃亡した際の状況について、袁隗は「大将軍府の意向を受けた者たちが関与しているのではないか」と疑っていたが、その疑念を表に出すことはできなかった。
李儒は冷静に質問を繰り返し、袁隗はその威圧感に恐怖を覚えた。

協議の場では、李儒の落ち着いた態度がかえって威圧感を強め、参加者たちに恐怖を与えた。

結果として、袁隗は李儒の質問に答えるしかなく、袁家の運命は不透明なままであった。

李儒が会議で発言し、袁隗が震える様子を見て、彼の立場を考える。
袁隗は、問題を起こした甥を役職に就かせたが、その甥が暴走し、社長を殺害し、逃亡した形である。
袁隗にとって、この事態は非常に困難なものであり、胃が痛む思いであるが、それは彼らの教育の結果であり、李儒は容赦しない。

李儒は袁隗に対して質問をし、他の出席者もこれに賛同する。
荀攸、趙忠、王允はそれぞれ同意し、袁隗は沈黙する。
李儒は新帝の即位に際しての人事について提案し、荀攸が即座に同意するが、趙忠や王允は驚く。
李儒は軍を興すために組織を整える必要があると述べ、王允も理解する。

李儒は三公と大将軍の人事を提案し、司空に楊彪、司徒に王允、太尉に曹嵩を推す。
趙忠は曹嵩の選任に喜ぶが、李儒は冷静に理由を説明し、全員が納得する。
大将軍には董卓が推され、李儒の計画が進む。

次に、袁家の処罰について議論が始まる。
袁紹とその妻子、袁隗と袁逢の家族が処刑され、他の親族には恩赦が出される。
趙忠はこの処罰が軽すぎると反対するが、李儒は法に基づく判断を強調し、趙忠を黙らせる。

最後に、袁隗に引き継ぎ業務を行うよう指示し、引き継ぎを怠れば恩赦の範囲が狭まることを告げる。
袁隗が引き継ぎを確約し、会議は終わりに近づく。
李儒は次の段階、弾劾裁判を行う準備を整える。

李儒が会議の次の議題を紹介し、荀攸が驚きの表情を見せる一方、趙忠・王允・袁隗は戸惑っていた。
李儒は陛下と劉協、太后が趙忠に褒美を与えると発表し、趙忠は驚きながらも喜んでいた。袁隗や王允も羨ましさを感じた。

李儒が呼びかけると、何太后が登場し、全員が頭を下げた。
何太后は「非公式だから楽にしろ」と告げ、李儒はあっさりと頭を上げて話を進めた。
趙忠は焦りながらも冷静さを取り戻し、何后が与える褒美を受け取るために跪いた。

何后は趙忠に盃を渡し、その中には銀色の液体と赤い物が入っていた。
それは不老長寿の霊薬である水銀と辰砂の混合物だった。
趙忠は絶句し、王允と袁隗が驚きの声を上げた。
荀攸と李儒は距離を取り、荀攸は李儒の冷酷さに恐怖を感じていた。

李儒が趙忠の死を知り、その詳細を確認した。趙忠は不老不死の霊薬を飲み、水銀中毒で死亡した。
李儒は何太后に、趙忠の死を毒によるものと公にするのではなく、霊薬の力に耐えられなかったと記録するよう提案した。

何太后は当初宦官全員を処刑したいと思っていたが、李儒は名家の処刑を先行させ、その後に宦官を処罰するべきだと説得した。
また、彼女が弘農へ行くのを拒む理由として、劉弁が一人で毒と戦う必要があると説明した。
李儒は劉弁と共に弘農へ行くことを決定し、そこで療養させることにした。

李儒は新しい役職を増やされ、負担が増えた。数日前、李儒は孫堅、曹操、董卓に新たな役職を告げ、彼らは驚愕しつつもその役割を受け入れた。
孫堅は南郡都督、曹操は大鴻臚、董卓は大将軍となったが、それぞれがその重責に驚いていた。

一九  人事のこと

11月、洛陽の大将軍府にて、李儒が孫堅、曹操、董卓に会い、謝罪と共にそれぞれに対する新しい任務を告げた。
孫堅には長沙の政に関する書簡が渡され、さらに南郡都督として武陵、零陵、桂陽の三郡も治めることが命じられた。
孫堅はその重責に驚愕し、曹操と董卓は彼の負担を心中で哀れんだ。
李儒の冷徹な計画とその執行に対して、同僚の荀攸は恐怖を感じていた。
李儒の行動を抑制できる者がいない現状が明らかになり、皆がその影響を受けることになった。

李儒は孫堅に南郡都督と三郡の太守職を追加で命じた。
孫堅はこの突然の出世に戸惑い、自分には功績もないと疑問を呈するが、李儒は「これから功績を立てる」と説明する。
現在の荊州は劉表の政策により治安が悪化しており、特に長江流域が酷い状況である。
李儒は劉表が異民族をまともに扱えないと判断し、武力に定評のある孫堅を適任とした。
劉表もこれを承認し、孫堅に江陵を拠点とするよう求めた。
孫堅はこの人事に嵌められたことを理解し、今後の職責に対する覚悟を決めた。

李儒は、孫堅と曹操に次いで董卓に新たな役職を告げた。
董卓は警戒するが、李儒はそのまま進める。
李儒は董卓を大将軍に任命することを発表し、三人は驚愕した。
董卓は自分の立場に不安を感じるが、李儒はその必要性を説明する。
李儒の計画により、董卓は新帝の信頼を得て大将軍に就任することが決まる。
董卓は渋々ながらも受け入れることを決意する。
李儒の策は着実に進行し、政略と謀略の果てに多くの人々を地獄に陥れることになる。

李儒は、孫堅、曹操、董卓の三人が新たな役職を受け入れたことを幸いとし、迅速に処理を進めるため執務室に向かった。彼らが心変わりする前に、計画を実行する必要があるからである。

荀攸は李儒の計画に疑問を持ち、董卓の大将軍就任について質問した。李儒は荀攸の懸念を理解しつつも、董卓の任命には政治的な意図があると説明した。荀攸の疑問を晴らすため、李儒は個別に大将軍府の幹部と面談を行い、彼らの意見を聞くことにした。

さらに、李儒は袁術を恩赦の対象にし、袁紹との対立を煽ることで袁家の勢力を削ぐ計画を進めていた。荀攸はこの策に疑問を持つが、李儒は新帝劉弁の意向としてそれを押し進めることを強調した。

数日間にわたり、李儒は大将軍府の関係者と個別面談を行い、彼らの意見を収集した。この過程で、関係者たちは緊張し、胃痛を覚えることになった。

二〇  反董卓連合の足音

初平元年(西暦190年)1月下旬、新帝即位後の新年行事が滞りなく終わった後、袁隗をはじめとする袁家の関係者と名家の人々が、大将軍董卓によって粛清された。
本来ならもっと多くの人が処刑されるところだったが、司空楊彪の恩赦の求めにより罪一等を減じられ、司徒王允の布告により、名家の恨みは新帝ではなく董卓に向けられた。

董卓は粛清された名家の財産を没収し、残された女たちを売り払うなどして、家を断絶させた。
また、名家を支援していた商人からも財を徴収し、反発した者たちは全財産を失った。
これにより、多くの名家の人々が洛陽を脱出し、地方に悲惨な状況を訴えた。

しかし、粛清の原因を作ったのは袁紹とその支持者たちであり、董卓の行為は法に則ったものである。
名家の誇りと董卓への不満から、彼らは「董卓が帝を脅している」と思い込み、その悪評は広まっていった。
結果、帝を武力で脅し、勅を操る董卓への不満が高まった。

新帝が即位した初平元年、漢にはまだ多くの火種が残っていた。

初平元年(190年)2月、洛陽の大将軍府で、幷州刺史の丁原が董卓に洛陽周辺の軍部動向を報告していた。
董卓は大将軍としての威厳を保ちながらも、丁原には気楽に接するよう促した。
董卓は李儒の助力に頼りつつ、彼の機嫌を損ねないよう注意を払っていた。

丁原は洛陽の名家が董卓を悪く言い、地方での反発を懸念していたが、董卓はすでにそれを織り込み済みであり、特に問題視していなかった。
董卓は自分の後ろ盾が新帝であることを強調し、名家を敵として排除する意志を明確にした。

丁原は董卓の計画を理解し、兵の再編成について協力することを約束した。
董卓は丁原の兵を名家の粛清に参加させる意図を示し、丁原もこれに感謝した。

董卓のこの配慮が後に彼らを追い詰める結果になることは、まだ誰も予想していなかった。

二月下旬、洛陽では呂布率いる幷州勢が名家の粛清を行っていた。
彼らは建物を破壊し、財産を奪い、抵抗する者を殺し、最後には火を放つという荒々しい行動を繰り返していた。
呂布は日頃から名家への怒りを募らせており、粛清を楽しんでいた。

しかし、呂布の粛清は過剰であり、実際には粛清対象ではない家も攻撃してしまっていた。
呂布の部下たちは無秩序に暴れまわり、その結果、無実の家が破壊されてしまった。

その時、大将軍府から派遣された張遼が呂布を制止しに来た。
張遼は呂布に、彼が攻撃している家は粛清対象ではなく、恩赦を交渉中の家であることを伝えた。
呂布は自分の行動が誤りであったことに気づき、後悔と混乱の中で冷や汗を流していた。

