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小説「継母の心得 1」ノアが天使過ぎる! 感想・ネタバレ

物語の概要

主人公・山崎美咲は病気でこの世を去ったが、目を覚ますと生前読んでいたマンガ『氷雪の英雄と聖光の宝玉』の世界に転生していた。しかも、幼少期の主人公を虐待する悪辣な継母キャラ・イザベルとして。前世の記憶を取り戻したのは結婚式の前日で、もはや逃げようもない。とにかく虐待しないようにしよう、と決意して対面した継子は――めちゃくちゃ可愛いんですけどー!!! ついつい前世の知識を駆使して子育てに奮闘しているうちに、超絶冷たかった旦那様の態度も変わってきて……!? 義息子のためならチートにもなっちゃう! 愛とオタクの力で異世界の育児事情を変える、異色の子育てファンタジー、開幕!

主要キャラクター

• イザベル(山崎美咲):前世で子を持てなかった女性。マンガの世界に転生し、悪辣な継母キャラとして生きることに。義息子ノアの可愛さに心を奪われ、彼のために奮闘する。
• ノア:イザベルの義息子。天使のように可愛らしく、イザベルの愛情を一身に受ける。
• テオバルド:イザベルの夫であり、公爵家の当主。初めは冷たい態度をとるが、イザベルの努力により徐々に心を開いていく。
• アバドン:マンガ内で暗躍していた悪魔。転生後の世界でも人々を陥れようと画策する。

物語の特徴

• 異世界転生×育児:前世の記憶とオタク知識を活かし、異世界での育児に奮闘する主人公の姿が描かれる。
• 家族愛の描写:義息子ノアとの心温まるエピソードが多く、読者の共感を呼ぶ。
• 成長と変化:冷たかった夫テオバルドが、イザベルの努力により変わっていく過程が見どころ。
• ユーモアとシリアスのバランス:コミカルなやり取りとシリアスな展開が絶妙に組み合わさっている。
• 独自の世界観:育児に関する道具が整っていない異世界で、主人公がオタク知識を活かして新しいものを作り出す。

書籍情報

継母の心得
著者:トール 氏
イラスト:ノズ  氏
出版社:アルファポリス(レジーナブックス)
発売日:2023年3月1日
ISBN:978-4-434-31671-5
関連メディア展開:コミカライズ:作画:ほおのきソラ、構成:藤丸豆ノ介。
第1巻は2024年11月26日発売

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あらすじ・内容

義息子が可愛すぎて、悪役になれない!!!
病気でこの世を去ることになった山崎美咲。ところが目を覚ますと、生前読んでいたマンガの世界に転生していた。しかも、幼少期の主人公を虐待する悪辣な継母キャラとして……。前世の記憶を取り戻したのは結婚式の前日で、もはや逃げようもない。とにかく虐待しないようにしよう、と決意して対面した継子は――めちゃくちゃ可愛いんですけどー!!! ついつい前世の知識を駆使して子育てに奮闘しているうちに、超絶冷たかった旦那様の態度も変わってきて……!? 義息子のためならチートにもなっちゃう! 愛とオタクの力で異世界の育児事情を変える、異色の子育てファンタジー、開幕!

継母の心得

感想

『継母の心得』は、読了後に心がじんわりと温まる、優しさと成長に満ちた物語である。
主人公は、現代の日本で病に倒れたオタク女子・山崎美咲。
死を迎えた直後、彼女は自分がかつて読んでいたマンガの世界に、幼い主人公を虐待する悪役継母として転生してしまう。
この設定だけでも衝撃的であるが、本作はその後の展開にこそ真価がある。

まず心を打たれたのは、イザベルが前世の記憶を取り戻し、自分の立場の重大さを自覚しながらも、継子ノアに向ける愛情がとても真っ直ぐで深いという点である。
冷たい態度の公爵、育児知識のない侍女たち、そして孤独で心を閉ざしたノア――そのような環境にあって、イザベルが前世のオタク知識を活かして紙芝居や玩具、果ては子供用食器まで作り出していく過程には、読んでいて何度も胸が熱くなった。
単に可愛がるだけではなく、ノアの成長を本気で願い、社会そのものを育児しやすい形へと変えていこうとするその姿勢に、母としての覚悟と誇りを感じた。

イザベルの育児が公爵家の使用人たちの心を変えていく描写も印象的である。
最初は距離を置かれていたノアが、いつの間にか屋敷の「天使」と呼ばれるようになり、メイド職の競争倍率が急上昇するくだりには思わず笑ってしまった。
だがそれは微笑ましいだけでなく、子どもを大切に育てる姿がどれだけ周囲の人間の心をも変え得るかを示しており、本作のテーマの一つがそこにあるのだと感じさせられた。

さらに、前世の記憶というファンタジー要素を単なる便利設定にとどめず、「現代日本の母親たちが抱える葛藤」や「育児と社会のすれ違い」といった問題を、異世界という舞台を借りて丁寧に描いているところにも感銘を受けた。
イザベルの事業展開は時に大胆で、時に不器用ではあるが、その背景には常に「子どもが安心して過ごせる場所を増やしたい」という信念がある。
その結果としてできた店舗のプレイルームやカフェ、巨大滑り台まで、どこも楽しげで、読者としても「こんなお店があったら行ってみたい」と素直に思えてしまう。

また、ノアと第二皇子イーニアスの交流も、子ども同士の友情の美しさを描いた名場面の連続である。
イーニアスが成長実験と称してノアの提案を真剣に実行する場面や、二人が手紙で両想いを確認し合うやり取りは、可愛らしさと尊さが詰まっており、母親視点でも読者視点でも思わず頬が緩んでしまう。
その一方で、イザベルが第二皇子や皇后との関係性を築きながら、国家規模の陰謀に向き合っていく展開も重層的であり、物語としての奥行きを持たせていた。

そして特筆すべきは、皇后マルグレーテの人物像である。
初登場時は傲慢な敵役かと思わせるが、物語が進むにつれて、彼女もまた母であり、子どもを守るために苦悩しながら道化を演じていたことが明らかになる。
イザベルとの対話を経て本音を吐露する場面では、読者としても心の奥に何かが沁み込んでくるような感覚を覚えた。
イザベルのまっすぐな言葉が、他者を変え、世界を変えていく――本作はまさにそれを示してくれる。

総じて、『継母の心得』は、子育てを中心に据えながらも、社会変革や人間関係の再構築といった多層的なテーマを織り込んだ、読み応えのあるファンタジーである。
特にノアやイーニアスといった幼い子どもたちの可愛らしさは破壊力抜群で、読者の母性本能をくすぐること間違いなし。
今後の展開にも大いに期待が高まる一作である。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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展開まとめ

プロローグ

病床で迎えた最期

山崎美咲は、三十五歳の時に癌を宣告され、治療の結果子どもを産めない身体となっていた。恋愛に縁がないまま独身生活を続け、やがて抗がん剤治療や手術の甲斐もなく病院のベッドで死を迎えた。最期に彼女は「もし来世があるのなら、母になりたい」と強く願っていた。

異変と目覚め

死の直後、彼女は不思議な声で目を覚まし、見知らぬ高級な部屋と侍女サリーの存在に困惑した。周囲の様子はヨーロッパ風の宮殿のようであり、自身が見知らぬベッドに寝ていることに違和感を抱いた。

記憶と身体の混乱

体が勝手に動き、洗顔や挨拶の動作を自然にこなすことに戸惑いながらも、彼女は自分の名前が「イザベル・ドーラ・シモンズ」であることを認識した。グランニッシュ帝国の貧乏伯爵家の長女で、明日には子持ちの男性と後妻として結婚する予定であった。

前世の記憶との統合

やがて、美咲はこの身体の持ち主であるイザベルの記憶と、自分の前世の記憶の両方が存在することに気づいた。彼女は三十六歳で死んだ山崎美咲であり、現在は十七歳のイザベルとして目覚めていた。転生した今、結婚前夜という重要な局面で前世の意識が蘇ったことに衝撃を受けていた。

第一章  前世を思い出す

貧乏伯爵家の朝と嫁入りの覚悟

イザベルは貧困なシモンズ伯爵家での朝を迎え、限られたドレスの中から一着を選んで身支度を整えていた。持参金なしで結婚先を得たことに対し、過去の自分のわがままを悔いながらも、再婚相手の年齢や事情を受け入れ、前世の記憶を生かして前向きに捉えていた。

家族との朝食と心境の変化

家族との朝食では、父と弟からの心配をよそに、イザベルは結婚に対して前向きな姿勢を見せた。かつての我儘な振る舞いを反省し、公爵家に嫁ぐ決意を語ったことで、家族を驚かせることとなった。

原作物語の回想と自らの役割の認識

イザベルは前世で読んでいた漫画『氷雪の英雄と聖光の宝玉』の内容を思い出し、自分がその世界に転生し、悪役継母のポジションにいることを悟った。そこには義息子ノアと公爵家当主テオバルドの関係や、皇太子を巡る政治的陰謀が描かれていた。

結婚式と公爵家への到着

動揺を抱えたまま結婚式を迎え、無事に誓いの言葉を述べたイザベルは、公爵家の邸宅に到着した。夫であるテオバルドの冷淡な態度や使用人たちの困惑を前に、女主人として毅然とした態度を取り、名乗りを上げた。

義息子ノアとの出会い

イザベルは階段の上から姿を現した幼児ノアに一目惚れし、使用人たちの制止を振り切って初対面を果たした。極端に口数の少ないノアに対し、優しく膝をついて挨拶を交わし、距離を縮めようと努めた。

ノアの現状と教育環境への疑問

ノアの世話係カミラには育児経験も知識もなく、絵本やおもちゃも存在しないこの世界の育児環境にイザベルは衝撃を受けた。ノアが話さない理由が環境にあると判断し、読み聞かせによる言語刺激を与えることを決意した。

紙芝居の制作と読み聞かせの開始

イザベルは前世のオタク知識を活かし、一週間で手作りの紙芝居を完成させた。ノアに紙芝居を読み聞かせたところ、彼は大喜びし、感情を表に出すようになった。さらに、これまで話さなかったノアが言葉を発したことにより、周囲は大きな驚きを覚えた。

成果と母子関係の進展

紙芝居が大成功を収め、ノアは繰り返しの読み聞かせを望むようになった。コミュニケーションの増加とともに言葉を発する機会も増え、イザベルはノアにとっての「お母さま」としての役割を果たし始めた。ノアとの距離が縮まる一方で、イザベルは自らが義母として導く責任を強く意識していた。

第二章  オタクの英才教育

魔法遊びとノアの成長

春の庭園で、イザベルはノアと侍女カミラに生活魔法を応用した遊びを教えていた。紙芝居をきっかけに外へ出るようになったノアは、魔力コントロールの訓練と称する遊びを通して生き生きとした様子を見せていた。イザベルはその変化に安堵しつつも、原作で描かれた未来への不安を抱いていた。

執事長の視点と父親の無関心

執事長ウォルトは、庭から響くノアの声に気づいたテオバルドの無関心な反応に落胆していた。彼はノアの誕生時にも義務感だけで対応した過去を思い出し、前妻や乳母の死後もノアに対する無関心が続いていたことを改めて痛感していた。新しい継母の存在がノアにとって救いとなっていることを、ウォルトは静かに受け止めていた。

知育玩具・積み木の発明

イザベルは、この世界におもちゃが存在しない事実に衝撃を受け、独自に積み木の制作を試みた。馬丁に協力を仰ぎ、カラフルな木製ブロックを完成させると、それはノアに大変気に入られた。集中力や発想力を養う知育玩具としての役割を説明しつつ、イザベルは他の玩具の開発も視野に入れるようになった。

新たな知育玩具開発への意欲

ノアの積み木への没頭ぶりを目の当たりにしたイザベルは、さらなる知育玩具の必要性を実感した。嵌め込みパズルなどの製作を馬丁に提案したが断られたため、街の職人に依頼することを決意した。執事長に許可を得た上で、馬車に乗って街へと向かった。

街の訪問と工務店での交渉

街中の華やかさに圧倒されつつ、イザベルは工務店を訪問し、店主イフに玩具制作を依頼した。当初は一度限りの注文に消極的だったイフに対し、イザベルは「子供用品の専門店を開く」という嘘を咄嗟につき、安定した仕事を提示する形で交渉を成立させた。自らの発言に動揺しつつも、店を出す準備へと歩みを進めることとなった。

街での注目と公爵家の評価

街中ではイザベルが公爵家の馬車で現れたことで人々の注目を集め、彼女の正体を巡って噂が広まった。意外にもテオバルド公爵の評判は非常に高く、民からの感謝の声が多く寄せられた。その評価と、冷淡な態度との落差にイザベルは複雑な感情を抱いた。

子供用食器という新たな発見

帰宅後、イザベルはノアとの夕食中、彼がフォークを落とす様子から、子供用の食器がこの世界には存在しないことに気付いた。使用中の食器はサイズも材質も幼児に不向きであり、その不便さを反省したイザベルは、新たな商品として子供専用の食器を作る決意を固めた。

第三章  素材と絵師と店探し

素材探しと魔物・植物の調査

イザベルは、子供用食器の素材として軽くて割れにくいプラスチックのような素材を探すため、屋敷の図書室を訪れた。魔物や植物に関する図鑑を読み漁ったが、有力な情報は得られなかった。そんな中、偶然見つけた木の板に記された内容から、実家の領地に群生する「パブロの木」の樹液が冷やすと固まり、軽く割れにくい性質を持つことを知り、それを試すべく実家へ手紙を送る決断を下した。

絵師の選定と店舗探し

子供用品に絵柄が必要であると考えたイザベルは、絵師の雇用を執事長ウォルトに相談し、その選定を一任した。同時に、出店のための貸店舗候補を視察し、貴族街の大通りに位置する三軒の物件のうち、一軒目が最も整備されていたが、高額な家賃に悩んだ。ノアと共に過ごす中で、出店に向けた構想を語り合う穏やかな日常の一幕も描かれた。

公爵の帰宅と気まずい再会

ある日、公爵が予告なく屋敷に戻り、イザベルと鉢合わせた。彼の冷たく無言の態度に対し、イザベルは内心で不満を募らせつつも、平静を装って対応した。ノアへの関心も表面的なものであったため、イザベルの怒りは頂点に達し、翌朝には気持ちを切り替えて物件見学に向かった。

曰く付き物件との対峙

物件のひとつは貴族街の一等地にありながら、過去に入居した全ての店が潰れていた。イザベルは当初、この物件に不信感を抱いたが、立地条件と過去のドレス店の失敗原因を分析し、女性客の動線に問題があると見抜いた。裏口に駐車スペースを設ける改装案を考案し、家賃三分の一かつ大規模改装の条件で契約を成立させた。

商品計画と弟の来訪

物件契約後、イザベルは取り扱う商品の構想を練り、絵本や積み木、さらにジグソーパズルや立体パズルの試作を依頼していた。そんな折、実家から弟オリヴァーが訪ねてきた。彼は豪奢な屋敷や多数の使用人に圧倒されつつも、姉への親しみを隠さず接し、その言動に戸惑いながらも交流を深めた。

ノアとの交流と弟の驚き

ノアは叔父であるオリヴァーにすぐ懐き、礼儀正しい挨拶を披露した。イザベルの育児ぶりにオリヴァーは驚愕しつつも深く感心し、侍女サリーもその変化を驚きとともに受け止めた。イザベルは彼らの反応に内心で突っ込みを入れつつも、前に進んでいる実感を得ていた。