丁原の配下が粛清先を誤る事件から数日後、大将軍董卓と丁原は詰問の使者を迎えていた。
若い使者に対して頭を下げる二人には不満はなく、失態に対して恐縮していた。
使者は、呉家が恩赦予定の家でありながら襲撃されたことを伝え、特に橋瑁が騒いでいると指摘した。

李儒は、今回の事件が名家の陰謀であると説明し、丁原に対して二つの選択肢を提示した。
一つは実行者を処刑すること、もう一つは自身が責任を取って辞職し処罰を受けることだった。
丁原は後者を選び、自分の息子を董卓に託すことを決意した。

数日後、丁原は処刑され、その息子は董卓の養子となった。
息子は罵られることもあったが反論することはなかった。

李儒はこの結果を見て、指揮系統の一本化が必要だったと理解し、橋瑁の動向を注視することにした。

三月初め、新帝劉弁は洛陽を離れ弘農へと移ることを宣言した。それに伴い、李儒や旧西園軍も洛陽を離れた。洛陽には劉協が統治を続け、楊彪と王允が政を回していた。董卓は軍を預かり、名家の粛清や軍の再編成に忙殺されていた。

三月下旬、荀攸が反董卓連合の動きを報告した。橋瑁の呼びかけに応じたのは孔伷、劉岱、張邈、張超、袁遺らであった。呂布は失態を犯したことを反省し、董卓の養子として書類仕事を手伝っていた。

荀攸の予測通り、反董卓連合は反何進連合の勢力をそのままシフトさせたものであった。袁紹や袁術も加わり、連合は約十五万から二十万の兵を集めたが、董卓はこの勢力を恐れていなかった。反董卓連合の結成自体が、漢の再興を図る李儒の策によるものであった。

李儒は数年前から董卓や孫堅、丁原を懐柔し、涼州、幷州、幽州の兵を味方に付けていた。董卓と荀攸は李儒の智謀と性格に恐れを抱いたが、李儒の策が反董卓連合の形成を促し、漢の再興への道筋を整えていた。

読切り
弘農でのこと

七月に李儒は何進から弘農での任務を授かったが、任務を終えるとすぐに董卓と合流し洛陽へ帰還した。
この件で最も被害を受けたのは董卓であったが、弘農の人々も不満を抱いていた。特に不満を持ったのは司馬懿という十歳の少年であった。

司馬懿は、李儒の弟子として与えられた紙の制作の仕事に取り組んでいた。
彼と十四歳の徐庶は、李儒の指示で紙を作る作業を続けていた。
李儒は曖昧な知識で紙の作り方を教えたが、二人はそれに従って作業を進めていた。

司馬懿は李儒から「情緒的な感性を磨くように」と宿題を出され、詩の制作にも取り組んでいた。
彼は自信を持って詩を完成させたが、その詩は「名月や。おぉ名月や。名月や」という内容であった。

李儒は司馬懿の詩を評価しづらく、頭を抱えたが、偶然その詩を耳にした大宦官の孫は驚愕した。
この詩は後に様々な場所で影響を与えることとなった。

この出来事は、後に英雄と呼ばれる俊英たちの若き日の一幕であった。

高祖の風

初平元年、青州での混乱の中、袁紹が反董卓連合を結成しようとしている頃、劉備と簡雍は戦場で死んだふりをして敵から逃れていた。
劉備は、関羽や張飛と離れ、簡雍と共に死体に紛れて隠れていたのだ。
戦が終わり、周囲が静かになったところで、二人は立ち上がり会話を始めた。

簡雍は劉備に対し、これ以上の無計画な行動は危険であると説得し、定職に就くことを提案した。
特に、劉備の母親のことを思えば、犯罪者として追われる生活を続けるのは良くないと訴えた。
劉備も一時的に考え込むが、結局は「幽州の兄ぃ」こと公孫瓚のもとで働くことを決めた。

簡雍は劉備の決断に懸念を抱きながらも、劉備が義兄弟の関羽と張飛と合流するのを見届けた。
劉備の楽観的な行動に対し、簡雍は深い溜め息をつきながらも、彼の説得を諦めた。

この後、幽州で何が起こるかは未知数である。

その頃の孫家

初平元年、長沙郡の執務室では、郡太守の孫堅が洛陽に赴いている間、長子の孫策が彼の代理として執務を行っていた。
弱冠十四歳の孫策は書類仕事を苦手としていたが、親友の周瑜の助けを得て何とか業務をこなしていた。

孫策は父孫堅から「留守を任せたぞ」と言われたことと、周瑜の支えによって、膨大な書簡の処理を続けることができた。
周瑜は孫策を外に出し、現実の状況を見せることで、彼のモチベーションを維持させたのである。
孫策は遠乗りを通じて、江南の地が水害や飢饉に苦しんでいる現実を目の当たりにし、それが書簡処理の重要性を理解させた。

孫策は父が帰ってくれば仕事が減り、自分も楽になると信じて頑張っていた。
しかし、現実は厳しく、孫堅が帰ってきたときには零陵、武陵、桂陽の統治も押し付けられ、さらに荊州刺史の劉表と対立する南郡都督の役職まで任じられてしまう。
孫策が目を輝かせて語った「父上が帰ってきたら遠乗りをする」という希望は、叶わぬものとなりそうである。

弟子たちの考察

先帝の死から一年が経過した洛陽では、権力構造が大きく変わっていた。
まず、大将軍何進が死亡し、次いで宦官の趙忠も毒殺された。
残った宦官たちも排除され、権力は名家閥に移るかと思われたが、袁紹が宮中を侵犯したことで名家閥も追い詰められた。
袁紹の行動は帝室と名家閥に対する裏切りであり、結果として洛陽では新たに董卓、王允、楊彪が権力を握ることとなった。

董卓は洛陽の慣習を無視して罪人となった名家を粛清し、これに反発した名家が反董卓連合を結成した。
この連合は名家の逆恨みから生まれたものであり、袁紹を首魁としていたが、彼の行動に義も理もなく、反董卓連合の行動は愚行としか映らなかった。

司馬懿と徐庶はこの状況を理解しており、反董卓連合が敗北することを確信していた。
彼らにとって重要なのは、李儒が戻ってくることであった。
李儒は反董卓連合を利用して大きな計画を進めており、司馬懿はその計画が漢を揺るがすものであることを感じ取っていた。

小説【ささピー】「佐々木とピーちゃん 9巻」最新刊 感想・ネタバレ

どんな本?

佐々木とピーちゃん』とは、ぶんころり 氏による日本のライトノベル。
イラストはカントク 氏が担当しています。MF文庫J(KADOKAWA)より2021年1月から刊行されている。

この作品は、冴えない中年会社員(社畜)の佐々木が、ペットショップで購入した文鳥が異世界から転生した高名な賢者だったことで人生に大きな転機が訪れることになるというストーリー。
佐々木と文鳥のピーちゃんは、異世界と現代を行ったり来たりしながら、理想のスローライフを目指す。
しかし、彼らの前には異能者や魔法少女、ご近所JC、同僚JK、貴族、ロリババア、王子など、様々なトラブルメーカーが現れる。

この作品は、異世界ファンタジーと異能バトルと年の差ラブコメ(?)をミックスした、属性ジャンル全部乗せのエンターテイメント作品。

魔法や異能力、商売や交渉、恋愛やデスゲームなど、多彩な要素が盛り込まれている。

この作品は、2024年1月よりテレビアニメが放送。

ピーちゃんのお口ふきふきししてみたい!!

読んだ本のタイトル

佐々木とピーちゃん9 動画投稿サイトでPVバトル勃発! ~お隣さんがVTUBERとして成り上がっていくようです~
著者:ぶんころり 氏
イラスト:カントク 氏

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あらすじ・内容

PVバトル勃発!? TVアニメ第2期も制作決定!