樹液の冷却実験と素材の発見

やがて実家から届けられた樹液を用いて、イザベルは冷却魔法による固化実験を実施した。結果、冷却された樹液は白く光沢のある素材となり、床に落としても割れないほどの軽さと強度を有していた。その手触りと質感はまさに理想としていたプラスチックに近く、素材としての可能性に確信を深める成果となった。

第四章  伯爵家の危機

新素材の性能と問題点の発見

実験の結果、パブロの木の樹液から生成される素材は、プラスチックよりも軽量かつ高耐久であり、加熱によりガラスのような透明かつ堅牢な状態にもなることが判明した。色付けや絵付け、コーティングにも適しており、食器や玩具の素材として理想的であった。しかし、固まった後は再加工ができず、処分困難という欠点も存在した。この問題については、スライムが素材を分解できることが発見され、対応策が見出された。

情報の出所と身分問題の発覚

素材の特性が記された木の板の出所について、弟と侍女から、それが正式な学術的情報ではなく、庶民の落書きである可能性が指摘された。仮に本物の学術的発見であれば、貴族の領地で無視されるはずがない。素材の存在が国家機関に知れれば、領地没収の危険すらあると判明し、イザベルは素材の存在を秘密にする方針を固めた。

少量生産による価値向上の提案

イザベルは素材の希少性を活かすため、少量生産とシリアルナンバーの導入を提案した。子供用食器は自身の店舗でのみ販売する構想を立て、製品の特別感と高付加価値を演出することで収益性を高める狙いがあった。

人手不足と公爵への依頼

生産体制については、シモンズ伯爵家には十分な人手がなく、既存の使用人に負担をかけることも難しい状況であった。そのため、ディバイン公爵の支援を仰ぐ案が浮上したが、イザベルは夫婦関係が形だけであることを理由に難色を示した。しかし、弟の強い要望により、公爵に相談する決意を固めた。

魔法契約と交渉の成功

イザベルは公爵との面会に臨み、彼が女性を苦手としていることを見抜いたうえで、その特性を逆手に取って魔法契約を提案した。契約内容には「離婚の禁止」「接触の制限」「シモンズ家の保護」などが盛り込まれ、交渉は円滑に成立した。こうしてイザベルは、公爵からの庇護と事業支援を確保することに成功した。

素材の実演と信頼の獲得

イザベルは公爵に新素材の現物を提示し、その強度や耐熱性、耐寒性を実演して証明した。公爵は氷と火の魔法を用いて試験を行い、壊れないことを確認して驚愕した。この結果、公爵は素材の価値を認め、シモンズ領での生産と設備整備を認可したうえで、収益の七割をディバイン公爵家に、三割をシモンズ伯爵家に配分する契約に合意した。

テオバルドの懸念と評価

公爵テオバルドは、この素材が国内外に波紋を広げる可能性を危惧し、場合によっては戦争の火種となる懸念を抱いた。一方で、執事長ウォルトはイザベルの知恵と行動力を高く評価し、その予測不能な働きに期待を寄せた。公爵自身はイザベルを全面的に信頼していたわけではなかったが、契約に基づき彼女を活用する姿勢を示していた。

弟とサリーへの報告と出発準備

イザベルは弟と侍女サリーに契約の詳細と交渉結果を報告し、弟は父へ報告するために帰郷の準備を始めた。サリーは事後報告の形で話が進んだことに疑問を呈したが、イザベルは父への手紙を用意すると約束し、弟の理解を得た。

緊張の晩餐と公爵の冷淡な態度

晩餐では、公爵の冷淡な物言いにイザベルは怒りを覚えつつも表情を崩さず、ノアの存在を毅然と守った。食事中、公爵は素材の詳細について弟に追及する場面も見られたが、ノアの無邪気な様子が場の緊張を和らげる効果をもたらした。

ノアと未来への希望

ノアは自分専用の新しい食器を楽しみにしており、イザベルはその期待に応えるべく努力を誓った。ノアの存在はイザベルにとって心の支えであり、彼の笑顔こそがすべての困難を乗り越える原動力となっていた。

第五章  立体パズル

立体パズルとトイブロックの製作開始

オリヴァーの帰宅後、侍女から工務店からの完成報告を受けたイザベルは、すぐに現地を訪れて立体パズルの完成品を確認した。作品の完成度の高さに感銘を受けた彼女は、様々な形状のパズルの注文を行い、数量や納期についても具体的な取り決めを交わした。さらに、金型職人の紹介を受け、食器用金型の製作も依頼した。

ノアの反応と新たなアイデアの着想

帰宅後、息子ノアにパズルを手渡すも、最初は無反応で落胆した。しかしノアはすぐに組み立てを始め、完成品を見て笑顔を見せたことで、イザベルは彼の成長を実感した。続けて、トイブロックや子供用食器といった新商品の企画が次々と進む中、女性客向け商品の不足に気づき、女の子向け商品の開発に着手することとなった。

女の子向け商品の開発と店舗準備

カミラとの会話を通じて「着せ替え可能なテディベア(お着替えテディ)」という新商品が考案された。女児の好みに応えるため、デザイン性を重視し、服飾店や孤児院とも連携を進めた。同時に、駐車場の整備や内装の装飾も着実に進行し、貴族の来客を意識した店舗づくりが完成へと近づいていった。

プレオープンと客層の反応

プレオープンには貴族関係者を中心に招待がなされ、店内装飾や商品構成が来客に好評を得た。特に、試遊可能なキッズコーナーが子供たちの注目を集め、母親たちの関心は軽くて割れにくい食器に集中した。結果として、予想を上回る注文が殺到し、好調な滑り出しとなった。

在庫不足と緊急対応

盛況の影響で商品在庫が急減し、本オープンを一週間後に控えた時点で深刻な在庫不足が判明した。イザベルはスタッフと共に急遽増産体制を敷き、工務店のイフや絵師のアーノルドからの支援を受けて短期間での商品補充を可能とした。店舗裏のスタッフルームは臨時作業場と化し、総力戦の様相を呈した。

本オープンと予想外の人気拡大

本オープン当日は朝から客足が途絶えず、富裕層に加えて庶民層からも高い評価を得た。特に「お着替えテディ」は爆発的な人気を博し、リピーターも続出した。加えて、大人にもパズル商品が好評を得たことで、想定を超える需要が生まれた。

支援者アーノルドの回想

絵師アーノルドは、公爵夫人イザベルからの支援により人生が大きく変化したことを回想した。貧しい環境の中で絵を描き続けてきた彼は、イザベルの依頼により職業としての道を得たばかりか、新しい技法を学ぶ機会や安定した報酬まで得ることができた。その先見の明と決断力に深い感謝の念を抱いていた。

皇帝陣営の警戒と政情の影

イザベルの関わる新素材事業が皇帝の耳に届き、ディバイン公爵家の影響力の拡大に対する警戒感が高まった。皇帝は素材の独占を試みようとしたが、公爵家の関与により手出しできず、憤りを募らせていた。

ドレス選びと皇宮への不安

皇帝主催のパーティーに招待されたイザベルは、周囲から提案された悪役的なドレスを拒み、最終的にノアの瞳と同じアイスブルーのドレスを選んだ。皇宮への嫌悪感は拭えなかったが、公的な立場を果たすため、出席を受け入れる覚悟を固めた。

ピアノ演奏と継母としての葛藤

ある日、偶然立ち寄ったピアノ室でイザベルは過去の記憶に浸りながら静かに演奏を始めた。そこに執事長ウォルトが現れ、ピアノが前の夫人の持ち物であると告げた。イザベルは継母として触れたことを悔やんだが、ウォルトはノアとの新たな思い出を作るためにこそ弾いてほしいと伝えた。その言葉に、イザベルは静かに胸を打たれていた。

第六章  皇帝の企み

皇宮パーティーと毒の陰謀

準備と憂鬱な出発


イザベルは皇宮のパーティーに出席するため、メイドたちに朝早くから起こされ、入浴、マッサージ、ヘアメイクを受け、美しいアイスブルーのドレスを身にまとった。愛息ノアと離れて過ごす寂しさを胸に、夫であるディバイン公爵と馬車で出発した。公爵は終始不機嫌で、イザベルに一切の気遣いを見せることなく、無言のまま出発した。

煌びやかな皇宮と皇帝の登場

皇宮は想像を超えるほど豪華であり、イザベルは公爵の腕を取りながら貴族たちの挨拶に笑顔で応じた。新素材で作られた食器への関心を示す者もおり、帝都の情報網の速さに感心させられた。やがて、真紅の髪と金の瞳を持つ皇帝が現れたが、その尊大な態度と見下すような振る舞いに、イザベルは不快感を覚えた。

不審な視線と毒への気づき

給仕がワイングラスを配る中、イザベルと公爵にだけ直接グラスが手渡されたことに違和感を覚えた。さらに、皇帝がこちらを見て微笑んだ瞬間、彼女はある種の悪意を直感した。イザベルは公爵のワインを受け取り、自身のグラスを公爵に渡すことで、毒の摂取を自ら引き受けた。長期的に効果が出る毒であることを知っていたため、その場は飲み干すことを決断した。

毒の影響と意識の喪失

ワインを飲んだイザベルは、帰路の馬車内で突如体調を崩し、倒れた。だが意識を失う直前、毒が混入されていた可能性のある氷を公爵に託すことに成功した。その後、毒の成分が氷から検出され、公爵は自分が狙われていたことを初めて理解した。イザベルが身を挺して守ったことに、彼は動揺を隠せなかった。

皇帝の陰謀と冷酷な計画

皇帝は、ディバイン公爵とその派閥を弱体化させるため、少しずつ毒を摂取させる計画を進めていた。毒は皇族しか入れない庭園に咲く「黒蝶花」からのみ作られるもので、解毒薬も同様であった。皇帝は、この毒を用いて公爵を操り、自らの支配下に置こうと目論んでいた。

目覚めと公爵の変化

イザベルはタウンハウスで目を覚まし、自身が夢ではなく現実の世界にいることに安堵した。見舞いに訪れた公爵は、毒の存在に気づいた経緯を問い、イザベルは皇宮の振る舞いや不自然な状況、そして皇帝の視線から違和感を感じたことを説明した。その推理に公爵も納得し、彼女の観察力に感嘆した。

契約の見直しと未来への配慮

イザベルは、自身と伯爵領を守るために交わした魔法契約の文言を、「公爵が把握している危険から守る」という内容に修正するよう求めた。これにより、公爵が認識できない危険に巻き込まれて命を落とすことを防ぎたかった。公爵はその提案に理解を示し、体調が回復次第、契約の見直しを行うと約束した。そして彼は、初めてイザベルに優しい言葉をかけ、そのまま部屋を後にした。

第七章  再会

ノアとの再会と温かい帰郷

イザベルが邸宅に戻ると、ノアは玄関先で泣きながら彼女を出迎えた。抱き上げられたノアはイザベルから離れまいと強くしがみつき、使用人たちは彼女の帰還を一斉に出迎えた。公爵も同行していたが、その場でも無表情を崩さなかった。

毒の体内残留と医師の診断

医師からは、イザベルと公爵の体内に未だ毒が残っており、聖水では効果が期待できないことが伝えられた。イザベルは毒の影響を受けやすい体質であり、風邪など軽い病も重篤化する恐れがあると警告された。公爵はその診断に強く反応し、イザベルの健康を本気で案じていた。

公爵の過去とイザベルへの認識の変化

公爵テオバルドは、女性に対する強い嫌悪と過去のトラウマを抱えていた。だがイザベルは、実家の貧困と評判の悪さに反して、商才と行動力を持ち、公爵家の経営や子育てに多大な貢献をしていた。彼女の有能さに触れる中で、公爵は次第に彼女を女性としてではなく、尊敬すべき一個の人間として認識するようになっていった。

新支店計画と毒の正体

イザベルは紙芝居や新しい玩具の開発に励みながら、黒蝶花という毒の原料に関する情報を「木の板(=漫画)」の知識から導き出した。それを公爵に伝えるが、当初は信じてもらえなかった。後に公爵が第二皇子からの証言で黒蝶花の存在を確認し、イザベルの推察が事実であったと認めた。

第二皇子との接触計画と葛藤

黒蝶花を手に入れるため、公爵はイザベルと共に第二皇子イーニアスに接近する作戦を立てた。イザベルは計画の一部にノアを同行させることを強く望み、皇子との距離を縮めるために、同年代の子供としての存在が有効であると説得した。

ノアの同行と帝都への移動

イザベルはノアとカミラを伴って帝都へ向かい、店舗の準備を進めた。ノアは馬車での旅中にイザベルの膝の上で眠り、その愛らしさがイザベルの不安を和らげた。公爵も密かにノアの存在に対して変化を感じ始めていた。

皇子との初対面と信頼の構築

イザベルたちはついに第二皇子と面会した。イザベルは挨拶と共にノアを紹介し、ノアは皇子とすぐに打ち解けた。二人はおもちゃを通して交流を深め、自然な関係を築いていった。イザベルは皇子の聡明さと素直さに感心し、また皇子が両親に構ってもらえていない可能性にも気づいた。

解毒への布石と今後の展望

面会中、イザベルは麦茶の存在をさりげなく紹介し、皇子に興味を持たせることに成功した。イザベルは今後、黒蝶花を使った新しいおもちゃの開発という形で皇子の興味を引き、その入手を目指すこととなる。こうして、毒に対抗するための希望の芽が静かに育ち始めた。

第八章  小さな冒険

黒蝶花を題材とする絵本の構想

イザベルは黒蝶花を題材に絵本を描く計画を立てたが、その花を見たことがなかったため、公爵はイーニアス殿下に花の採取を依頼した。殿下は幼いながら任務を引き受け、自ら花を根ごと採取する役目を担うこととなった。

花の採取と殿下の孤独な冒険

殿下は小さな鉢とスコップを持ち、ひとりで皇帝の庭に入り黒蝶花を探した。途中、父である皇帝と遭遇しかけたが、イザベルや公爵の言葉を思い出して隠れ切り抜けた。苦労の末に花を見つけ、根を傷つけぬよう採取して鉢に入れた殿下は、自信に満ちた様子で戻っていった。

殿下の帰還とイザベルの後悔

門の前まで戻った殿下は躓いて転倒し怪我を負ったが、黒蝶花を守り抜いた。その姿にイザベルは胸を打たれ、幼い殿下に危険な任務を課した自責の念から涙を流した。殿下は痛みに耐えて笑顔を見せたが、イザベルの問いかけでついに泣き出し、その幼さを露わにした。

公爵邸での休息と癒しの時間

殿下はイザベルの腕の中で眠りにつき、ノアも同じ布団で寄り添った。イザベルは殿下を綺麗にし、怪我の手当を施した。その後、公爵の協力を得て、黒蝶花を魔法仕掛けの箱に収め、王宮から持ち出す準備を整えた。

皇后との対峙と意外な支援者

イザベルは王宮で皇后と再会し、当初は侍女として侮られたものの、自身の立場を明かして堂々と応じた。皇后は黒蝶花の件を察しながらも咎めず、公爵に後見人を頼むよう依頼した。皇后はイーニアスを皇帝に育て上げるため厳しく接しており、己の立場と息子への愛情の狭間で葛藤していた。

皇帝の登場と騒動の回避

皇帝が黒蝶花の盗難に怒り乗り込んできたが、皇后が咄嗟に罪を被り、騒動を回避した。イザベルは皇后の機転と息子への思いに心を打たれ、母として殿下と向き合うよう促した。皇后もそれを受け入れ、香水の使用を控えると約束した。

皇后の本音とイザベルへの信頼

皇后はかつての誤解を詫び、イザベルを信頼する旨を述べた。彼女は国の未来を憂い、皇帝の側妃によりイーニアスの立場が脅かされる危機に備え、公爵に後見を頼む必要性を説いた。イザベルはその真摯な訴えを受け止め、公爵との会談を取り持つことを約束した。

公爵の心の揺れと無自覚な感情

イザベルから事情を聞いた公爵は、皇后との会談を承諾し、イザベルにも同席を求めた。彼は彼女に対する想いに戸惑いながらも、知らぬうちに彼女の言葉や存在を意識し始めていた。幼子を抱く彼女の姿や優しさが、彼の心に静かに残り始めていたのである。

第九章  巨大滑り台

滑り台とカフェを備えた新店舗の完成

イザベルは帝都支店『おもちゃの宝箱』の開店準備を終え、念願のプレオープンを迎えた。店内は新素材を用いた内装で統一され、二階から一階へと続く巨大滑り台が目玉となっていた。公爵や執事長ウォルトも来訪し、新素材の用途に関心を示した。ノアは滑り台に大興奮し、最初は護衛と共に滑走したが、楽しさから何度も滑るようになった。

滑り台体験とカフェの試食

ノアの滑り台体験を皮切りに、公爵も半ば強引に参加させられた。その後、家族はカフェに移動し、温かいおしぼりや新素材の器を用いた可愛らしい料理に舌鼓を打った。特にカレーパンは公爵に高く評価され、「革命」と称されたほどである。カフェの味と演出は貴族の嗜好に合致し、新たな人気商品としての可能性を示した。

プレオープン当日の運営と貴賓の来訪

開店時には多数の貴族が招待され、店内は賑わいを見せた。そこに皇后とイーニアス殿下が来訪し、注目を集めた。イーニアスはノアを訪ね、共に滑り台を楽しんだ。その姿は来客の興味を引き、滑り台は瞬く間に人気となった。順番を守る二人の姿勢が他の子供たちの模範となり、混乱は避けられた。

皇后の親子関係とママ友としての信頼

皇后は皇族としての立場をわきまえながらも、イーニアスへの愛情を率直に示した。イザベルは皇后とママ友として交流を深め、店内の案内を通じて皇后の素顔に触れていった。皇后はイーニアスとノアの交流を喜び、香水を控えるなどの変化も見せていた。

店内案内と女児向け商品の必要性

イザベルは皇后にディバイン公爵領で人気のおもちゃを紹介し、年齢制限を設けた商品の安全管理についても説明した。滑り台は男児中心の遊具であったため、女児向けの新たな遊具の導入も視野に入れる必要性を感じていた。

プレイルームでの様子と三階への移動

プレイルームではノアとイーニアスが絵本のごっこ遊びをしながら仲良く遊んでおり、その姿に皇后も安堵していた。イザベルは二人を三階の休憩室へ誘導し、イーニアスからはスフレパンケーキの注文が入った。こうして、ついに皇后と公爵の会談が始まることとなった。

第十章  会談

皇后とディバイン公爵の密会

皇后は公の場では見せない真剣な表情で、公爵との密談に臨んだ。会談の場で彼女は、長年集めてきた皇帝派による横領の証拠を提示し、イーニアス殿下が即位可能な年齢に達した時点でそれを使うと明かした。中立派までも粛清対象に含まれると語った皇后に対し、公爵も警戒を示したが、彼女はイーニアスの正当性を血統と教育者の立場から強調した。公にすることなく後ろ盾となるよう魔法契約を提案し、公爵もその覚悟に応じて契約を締結した。

食事のひとときと親子の交流

会談後、皇后は満足げな表情で戻り、イーニアスとの和やかなやりとりに微笑みを浮かべた。彼の無邪気な嘘や皇后の愛情ある振る舞いから、母子の良好な関係がうかがえた。イザベルの息子ノアもサンドイッチを食べて得意げに褒めを求め、イザベルは彼を愛情深く抱きしめた。皇后から昼食への誘いを受けたが、イザベルは店の招待客対応のため丁重に断った。

ウォルトとテオバルドの会話

会談を傍で見ていたテオバルドとウォルトは、皇后の演技力と覚悟に驚きつつ、イザベルの多才さにも言及した。ウォルトはイザベルの作詞・作曲や料理の才能、さらに子供への愛情に触れ、彼女が望んで嫁いだわけではない過去を指摘した。十七歳の少女が年の離れた公爵に嫁がされた事実は、公爵にとっても心に重く響いた。

黒蝶花の毒と解毒薬の進展

公爵の執務室では、黒蝶花の解毒薬が一つのみ完成したことが報告された。その場にいたイザベルは、自分にはまだ時間があるとして、薬をビスマルク侯爵に使うべきと即答した。公爵は彼女の自己犠牲に驚いたが、イザベルはイーニアスをこれ以上利用したくないと語った。ウォルトも同調し、公爵は最終的にイザベルの意思を尊重することを決めた。

解毒薬の使用と影響

唯一の解毒薬はビスマルク侯爵の命を救うために使われ、これによりディバイン公爵派の結束は強まった。さらに、イーニアス殿下への信頼も密かに高まりつつあったが、それが公爵の計算によるものだったのかは明らかでない。

エピローグ

ピアノの贈り物と演奏の披露

公爵が贈った立派なグランドピアノがサロンに届き、イザベルは戸惑いながらもノアのために演奏を披露した。彼女は前世のアニメソングを使い、全力の弾き語りを行った。ノアとカミラは大喜びし、ウォルトも称賛を送った。ノアからのアンコールに応えてさらに数曲を演奏し、サロンは温かな空気に包まれた。

晩餐の準備と親子の時間

イザベルはウォルトから夕食の同席を提案され、公爵にピアノの礼を伝える機会を得た。久しぶりの家族での食事にカミラは慌ただしく準備を始め、ノアも父との夕食に素直に喜びを示した。イザベルはその純粋さに不安を抱きつつも、夕食の時間を迎えることとなった。

家族としての初めての会話と成長

夕食の席で、公爵はイザベルと穏やかに会話を交わし、ノアの年齢や成長に関心を示した。ノアのマナーの良さを認め、子供同士の交流の必要性を口にする姿に、イザベルは公爵の心境の変化を感じ取った。外見の似通った父子の様子に思わず微笑みが漏れ、家族としての絆を感じるひとときとなった。

一年を振り返る感慨と未来への思い

ディバイン公爵家に嫁いでから一年が経とうとする中で、イザベルはこれまでの歩みを振り返った。ノアの心の成長や、自身が築いてきた暮らし、事業の展開に思いを馳せながら、母としての幸せをかみしめた。血の繋がりはなくとも、確かな絆がそこにあると実感し、今後もノアの笑顔のために力を尽くす決意を新たにした。

皇子と公子のお手紙

ノアの手紙とカレーパン開発のきっかけ

ノアはイーニアス殿下への手紙の中で、母がカレーパンについて執事ウォルトと相談していた様子を綴っていた。ノアの可愛らしい手紙は、母であるイザベルに代筆されたが、彼の純粋な気持ちはそのまま表現されていた。

カレーパン専門店の計画と試行錯誤

ウォルトはカレーパン専門店の構想を持ち、辛さの調整や具材の変更などを試みていたが、極端な辛さや水分過多の失敗に悩まされていた。イザベルは前世の知識を活かして具材の改良や辛さ調整のアイデアを提案し、ウォルトを励ました。

専門店の立地と方向性の議論

イザベルは専門店の立地について、貴族街より庶民街の方が相応しいと進言した。彼女は郊外での出店やカレー専門店の可能性も提案し、辛さやトッピングを選べる仕組みによって顧客の幅を広げる構想を示した。

カレー試食と家族の交流

夕食にはカレーが提供され、ノアには果物とヨーグルト入りの甘口、公爵には中辛が用意された。皆が異なる辛さを楽しみ、見た目も味も好評を博した。イザベルの提案により、辛さの調整やトッピングの提供方法も明確化された。

イーニアスの成長実験と母子の交流

ノアの「大きくなる方法」を受け取ったイーニアスは、足を引っ張る、椅子に登る、妖精に祈るなどを「検証」し、知識を深めた。皇后はその様子を温かく見守り、彼に「頭の中が大きくなった」と褒めた。イーニアスはその言葉に喜び、知識の重要性を理解した。

手紙のやり取りと心の通い合い
ノアとイーニアスは互いに感謝の気持ちを手紙に綴り合い、自分の成長や感情を素直に伝え合った。互いを「両想い」と認識し、その関係はますます深まっていった。彼らの手紙は、子どもらしい純粋さと共に、確かな絆を育んでいた。

皇后マルグレーテの内省と変化

かつて冷淡だった皇后は、イザベルの言葉でイーニアスとの関係に向き合うようになった。彼女は自らを省みて息子と接する努力を重ね、やがて抱きしめ合う関係にまで進展した。嫉妬や後悔を乗り越え、母としての役割を取り戻した姿は印象的であった。

使用人たちとノアの絆の強化

イザベルと公爵の不在時、ノアは玄関で待ち続け、使用人たちの心を動かした。使用人たちはノアのために玄関に部屋を設け、彼の存在は屋敷全体の空気を変えた。以後、ノア付きのメイド職は人気となり、屋敷全体の雰囲気も好転した。

ディバイン公爵家の温かさと未来

ノアとイーニアスの関係、使用人との絆、母子の再接近などが重なり、ディバイン公爵家は温かさに包まれた。最終的に、二人の子供たちの手紙は帝国の博物館に保管され、民の心を温かくする存在として語り継がれることとなった。

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小説【shieldhero】「盾の勇者の成り上がり 16」感想・ネタバレ

物語の概要

本作は異世界ファンタジー作品であり、主人公・岩谷尚文が異世界に召喚され、「盾の勇者」として数々の試練に立ち向かう物語である。 

第16巻では、霊亀事件の真犯人・キョウを追って新たな異世界へと飛び込んだ尚文が、転移の途中でラフタリア、フィーロとはぐれ、リーシアと共にレベル1にリセットされた状態で牢獄に囚われる。脱出を試みる中で、四聖勇者を名乗る謎の少女・絆と出会い、彼女が敵か味方かを見極めながら新たな冒険が始まる。

主要キャラクター

• 岩谷尚文:本作の主人公であり、盾の勇者として異世界に召喚された青年。困難な状況でも冷静に対処し、仲間を守る強い意志を持つ。 
• ラフタリア:尚文が最初に迎え入れた亜人の少女であり、剣の使い手として彼を支える。尚文に対して深い信頼と敬愛を抱いている。 
• フィーロ:フィロリアルと呼ばれる鳥型の魔物で、尚文に懐いている。人間の少女の姿にも変身でき、明るく元気な性格である。
• リーシア:元魔法使いの少女で、尚文の仲間として行動を共にする。知識と魔法の力で彼をサポートする。

物語の特徴

本巻では、主人公がレベル1にリセットされた状態から再び成長していく過程が描かれており、シリーズの中でも新たな展開が始まる重要な巻である。また、異世界間の移動や新たなキャラクターの登場により、物語の世界観がさらに広がりを見せている。 

書籍情報

盾の勇者の成り上がり 16
著者:アネコユサギ 氏
イラスト: 弥南せいら 氏
出版社:KADOKAWA
発売日:2017年01月25日
ISBN:9784040690513
関連メディア展開:TVアニメ『盾の勇者の成り上がり』は2019年1月に第1期が放送され、2022年4月に第2期、2023年10月に第3期が放送された。

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あらすじ・内容

七星勇者襲来!! 盾を奪われた尚文は!?

七星勇者に会う為フォーブレイを訪れた尚文は、鞭の勇者タクトと対峙する。人を見下した態度をとる彼は、鳳凰戦でアトラが亡くなる原因を作った人物だった。
尚文は怒りのままに戦おうとするが、固有の武器だと思われていた盾をタクトに奪われてしまう。
防御力の低下により重傷を負った尚文は、意識を失い、不思議な世界を彷徨う。そこで彼を待っていたのは、心強い味方だった。
しかし、そこでも厄介事を背負うはめになった尚文は――。
「本当、面倒な物を背負い過ぎたな……だが、悪い気分じゃない」
異世界成り上がりファンタジー第十六弾、ここに登場!!

盾の勇者の成り上がり 16

感想

鳳凰戦の深い傷と尚文の変調
本巻の冒頭では、鳳凰との死闘の果てに多くの犠牲を出した尚文が、心に大きな痛手を負った姿が印象的であった。村人たちの死やアトラの死を悔い、罪悪感と責任感に苛まれた彼は、次第に精神の均衡を崩していく。誰かに頼られたい、心の空白を埋めたいという感情が暴走し、イミアやフィーロたちに不自然に近づく姿には、見ていて胸が痛んだ。だが、サディナの真摯な諭しにより、彼はようやく自分の姿と向き合うことができた。これは単なる戦いの物語ではなく、喪失と回復、そして自己再生の物語でもあると感じさせられた。

新たな脅威・鞭の勇者タクトの異常性
物語の転機となったのは、フォーブレイでの鞭の勇者タクトとの邂逅である。彼は圧倒的な技術力と権力を背景に、七星武器を奪う能力を持ち、尚文の象徴である盾すらも奪ってしまうという暴挙に出た。この出来事は、尚文から「勇者」の象徴を奪うと同時に、彼の心を再び奈落に突き落とすには十分だった。タクトの支配欲と暴走ぶりは、単なる敵ではなく、「世界そのものの歪み」の具現に思えた。彼の存在が勇者たちを窮地に追いやり、女王の死やラフタリアの離脱など多大な犠牲を伴う展開は、本巻の重厚さを際立たせている。

霊界での再会と精霊たちの導き
意識不明となった尚文が訪れた霊界では、アトラやオストといったかつての仲間たちとの再会が描かれた。彼女たちが盾の精霊の使いとして尚文を導く場面には、かすかな救いと希望があった。「帰ることもできる」という選択肢を提示されながらも、尚文はあえてこの世界に残る決断を下した。これは単なる勇者としての義務感ではなく、自らの意志で再び立ち上がるという決意であり、心を強く打たれた。

クズ王の覚醒と戦略的逆転劇
かつての無能王として描かれていたクズが、亡き女王の遺志を受け継ぎ、驚くべき知略で軍を指揮する展開には目を見張るものがあった。戦術・偽装・情報戦を駆使し、圧倒的兵力を持つフォーブレイ軍を逆転へと追い込んでいく姿は、かつてのイメージを完全に覆す痛快な変貌であった。タクトが油断しきった瞬間に、勇者たちが一斉に仕掛ける奇襲は戦略的にも納得でき、読んでいて手に汗握る緊張感があった。

尚文とタクトの一騎打ちの迫力
七星の杖と魔法強化を駆使した尚文の戦闘は、これまでの「防御特化」という枠を越えた新たな戦いの形を見せてくれた。単なる力の応酬ではなく、戦術、読み合い、魔法の反射など、知略を尽くした戦いであった点が印象深い。特に「ラグナロクブラスター」によって戦場を一掃する場面は、怒りと悲しみが込められた尚文の感情が爆発する瞬間であり、感情的にも大きなカタルシスがあった。