通学先でのいじめを苦にして自宅に引き籠もった十二式。
そんな彼女が次に目をつけたのは動画投稿サイトだった。
ネット越しに不特定多数からチヤホヤされんとする機械生命体。
彼女の危うい情熱に対して、二人静から家庭内PVバトルが提案される。
地球のネット文化を守るべく、佐々木たちはルールを定めて投稿動画の再生数を競うことに。
各々が自らの強みを活かして活動を開始。
そうした只中、人生も空っぽのお隣さんは困窮していた。
生まれてこの方、毎日を空虚に過ごしてきた彼女には、他者に誇れるものなど何もない。
そんな彼女に救いの手を差し伸べたのは、諸悪の根源にして一家の問題児である十二式。
彼女の手引きにより、お隣さんはVTuberとしてネットの海へ羽ばたき、ある才能を開花させていく――。

佐々木とピーちゃん 9 動画投稿サイトでPVバトル勃発! ~お隣さんがVTUBERとして成り上がっていくようです~

〈ユーチューバー〉

天使と悪魔の代理戦争
天使と悪魔の代理戦争で二人静は天使の使徒を倒し、ルイス殿下を復活させた。殿下は元の姿を取り戻し、日本に滞在することになった。エルザと十二式はユーチューバーとして活動を始め、家族内でPVバトルを行うこととなった。

異世界との関わり
佐々木は異世界のヘルツ王国でミュラー伯爵と会い、ルイス殿下が日本に残ることを伝えた。エルザの婚約先としてルイス殿下を提案したが、伯爵は即答しなかった。佐々木は日本に戻り、殿下の日本での生活をサポートすることにした。

十二式の学校問題
佐々木は十二式がいじめを理由に登校を拒否していることを阿久津と話し合った。十二式はネット活動を希望し、動画投稿サイトでの活動を続けることとなった。星崎も学業と動画投稿を両立することを約束した。

PVバトルの準備
佐々木たちはPVバトルの準備をし、プレハブ小屋での撮影設備を整えた。エルザはルイス殿下にインターネットの基礎を教え、佐々木は動画投稿のネタを考え始めた。

〈Vチューバー〉

新たな挑戦
お隣さんとアバドンは、Vチューバーとして活動するための機材を整え、新たなキャラクター「花野美咲」をデザインした。十二式の協力を得て、Vチューバーとしての活動を始めた。

初動画と反応
お隣さんは初めてのVチューバー動画を投稿し、否定的なコメントに落胆しつつも、次の動画作りに意欲を燃やした。新たなキャラクター「枯木落葉」として再スタートを切り、動画が成功した。

学校生活と両立
お隣さんは学校と動画制作を両立し、枯木落葉の動画が注目を集めた。冬フェスの総選挙に参加し、毎日動画で投票を呼びかけた。コラボ配信も行い、視聴者の反応を得た。

総選挙とトラブル
総選挙の日、スタジオで脅されるもアバドンの助けで切り抜け、見事二位に選ばれた。冬フェス参加が決まり、次のステップへ進むことを決意した。

〈名探偵お隣さん〉

久我取締役の死
久我取締役が自殺と見せかけて殺され、お隣さんは他殺の可能性を指摘した。事件の真相を探る中でテロ組織の存在が明らかになった。

テロ事件の解決
佐々木たちはテロリストに立ち向かい、人質を救出した。事件は無事解決し、会場の観客は異常に気づかなかった。冬フェスは予定通り続行された。

家族の協力
冬フェス二日目、佐々木たちは仮装して会場を訪れ、二人静や十二式と共にイベントを楽しんだ。お隣さんはPVバトルに真剣に取り組み、さらなる成長を目指した。

〈佐々木とクマ〉

クマとの遭遇
佐々木は軽井沢での動画撮影中、大きなツキノワグマに遭遇した。冷静に対処しながら、クマと追いかけっこを続けた。

スマホの撮影
クマとの追いかけっこは続いたが、スマホがその一部始終を撮影していたことを後で確認した。クマとのやり取りがPVバトルで成功を収めた。

感想

本巻は、家族ごっこの延長で家族内の投稿動画のPV数対決が描かれていた。
賞品はPV数1位が最下位にお願いできる権利。
提案者の末娘、十二式は余裕の表情を見せ、二人静や星崎も何か作戦を持っている様子であった。特に星崎の「JKの動画」が不穏な雰囲気を醸し出していた。
巻末では案の定、、
そして、佐々木とお隣さんは何をしたら良いのかわからない状態であった。

それを見ていた十二式のサポートでお隣さんはVTuberデビューすることになったが、陽キャの皮を被ったら声との違和感が凄いとコメントで酷評されてしまった。
数回投稿したら、再生数も減少傾向にあったため、陰キャに皮を変更すると、前の皮が伏線だったかのようにPVが跳ねた。
さらに配信会社からオファーが来て、お隣さんはVtuberの業界で注目されることになった。
佐々木をマネージャーとして、お隣さんは配信会社の撮影会に参加するのだが、そこで天使と悪魔のバトルフィールドが発生してしまい。
そこには、怪獣騒動で共闘した比売神(ひめがみ)だった。
アバドンが怖い比売神はお隣さんから、遠慮してくれと言われて泣く泣く会場から離れさせてしまう。
そうして初めて他のVtuberと交流するお隣さんだったが、物怖じしないせいかVtuberでトップをは彼女を気に入って絡んで来る。
内心はウザいと思いながらもお隣さん自身は何とかやり過ごしたと思ってたようだが、その後は何度も絡まれたりする。
それでも、お隣さんは人気を博してお、Vtuberのイベントに出るためオーディションを受けるのだが同業のVtuberから、妨害されるのだがエナジードレインで切り抜けてしまう。
そうしてお隣さんはインベンに参加出来るようになるのだが、そのイベント会場では自衛官の犬飼さんがおり、爆破予告があったと警戒体制で行う。
そんな中で起こった十二式を狙った犯行は比較的あっさりと終わった印象。
そして、巻末ではPV勝負の顛末が面白かった。
まさかの順位は以外過ぎて笑えてしまった。

特別書き下ろし「佐々木とクマ」

特別書き下ろしの「佐々木とクマ」は笑える内容であった。
佐々木が動画のネタ探しに軽井沢の別荘地を歩いていた際、大きなツキノワグマに遭遇した。

ジャーキーを投げてクマと追いかけっこをするが、佐々木は懐のスマホがその一部始終を撮影していた。その動画は最終的に400万PVを超え、大ヒットしたのであった。

この本は、家族ごっこという独特な環境の中でのPVバトルや、お隣さんのVTuberデビューまでの奮闘を描いており、コレまで影が薄かったお隣さんが主役になってるのが新鮮だった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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アニメ

PV

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二期制作決定

OP

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ED

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備忘録

〈ユーチューバー〉

天使と悪魔の代理戦争の当事者である使徒は、相手派閥の使徒を打倒することで天使や悪魔からご褒美を得る。二人静は天使の使徒を倒し、ルイス殿下を復活させた。腐肉の呪いで醜い肉塊となっていた殿下は、アバドンの助けで元の姿を取り戻し、日本に滞在することになった。

エルザはユーチューバーとして活動しており、十二式もユーチューバーを目指すことを宣言。十二式の提案に対し、家族内で議論が行われ、最終的に彼女の意思を尊重することとなった。十二式はチヤホヤされることを望んでおり、ネット上での活動を計画している。

二人静の提案で、家族全員が動画投稿サイトでのPVバトルを行うことになった。ルイス殿下もその様子を見て興味を示した。家族はこの活動を通じて、日々を愉快に過ごすことを期待している。

家族ごっこを終えた佐々木は、ピーちゃんと共に異世界へ向かった。ヘルツ王国の王城地下でミュラー伯爵と会い、ルイス殿下が日本に残ることを伝えた。伯爵は殿下の復活を喜び、その判断を理解した。

佐々木はエルザの婚約先としてルイス殿下を提案し、ミュラー伯爵と議論したが、伯爵は既に佐々木との話を進めているため、すぐには受け入れなかった。ピーちゃんは佐々木に対して、婚約を惜しくなったなら素直に言うように促した。

佐々木は異世界での問題を片付けた後、ルイス殿下の面倒をエルザや二人静に任せ、日本に戻った。ルイス殿下が日本の生活に慣れるまでは佐々木とピーちゃんがサポートする予定である。

翌日、佐々木たちは朝早く局に登庁した。移動は十二式が提供する交通手段を使い、軽井沢の別荘から数分で都心に到着した。佐々木は局の会議室で阿久津と打ち合わせを行った。

会議では、十二式が学校でのいじめを理由に登校を拒否していることが話題となった。阿久津は状況を理解し、佐々木を責めたが、佐々木は十二式の行動の証拠を提示して説明した。十二式はネットでの活動を希望し、動画投稿サイトでチヤホヤされたいと主張した。阿久津はその意図を理解し、端末と通信回線を用意した。

会議中、十二式は家族内での動画投稿バトルを提案し、阿久津もそれを認めた。星崎もこの活動に参加したいと申し出たが、阿久津は学業を優先するように指示した。星崎は学校での勉強と動画投稿を両立することを約束した。

同日、佐々木は午前中に局でデスクに向かい、教師生活の後始末を行った。昼食後、お隣さんとアバドン少年が帰宅し、皆で十二式が手配した乗り物に乗り込み、未確認飛行物体内の一軒家に向かった。ルイス殿下は初めての宇宙に感心し、エルザが説明をしていた。

和住宅の居間で、十二式がPVバトルの開催を宣言した。参加者は各自アカウントを開設し、二週間の期間内に最も多くのPVを稼いだ者が優勝とされる。最下位には罰ゲームがあり、勝者の言うことを一つ聞かなければならない。

佐々木は最下位を避けるため、動画投稿のネタを考え始めた。居間にはこたつがあり、皆が温まっている中、二人静がプレハブ小屋での撮影を提案し、エルザはルイス殿下にインターネットの基礎を教えることになった。

未確認飛行物体内に設けられた日本家屋で、佐々木たちは個々の居室に移り動画撮影の準備を始めた。佐々木も自室で動画投稿のアイデアを練り、ヒーリング系や作業用サウンドの投稿を思いついた。これなら労力をかけずにPVを稼げると考えた。