処刑描写の苦味と余韻
タクトの敗北後、彼とその一味に下された処刑描写は、正義の断行である一方で、読後に重い余韻を残す展開であった。正当な報いであると頭では理解しながらも、拷問や見世物としての処刑、そして人間の醜さが露わになるシーンには、複雑な感情が湧いた。この作品の魅力は「勧善懲悪」ではなく、「正しさ」にすら苦味を含ませるところにあると改めて感じさせられた。

未来への不安と続く戦い
物語の終盤で明かされる波の尖兵や異世界からの侵略者の存在は、新たな戦いの幕開けを示唆している。尚文が再びラフタリアを追って異世界へ向かう決意を固める場面には、勇者としての責務と人としての絆への想いが同居しており、本作が単なるバトルファンタジーではないことを感じさせた。

総じて、本巻は「立ち直り」と「再起」をテーマにした一冊であり、尚文が真の意味での勇者として再び歩み出す物語であった。圧倒的な戦闘描写と人間ドラマの融合が見事であり、次巻もまた目が離せない展開となるであろう。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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展開まとめ

プロローグ  葬儀

英雄たちの葬送と主人公の苦悩

鳳凰との戦いの後、国家規模の葬儀が行われ、尚文はアトラの棺の前で深い悲しみに沈んでいた。戦いに駆り出した村人たちが命を落としたことに罪悪感を抱き、これ以上彼らを戦場に出すことへの迷いを見せた。一方で、フォウルやキールらは自らの意志で戦う決意を固めており、尚文に覚悟を求めた。

次なる四霊・麒麟と不審な状況

葬儀後、女王との会話の中で、鳳凰討伐直後に麒麟が出現し、七星勇者によって討伐されたことを知らされる。霊亀から鳳凰までは三ヶ月あったのに対し、麒麟は数時間後に現れたという異常な状況に尚文は疑念を抱いた。応竜についての報告はなく、情報の不確かさと不自然さに戸惑いを覚えた。

フォーブレイへの派遣と尚文の静養

尚文は鳳凰戦への介入者を討つために行動を望むが、仲間たちに心身の休息を強く促され、渋々村に戻ることを了承した。その間、フォーブレイへの使者を誰にするかの相談が進められた。

心の混乱と過剰な責任感

村に戻った尚文は喪失感と責任感に苛まれ、自身の好意を寄せてくれる女性たちに次々と「応えよう」とし始める。イミアやフィーロ、サディナに対しても物理的に近づこうとするが、いずれも失敗に終わった。これらの言動は周囲から「様子がおかしい」と指摘され、サディナに真剣に諭されることとなった。

サディナの忠告と自己の見つめ直し

サディナは尚文に対し、衝動的な行動ではなく、想いと責任を持って向き合うことの重要性を説いた。尚文は自身がしてきた行動が、周囲の気持ちに応えるものではなく、ただの迷走だったことを自覚し、後悔と混乱の中で冷静さを取り戻していった。

覚悟と未来への逡巡

復讐心と失った者への想いに揺れる中で、尚文は自分の進むべき道を考え直した。元の世界に戻る意志と、この世界で仲間たちの想いに応えて生きる覚悟との間で揺れ動きながらも、強引な行動を控えることを決意した。

ラフタリアとの再会と静かな夜

ラフタリアが帰還し、尚文は自らの行動を謝罪した。ラフタリアはそのすべてを受け止め、尚文に「今は考えないようにしましょう」と静かに寄り添った。明確な答えを出せないまま、尚文の心は悶々としたまま夜を迎えた。

一話  海底

鳳凰戦後の決意とレベル上げへの本腰

尚文はアトラの死を悔い、自らの力不足を痛感してLv上げに専念する決意を固めた。仲間たちと相談の末、海中での狩りが効率的であると判断し、サディナやシルディナらと共に水中狩りに出発することとなった。

村と隣町での祝祭の提案

メルティは鳳凰討伐の慰霊と祝勝を兼ねた祭りの開催を尚文に提案した。祭りは士気の高揚と資金調達を目的とし、フィロリアルレースやフィーロの歌唱ショーなど多彩な催しが計画された。尚文は複雑な心情ながら了承し、村人たちも準備に意欲を示した。

フォウルの武器と強化法の模索

フォウルが七星武器の小手を得たことが確認されるも、強化法が判明せず、尚文の指示により錬と樹と共に情報探索の旅に出ることとなった。一方、尚文たちは水中でのLv上げに臨むことになる。

海中戦闘での経験と成長

尚文はサディナとシルディナに乗り、ラフタリアと共に深海へと潜った。初めての本格的な水中戦闘では、次々に現れる魔物を連携で撃破し、高い経験値を得ることに成功した。中でもスレートグレイメガロシャークとの激戦では、合唱魔法の失敗を乗り越え、連携と個々の力で打ち倒した。

勇者以外のレベル上限と課題

戦闘の結果、尚文とラフタリアは成長を実感したが、サディナたちはLv上限に達しており、それ以上の成長ができない状況にあった。限界突破には竜帝の欠片が必要とされるが、手がかりはまだ見つかっていない状態である。

新たな武器と浄化の成果

海での狩りの二日目、武器屋の親父とイミアの叔父、そして元康二号が村を訪れた。元康二号は再び奴隷紋で行動を制限されており、封じられし呪われた剣の浄化結果を持ち帰っていた。その剣は一部使用に制限があり、尚文たちは運用方法を検討する必要に迫られた。

武具開発と今後の準備

浄化された剣はガエリオンに与えられ、情報解析を試みるも進展は乏しかった。今後は武器屋の親父やイミアの叔父と連携し、新たな装備開発に力を注ぐ方針が立てられた。尚文たちはそれぞれの立場で、次なる脅威に備えて行動を始めた。

二話  祝祭

鳳凰討伐祝祭と町の変貌

三日後、鳳凰討伐の祝祭が盛大に開催された。舞台は急成長を遂げた隣町であり、仮設住宅を中心に形成された活気ある都市へと変貌していた。祝祭は町の喝采とともに始まり、フィーロが特設ステージで歌を披露した。彼女の人気は凄まじく、追っかけのファンや吟遊詩人たちの協力で会場はまるでコンサートのような盛り上がりを見せた。

フィーロの圧倒的な歌唱と騒動

フィーロの歌唱力に観衆は魅了されたが、元康のフィロリアル三匹がライバル心を燃やし乱入。フィーロに負けじと元康への愛の歌を披露した。フィーロは旅で学んだ歌を披露し、その「チャーミングボイス」で観客を魅了したが、強力すぎる歌声により危険な状況を引き起こしたため、ラフちゃんの介入により中断された。

屋台や出店の賑わいと村人たちの活躍

祝祭では、村の人々や仲間たちが屋台を出して盛り上げた。キールはクレープ屋を開き、独自の魚入りクレープを販売。セインとイミアは服とアクセサリーの共同店舗を営み、質の良い商品を安価で提供していた。ラフタリアも興味を示したが、勝負下着に戸惑う場面もあった。

フィロリアルレースと繁殖話の混乱

草レース場ではフィロリアルたちが活躍し、ナオフミのフィロリアルたちが勝利を収めた。観客や敗北した調教師たちはナオフミのフィロリアルとの交配を望んだが、当の本人たちは嫌がり後ろに隠れた。ナオフミは彼らの意思を尊重し、試験的な接触のみ許可する妥協案を提示した。観客は新たな伝説の誕生を期待したが、フィロリアルたちは頑なな拒絶姿勢を貫いた。

祭りの終わりとラフ種の謎の舞

夜にはキャンプファイアーが行われ、フィーロと吟遊詩人の歌、そしてクテンロウの人々の演奏が響いた。帰村後、ラフちゃんたちが桜光樹の前で踊りを奉納する光景が見られた。彼らの舞により桜光樹は輝きを増し、翌日には大きな実が一つだけ実っていたが、ラフ種全員による妨害により収穫は見送られた。

フィーロの帰還と祝祭の終幕

フィーロとメルティが祝祭から戻り、ナオフミに元気づけの言葉をかけた。メルティはこの一日が思い出になると語り、フィーロとともに町へ戻っていった。こうして、メルティ主催の祝祭は盛況のうちに幕を閉じた。

三話  天才

謎のラフ種の誕生と保護

鳳凰討伐から約二週間後の朝、尚文たちは桜光樹の実が光とともに形を変える場面に遭遇した。その場に現れたのは見慣れぬラフ種であり、ラフちゃんたちも驚きつつ迎えていた。この新たなラフ種は魔物紋の登録を自ら行い、レベルは95という高水準であったため、尚文は「ラフちゃん二号」と仮名をつけ、保護を決定した。

フォーブレイへの出発と一行の構成

尚文一行は元康と合流し、フォーブレイへ向けて出発した。今回の同行者は多く、尚文、ラフタリア、フィーロ、錬、樹、元康とそのフィロリアル達、ガエリオン、ウィンディア、女王、クズ、エクレール、サディナ、リーシア、さらには変幻無双流のババアまで含まれていた。情緒不安定な尚文を見張る目的もあり、大規模な一団となった。

馬車内での勇者の動向に関する議論

移動中、尚文と錬は他の異世界勇者の動向について推測した。勇者による戦線離脱や使命放棄、あるいはレベル上げに専念する者、責任を押しつける者など様々な可能性が挙げられた。尚文は、鳳凰戦での横槍に強い憤りを抱き、犯人には断固たる処罰を下す覚悟を示していた。

フォーブレイの都市文化と銃器の話題

フォーブレイはメルロマルクよりも文明が進んでおり、スチームパンク風の車や銃器が並ぶ都市であった。銃器は扱いが難しく、ステータスに依存するため使いこなす者が限られていた。樹は武器屋で銃器をコピーし、今後の戦力向上を図った。

亜人差別のなさと宗教施設の違い

尚文はフォーブレイが亜人と人間を平等に扱っている様子を目にし、他国との違いを実感した。また、四聖教会と七星教会のステンドグラスに注目し、七星側に一箇所だけ欠けがあることに疑念を抱いた。会議ではこの欠けの意味も問われる予定であった。

七星勇者とその伝承の偏り

女王の話から、伝承の中で盾と弓の活躍が目立ち、槌・爪・鞭など他の勇者に偏りが見られることが示された。これは世界融合による影響とされ、現在の世界構成に強く関わっていると推測された。

鞭の勇者とその妹の問題点

鞭の勇者はフォーブレイの貴族出身であり、幼少期から数々の業績を挙げていた天才であった。しかし、ヴィッチと関係があったことや、妹がLV至上主義でメルティに絡んでいた過去があり、女王や尚文らは不信感を抱いていた。現在は飛行機のような移動手段の開発にも取り組んでいるという。

フォーブレイ王の悪評とヴィッチの因縁

女王はフォーブレイ王の人物像について、極端な加虐嗜好を持ち、処刑代わりに女性を嫁がせる慣習の象徴であると説明した。ヴィッチもかつて縁談が決まっていたが、尚文の仲間になることで免除されていた。この国王は勇者の血筋を保つ目的で多数の女性を手にかけてきたという話が語られ、その残虐さが強調された。

城への到着と七星勇者の情報整理

一行はフォーブレイの城に到着し、重厚な構造に圧倒されながらも謁見の準備を進めた。謁見前の休憩中に、七星勇者の情報を整理し、特に鞭の勇者を警戒対象として認識した。変幻無双流のババアも天才に対する不信感を語り、かつての内部分裂と崩壊の歴史を例に挙げて警鐘を鳴らした。

王の統治と今後の不安

フォーブレイ王は肉欲に溺れる人物であり、女王すら過去に嫁入りを恐れていたほどであった。尚文はそのような人物が大国を治めている事実に懸念を抱き、勇者を巡る血統政策や王族の介入の実態に幻滅していた。この世界の在り方そのものが、次の波以上に危険なのではないかという危機感が彼の中で強まっていった。

謁見直前の不穏な気配

謁見の時間が訪れ、兵士に導かれて王との対面へと進む中、尚文の懐中でエスノバルトから譲られたアクセサリーが微かに揺れた。明確な異変ではなかったものの、不吉な予兆を感じさせる場面で幕が下りた。

四話  奪われた力

タクトとの対峙

ナオフミたちは新たな王、タクトと名乗る鞭の勇者と対面した。王冠を被り玉座に座る彼の態度や言動は傲慢で挑発的であり、ナオフミたちに敵意をむき出しにしていた。タクトは元の国王を殺害したことを明かし、メルロマルクの女王ミレリアにまで敵意を向ける。その発言により場が緊迫し、ナオフミたちは即座に警戒態勢へと移行した。

戦闘の開始と勇者たちの奮戦

タクトは禍々しいツメを用いて攻撃を仕掛け、ナオフミは桜天命石の盾で防御を試みたが、盾が破壊されるという異常事態が発生した。戦闘が激化する中、タクトの部下として現れた亜人の女性やグリフィン、銛を持った水棲種の女が味方の動きを封じる。女王とナオフミはタクトの攻撃で重傷を負い、リーシアたちはスキルを駆使して応戦するも苦戦を強いられた。

タクトの能力と衝撃の真実

タクトは伝説の武器を奪う力を持ち、実際にナオフミの盾も強奪していた。七星勇者たちの失踪の理由が彼によるものであったことが明らかになり、ナオフミたちは深い怒りに駆られる。さらにタクトは戦闘中にヴィッチと通じていたことも発覚し、彼の冷酷さと策略が浮き彫りとなった。

撤退戦と転送妨害

劣勢に追い込まれたナオフミたちは撤退を決意するが、城内には転送を妨害する魔法が張り巡らされていた。ガエリオンとフィーロのサンクチュアリが転送解除を試みるも、グリフィンやドラゴンの妨害によって効果は相殺された。兵士たちによって誘導された一行は行き止まりに追い詰められ、苦しい戦いを強いられる。

勇者たちの反撃とラフタリアの決意

ナオフミが気力を振り絞って放った一撃でタクトを吹き飛ばし、仲間たちに一時的な隙が生まれた。ラフタリアはフォウルにナオフミの保護を託し、自らは囮となる覚悟を決めて残った。転送スキルが発動し、ナオフミ、元康、樹は無事に脱出を果たすが、ラフタリアはその場に取り残される結果となった。

暗転する意識と重い喪失感

転送後、ナオフミは深い傷により意識を失いかけながらも、ラフタリアを救えなかった後悔に苛まれていた。一行の中には瀕死の者も多く、退却したとはいえ、戦いは深刻な損失を伴うものとなった。ラフタリアの犠牲的行動が彼らを救ったものの、その代償はあまりにも大きかった。

五話  精霊

女王ミレリアの最期

重傷を負った尚文と女王ミレリアは治療院へ搬送され、最高度の治療が施された。だが、女王の呪いは深く、回復は叶わなかった。意識を取り戻したミレリアは、国の未来とクズに託した希望を語り、自らの無力さを悔いた上で、最期に微笑みながらクズに未来を託して息を引き取った。

フォーブレイの宣戦布告と世界情勢の激変

女王の死後、フォーブレイが全世界に対して宣戦布告を行ったことが伝えられた。勇者たちは深い怒りを抱き、連合軍会議が開催された。フォーブレイは最新兵器で周辺国を降伏させ、圧倒的な軍事力を誇示していた。さらに、タクトが七星勇者の武器を複数所持し、自らを「神の子」と称して布教活動を進めていた。