その時、星崎が相談に訪れ、動画のアイデアについて話し合った。彼女も顔や声を出さずに動画を撮影する難しさに悩んでいた。佐々木はゼロから映像を制作する計画を説明し、星崎も自分の計画を練っていた。

星崎は「JKブランド」を活かせないことに悔しさを感じていたが、最下位を回避するために必死だった。最下位になると罰ゲームが待っているため、二人とも真剣に考え始めた。

結局、星崎は急な用事で部屋を出ていったが、佐々木は自分のアイデアを実行する決意を固めた。

【お隣さん視点】

家族ごっこの一環として、動画投稿サイトでPV数を競うことになった。見る側ではなく投稿する側である。お隣さんはこの文化に馴染みがなく、気が進まなかったが、トップになれば最下位の人物に何でも言うことを聞かせられるルールに興味を持ち、参加を決意した。

お隣さんとアバドンは子供部屋で動画のアイデアを考えた。アバドンの助言で、とりあえず一本動画を投稿してみることにし、庭に出てカラスの毛づくろいを撮影した。しかし、再生数は伸びず、宣伝が必要だと気づく。

庭で日向ぼっこしていると二人静が現れ、家を撮影することのリスクを指摘された。お隣さんは動画を削除し、新しい方向性を模索することにした。好きなものをテーマに動画を作ることを提案されたが、お隣さんは自分の好きなものについて考えを巡らせる。彼にとって好きなものは「おじさん」であり、二人は一つだと感じていた。

【佐々木視点】

佐々木は、動画編集のためにビジネスホテルからノートパソコンを取りに戻り、自室で動画作りを始めた。素材を用意し、映像を編集し、アップロードする作業を経て夜になった。最初の動画は再生数が伸びず、試行錯誤を続けることに。

ピーちゃんの助言を受けつつ、佐々木は他の家族の目を気にしながらも、正々堂々とした手法で動画を作るべきか悩んだ。再生数を稼ぐために切り抜き動画や動物動画の提案を受けたが、倫理的な問題や実行の難しさから躊躇した。

食事の時間になると、二人静の呼びかけで佐々木とピーちゃんは自室を後にした。家族ごっこという特殊な環境の中で、佐々木は動画作りの困難さと対峙しつつも、最下位を避けるための方法を模索していた。

佐々木を主人公にした物語では、家族全員が夕食のために和住宅の居間に集まった。エルザが本日の食事当番で、ビーフシチューなどを用意した。ルイス殿下も料理を手伝ったが、食事中、エルザが以前の失敗を気にしていることが話題になった。

食事後、二人静がルイス殿下のお披露目動画の反響について話題にした。投稿から小一時間後の動画には再生数が多かったものの、コメント欄が荒れていた。特に、ルイス殿下の登場に対して一部のファンが否定的なコメントを残していた。

エルザはこの状況を心配し、対策を考えたが、二人静は落ち着かせた。ピーちゃんも肯定的なコメントが多いことを指摘した。ルイス殿下は後でピーちゃんと相談して新たな動画を撮影する提案をした。

夕食後、佐々木は自身の動画作成について考え、他の家族もそれぞれの方針でPVバトルに参加している様子を見守った。特に、星崎が自信を持ってPV数を稼ぐ計画を示唆しており、佐々木も彼女の姿勢に感化された。

【お隣さん視点】

【その日は家族ごっこを終えた後、アバドンと共に軽井沢の別荘に戻った。夕食後、疲れた彼らは早めに就寝することにしたが、なかなか寝付けず、心身ともに疲弊していた。

夜遅く、アバドンから声をかけられ、彼女は眠れないことを告白した。その際、ナイトテーブルの上の端末に十二式からメッセージが届いた。十二式は訪問を求め、すぐに窓ガラスをノックして現れた。

十二式は、お隣さんがPVバトルに苦しんでいることを察し、助けるためにVチューバーになることを提案した。Vチューバーならば個人情報を隠して配信できるという利点を説明し、機材の提供も申し出た。お隣さんは、提案に感謝しながらも、Vチューバーについてはほとんど知らないことを告白した。

最終的に、十二式の協力を受け入れることにしたが、家族ごっこや学校の問題が頭から離れず、眠れない夜が続くことに悩む姿が描かれている。

〈Vチューバー  一〉

【お隣さん視点】

お隣さんとアバドンは、自宅の軽井沢の別荘で、Vチューバーとして活動するための多数の機材に囲まれていた。これらは十二式が運び込んだもので、ノートパソコンやカメラ、マイク、モニター、モーションキャプチャーなど、様々な機材が揃っていた。十二式は、これらをすべて自前で製造し、セッティングも行ってくれた。

お隣さんは、Vチューバーのガワとして、男性向けのアニメや漫画のメインヒロインを参考に、ロングストレートの髪、色白の肌、パッチリした目元、優等生タイプのブレザー姿の立体モデルをデザインした。名前は「花野美咲」に決定し、年齢や趣味、好物なども設定した。

十二式は、これらの作業を終えると、他のやることがあるとして去っていった。お隣さんは、Vチューバーとしての活動に向けて準備を進めるが、自分がその役を果たせるか不安を感じていた。

突然、十二式から家族が自宅内に揃っていると連絡があり、お隣さんとアバドンは合流することにした。

【佐々木視点】

翌日の休日、佐々木たちは本来なら休みのはずだった家族ごっこに取り組んでいた。二人静が主催するPVバトルの準備のため、土日返上で庭のプレハブ小屋に配信用の設備を構築していた。佐々木も休んでいられず、十二式に送迎を頼んで現地に向かった。

庭先で二人静が電気工事を行っているのに遭遇。彼女は機械娘に確認して電力を利用していた。家庭内まで電力を届けるための設備を自前で整えており、その情熱に感心した。

二人静はゲーム配信用の機材を自作しており、これでPVバトルに臨む準備を進めていた。星崎も動画の撮影に専念するために訪れていた。佐々木もプレハブ小屋の機材に興味を示し、会話を交わした。

その後、エルザとルイスも現れ、昼食の準備を進めていた。十二式は家族が自発的に集まっていることに感動を覚えたが、二人静との対立も見せた。結局、佐々木たちはこの日も家族ごっこのメンバーと共に過ごし、PVバトルの進捗はなく、一日が過ぎていった。

佐々木が家族ごっこのメンバーと夕食を済ませた後、異世界のヘルツ王国に向かい、宮中大臣の居室でミュラー伯爵と会話を交わした。エルザの世話のおかげで、ルイス殿下が無事であることを報告し、伯爵は感謝の意を表した。

ミュラー伯爵は、ルイス殿下の無事を秘密にしつつ、恩を返すための贈り物を佐々木に相談した。佐々木は現地の協力者が二つの勢力に分かれていることを伝え、適切な贈り物の確認を申し出た。エルザもこの協力を申し出た。

伯爵の意向をそのまま協力者に伝えることとなり、佐々木はお隣さんやアバドン少年の反応を心配しつつ、特に二人静氏が異世界の王侯貴族に何を望むのかを気にしていた。

佐々木はミュラー伯爵との会話を終え、ヘルツ王国からルンゲ共和国のケプラー商会へ向かった。佐々木が役員であるため、店内をスムーズに進み、ヨーゼフと面会した。

応接室での会話で、佐々木はトンネル工事の進捗と労働力の問題について報告を受けた。佐々木はヘルツ王国とルンゲ共和国の労働力バランスを保つため、工事の賃金を調整していたが、ヨーゼフは商会内での反対意見を伝えた。ヨーゼフは今回の施策の成功に疑念を抱いており、佐々木に対して懸念を表明した。

ヨーゼフの意見を受け入れつつ、佐々木はケプラー商会を後にした。その後、ヘルツ王国のエイトリアムに戻り、異世界の時間差を利用してPVバトルのネタを探したが、数日間の努力も実らず、今回のショートステイを終えた。

【お隣さん視点】

お隣さんは家族ごっこを終え、未確認飛行物体から軽井沢の自宅に戻った。その夜、初めてのVチューバーとしての動画を撮影した。動画は花野美咲という架空の人物の自己紹介であり、事前に脚本を準備していたため、撮影と編集は迅速に完了した。編集は十二式の技術で効率よく行われ、完成した映像は高品質であった。

花野美咲の立体モデルは、花畑の中で自己紹介を行ったが、お隣さんの声に納得がいかず、アバドンに確認を求めた。アバドンも同様に自身の声に違和感を感じたが、結局、動画はそのまま公開することにした。

お隣さんは深夜に動画をアップロードし、確認は翌日にすることにした。そして、入浴を済ませて床に就いた。

お隣さんは、一睡もできずに朝を迎えた。ベッドの中で悶々としていたが、空が白み始めるまで眠れなかった。パジャマ姿のまま、アバドンと一緒に客間のノートパソコンで昨日公開した動画の状況を確認した。驚いたことに、コメントがいくつか付き、再生数も増えていた。しかし、コメントは「声が残念」「自己紹介の内容が名前負け」など否定的なものばかりであった。

お隣さんは、コメントに落胆したが、アバドンから「断片的なコメントを統括すると、声の問題が強調されている」との意見をもらい、少し慰められた。アバドンの助言もあり、次の動画を撮影することに決めた。

お隣さんはネットサーフィンをし、コメントをしたアカウントを調査。特定のグループによる行動であることを確認し、反骨心が湧いてきた。次の動画撮影に意欲を燃やし、当初の予定である一日一本の投稿から、一日三本の投稿を目指すことにした。

その日は、十二式の技術を駆使し、アバドンの助言を受けながら、丸一日をかけて複数の動画を撮影した。

お隣さんは睡眠不足に悩まされながらも、普段通り学校へ登校した。運転手の老紳士から体調を気遣われ、そのプロフェッショナリズムに感心した。学校ではクラス内が十二式の影響で気まずい雰囲気に包まれていたが、お隣さん自身は静かな教室を好んでいた。

昼休みに校舎裏でアバドンと共に動画投稿サイトを確認したところ、動画にはいくつかコメントが付き、再生数も増えていたが、コメントは否定的なものばかりであった。お隣さんは気を取り直し、新しい動画を投稿する決意を固めた。

放課後、家族ごっこの時間に未確認飛行物体内の家で夕食を共にした。おじさんが二人静にゲーム実況の進捗を尋ね、二人静が公開した動画は既に一万再生を超えていた。彼女の高い技術と戦略が成功していた。

エルザ様とルイス殿下のチャンネルも話題に上がり、彼らの動画も多くの再生数を獲得していた。エルザ様はササキのサポートに感謝していたが、一部の行動に懸念を抱いていた。末娘の十二式も自分の活動について語りたがっていたが、アカウントを隠していたため、話題にしにくかった。

全体として、家族ごっこのメンバーたちの活動が刺激となり、お隣さんはより積極的にPVバトルに取り組む決意を新たにした。

お隣さんは家族ごっこを終え、アバドンと共に軽井沢の自宅に戻り、収録スタジオで作戦会議を行った。彼らの動画の再生数が減少し、コメントには否定的なものが多かったため、お隣さんはこれ以上現状を続けるのは無理だと判断し、キャラクターの変更を決意した。

お隣さんは新たなキャラクター「枯木落葉」として再スタートを切ることにした。妹の十二式の協力を得て、立体モデルを調整し、陰キャのキャラクターに変えた。新しいキャラクター設定には、読書や家庭菜園などの趣味が反映され、より自分らしいものとなった。

お隣さんは自己紹介動画を撮影し、アップロードした。今回は自分の陰キャの特性を活かし、より自然体で撮影を行ったため、スムーズに進んだ。その後、入浴を済ませ、すぐに寝入った。

お隣さんは妹の協力に感謝しつつ、新たなキャラクターでの活動に前向きに取り組む決意を固めた。

お隣さんは翌朝、パジャマ姿のまま客間に向かい、十二式が設置した収録スタジオで編集用のノートパソコンを操作した。昨晩投稿した動画「枯木落葉の陰鬱とした自己紹介」が、再生回数五万三千十二回に達していた。「やりましたよ、アバドン。狙いが当たりました」とお隣さんは喜びの声を上げた。アバドンも「こんな急に跳ねたりするものなんだね」と驚いた様子であった。

ノートパソコンの画面にはコメント欄が表示されており、多くのコメントが花野美咲について言及していた。匿名掲示板やソーシャルメディアでも、枯木落葉のキャラクターが話題になっていた。視聴者からの反応は多岐にわたり、「枯木さんの方が好み」「陰キャの解像度が高い」などの意見が寄せられていた。お隣さんはこれを見て、「PVはPVです。甘んじて受け入れましょう」と冷静に受け止めた。

また、チャンネル登録者数も千件近くまで増加していた。アバドンは「君のお喋りが世間から評価されたのかもしれないね」と言ったが、お隣さんは「妹が作成した3Dモデルの品質や機材の優位性によるものだ」と謙遜した。

収益化の条件も達成し、お隣さんは今後の展望を考え始めた。「これで収益が得られれば、二人静の世話になる機会も減る」と感じ、家主に収益化について相談することを決意した。

お隣さんは今後もニッチな需要を拾い上げ、次の動画作りに取り組むことを誓った。「この調子でPVを増やし、次の動画を頑張りましょう。学校では脚本の作業を進めたいと思います」と語り、アバドンも「学業を疎かにしないで欲しい」と応じた。

PVバトルの決着までにはまだ時間があり、優勝を目指す意欲を新たにしたお隣さんは、「堕ちるのであれば、おじさんと一緒にどこまでも堕ちていきたい」と決意を固めた。

〈Vチューバー  二〉

佐々木は、二人静氏によるPVバトルの開催が宣言されてから四日が経過した。朝から未確認飛行物体の内部に設けられた和住宅で家族ごっこをする日々であったが、動画の撮影は思うように進まなかった。音楽関係の動画は諦め、再生数が二桁にすら達しなかったため、新たな方針を検討する必要があった。

週明けからゲーム実況にも挑戦したが、こちらも失敗に終わった。中年男性が独り言を呟きながらゲームをプレイする動画には需要がなく、視聴者もほとんどいなかったため、動画は削除した。そこで佐々木は屋外でネタを探すことにした。

軽井沢の別荘地を歩きながら、佐々木は十二式の近くで散策を楽しんだ。星の賢者様であるピーちゃんの魔法を使い、移動していた。彼との雑談は癒しの時間であった。小一時間ほど散策したが、動画のネタは得られなかった。

和住宅の居室に戻った佐々木は、畳敷きの室内でノートパソコンを見つめ、やる気を奮い立たせた。PVバトルに最下位でもいいかと思いながらも、最低限の努力をしようと決意した。

すると、出入り口の襖が外からノックされ、お隣さんとアバドン少年が現れた。お隣さんは改まった態度で佐々木にお願いがあると言い、「おじさんにお願いしたいことがあるのです」と続けた。それは佐々木にとって、完全に予想外の頼みごとであった。

枯木落葉の成功に味を占めたお隣さんとアバドンは、次回作に向けて動き出した。平日は学校で授業があるため、日中は授業中や休み時間を利用して脚本を考え、放課後に帰宅してから動画制作に取り掛かることにした。

帰宅後、ノートパソコンを起動すると、異世界プロダクション株式会社からのメールが届いていた。メールには、枯木落葉の動画に感銘を受け、ぜひ会って話をしたいと書かれていた。スカウトの可能性が高いと考えたお隣さんは、メールの内容を確認し、アバドンと相談した結果、佐々木に相談することを決めた。

佐々木に相談するため、未確認飛行物体に向かい、彼の部屋を訪ねた。お隣さんはおじさんにお願いしたいことがあると伝え、相談の時間をもらうことにした。

【佐々木視点】

佐々木はお隣さんとアバドン少年を自室に招いて話を聞いた。お隣さんはVチューバー活動をしており、すでに企業からスカウトを受けていた。佐々木はお隣さんの説明を聞きながら、詐欺やスパムの可能性を疑ったが、メールの内容を確認すると、真っ当なお誘いであることが分かった。

お隣さんは、十二式の提供する機材を利用して動画を作成しており、その結果、企業から注目を集めていた。佐々木はメールの内容を確認し、スカウトを受けるかどうかの相談に応じた。お隣さんは、スカウトを受けたいと考えており、そのために佐々木の協力を求めた。

佐々木はお隣さんの要望に応じ、企業とのメールのやり取りを手伝うことにした。最終的に、翌日の午前中に異世界プロダクション株式会社のオフィスで会う約束が成立した。

夕食時、家族ごっこのメンバーでPVバトルの進捗が話題に上がり、二人静や星崎、十二式の活動が順調であることが分かった。佐々木は自分が最下位になることを避けるため、お隣さんとアバドン少年の優勝をサポートすることを決意した。

佐々木とお隣さんは、都内のオフィス街にある異世界プロダクション株式会社を訪れた。久我という取締役COOとの面談が行われ、お隣さんのVチューバー活動について話し合った。お隣さんはすでに動画を投稿しており、企業からスカウトを受けていた。久我は、お隣さんの活動を高く評価し、協力を依頼した。佐々木はお隣さんのマネージャーとして、この提案を受け入れ、お隣さんのプロデビューが決定した。

佐々木とお隣さんは、久我に付き添われて社のエントランスに向かった。途中、久我に声をかける社員たちに紹介された。お隣さんは新人の枯木として、佐々木は彼女のマネージャーとして紹介された。先輩たちからは歓迎の挨拶があったが、一部からは個別のマネージャーを付けることへの不満も聞かれた。久我は後で説明するとして、佐々木たちに対して社内の雰囲気を見せた。その後、久我と先輩たちに見送られてオフィスを後にした。

【お隣さん視点)

佐々木の協力を得たことで、お隣さん(枯木落葉)の大手グループ所属が決まった。運営会社との打ち合わせを終えた日の午後、担当者から今後の動きについての案内が届いた。契約や事務手続きは佐々木が一手に引き受け、ソーシャルメディアのアカウント作成や動画の投稿を継続した。翌日には公式から枯木落葉のメンバー入りが発表され、チャンネル登録者数が一万人を超えた。