連合軍の決起と小手の勇者の誓い

フォウルは小手の勇者として、盾の勇者が救った村を守ると誓い、血筋より信念を重視する姿勢を明示した。その言葉に亜人たちは共鳴し、フォーブレイへの敵意と復讐の意思を固めた。錬や樹らもタクトの出自や能力に疑念を持ちつつ、今後の戦略について議論を進めた。

霊界での再会と精霊たちの選択

昏睡状態にあった尚文は、死者の世界に似た場所でアトラとオストに再会した。彼は盾の精霊の導きにより、選択を迫られる。提示された選択肢は、元の世界への帰還、異世界での永住、一時帰還の三つであった。しかし尚文は、自らの意思で「今は帰らず、戦いを終えた後に納得のいく形で戻る」ことを選択した。

新たな力と決意の再構築

尚文は精霊たちの導きにより、盾以外の七星武器を一時的に扱える力を得た。タクトへの直接的な報復を可能とする手段も授けられた。また、ラフタリアは無事に絆の世界へと逃れていたことが判明し、アトラとオストは尚文に心の安寧と未来への希望を託して姿を消した。尚文は世界を救う使命を再び自覚し、現実へと帰還していった。

六話  杖の勇者

目覚めと女王の死

尚文は意識を取り戻し、セインとその使い魔による看病を受けていた。盾と自身の傷を癒していたアクセサリーの存在に気づき、女王の死を知らされる。ラフタリアの安否は不明だったが、周囲の様子からある程度の状況は把握していた。女王の死を悼む葬儀が執り行われ、メルティとフィーロが涙を流す中、尚文も深い悲しみに沈んでいた。

クズとの対峙と奮起

尚文は女王の棺の前でオルトクレイ(クズ)と向き合い、過去の責任と向き合わせるよう激しく問い詰めた。激昂するクズに尚文は敢えて挑発的な言葉をぶつけ、怒りを呼び起こすことで覚悟を促した。最終的にクズは女王の遺志に従う決意をし、再起を誓う。そして杖の精霊に認められ、七星の武器を取り戻した。

作戦会議と情報収集

会議では尚文、錬、元康、樹、そして復活したクズが戦局の情報を交換し、フォーブレイ軍の脅威とその兵器に対抗するための戦略を練った。クズは異世界の知識を執拗に質問し、戦略立案に活かしていく。その姿に、周囲はかつての「英知の賢王」が戻ってきたと確信を強めた。

戦力の共有と新たな強化

尚文はクズから七星の杖を一時的に借り、装備ボーナスや強化方法を確認する。各勇者が共有した強化方法により、戦力の底上げが図られた。フォウルの小手とクズの杖が同じ方式で強化できることが判明し、協力体制が構築された。

村の戦力の確認と選定

尚文はクズを自らの村へと案内し、戦力となり得るラフ種や住民を紹介した。クズは的確に参加可能な者と不適格な者を見極め、尚文とともに説得と選定を行った。ルフトも戦いたいと訴えたが、尚文は彼の未熟さを理由に戦線への参加を断った。

研究者との再会と情報共有

尚文は研究者ラトのもとを訪れ、彼女が持つ錬金術や敵に関する情報を得た。フォーブレイの錬金術師が持つ能力や、戦車や飛行機の運用に関する情報が共有され、クズの戦略に生かされることとなった。

ゼルトブル傭兵との合流

サディナの呼びかけでゼルトブルの傭兵たちが尚文の陣営に加わる。竹林のラーサズサ、地響きの女王エルメロ、そしてセインが紹介され、傭兵たちは金と名声のために協力を表明した。サディナとシャチ姉妹の勢いに押されつつ、彼らは戦への参加を決意する。

決戦への準備と決意

戦争と波の襲来が目前に迫る中、尚文たちは準備を整えた。城へ戻るクズは戦力の再編を開始し、尚文は自らの村の兵とともに戦いに備えた。やるべきことをやり切った彼らは、死者の想いを背負いながら決戦に臨む覚悟を固めた。

七話  英知の賢王

フォーブレイ軍の奇襲と戦争の開始

戦争は当初の予想より数日早く始まり、フォーブレイ軍はメルロマルクへ急襲を仕掛けた。クズの予測では波と同時に侵攻するはずだったが、タクトはその前に動いた。だが、クズの事前準備により迎撃態勢は整っており、勇者たちは戦場とタクト本陣の二手に分かれて動いた。

勇者軍の決起と士気の高揚

尚文は出陣を前に兵士たちに演説を行い、女王の弔い合戦と称して士気を鼓舞した。戦いの意義と敵の非道を訴えることで、軍は一丸となって立ち上がる雰囲気を得た。準備が整い、各自が役割を果たすべく戦場へ向かった。

タクトの油断と奇襲の成功

タクトは陥落させた砦からの報告を受けて勝利を確信していたが、実際は尚文らが伝令に変装して潜入していた。ラフ種の幻影魔法と匂い偽装により欺かれ、タクトは不意を突かれる形で対峙される。空爆と降下作戦に使われた飛行機は、グラウェイク鉱石と魔法によって撃墜されていた。

空戦と降下作戦の失敗

メルロマルク上空に浮かぶグラウェイク鉱石と幻影魔法の隠蔽により、フォーブレイの飛行機は回避できずに墜落し、降下兵は魔法と弓で迎撃された。クズの戦略は戦局を有利に運び、タクトの作戦は裏目に出た。尚文はタクトを挑発し、戦闘に引きずり込むことに成功した。

各戦闘の開戦と対峙

タクトの側近たちが前線に出て、勇者陣営の仲間と個別に戦いを開始する。フォウルはアオタツ種の女ネリシェンと、サディナは種族間の因縁を持つ魚型の女と対決する。フィーロはグリフィンと化したレールディアと、ガエリオンは巨大なドラゴンに変身した女と対峙し、錬と共闘することとなった。

尚文とタクトの一騎打ちの開始

タクトはプライドから単身で戦うことを選び、尚文との一騎打ちが始まる。尚文はクズの七星の杖を手にし、真っ向からタクトに挑む姿勢を見せた。戦局は勇者側の奇襲と戦略によって有利に展開し、それぞれの戦いが幕を開ける形となった。

八話   Ⅹ

砦での戦闘開始と各戦局の展開

砦のテラスは狭すぎたため、主人公たちは自然と各々の戦場へと散った。ガエリオンと錬は空からの攻撃を担当し、シルディナはフィーロの飛行を魔法で補佐していた。ラフは幻覚魔法を打ち消す働きを見せ、戦況を支援していた。主人公はタクトと対峙し、相手が不正に手に入れた複数の七星・四聖武器に対し、数より使いこなしの技術が重要であることを見抜いていた。

七星の杖と魔法強化による優位性

主人公は七星の杖を駆使し、詠唱短縮と非適性魔法の習得を可能にした。さらに熟練度ポイントを用いたスキルと魔法の強化システムを活用し、「アル・リベレイション・オーラ Ⅹ」によって味方全体の能力を大幅に上昇させた。この強化によって主人公はタクトの攻撃を容易に回避し、反撃を封じるほどの身体能力と反応速度を得ていた。

タクトとの一騎討ちと戦闘の駆け引き

タクトは必殺技や連撃スキルを駆使して攻撃を仕掛けたが、主人公はそれを冷静に見切り、攻撃を逸らすことでダメージを無効化していった。防御は攻撃よりも高度な技術であるとしたうえで、盾の勇者として攻撃を無力化する戦い方を展開した。タクトの攻撃は型通りで、主人公の訓練相手であるアトラやラフタリアには到底及ばなかった。

フォウルとネリシェンの激突

フォウルはアオタツ種族長ネリシェンと対峙し、相手が龍へと変身する中でも冷静に応戦した。ネリシェンの水と雷の魔法攻撃をかわし、力強い打撃を叩き込んで優勢を示した。種族の誇りを懸けた戦いであったが、フォウルの実力はそれを遥かに上回っていた。

サディナとシャテの因縁の戦い

サディナはラフタリアの仇であるシャテと対峙し、援護魔法の恩恵を受けつつ冷静に攻撃を避けた。シャテの渦巻く銛攻撃に対し、サディナは雷の魔法で迎え撃ち、優位を保った。その後、獣化補助を得てシャチの姿へと変身し、戦力をさらに増大させた。

空中戦での錬とガエリオンの活躍

空ではガエリオンと錬が連携し、竜帝レールディアと戦闘を繰り広げていた。ガエリオンの強化された白いブレスに続き、錬が放った「リベレイション・マジックエンチャント Ⅹ」により、レールディアの強力な炎を吸収し、剣に転換した。さらに、錬の「フレイムエッジ Ⅹ」によって、竜帝への反撃が行われた。

フィーロとグリフィンの連携

空中ではフィーロとグリフィンが連携し、華麗な空中戦を展開していた。シルディナの魔法支援により、フィーロは飛行を維持し、複数のスキルを駆使して敵と交戦を続けていた。相手は飛行能力を誤認し、驚愕していたが、戦局は終始フィーロ側に有利に進行していた。

九話  フェンリルフォース

タクトの魔法戦と主人公の無効化

タクトは味方から援護を受け、ドライファ・ファイアストームを詠唱したが、主人公はそれを即座に読み取り、アンチ・ドライファ・ファイアストームで完全に無効化した。タクトは魔法の詠唱速度を上げていたものの、主人公の魔法詠唱や反応速度に及ばず、戦況は圧倒的に主人公有利となった。

フェンリルフォースによる攻撃と巻き添え


主人公はフェンリルフォース Ⅹを放つが、わずかな反動で照準が逸れ、結果としてセインの相手だった女に命中し消滅させた。タクトはこれに激怒し、主人公に対して連続攻撃を仕掛けるが、その動きは単調で容易に回避された。

タクトの逆上と矛盾した怒り

タクトは幼馴染を殺されたことに激昂するが、自らが守らなかったことへの自覚はなく、主人公はその矛盾を指摘した。戦場で大切な者を守る覚悟がなければ死は避けられないという現実を突きつけた。

フロートミラーの活用と魔法反射

主人公はフロートミラーを展開し、自らの魔法を反射してタクトを翻弄した。さらに、魔力ビームによって檻状の攻撃を展開し、タクトを封じ込めるようにして攻撃の余地を奪った。この巧みな戦術によりタクトは混乱し、戦況は主人公の優位に傾いた。

ラフタリアの人質化と欺き

タクトの取り巻きがラフタリアを人質にしたと見せかけたが、実際にはラフタリアではなかった。過去の天命の策略により幻覚が用いられ、タクトは誤って味方を殺してしまった。主人公はこの過ちを突き、敵の士気を大きく低下させた。

魔法とスキルの反射戦術

女たちが放ったライフルや儀式魔法「裁き」すらも主人公はミラーで反射させ、すべてタクトに命中させた。これにより、タクトは自らの仲間の攻撃で追い詰められ、女たちも絶句するしかなかった。

タクトの盾と戦意喪失寸前の姿

タクトはラースシールドを構え、主人公の攻撃に耐えようとしたが、フェンリルフォースの直撃により全身を負傷した。主人公は攻撃を加減しつつも神への反逆効果を駆使し、タクトの盾を逆に弱点に変えた。

戦闘の再開とラグナロクブラスターの発動

主人公はグレイプニルロープでタクトを縛り上げ、長時間チャージしたスキル「ラグナロクブラスター」を放った。これはタクトを空中へ吹き飛ばし、さらには上空で戦う竜帝すら巻き込んで焼き払った。

錬とガエリオンの連携攻撃

ラグナロクブラスターに続き、錬とガエリオンが連携して竜帝に斬撃と突進を加えた。錬の鳳凰烈風剣とガエリオンの炎突撃が合わさり、竜帝に大きな打撃を与えることに成功した。

タクトの反撃失敗と完全な劣勢

タクトは立ち上がりながらもボロボロの状態であり、もはや反撃の手段も乏しかった。回復魔法を受けても疲労が蓄積し、戦意は低下していた。主人公は容赦なく追撃の構えを見せ、なおも戦闘の継続を示唆した。

戦争の代償とタクトへの裁きの決意

主人公はアトラや女王、仲間たちを殺された怒りと悲しみを胸に、タクトへの復讐を決意していた。波を軽視し、勇者を殺し、戦争を拡大させたタクトの罪に対し、主人公は徹底した報復を行う覚悟を固めていた。

ラグナロクブラスターによる決定打

最終的に主人公は、魔力と気を集約して放つ最強スキル「ラグナロクブラスター」によりタクトを直撃させた。この技はタクトを吹き飛ばし、大地に叩きつけた。生死は不明ながら、決定的な一撃となり、戦況は主人公たちの勝利に大きく傾いた。

十話  一般人と最強の七星勇者

タクトへの復讐と戦いの開始

尚文はタクトに対し、杖の勇者の仇討ちとして戦いを挑んだ。タクトは杖を奪い勝利を確信したが、尚文はそれを上回る戦術と武器で応戦し、追い詰めていった。彼は錬から渡された剣を用い、鳳凰素材によって作られたその武器でタクトを圧倒した。

フォウルの参戦とタクトへの怒り

フォウルが現れ、飛び去ろうとした龍を撃墜して戦線に加わった。彼はアトラの仇討ちのため、勇者ではなく一人の人間として戦う決意を見せた。フォウルと尚文は連携し、執念深くタクトを追い詰め、徹底的に打ちのめした。

無力化されたタクトと最終連撃

タクトは七星武器をすべて集めたことで自らを最強と豪語したが、尚文たちはそれを嘲笑し、事実で否定した。最終的に、腐敗魔法を付与した剣と連撃により、タクトを致命的に斬りつけ、彼の肉体を無惨な状態にまで追いやった。

サディナとセインの制圧

サディナは敵女兵らを圧倒し、セインと共に拘束へと動いた。タクト側の取り巻きたちはその様子に戦意を喪失し、抵抗を止めた。サディナの怒りと悲しみもまたアトラへの想いによるものであった。

ガエリオンと錬の竜帝撃破

空中では、錬とガエリオンが竜帝を迎え撃ち、見事に撃破した。ガエリオンは竜帝の欠片を取り込み、錬はその一部始終を見届けた。竜帝の本体からの力を取り込むことで、ガエリオンが更なる力を得る可能性が示唆された。

フィーロとシルディナの連携撃破

フィーロとシルディナは風と雷の連携でグリフィンを撃破した。シルディナの魔法の檻により敵は動きを封じられ、雷と風で肉片となるまで粉砕された。鮮やかな連携が勝利を導いた。

ラフちゃんと過去の天命の戦術

ラフちゃんと過去の天命は連携し、キツネ女を幻影と実体を用いて翻弄し、攻撃を加えた。複雑な術技と見事な連携により、キツネ女を追い詰めた。最終的にラフちゃんは鳳凰剣を用い、過去の天命と共に決め技を繰り出した。

キツネ女の変貌

倒れたかに見えたキツネ女であったが、なおも執念を見せて立ち上がった。その肉体は変貌し、巨大なキツネの怪物と化した。戦いの終結には至らず、さらなる脅威の出現が示された。