さらに、都内のスタジオで他のメンバーと一緒に動画を撮る仕事が入った。移動には十二式の提供する末端を利用し、目的地のビルに到着した。そこで突然隔離空間が発生し、アバドンと協力して状況を確認した。天使と使徒が同じ場所にいたことが判明し、対話の末に使徒に収録を辞退させた。

最終的に、お隣さんは無事に収録に参加することができた。

【佐々木視点】

都内の収録スタジオに到着直前に隔離空間が発生したことを、お隣さんから聞かされたのはすべてが解決した後であった。隔離空間内で、お隣さんは使徒の比売神君と天使のエリエルさんに出会った。比売神君もまたVTuberであり、本日の収録に招かれていたが、天使と悪魔の代理戦争により収録を辞退せざるを得なかった。

このことを知った佐々木は、胸が痛んだが、天使と悪魔の代理戦争の一環として受け入れるしかなかった。普段より口数が少ないお隣さんに代わり、アバドン少年が詳細を説明した。スタジオは広く、教室ほどの収録スペースや調整室、関係者の休憩スペースが備えられていた。スタッフたちは比売神君の欠員により深刻な顔をしていた。

収録の主役たちが集まる中、お隣さんと佐々木は部屋の隅で待機した。すると、以前オフィスで会った貴宝院麗華さんとローリー・ローリングさんが挨拶に来た。彼女たちはお隣さんの衣装や実家について興味津々であったが、お隣さんは家族に用意してもらったと説明した。

その後、スタッフが来て、欠員した久遠君の代役をお隣さんに頼んだ。お隣さんは一瞬戸惑ったものの、最終的には引き受け、現場はすぐに動き出した。

【お隣さん視点】

スタジオでの収録が始まった。お隣さんは、急遽欠席した比売神君の代わりに主要メンバーとして収録に参加することになった。スタッフの迅速な対応もあり、収録は順調に進行した。

参加者たちはゲームに興じ、特に貴宝院麗華とローリー・ローリングが目立っていた。貴宝院はお嬢様キャラクターとして高笑いを繰り返し、ローリングはゴスロリ姿で可愛らしい声を出していた。お隣さんは、ゲーム中に偶然にも貴宝院に攻撃アイテムを頻繁に当ててしまった。

休憩時間中、貴宝院が近づき、お隣さんの態度やデビュー後の活躍について問い詰めた。彼女はお隣さんの実家が裕福であることや、久遠君の欠席が仕込みではないかと疑ったが、お隣さんは冷静に対応した。

その後、ローリングが貴宝院を諌め、収録は再開された。収録は順調に進み、終了後には久我取締役も現場に現れ、お隣さんに冬フェスへの参加を提案した。お隣さんは、視聴者からの投票を通じて参加者が決まるという説明を受け、総選挙に参加することを決意した。

〈Vチューバー  三〉

【お隣さん視点】

枯木落葉が世に出たことで、お隣さんの生活は忙しくなった。学校がある朝は、食事の準備が間に合わないため、アバドンが用意した食パンを移動中に食べるようになった。家族ごっこの時間を削って動画の撮影に当てているため、睡眠時間が減り、目覚まし時計のセットも遅くなっていた。

収録の二日後、スタジオで撮影した映像が配信された。お隣さんとアバドンは自宅でこれを視聴し、貴宝院やローリングの存在感を改めて認識した。視聴者からの反応は賛否両論で、特に貴宝院の人気に相乗りする形で注目を集めた。

配信の影響でチャンネル登録者数は急増し、翌日には倍の二万人を超えた。収益化の話も進み、二人静の助けを借りて銀行口座を開設することになった。

平日は学校に通いながら、授業中や休み時間に脚本を作成し、放課後は家族ごっこと動画の撮影に時間を割いた。忙しい日々だったが、お隣さんはそれを楽しんでいた。

冬フェスの総選挙が迫り、毎日動画で投票を呼びかけた。貴宝院やローリングとのコラボ配信も行い、ライブ配信の重要性を理解した。配信は成功し、同時接続者数が二万を超え、アーカイブ後のPV数も二十万を上回った。チャンネル登録者数も増加し、有名配信者の影響力を実感した。

総選挙の投票日は目前に迫り、お隣さんは忙しい日々を過ごしつつも、前向きに取り組んでいた。

【佐々木視点】

佐々木は、お隣さんの活躍に注目していた。彼女が毎日公開する動画は非常に高品質で、視聴者の多くは彼女を成人女性だと思ってコメントを送っていた。佐々木は、彼女の努力と才能に感心し、彼女が夢中になれるものを見つけたことを喜ばしく思った。

佐々木自身は、動画の再生回数が伸びず、悩んでいた。彼は家族ごっこの和住宅で、僅か78回の再生数をどうにかしようと試行錯誤していた。文鳥殿も彼を励ましつつ、お隣さんの動画の成長ぶりを確認していた。

お隣さんは、先輩である貴宝院やローリングと共にコラボ配信を行い、業界の大先輩に物怖じせずに挑戦していた。彼女の動画制作には佐々木は関与しておらず、彼の役割は主に事務的な連絡や契約の処理だった。

枯木落葉のチャンネルは急速に成長し、デビューから十日足らずでチャンネル登録者数は五万人に迫っていた。彼女の人気は、企業がプロモーションするアイドルと同等であり、その成長は注目に値した。

佐々木は、お隣さんがこのまま成長を続け、夢中になれるものを見つけることを願っていた。

佐々木は、その日も何の成果も得られず日が暮れた。夕食の知らせが台所から聞こえ、居間に向かうと家族ごっこのメンバーが揃っていた。その中にはマジカルピンクもいた。二人静氏が軽井沢で見かけた彼女を夕食に誘ったのだ。

円卓の周りには、佐々木、お隣さん、アバドン少年、星崎さん、十二式さん、エルザ様、ルイス殿下、二人静氏、マジカルピンクが座っていた。エルザ様とルイス殿下が中華料理を用意し、皆で食事を楽しんだ。

食事中、星崎さんが佐々木にDMCAについて尋ねた。佐々木は基本的な知識を持っており、星崎さんに説明したが、彼女は深刻そうな表情をしていた。佐々木が心配して声をかけると、星崎さんは大したことではないと否定した。

その後、佐々木は二軍の総選挙と冬フェスのスケジュールについて皆に説明し、PVバトルの期日を冬フェスの最終日にずらすことを提案した。これに対して皆が賛成し、期日は変更された。

さらに、二人静氏がマジカルピンクの住まいの問題を取り上げ、彼女を軽井沢の家に住まわせることにした。エルザ様も家族ごっこに参加し、ルイス殿下との関係に悩む様子を見せた。ルイス殿下はペットとしてのピーちゃんの存在にも驚いていた。

佐々木は家族ごっこを終えると、ピーちゃんと共に異世界へショートステイすることが多かった。最近は三日に一度の頻度で異世界を訪れていたが、現代と違って異世界では比較的余裕があった。しかし、その時間の多くは動画投稿のネタ探しに費やされていた。前回や前々回は、ミュラー伯爵との会話やケプラー商会への軽油の配送などのルーチンワークをこなしていたが、魔法の練習にはあまり身が入らず、成果はゼロであった。

今回も首都アレストで伯爵と会い、エルザ様を親元に送り届けた後、ルンゲ共和国でヨーゼフさんと取引を行い、エイトリアムの宿に戻った。この高級志向の宿には一年以上滞在していた。

ピーちゃんと共に時間の経過について話し合い、移動の頻度が時間の変化に影響を与えている可能性があると考えた。移動の頻度を下げることも検討したが、交易の関係で難しいと判断した。そこで、ピーちゃんの空間魔法を使い、アルテリアン地方へ向かった。

現地では、フレンチさんとその家族に会い、ロタンが賑わっていることや、工事が順調に進んでいることを確認した。フレンチさんは異世界の好景気を喜び、佐々木に感謝の意を示した。

その後、佐々木は工事を手伝うことにし、ゴーレムの魔法を使って穴掘りを行った。頭を使う仕事から離れ、単純作業に没頭することで、時間があっという間に過ぎ、ショートステイの期日が来た。

【お隣さん視点】

異世プロの二軍メンバーから冬フェス参加者を選出するための総選挙の当日が訪れた。お隣さんとアバドン、そして佐々木は軽井沢を出発し、都心の高層ビルが立ち並ぶエリアにあるスタジオに到着した。ここは以前にも訪れた場所である。

総選挙は数日前からネット上で行われており、今日はその結果発表会であった。枯木落葉の参加は途中でアナウンスされたため、他の参加者よりも不利な立場にあった。しかし、彼女は上を目指すための挑戦を続けていた。

スタジオ内の収録スペースには、多くの二軍メンバーが集まり、壁沿いに立って待機していた。一方、数名の一軍メンバーは椅子に座り、収録を主導していた。貴宝院とローリングもその中にいた。

二軍メンバーの反応は辛辣であり、枯木落葉についての噂話や嫌味が飛び交っていた。しかし、お隣さんはそれを気にせず、黙って過ごしていた。貴宝院とローリングが声をかけてきたが、お隣さんは控えめに断った。