十一話  盾の勇者が命じる

タクトの執念とカースシリーズの発動

瀕死の状態にあったタクトは意識を取り戻し、仲間の死を糧に黒いオーラを発しながら再び立ち上がった。彼はまだ戦いを諦めず、四聖武器の奪取を狙って錬に襲いかかろうとしたが、尚文は彼の行動を予見していた。

盾の返還と眷属器の剝奪

尚文は意識を集中し、失われていた盾を召喚した。かつてよりも強力になった盾の力により、タクトの攻撃を完全に無効化し、その上で眷属器を操る権限を剝奪した。七星武器は次々とタクトの手を離れ、新たな所有者の元へと散っていった。

キツネ女の討伐とタクトの敗北

過去の天命はキツネ女を五行の術で封じ、その頭を槌で砕いて討ち取った。一方、タクトは全てを失いながらも尚文に素手で殴りかかるが、反撃されシールドプリズンによって捕縛される。致命傷は避けたが、尚文は尋問のために殺害を控えた。

戦場の終結とガエリオンの報告

尚文は勝利の合図を出し、戦場の様子を確認すると、既にフォーブレイ軍の主力は壊滅していた。ガエリオンは竜帝の欠片を取り込んで記憶を取り戻し、世界人口の三分の二を犠牲にする禁断の方法を告げるが、尚文はそれを否定した。

過去の天命の消耗と戦後の収束

過去の天命は自らの限界に達し、姿を維持できずラフちゃん二号に戻った。尚文は改めてタクトを見つめ、世界を弄んだ罪を問いながら処遇を考えた。その後、砦を制圧し、戦いの終結を迎えた。

村への帰還と新たな勇者の誕生

尚文たちは無事に村へと帰還し、住民たちの無事を確認した。リーシアは新たな七星勇者として選ばれ、周囲から祝福を受けた。彼女の武器は金銭によるオーバーカスタムという特殊な強化方法であり、尚文もその実験を行った。

新たな謎の兆し

リーシアの武器から取り外されたストラップに触れた瞬間、それは破裂し、不穏な気配を残した。尚文は未だ終わらぬ陰謀の気配を感じつつ、王であるクズとの面会を約束した。

クズの知略とフォーブレイの壊滅

尚文は圧倒的な勝利の背後にあるクズの知略と指揮力を再評価し、フォーブレイの技術が全く通用しなかった現実を改めて認識した。女王が彼を手放さなかった理由を実感することとなった。

十二話  処刑

タクト敗北後の女達の捕縛

フォーブレイの敗北後、タクトのハーレムに属していた女達がメルロマルクに集められ、幻覚を操っていた狐女の死により洗脳が解けた。だが、ヴィッチは一部の女達を連れて忽然と姿を消し、捕縛には至らなかった。彼女が逃亡前に奴隷紋を解除していたことが明かされ、その解除には王族の血が必要であった。

処刑の演出と処罰内容

タクトとその一味の処刑は、ゼルトブルの闇ギルドが主導する見世物として演出された。タクトは戦闘不能な状態に拘束され、七星武器の奪取方法を白状させるべく、女達を人質に拷問された。しかし彼は沈黙を貫き、女達は処刑されていった。その手段は火刑、水責め、ギロチン、魔法刑など多岐に渡り、処刑人の姉妹サディナとシルディナも自発的に参加していた。

タクトの罪と公衆の怒り

タクトは七星勇者の殺害、フォーブレイ王族の粛清、メルロマルク女王の暗殺など、多くの大罪を犯していた。民衆は激怒し、処刑場では石が投げつけられた。彼は一連の暴挙に対する正当な報いとして、見せしめ的に処刑される立場に置かれた。

妹ナナの暴走と処刑

タクトの妹ナナも処刑場に連行され、兄を助けようと暴れた。彼女は罪を自覚せず、兄を崇拝していたが、処刑人により串刺し刑に処された。彼女の凶行と反省のない態度が命取りとなった。

裏切る女達と偽りの忠誠心

一部のタクトの女達は命惜しさに彼を罵倒し、処刑台で生き残りを図った。その場でタクトに暴力を振るい、罪を彼に押し付けて罵倒した。処刑人の命令で彼の指を折るなどの拷問も行われ、タクトは精神的に崩壊し始めた。

タクトの沈黙と黒幕の存在

処刑が進む中、タクトは何者かによって言葉を封じられていた様子を見せ、白状しかけたところで頭部が破裂し、魂も消滅した。これは黒幕による口封じである可能性が示唆され、タクトの背後にさらなる脅威が存在していることが浮かび上がった。

裏切った女達の末路

一部の女達は処刑への協力を口実に解放を要求したが、直後に魔法と矢の雨によって全員が処刑された。主人公はこの場に見切りをつけ、その場を後にし、タクトの謎と黒幕の正体を探るため、次の行動へと移った。

エピローグ  波の尖兵

作戦会議と波への備え

タクトの処刑後、尚文たちは今後の方針を話し合った。ラフタリアが刀の眷属器により絆たちの異世界に召喚されたことで、彼女を取り戻す必要が生じていた。近く発生する波により、絆の世界とマッチングすれば再会の可能性はあったが、他の異世界と繋がるリスクも否めなかった。また、未回収の七星武器やヴィッチの行方、樹の元配下の動向、セインの宿敵の存在など、懸念事項は多岐にわたっていた。

古文書の解読と異世界の手がかり

クズとリーシアは、女王が残した書物や絆の世界で手に入れた本の解読を開始した。内容の大半は尚文が既に把握していたものだったが、資料の消失や精霊に干渉する存在が敵であるといった新たな示唆も含まれていた。これにより、波の黒幕に関する情報の掘り起こしが急務とされた。

エスノバルトの登場と新たな危機


尚文の村で、人化したウサピルの姿の重傷者が発見され、それがエスノバルトであると判明した。彼はアクセサリーの力により異世界から飛ばされてきたが、波による召喚ではなかったため、時空のズレでラフタリアとはすれ違っていた。絆の世界では、新たな尖兵が出現し、キョウのように国を裏で支配した眷属器の所持者が四聖を殺害、絆も捕縛されるという深刻な事態に陥っていた。

ラフタリアと絆達の救出決意

エスノバルトは裏切り者の攻撃によって傷を負い、尚文への救援要請と情報伝達のために送り込まれていた。彼の言葉により、尚文は絆の世界の危機を理解し、ラフタリアと絆達を救うことを決意する。アクセサリーを通じて一方通行ながら異世界への移動が可能であることが確認され、準備を整えて出発する覚悟を固めた。

異世界への出発と覚悟

尚文は、盾に宿る仲間たちの意志を感じ取りながら、再び異世界へ赴く覚悟を決めた。戦力の編成や装備の選定も視野に入れ、慎重な準備を進めることとした。こうして彼は、タクトのような敵を討ち、ラフタリアと絆を救出するための戦いに向けて、次なる一歩を踏み出した。

盾の勇者の成り上がり

小説版

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盾の勇者の成り上がり 16
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盾の勇者の成り上がり 17

漫画版

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盾の勇者の成り上がり 1巻
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盾の勇者の成り上がり 2巻
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その他フィクション

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小説「異世界黙示録マイノグーラ 6」感想・ネタバレ

物語の概要

本作は、異世界を舞台にしたダークファンタジーである。主人公・伊良拓斗は、かつて熱中していた戦略級ファンタジーSLG「Eternal Nations」に似た異世界に転生し、邪悪属性文明「マイノグーラ」を率いる邪神として生きることとなる。第6巻では、拓斗が意識を失い、指導者不在という最悪の状況に陥る。これを打破すべく、アトゥはある英雄の召喚を決意する。

主要キャラクター

  • 伊良拓斗:異世界に転生した主人公であり、邪悪属性国家「マイノグーラ」の王。意識を失うという危機に直面する。
  • アトゥ:拓斗の忠実な部下であり、英雄ユニット《汚泥の魔女》。拓斗の不在を補うため、ある英雄の召喚を決意する。
  • ヴィットーリオ:アトゥが召喚を決意した英雄。《幸福なる舌禍ヴィットーリオ》として知られ、マイノグーラ史上最悪の英雄とされる。

物語の特徴

本作は、異世界転生と国家運営を組み合わせたダークファンタジーである。邪悪属性国家でありながら、内政特化で戦争が苦手という特徴を持つ「マイノグーラ」を舞台に、戦略的な国家運営と戦闘が描かれる。第6巻では、主人公の不在という危機的状況を乗り越えるための新たな展開が描かれ、物語はさらに深みを増している。

書籍情報

異世界黙示録マイノグーラ~破滅の文明で始める世界征服~ 6
著者:鹿角フェフ 氏
イラスト:じゅん 氏
出版社:マイクロマガジン社GCノベルズ
発売日:2023年4月28日
ISBN:9784867164204

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あらすじ・内容

異世界を舞台に探検!拡張!開発!殲滅!大人気ダークファンタジー!
レネア神光国を率いる聖女たちへの斬首作戦は成功した。
拓斗は裏から事態を操っていたテーブルトークRPG「エレメンタルワード」のプレイヤーである操腹慶次(くはら・けいじ)を打倒し、奪われていた《汚泥のアトゥ》を取り戻すことに成功するが、その代償は大きなものとなった。
意識を失ってしまった拓斗……指導者不在という最悪の状況を打破すべく、アトゥはある英雄の召喚を決意する。
《幸福なる舌禍ヴィットーリオ》――それはマイノグーラ史上最悪の英雄。

異世界黙示録マイノグーラ~破滅の文明で始める世界征服~ 6

感想

アトゥの奪還とヴィットーリオの敗北

イラ=タクトは、アトゥが彼を再び召喚するか、あるいはヴィットーリオに助けを求めるかを含めた複数の展開を予測し、全てに対して勝利を収める算段を整えていた。
結果としてアトゥは意識を取り戻し、ヴィットーリオの策を見抜いたタクトに感動しきりであった。
アトゥはタクトに抱きつき、勝利の喜びをあらわにしたが、彼女の反応はやや過剰で、タクトを戸惑わせた。一方、ヴィットーリオは敗北に打ちひしがれ、「寝取られた」と錯乱状態に陥った。

主従関係の再確認とヴィットーリオの暴走

アトゥはタクトへの忠誠を強く再表明し、ヴィットーリオを恋愛面でも蹴落としたと勝ち誇った。
ヴィットーリオはそれに反発し、自身もヒロインとしての地位を主張したが、二人に完全に無視された。
タクトはこの騒動を通じて国家運営の再編を進めつつ、次元上昇勝利という最終目的を見据え、歩みを進めていた。
ヴィットーリオは今後も忠誠を尽くすと誓ったが、同時にまたも暗躍を始めようとした。

世界の新たな動きと魔女ヴァギアの宣言

タクトのもとに、突如巨大な声が響き渡る。
それは「サキュバスのヴァギア」による全プレイヤー・国家への宣言であった。
彼女は「争いはナンセンス」として停戦と会合を提案し、そのための使者を各勢力に派遣すると告げた。
この予想外の動きにより、タクトは慎重な対応を迫られた。
ヴァギアの存在と魔女軍勢はこれまで不明であり、完全に後手に回った情報状況にタクトは警戒を強めた。

世界情勢の加速と次なる波乱の兆し

ヴァギアの登場は、アトゥとヴィットーリオにも驚きを与えたが、特にヴィットーリオは演出面での敗北を感じ取り、対抗心を燃やすそぶりを見せた。
タクトは彼の行動を制御するため釘を刺し、ヨナヨナやエルフール姉妹などへの連絡を怠った件についても処罰を予告した。
こうして再び動き出した世界の中で、タクトは《次元上昇勝利》を目指し、拡大した国土と混迷する状況に立ち向かう決意を新たにした。
最後に、システムメッセージが神の名を伴って通達され、物語は次なる局面へと動き始めた。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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展開まとめ

プロローグ

記憶喪失という代償

拓斗は、テーブルトークRPGの力を用いた敵・レネア神光国の聖女と魔女の連携を破り、秘められた力《名も無き邪神》を発動することで一方的な勝利を収めた。首都を壊滅させ、敵の計略を打ち砕くという大戦果を挙げたが、その代償は大きく、彼自身の意識を失うという事態を引き起こした。記憶喪失という形で心身を崩壊させた拓斗は、治療の効果も及ばぬまま床に伏すこととなった。

英雄アトゥの苦悩と決断

奪われ、そして取り戻された英雄アトゥは、拓斗のために全力を尽くして尽力するも、その想いも届かず状況は好転しなかった。国家の象徴を喪失しかけたマイノグーラには動揺が走り、終焉の気配すら漂い始めていた。そのような中でアトゥは重大な決断を下す。それは新たな英雄の召喚という最後の手段であった。

新たなる脅威「幸福なる舌禍」

召喚される英雄は、ゲーム『Eternal Nations』においても悪名高い人物──《幸福なる舌禍ヴィットーリオ》。彼の存在は英雄でありながら同時に災厄でもあり、アトゥの胸中には不安が渦巻いていた。マイノグーラにとって救いとなるか、さらなる混乱の引き金となるか。物語は新たな段階へと突入したのである。

第一話    廃都

レネア神光国での異常発生と聖王国の反応

聖王国クオリアは、緑黄の月第13日にレネア神光国で発生した強力な魔の気配に関して警戒を開始した。三法王は準聖戦状態への移行を宣言し、聖女たちを招集した。続いて、《破滅の王イラ=タクト》の顕現が確認され、聖戦が正式に宣言された。レネアでは大規模な火災が発生し、混乱が広がった。翌朝、レネアは封鎖され、禁域とされた。

廃都アムリタでの調査開始

旧アムリタ大教会跡地には《日記の聖女リトレイン=ネリム=クオーツ》が派遣され、調査が開始された。彼女は聖王国の威信を背負い、廃墟と化したアムリタに立った。地表の損壊のみならず、住民の記憶障害や疫病の拡大など、人的被害も深刻であった。

異端審問官の介入と調査報告

調査の指揮は実質的に《異端審問官クレーエ=イムレイス》が担った。彼女は聖女フェンネとソアリーナの所在不明について報告を受け、信仰への疑義を表明した。二人がレネアを放棄して離脱した行動が、クレーエにとっては裏切りと映り、異端認定も視野に入れていた。

クオリア上層部の動揺と責任回避

クオリアは事態の重大さに対応しきれず、当初の判断が二転三転した。その結果、被害の正確な把握が困難となり、事実上責任放棄に近い対応がとられた。レネアの禁域指定はその象徴であり、破滅の王による蹂躙を隠蔽する動きとも受け取られた。

リトレインとクレーエの対話

リトレインは、自らが背負う聖女の責務と父ヴェルデルの行方不明という個人的な苦悩の狭間で苦しんでいた。クレーエはそんな彼女に対して冷静かつ温かく接し、日記の力を使う代償の重さを説いた。また、彼女がこれまで神に捧げてきた代償が、父の安否に報いるものであると信じ、静かに励ました。

総括と今後の展望

廃都アムリタの調査を経て、聖王国はようやく事態の深刻さを理解し始めた。破滅の王の爪痕は、物理的被害以上に人心に深い傷を刻んだ。この戦いは終わったわけではなく、今後の脅威とどう向き合うかが問われている。その最前線には、未熟なまま重責を負わされ続けるリトレインがいるのである。

第二話    方針決定

会議と王不在の危機

大呪界の宮殿では、先の戦いによる被害と今後の方針が議論された。主導を担ったのは、英雄《汚泥のアトゥ》である。マイノグーラの王たるイラ=タクトは記憶を失っており、国家の統治が困難な状況にあった。アトゥはその責任を自認しつつも、王の不在を補うべく国家運営にあたった。