最終的に、お隣さんは孤立している状況を受け入れ、ピン芸人としての道を進む決意を固めた。枯木落葉は、今後も自身のキャラを貫きながら、成功を目指すことを誓った。

収録が始まり、当選者の名前が得票数の少ない順に呼ばれる形で進行された。二軍メンバーは名前が呼ばれるとカメラやマイクの前に立ち、喜びのリアクションを取ることが求められた。収録の参加者は二十二名であり、異世フェスの参加枠は十名であった。

収録スペースに立って待機するのは大変であり、精神的にも肉体的にも消耗する時間であった。枯木落葉の名前はまだ呼ばれていなかったが、収録スペースを後にして待機スペースに戻り、佐々木の元へ向かった。

休憩中、十位の二軍メンバーの女性が枯木落葉に声をかけ、コンビニに飲み物を買いに行くことを提案した。おじさんの許可を得て、二人はビルの外に出たが、女性は路地に枯木落葉を誘い込んだ。そこには他の二軍メンバーが待ち構えており、枯木落葉に対して体調不良を理由に帰宅を求めた。

断った枯木落葉は、女性たちが呼び寄せた反社会的な男性二人に取り囲まれた。しかし、枯木落葉はアバドンの力を借りて男性たちを昏倒させた。ミニバンの運転手も現れたが、彼も同様に倒された。

その後、周囲の安全を確認し、枯木落葉は倒れた男性たちの懐に手を伸ばした。

コンビニで飲み物を購入しスタジオに戻ったお隣さんは、得票十位の佐藤紀子と再会した。お隣さんは佐藤紀子に対して脅しの証拠を突きつけ、彼女を狼狽させた。その後、休憩時間が終わり、収録スペースに戻ると、投票イベントのライブ配信が再開された。

お隣さんは事前に二位当選が伝えられていたため、挨拶の準備を十分に行っていた。挨拶の中で彼女は、高校デビューに失敗した陰キャとしての成果を強調し、視聴者への感謝の意を述べた。司会の貴宝院とローリングも加わり、貴宝院が挨拶の手本を示す一幕もあった。

結果として、お隣さんの冬フェス参加が決まり、彼女は当日のおじさんとのデートを楽しみにしていた。

【佐々木視点】

お隣さんとアバドン少年の冬フェス参加が決まった。収録後、都内のホテルに移動し、翌日のリハーサルに備えた。会場は東京臨海副都心の大規模な屋内展示場であった。リハーサル当日、控え室には多くのスタッフがおり、その中には自衛隊出身の犬飼三等海尉もいた。

犬飼三等海尉は、会場に爆弾テロの予告が届いたことを佐々木に伝えた。警備員の多さから局が関与していると察し、佐々木は冷静に対処した。リハーサルは順調に進み、佐々木はお隣さんの無事を願いながら見守った。

翌日、冬フェスの開催初日を迎えた。佐々木はお隣さんと共に会場に入り、午前中は別行動で会場を見て回った。二人静氏と十二式も同行しており、会場の規模に感心していた。エリアBの展示や体験企画を巡りながら、コスプレスペースで十二式のコスプレ欲を抑える一幕もあった。

その後、サブステージでお隣さんの出番が近づき、観客席に着いた佐々木たちは、お隣さんがクイズ大会で見事に優勝する様子を見守った。控え室に戻ると、貴宝院とローリングが久我さんの行方を尋ねてきた。彼らと共に、会議棟へ向かい久我さんを探すことになった。

【お隣さん視点】

控え室から会議棟へ移動したお隣さんたちは、久我取締役が利用している特別応接室にたどり着いた。ノックや呼びかけに反応がなく、施設の担当者から合鍵を借りて部屋を開けると、異臭が漂っていた。お隣さんと佐々木が室内に入ると、取締役が首を吊っているのを発見した。

佐々木とお隣さんが取締役の身体を支え、ロープを外して寝かせたが、彼はすでに亡くなっていた。室内には取締役のノートパソコンがあり、そこには様々な人たちへの遺書が保存されていた。お隣さんはその中に、自分たちに宛てたメッセージを見つけ、取締役が一貫して使っていた一人称が異なっていることに疑問を抱いた。

ローリングも同じ疑問を抱き、取締役が普段使っていた一人称と遺書の内容が一致しないことを指摘した。お隣さんは、この一人称の違いが、取締役が遺書を書いた本人ではない可能性を示唆するか、または取締役が意図的にそうした痕跡を残した可能性があると述べた。

名探偵お隣さん

佐々木は、お隣さんのステージが終わった後、会場内を散策していた。途中で阿久津さんから連絡が入り、異世界プロダクションのCOOである久我取締役が殺され、自殺に見せかけるよう依頼された。佐々木は二人静氏と十二式さんに協力を求め、犯行現場の応接室に向かった。

応接室で久我取締役の遺体を発見し、佐々木たちは警察への通報と現場の隠蔽工作を進めた。室内のノートパソコンには複数の遺書が残されており、佐々木は久我取締役の一人称が一貫していない点に気づき、不自然に感じた。ローリングも同様の違和感を抱き、取締役の遺書に疑問を持った。

お隣さんは、久我取締役の自殺が他殺である可能性を示唆し、密室殺人の可能性を論じた。二人静氏がフォローを入れたが、お隣さんは犯人がまだ隠れている可能性を指摘し、トイレなどに隠れていた犯人が逃げ出したと仮定した。佐々木たちは監視カメラの映像を確認することで、他殺の可能性を否定しようとした。

その後、お隣さんは何かに気づき、驚いた表情を浮かべた。

【お隣さん視点】

異世界プロダクションの取締役が遺体で発見された。お隣さんは、現場に残されたメッセージに疑問を感じ、自殺ではなく他殺の可能性を指摘した。しかし、佐々木と二人静は、密室殺人の隠蔽工作を実行しており、十二式の協力で監視カメラに何も映らないようにしていた。お隣さんの推理は鋭かったが、佐々木は急いで自殺説を推し進めた。

その後、化粧女(星崎)が警察として現場に到着し、貴宝院やローリング、施設の管理者を廊下に連れ出した。残った佐々木たちは、星崎から事件の背景を聞き、久我取締役が反社会的な組織と関係していたことを知った。佐々木たちは、局の実行犯が失敗したため、密室工作を手伝ったことを明かした。

その時、佐々木の上司からテログループの動きがあったと連絡が入り、イベント参加者が人質に取られていることが判明した。十二式も協力を申し出て、佐々木たちは事件解決に向けて行動を開始した。

【佐々木視点】

佐々木たちは、上司の指示で会議棟から東展示棟へ戻った。向かった先はエリアA、メインステージであり、会場はランチタイムを過ぎており、観客で混雑していた。テログループがステージ内に入り込み、関係者を人質にして交渉を要求しているとのことだった。

佐々木は課長からの指示を受け、二人静と共にセーラー仮面と怪人ミドルマネージャーに変装し、ステージに向かった。ステージでは十二式のサポートで観客に気付かれずに行動できた。二人静はステージでの演技を行いながら、テロリストに近づき、人質を解放するためのアクションを取った。

しかし、セーラー仮面の二人静に異変が起こり、突然キャラクターが変わり始めた。二人静が異能力により操られ、暴力的な行動を取るようになった。佐々木は彼女の攻撃を避けながら、人質を守るために奮闘した。状況はますます緊迫し、ステージ裏からも不穏な音が聞こえてきた。

【お隣さん視点】

メインステージの近隣に設けられた関係者用の控え室で、佐々木と二人静と別れたお隣さんたちは、ステージ裏のスペースで待機していた。お隣さんたちは、ステージ上の佐々木たちのサポートに回る役割を担っていた。傍らにはアバドン、十二式、星崎の姿があった。

十二式が用意した半透明のディスプレイで、ステージ上の佐々木たちの様子を確認していた。舞台袖には拳銃を手にした男が人質を取り、彼がテロ犯であることが判明していた。

突然、十二式が大気中の不穏な反応を検出し、迎撃態勢を取るよう警告した。すると、化粧女が空中に浮かび上がり、テレキネシスによる攻撃を受けたことがわかった。アバドンと十二式が迎撃に向かい、十二式は非致死性の指向性エネルギー兵器を使用し、現れた異能力者たちを無力化した。

敵の異能力者たちは撤退を試み、二人のうち一人が姿を消し、もう一人は倒れて残された。十二式は彼を無力化し、非殺傷兵器で対応していたため、後遺症もほとんど残らないことがわかった。

化粧女が連絡を取り始めると、十二式はステージ内のカメラで逃げた異能力者たちの反応を確認した。彼らは佐々木が対応している異能力者を回収しようとしていたが、姿をくらます異能力者が見捨てられた理由には疑問が残った。

【佐々木視点】

ステージ裏から甲高い音が聞こえた後、舞台袖から二人の異能力者が現れた。佐々木はお隣さんからの連絡で彼らの存在を知った。敵は空間移動と高ランクのテレキネシスを持っていた。お隣さんたちが彼らに対抗したが、ステージ上で佐々木は二人静の相手をしていた。

異能力者たちは観客の目を利用して逃げようとした。佐々木はお隣さんたちにステージに来ないよう伝えた。異能力者の精神奪取に対抗するため、十二式や星崎がステージ裏で迎撃していた。観客の前で佐々木と二人静はアクションを繰り広げ、十二式がサポートすることで演出を続けた。