記憶喪失の実態と限界

イラ=タクトは自己の記憶を完全に失い、日がな一日椅子に座り窓の外を見つめるだけの存在となっていた。わずかに会話可能な瞬間もあるが、それは断続的であり、統治者として機能するには程遠い。アトゥはメアリアに依頼し診察させたが、記憶喪失というより「初めからそこに存在しない」かのような状態であるとの所見が示された。

英雄ヴィットーリオの召喚決定

現状を打破するため、アトゥは《幸福なる舌禍ヴィットーリオ》という英雄を召喚することを決断した。彼は戦闘能力こそ皆無だが、知略に長け、複雑な局面において力を発揮する人物である。アトゥ自身は彼との相性が最悪と断じており、召喚に強い抵抗感を示したが、王の回復と国家の存続のためには避けられない選択であった。

英雄に対する期待と不安

ヴィットーリオ召喚の決定により、会議の空気は一変した。各臣下は期待を抱き、アトゥの提案を支持した。ただしアトゥはヴィットーリオの性格を「不快な存在」と断じ、自身の感情を抑えきれない可能性について警告した。それほどまでに嫌悪しつつも、彼の能力を信頼せざるを得なかった。

静謐な夜とアトゥの想い

召喚を翌日に控えた夜、アトゥは記憶を失ったタクトの隣に寄り添い、静かに言葉をかけ続けた。彼女はかつて病床にいた拓斗と交わした夜の記憶を重ね、今度は自分が語りかける番だと感じていた。王が再び目覚めるその時まで、想いは絶えることなく注がれ続けた。

第三話    舌禍

英雄召喚とヴィットーリオの登場

アトゥは王の快復と国家の命運をかけ、黄金の山を用いた召喚儀式を実行した。現れたのは、かつてのゲームでも厄介な存在であった英雄ヴィットーリオであった。奇矯な態度と口調は健在であり、アトゥは最大限の警戒をもって応対した。彼は拓斗の主認定を行い、協力を受け入れたが、その発言の大半は煽りと皮肉で構成されていた。

マイノグーラ内部での混乱

ヴィットーリオはマイノグーラの面々と顔を合わせた後、その奇抜な性格を遺憾なく発揮した。エムルの事務能力を否定し、ギアの戦士団に煽りを繰り返すなど、各方面に混乱と摩擦をもたらした。更に、エルフール姉妹の大切な品を奪うなど、精神的打撃も与えていた。

英雄の逸脱行動とアトゥの絶叫

ヴィットーリオはマイノグーラから無断で離脱し、アトゥたちに大混乱をもたらした。彼の能力は『Eternal Nations』内でも特異で、指示を受けず自律的に国家行動を起こせる存在である。彼の離脱は国家にとって致命的であり、アトゥは極度の焦燥に陥った。残された置き手紙は、自らを「いじめの被害者」と称するふざけた内容で、アトゥの怒りを爆発させた。

絶望と混沌の中の希望の模索

ヴィットーリオの行動が引き起こした混乱の中で、マイノグーラの主要メンバーは再び立て直しを余儀なくされた。アトゥは英雄としての無力さを痛感しつつ、失われた秩序と信頼の回復、そして拓斗の快復という希望を捨てずに、新たな対応策を模索し始めた。

日常の描写と都市の現状

ドラゴンタンの街では、表面上は平穏が保たれていた。住民には国家の深刻な状況は知らされておらず、表向きには活気が戻っていた。都市長アンテリーゼの手腕により、住民たちは街の再建に励んでいた。

怪しい訪問者の出現

ある日、猫獣人の親子のもとに怪しげな男ヴィットーリオが訪れた。詐欺師のような言動と異様な雰囲気をまといながら家に入り込み、「幸せか」と問いかけるなど、明らかに不審な行動をとっていた。

新興宗教の発足

ヴィットーリオは突如として「イラ=タクト神」を讃える宗教的な集団を形成し、街頭で布教活動を開始した。その様子は異様であり、民衆は熱狂的に応じていた。この集団は狂気じみた忠誠を見せ、信仰の名のもとに奇行を繰り返していた。

街の反応と都市長の懸念

都市長アンテリーゼはこの騒動を憂慮しつつも、なぜかヴィットーリオに押し切られる形で布教活動を黙認していた。本国のアトゥからも「様子見」とされ、事実上、都市として制御不能な状況が進行していた。

宗教の広がりと危険性の認識

アンテリーゼは、宗教の導入が本来マイノグーラでは不要であるにもかかわらず、ヴィットーリオがそれを強行した意図を測りかねていた。特に、他国における信仰との摩擦や禁教の危険性を鑑みると、事態は極めて危険と判断していた。

拓斗の不在と懸念の拡大

マイノグーラの王であるイラ=タクトが記憶喪失に陥り臥せっていることも、アンテリーゼの不安を強めた。上層部の混乱、本国からの明確な指針の欠如など、国家全体が危機的状況にある中での宗教問題であった。

決断と行動の開始

アンテリーゼはこのままではマイノグーラの秩序が崩壊しかねないと判断し、本国への出立を決意した。都市を離れてアトゥと直接会談し、対応を協議する必要性を感じたためである。

宗教の拡大と不安の確信

新たに発足した宗教は、「誰も名前を知らない宗教」と呼ばれ、急速に信者を獲得していた。アンテリーゼはこのままでは宗教が他国に広がり、大陸規模の混乱を招くと確信するに至った。

第四話    復帰

拓斗とアトゥの再会

拓斗は意識を取り戻し、マイノグーラの王宮で目を覚ました。アトゥは長く拓斗の帰還を待ち望み、彼の匂いや存在に癒やしを求めながら日々を過ごしていた。ヴィットーリオの宗教活動や国家の行方に頭を悩ませつつも、彼女は拓斗の復活に全てを懸けていた。ついにその願いが叶い、喜びのあまり幼児退行とも言える感情を爆発させた。

ヴィットーリオの計略と拓斗の予見

拓斗はアトゥとの会話を通じて、自身の不在中に起こった出来事を詳細に聞き出した。アトゥが召喚したヴィットーリオについても、彼の召喚はあらかじめ拓斗の予想に織り込まれていたことが明かされた。感謝の言葉を受けたアトゥは、今までの苦労が報われたと感じ、拓斗の策略と洞察に感嘆した。

「邪教イラ」としての問題視

アトゥは、ヴィットーリオが勝手に始めた宗教活動について「邪教イラ」と仮称して報告した。その狂気的とも言える行動は拓斗の策略ではなく、彼の想定外であったことが判明する。両者はヴィットーリオの真意と行動の異常性に不安を募らせることとなった。

共通の危機意識と新たな不安

再会を果たした主従は、喜びに浸る暇もなく、ヴィットーリオが独断で始めた宗教活動や国家運営への影響を懸念し始めた。拓斗の戦略において唯一の誤算とも言えるこの状況に対し、彼とアトゥは慎重に思考を巡らせた。

戦略の修正と次なる局面

拓斗は、状況を掌握すべく身体を起こし、今後の対応策を検討し始めた。アトゥもまたその横で、彼の一手を信じ、あらゆる混乱に備える構えを見せた。両者はこの混迷の情勢においても揺るがぬ連携を確認し、次の動きに向けて意志を固めた。拓斗とアトゥの再会

拓斗は意識を取り戻し、マイノグーラの王宮で目を覚ました。アトゥは長く拓斗の帰還を待ち望み、彼の匂いや存在に癒やしを求めながら日々を過ごしていた。ヴィットーリオの宗教活動や国家の行方に頭を悩ませつつも、彼女は拓斗の復活に全てを懸けていた。ついにその願いが叶い、喜びのあまり幼児退行とも言える感情を爆発させた。

ヴィットーリオの計略と拓斗の予見

拓斗はアトゥとの会話を通じて、自身の不在中に起こった出来事を詳細に聞き出した。アトゥが召喚したヴィットーリオについても、彼の召喚はあらかじめ拓斗の予想に織り込まれていたことが明かされた。感謝の言葉を受けたアトゥは、今までの苦労が報われたと感じ、拓斗の策略と洞察に感嘆した。

「邪教イラ」としての問題視

アトゥは、ヴィットーリオが勝手に始めた宗教活動について「邪教イラ」と仮称して報告した。その狂気的とも言える行動は拓斗の策略ではなく、彼の想定外であったことが判明する。両者はヴィットーリオの真意と行動の異常性に不安を募らせることとなった。

共通の危機意識と新たな不安

再会を果たした主従は、喜びに浸る暇もなく、ヴィットーリオが独断で始めた宗教活動や国家運営への影響を懸念し始めた。拓斗の戦略において唯一の誤算とも言えるこの状況に対し、彼とアトゥは慎重に思考を巡らせた。

戦略の修正と次なる局面

拓斗は、状況を掌握すべく身体を起こし、今後の対応策を検討し始めた。アトゥもまたその横で、彼の一手を信じ、あらゆる混乱に備える構えを見せた。両者はこの混迷の情勢においても揺るがぬ連携を確認し、次の動きに向けて意志を固めた。

第五話    采配

拓斗の復活とマイノグーラ再始動

拓斗の復活はマイノグーラにとって奇跡であり、王の帰還に配下たちは歓喜した。ダークエルフたちやアトゥ、エムル、エルフール姉妹らが集い、喜びの声を上げた。拓斗はまだ完全な回復には至っていなかったが、内政の再開を宣言し、指導者としての復職を保留しつつも政務を主導する意思を示した。

技術不足の現状と驚愕の解決策

マイノグーラは技術不足により建設と生産に制約を受けていたが、拓斗は聖女になりすまし潜入していたレネア神光国から技術情報を奪取していた。これにより、複数の新施設建設が可能となり、国の成長を大きく加速させる方針が決定された。

国家計画と新方針の発表

拓斗は、【酒池肉林】や【異形動物園】などの特殊施設建設を指示し、研究は《医学》を選択した。また、国庫が底をつくことを承知の上で金貨をすべて投入し、発展を優先させる姿勢を示した。これにより、マイノグーラはさらに進化の道を歩み始めた。

対外戦略と同盟国フォーンカヴンへの配慮

レネア神光国の戦後処理において、フォーンカヴンを防波堤とする戦略が展開された。フォーンカヴンには《破滅の精霊》による土地改良の支援が提供され、これが大きな恩恵となることが見込まれた。また、レネア神光国の残党やサキュバス勢力の動向も警戒されたが、聖王国クオリアの介入により当面の猶予が確保された。

正統大陸への対策と戦略的判断

北方に位置する正統大陸の問題についても拓斗は情報整理を行い、特に《日記の聖女》や《依代の聖女》の動向に注目した。現在はマイノグーラに直接の脅威は及んでいないと判断し、国家成長に集中することを決定した。

ヴィットーリオ問題の本格始動

内政と外交の整理が一段落すると、拓斗は最大の問題としてヴィットーリオの件に取りかかった。配下たちからの不満が噴出し、彼の行動の真意を探る必要が生じた。拓斗は《邪教イラ》の教典の存在に興味を示し、それが彼の復調や記憶回復に関係する可能性も示唆された。

教典への関心と新たな布石

教典の内容は単純であったが、拓斗はその裏に潜む意図を探ろうとしていた。明確な説明は避けられたものの、配下のアトゥだけは拓斗の中に不安の影を感じ取り、ヴィットーリオの行動に何らかの懸念を抱いていることを察していた。拓斗は静かに次なる一手を打つ準備を進めていた。

第六話    夢

ヴィットーリオの策謀と教団イラの拡大

教団イラの発展と代理教祖ヨナヨナの苦悩

拓斗が休息を取る中、教団イラはドラゴンタンにおいて拠点作りを進め、かつての有力者の邸宅を集会所として改装し、組織化を着実に進めていた。表向きの指導者であるヴィットーリオは活動を控えていたが、代理教祖であるヨナヨナは日々の雑務に追われていた。ヴィットーリオの怠慢により、実質的な指導と運営はヨナヨナが担っており、彼女の負担は増していた。

信仰心と忠誠心に支えられた代理教祖

ヨナヨナは、親に捨てられた過去を持ち、荒んだ生活を経てきたが、教団への信仰心は強く、イラ=タクトへの忠誠心によって代理教祖としての役割を果たしていた。彼女はヴィットーリオの皮肉や無責任な態度に屈せず、神の意志に忠実であろうとした。彼女の存在は教団の精神的支柱となっており、信徒たちの信頼も厚かった。

国家からの召喚とヴィットーリオの思惑

ヴィットーリオは本国からの召喚状を受け取ったが、それを重要視する様子は見せなかった。むしろ、ヨナヨナを含めた信徒たちの信仰と行動を利用し、自身は裏で策を巡らす立場に甘んじていた。ヨナヨナは教団と信徒を守るために召喚状を確認させ、教団が巻き添えを食うことを防ごうと尽力していた。

教団の自立と狂信者たちの拡大

ヴィットーリオがほとんど姿を見せなくなっても、教団イラは拡大を続けた。猫族の親子などを含む有力な信徒が集い、フォーンカヴン領域にまで活動範囲を広げつつあった。ヴィットーリオはその様子を見て満足しており、あくまで表に立つべきはヨナヨナだと考えていた。

策謀の完成とヴィットーリオの夢

ヴィットーリオはすべてが計画通りであることに満足し、自室で微睡みながら思索にふけった。『Eternal Nations』の元プレイヤーとしての彼の頭脳は、他の誰にも理解できない水準で策を張り巡らせており、それすらも神であるイラ=タクトを欺くほどのものであった。彼の策は誰にも否定されることがなく、最終的には自身の夢──イラ=タクトの栄光のために全てが費やされていた。

ヴィットーリオは、愚かで狂おしいほどの夢に恋い焦がれ、神すらも欺いてその夢を叶えることに歓喜した。そして、ただひたすら笑い続けた。祝祭の時は近づいており、すべては偉大なるプレイヤー、イラ=タクトのために成されたのである。

第七話    日記

日記の聖女の決意

アムリタの現状と異端審問官の苦悩

旧レネア神光国の首都アムリタは、《破滅の王》の襲撃によって壊滅した後、聖王国クオリアの臨時指揮所として再生されつつあった。異端審問官クレーエ=イムレイスは、信仰を失った住民や広がる疫病への対処、そして復興のために尽力していた。だが支援や人員は不十分で、施策の多くが焼け石に水の状態であった。特に深刻なのは、人々が神への信仰を失ってしまっていることで、宗教国家としての根幹が揺らいでいた。

信仰の忘却とケイマン医療司祭

疫病と並行して、人々が信仰の記憶を喪失するという現象が発生していた。クレーエは以前協力を得たケイマン医療司祭と再会するが、かつて敬虔であった彼は信仰を失い、自己を見失っていた。神への信仰なしに聖職者としての力を行使することはできず、クレーエはその変貌に戸惑いながらも、どうにか再建の糸口を探していた。

日記の聖女の覚悟

そのような状況下、日記の聖女リトレイン=ネリム=クオーツが現れた。彼女は神への奇跡を行使することで、失われた信仰を人々に取り戻す力を持っていた。しかしその代償として、自身の大切な記憶を捧げなければならなかった。リトレインは父との思い出を守るため、これまで奇跡の使用を控えてきたが、アムリタの状況に胸を痛め、ケイマンの信仰を回復させるために自らの記憶を差し出す決意を固めた。