ステージ上でテロ犯たちは撤退を試みたが、十二式のエネルギー兵器により無力化された。二人静も自我を取り戻し、ステージは一時的に収束した。お隣さんはステージで枯木落葉として登場し、観客の頭上で演出を行った。

テロ犯たちは撤退し、観客は混乱せずにライブ演奏に戻った。佐々木たちはステージから退場し、待機スペースに戻った。事件は無事に解決し、観客は異常に気づかず、舞台劇は成功に終わった。

会場内に入り込んでいたテロ組織の活動は、佐々木たちが異能力者たちを確保した時点で収束した。テロ組織は機械生命体と直接対立することを避けたがっていた。捕らえたテロ犯の供述によれば、イベントを通じてお隣さんをテロ組織に紹介するのが久我さんの狙いであった。局が介入したことで騒動が発生した。

久我さんの身柄は冬フェス終了後に公表される予定で、死因は自殺として処理された。事情を知っているのは局員と異世界プロダクションの一部関係者のみであった。そのため、冬フェスは予定通り二日目も開催され、お隣さんとアバドン少年も参加した。佐々木は星崎さんや二人静氏、十二式さんと共に会場を見て回った。

コスプレ参加の希望により、佐々木たちは仮装して会場に赴いた。二人静氏と佐々木はセーラー仮面と怪人ミドルマネージャーに扮し、十二式さんは枯木落葉の格好をした。十二式さんは写真撮影の交渉を快諾し、非常に満足そうであった。

一方、星崎さんは普段の厚化粧とスーツ姿で、コスプレには参加せず、スマホを頻繁に確認していた。彼女の様子に佐々木は疑問を感じたが、星崎さんは特に問題がないと答えた。十二式さんが提案した機械生命体の治療技術に対しても、星崎さんは興味を示さなかった。

その後、二人静氏が十二式さんのコスプレ目的を問いかけると、彼女は「持ちつ持たれつ」という言葉で説明した。また、星崎さんはPVバトルの進行状況について質問し、佐々木は具体的な回答を避けた。二人静氏はお隣さんたちの今後の活動についても関心を示し、佐々木は彼女たちが活動を続ける意向を伝えた。

冬フェスの二日目は、特に大きな問題もなく無事に終了した。

【お隣さん視点】

冬フェス二日目の会場で、控え室で休憩を取っていたお隣さんは、ステージイベントの賑やかし要員としての役割を終えていた。傍らにはアバドンが浮かんでいた。控え室に戻ると、貴宝院とローリングが声をかけてきた。彼女たちもステージの主役として出演していた。

貴宝院は久我さんの件が自殺と判断されたことについて話し始め、お隣さんの推理に興味を示した。お隣さんは彼女たちに率直に意見を述べ、貴宝院はその率直さを利用して、自身のキャラ作りから脱却しようとしていることを打ち明けた。しかし、お隣さんはその提案を断った。

その後、マネージャーである佐々木と合流するために控え室を後にし、職場の先輩に対して愚直な態度を示したことについてアバドンと話した。お隣さんは自身の陰キャな性格を再確認しつつ、次の行動に移った。

【佐々木視点】

冬フェスの全日程が終わり、スタッフたちは打ち上げを行った。佐々木やお隣さんも誘われたが、断ってホテルに戻った。部屋に戻ると、ルイス殿下とエルザ様が待っていた。エルザ様の肩には文鳥殿が止まっていた。

ルイス殿下とエルザ様は佐々木たちを迎えに来たが、ルイス殿下は外の世界を見せたいと考えていた。お隣さんとアバドン少年も合流し、二人静氏が家族揃って外食を提案した。多数決で全員賛成し、外食が決まった。

その後、PVバトルの結果発表を行った。二人静氏が最下位、星崎さんが次点、お隣さんとアバドン少年が三位、十二式さんが二位となった。佐々木は一位であった。佐々木の動画は、熊に襲われる様子を撮影したもので、再生数が四百万を超えていた。

星崎さんの動画はダンス動画であり、切り抜きが問題となり炎上していた。十二式さんはオリジナルのミュージックビデオを多数配信し、三百万再生を達成していた。結果として佐々木が一位になり、二人静氏にお願いをする権利を得た。佐々木はセクハラの控えをお願いした。

部屋のドアが不意にノックされた。事前に約束はなかったため、佐々木は疑問に思いながら「はい、どちら様ですか?」と声を上げた。すると、英語の主音声と日本語の副音声が聞こえ、メイソン大佐が現れた。佐々木はドアを開け、メイソン大佐とマジカルブルーを招き入れた。

エルザ様やルイス殿下は初対面であったが、大佐は動画投稿サイトで彼らのことを知っていたようだ。佐々木は「どういったご用件でしょうか?」と確認すると、大佐は機械生命体に関する情報とテロ組織の背後関係について話し始めた。

大佐は、機械生命体の確保を目的とした複数のテロ組織が国際的なネットワークに関与していると述べた。そして、佐々木に対して反撃作戦への協力を要請した。佐々木はこれまでも協力してきたが、大佐は一時的に佐々木の身分を借り受けると明言した。佐々木は驚きながらも、国外出向の指示に従わざるを得なかった。

『佐々木とクマ』(PV四百万の動画)

二人静氏の発案によりPVバトルが開催された数日後、佐々木は動画のネタ探しに軽井沢の別荘地を歩いていた。しかし、編集した動画がほとんどPVを稼げず、投稿の頻度も減っていた。そんな中、背後からガサガサと音が聞こえ、振り返ると大きなツキノワグマが現れた。

佐々木はクマに話しかけながら後ろ向きに距離を取ったが、クマは唸り声を上げて迫ってきた。近くの木幹を盾にしてクマと追いかけっこをする中、ピーちゃんから学んだ障壁魔法で打撃に備え、辛うじて冷静さを保った。

クマが大きな咆哮を上げると、佐々木は懐からジャーキーを取り出してクマに投げたが、クマはそれに満足せず、追いかけっこは続いた。後で確認すると、ジャケットの胸ポケットに入れていたスマホがその一部始終を撮影していたことがわかった。

漫画「龍狼伝 王霸立国編(2)」感想・ネタバレ

読んだ本のタイトル

龍狼伝  王霸立国編
著者:山原義人 氏

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あらすじ・内容

自らの国作りのため「竜の子が死んだ」と噂を広め、姿を隠した志狼。神山での竜騎兵との厳しい修業を経て、辿り着いた新野の地で待っていたのは新たな“竜の子”だった・・・・!? 一方、許都では竜娘娘(真澄)を皇帝に即位させるべく、“水徳党”と名乗る一団が暗躍、また真澄自身にも邪仙・大幻(ダーファン)の魔の手が伸びようとしていた。不穏な空気が充満する中、真澄は――!?

龍狼伝 王霸立国編(2)

前巻までのあらすじ

竜の子の王国を創る。
天地志狼はそう決意する。

そのために竜騎兵達を修行をつけるために山籠りする。

それとは別に真澄は、仲達からの暗殺から逃れるため五虎神の青龍と虚空衆から逃げ、張飛に助けられたが、献帝は曹操の元に行ってしまったが。

関羽が献帝の脱出を助ける。

感想

竜騎兵の修行が終わり、各地に人材発掘のために散って行った。

そして志狼は新野に向かう。

そして、真澄には大幻が解放した謎の仙人ダシウーが竜娘娘を護衛する近衛兵を仲達と同じ虚無の心を持つ者にしてしまった。

そして忠誠を全く疑われてなかった近衛兵士達が真澄を暗殺しようと襲って来た。
そんな近衛兵の変貌を解析しようとしたら、、
全て闇だった。

それに戦慄する真澄は、近衛兵を変貌させたダシウーを探すが手掛かりは皆無。

そして、新野に着いた志狼達は竜の巫女が居ると聞き、その会場に紛れ込む。

そして、金髪碧眼の白人種の女性が竜の巫女だとわかり。

完全な偽物だと理解するが彼女を中心に新興宗教が出来てしまった事にウンザリとする志狼。

新野の政治が上手く行ってるのは、この新興宗教のような竜の巫女から祝福を得たいと色々と領民は無理してるのが現状。

かなり歪な統治になっており、それを危惧する人も多くいる状態。

そして、帝達は突然現れた竜の巫女を讃え、彼女を中心とした統治を求める。
水徳党を調べようと動き出した馬騰が、真澄に悪意を持つ大幻に殺されてしまう。

そして竜娘娘の真澄は馬騰殺害容疑で幽閉されてしまう。

偽モノの竜の巫女のソフィアはローマ帝国から異端で漢に逃げて来たらしいが、、

神の聖杯と名乗る異端抹殺を任務する特殊部隊がソフィアを追って来て、一度は仲達が助けたが。

今度は首領自ら最精鋭を率いて、たまたま近くにいたライを武力で圧倒してソフィアの居場所を聞き出して新野に向かう。

それにしてもライくん、、

君ってばヒモだね!

漢を統一する夢はどうするの?

あと、ランの仇打ちはどうするんだ?

最後までお読み頂きありがとうございます。

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