奇跡の代償と少女の祈り

リトレインの祈りは光となり、ケイマンは信仰を取り戻したが、それと引き換えに彼女の大切な思い出の一部が失われた。それは彼女にとって非常に重い代償であり、クレーエは少女の自己犠牲に心を痛めた。今後、彼女が奇跡を使い続ければ、やがて自らの存在の核である父との記憶までも失うことになる危険があった。

聖女と審問官の誓い

それでも、リトレインは人々を救うために奇跡を使い続ける意志を示した。クレーエは、その健気さと献身に心を打たれつつも、彼女の身を案じ、終わりの時までその傍にいることを誓った。少女の信仰と祈りは、厳しい現実の中で唯一の希望の光として、彼女自身と周囲の人々を導いていた。

セルドーチの異変と警戒態勢

クオリア南方州の商業都市セルドーチは、暗黒大陸との非公式な交易で栄えていたが、疫病の流行と国の管理強化によって封鎖され、静けさに包まれていた。警備兵たちも職務を持て余す中、都市の門前に不審な人物が突如現れ、騒然とする事態となった。

ヴィットーリオの出現と異様な雰囲気

突如として現れた男・ヴィットーリオは、マイノグーラから来たと名乗り、怪しげな笑みを浮かべつつ名乗りを上げた。その態度は終始軽薄でありながら不気味さを伴い、警備兵の警戒心を煽った。彼の背後には同様に不気味な笑みを浮かべた集団が続き、その異様さは際立っていた。

新たなる混乱の予兆

警備兵が慌てて問い質すも、ヴィットーリオは取り合わずに「幸せか」と問いかけるなど、奇妙な言動を続けた。彼の目的は不明ながら、都市の封鎖を無視して現れた行動は、明らかに混乱の幕開けを意味していた。策謀の英雄と称されるヴィットーリオの暗躍が、クオリアとマイノグーラを巡る戦乱に新たな局面をもたらそうとしていた。

結末と次巻への導線

本巻は、静かなる都市への不穏な侵入というかたちで幕を閉じた。ヴィットーリオの登場は物語を新たな混迷へと導く予兆となり、今後の展開への関心を高める構成となっていた。読者にとっては、破滅の文明が新たな動きを見せる次巻への期待感が募る締めくくりであった。

第八話    護衛

拓斗の護衛体制の刷新

拓斗は宰相モルタール老の進言に従い、護衛体制の強化に着手した。過去の戦いで明らかとなった敵の非合理かつ異能的な手段に対抗するため、従来の経験則は通用しないと判断したのである。そこで新たな戦力として《異形動物園》で生産された《出来損ない》を導入し、異常な容姿ながら英雄級の力を持つそれらを自身の護衛に任じた。モルタール老ら配下もその能力に驚愕しつつ、王の判断に感服した。

会議での布陣発表とその裏

《出来損ない》二体に加え、エルフール姉妹であるキャリアとメアリアを王の近衛として配置し、拓斗は大会議にて護衛体制を正式に発表した。その中で、《出来損ない》の能力として《看破》《擬態》《不意打ち》などが紹介され、実戦における有効性が説明された。見た目の異質さはあるものの、戦力としては最高峰であり、王の安全確保という点では申し分のない体制であると配下も認識した。

エルフール姉妹による暗躍と作戦の布石

拓斗はすでにレネア神光国との戦いの最中から、キャリアとメアリアに疫病と忘却の工作を命じていた。これらの効果は今なお継続中であり、南方州に混乱をもたらすことで聖教の行動を制限する狙いがあった。しかし姉妹はそれが時間稼ぎだけでないことを見抜き、拓斗の意図を問い質した。拓斗はそれを認め、次なる作戦が水面下で進行していることを示唆した。

不安の兆候と新たなる訪問者

拓斗が新たな一手を明かす前、会議中に緊急伝令が入り、突如《出来損ない》を通して報告がもたらされた。それは舌禍の英雄ヴィットーリオが、ついに主である拓斗との会談を求めて現れたという知らせであった。拓斗は楽しげにそれを受け入れ、配下たちは緊張を隠しきれなかった。ヴィットーリオの出現は、ただの使者ではなく、彼自身の策が完了した証でもあった。

締めくくりと次巻への導入

拓斗は護衛体制の確立により一つの課題を克服し、次なる戦略へと歩みを進めていた。しかし、ヴィットーリオとの会談という新たな局面がその道を大きく揺るがすこととなる。果たしてこの対峙がもたらすのは友好か、それとも破滅か。すべては拓斗の次なる手に委ねられる状況となった。

第九話    献身

舌禍の英雄との謁見

拓斗は、復帰後初となるヴィットーリオとの謁見に臨んだ。宮殿の玉座の間にて、周囲を配下と《出来損ない》が囲む中、ヴィットーリオは副官の少女を伴い、臣下として忠誠を誓った。だが表面的な穏やかさの裏では、言葉の応酬による緊張感あふれる情報戦が展開されていた。

セカンドプランと代理教祖の紹介

ヴィットーリオは「イラ教」と称される宗教を創設し、その代理教祖にヨナヨナを据えていた。拓斗は彼女の正体を《看破》によって検証したが、異能の兆候は認められなかった。一方でヴィットーリオがダークエルフたちを代替する策を講じていたことが発覚し、信頼に対する疑念が生じた。

知の応酬と主従の対決

アトゥが謁見に姿を見せていない理由について話が及び、拓斗はヴィットーリオとの衝突を避けるための配慮であると説明した。二人の会話は冗談めかしつつも、高度な読み合いに満ちており、互いの裏を読み合う様相を呈していた。両者はあくまで礼儀を保ちつつも、内心では策略を巡らせていた。

南方州への派遣と新たな任務

ヴィットーリオは新たな行動の許可を得て、エルフール姉妹の同行を要請した。目的地は南方州。そこには信仰勢力の聖女がいるとされており、勢力拡大のための重要拠点と見なされていた。拓斗は姉妹の同行を許可し、彼女たちの無事を強く願った。

主従の信頼と次なる一手

会話の終盤、ヴィットーリオは拓斗に全幅の信頼を寄せる言葉を告げ、南方への行動を開始した。拓斗もまた、彼に期待を寄せつつも油断はせず、次なる一手に備えていた。二人の奇妙な主従関係は、互いに策をめぐらせつつも確かな信頼を基盤としていた。

世界征服に向けた決起

最後に、拓斗は改めて世界征服に向けての意志を宣言し、必要な支援を惜しまないと告げた。舌禍の英雄ヴィットーリオはその言葉に応え、奇妙かつ強力な連携が確立された。配下たちやヨナヨナを巻き込みながら、マイノグーラは新たな戦略の第一歩を踏み出したのである。

南方州攻略作戦の開始

ヴィットーリオは新たな作戦として南方州攻略を提案し、イラ=タクトの命令のもとに行動を開始した。彼の背後には、同行を強制されたエルフール姉妹の強い拒否反応があったが、それもまたタクトの遠謀の一環として描かれていた。作戦は重大な意味を持ち、登場人物たちにとってその意味を理解する必要があった。

ヴィットーリオの特異性と制御

ヴィットーリオは《幸福なる舌禍》の異名を持ち、『Eternal Nations』内でも特殊な能力を持つ英雄であった。イラ=タクトだけが彼をコントロール可能であり、その力が今まさに試されようとしていた。彼の存在に対して周囲は警戒を強め、特にその影響力と戦略性を再評価する必要性が浮き彫りとなった。

イラ=タクトの戦略的意図

イラ=タクトは自身の叡智をもってヴィットーリオを動かし、新たな戦局を切り開こうとしていた。全ては次元上昇勝利という目標のために仕組まれた計画の一部であり、南方州攻略もその重要な布石であった。彼は仲間たちの反応すらも戦略に組み込みつつ、慎重かつ大胆に次の一手を準備していたのである。

第十話    調略

疫病と混乱の拡大

商業都市セルドーチでは、キャリア・エルフールの放った疫病が蔓延していた。風邪のように軽度ながら潜伏期間と空気感染によって広がり、人々は長期間苦しめられていた。感染は南方州全体へと拡大し、各都市では医療崩壊が進行していた。

ヴィットーリオによる宗教支配の開始

セルドーチの第一教区教会にて、ヴィットーリオは《イラ教》の代理教祖ヨナヨナと共に活動していた。疫病の苦しみの中で奇跡を演出し、人々に神イラ=タクトへの信仰を強要した。キャリアの病とメアリアの忘却能力によって聖教の信仰は消し去られ、代わってイラ=タクトへの信仰が植え付けられた。

偽りの奇跡と民衆の洗脳

ヨナヨナが祈りを捧げると同時にキャリアが疫病を消し去ることで、神の奇跡が演出された。人々は歓喜し、《イラ教》への帰依を深めた。この一連の流れにより、街全体がマイノグーラの支配下に入る兆しを見せた。

忘却による聖騎士の懐柔

聖教の騎士である男がヴィットーリオの作戦によって信仰を忘却させられ、《イラの騎士》として再誕した。信仰心をすり替えることに成功したことで、マイノグーラは有能な戦力を確保した。

計画の全貌と拡張

ヴィットーリオは疫病と混乱を利用し、マイノグーラによる地域支配の最終段階へと突入した。配下の文官が派遣され、セルドーチ以外の都市や村にも同様の宗教支配が進行中であった。マイノグーラは土地、資源、信仰のすべてを掌握しつつあった。

支配の正当化と偽装

ヨナヨナは表向き教祖代理として表に立ち、ヴィットーリオは裏から支配を行った。信者の数が増えるたびに、神イラ=タクトの奇跡が演出され、民意はますますマイノグーラに傾いた。これにより、他勢力との交渉や戦闘を経ずに都市単位での転覆が可能となった。

南方州への野望と終盤の動向

セルドーチの次なる目標は、南方州の中心都市であるアムリタであった。日記の聖女リトレインや異端審問官イムレイスが防衛にあたっているが、マイノグーラの支配の手はそこにまで及ぶことが予見される。ヨナヨナとエルフール姉妹の冷静な分析により、ヴィットーリオの暴走を止める手段はもはや存在せず、計画は着実に進行していた。

支配の確実化と最終戦略

最終的に、疫病と奇跡による支配が完了すれば、マイノグーラの手に落ちた都市はイラ=タクトを神と仰ぎ、完全なる帰順が成立する。ヴィットーリオはさらなる都市への拡張を予告し、レネア神光国を内部から崩壊させる策略が着実に進んでいた。

第十一話    愚行

アムリタの疫病終息と再侵攻の兆候

クオリアの南方州では、疫病に苦しむアムリタの都市の復旧が進められていた。異端審問官クレーエ=イムレイスは、ようやく事態の収束に安堵しかけた矢先、マイノグーラによる再侵攻の報がもたらされた。南部各地で連絡が断絶し、伝令も追い返される異常事態が発生していた。

各地での連絡断絶と予兆

この異変はアムリタのみにとどまらず、かつて魔の手に落ちたエル=ナー精霊契約連合の様相に酷似していた。神の加護を受ける国家ですら有効な対策が見いだせない中、聖女二名の離反による影響でクオリアの力は著しく弱体化していた。

クレーエの苦悩と判断

異常事態への対応を協議する聖騎士たちの会議は、対策を見出せぬまま停滞した。責任感に苛まれるクレーエは、思考を切り替えるため街の視察に出向いた。撤退を選択肢として考えつつも、住民を見捨てることができないという矛盾に葛藤していた。

ヴィットーリオとの邂逅と衝撃

その視察中、暴行事件に出くわしたクレーエは加害者に警告するが、現場には異様な光景が広がっていた。虚ろな瞳の暴漢たちと、奇妙な装束の大道芸人風の男。その男、ヴィットーリオは自らをマイノグーラの使者であると名乗った。

交戦と違和感

クレーエは即座に抜剣し、神の敵を打ち払わんと攻撃を仕掛けた。しかしヴィットーリオは常識を逸脱した動きで攻撃を回避し、「非暴力主義」を主張しながら突然土下座で降伏を表明した。その予想外の行動にクレーエは混乱し、反応を鈍らせてしまった。

信仰と規範の板挟み

神の教義により、降伏した者を害することは禁じられている。ヴィットーリオはその法を逆用し、対話の場を要求した。クレーエの理性と信仰は「邪悪を斬れ」と命じるが、神の言葉を根拠に理屈を通す敵に、簡単に刃を振るうこともできなかった。

闇の到来

ヴィットーリオは冷笑的に、クレーエの名前と立場を呼びながら、聖なる秩序への侵食を宣言した。すでにマイノグーラの影は、クオリアの中心部にまで及びつつあった。神に仕える者の目前に、邪悪の象徴が明確な姿をもって現れた瞬間であった。

第十二話    脅迫

ヴィットーリオの拘束と交渉の舞台

ヴィットーリオとヨナヨナは旧クオリア南方州騎士団本部にて拘束され、聖騎士たちの監視下に置かれていた。捕虜であるにもかかわらず、ヴィットーリオは終始ふざけた態度を取り続けたが、その裏には聖神アーロスの教義を逆手に取った戦略的意図が隠されていた。降伏者に対する暴力を禁ずる聖典の教えにより、彼は実質的な安全圏に身を置きつつ交渉の機会をうかがっていた。

クレーエとの論戦と布教合戦の提案

異端審問官クレーエは、ヴィットーリオの無礼な態度と挑発に対し冷静に応じた。ヴィットーリオは「布教合戦」という名目で、非暴力かつ非洗脳を条件とした宗教対決を提案し、クオリアの聖騎士団に揺さぶりをかけた。クレーエは一度はその提案を拒絶するも、現地の人々を守る手段が限られていることから、最終的に条件付きで承諾するに至った。

イラ教の目的と聖教との価値観の対立

ヨナヨナは、マイノグーラの真の目的は「人と土地」であると明言し、争いを避けるために譲歩していると訴えた。その上で、イラ=タクトが直接出てこない間は状況に猶予があると示唆した。一方でクオリア側は、破滅の王の存在が引き起こす災厄と聖典の遵守という原則に葛藤しながらも、現実的な妥協を迫られていった。

ヴィットーリオの脱出とクレーエの決断

交渉成立直後、ヴィットーリオは突風と共に拘束を解いて脱出した。彼は初めから逃走の機会を持ちながら、計画的に交渉を進めていたことが明らかとなる。残されたクレーエは、自身の選択が市民を守る唯一の手段だったと自らに言い聞かせつつ、信徒や聖騎士への説明という新たな課題に直面した。

苦渋の妥協と今後の不安

クレーエの決断は、イラ教という異端勢力に譲歩した形となり、クオリアの信仰秩序にとって重大な一線を越えるものであった。聖騎士団内部にも動揺が走り、説明責任と信頼の再構築が急務となった。クレーエは未曾有の選択をした自覚とともに、これからの展開に対する深い不安を抱きながら、その場を静かに収めるための言葉を探し続けていた。

第十三話    嘲笑

哀しみと誘惑の対話

聖騎士団との不和とクレーエの孤立

クレーエは、邪悪なる者ヴィットーリオと取引をしたことにより、聖騎士団からの信頼を失いつつあった。リトレインの代理人としての立場や異端審問官としての権威も揺らぎ始め、職務に対する自信を失っていた。聖騎士たちは彼女の独断に納得していたが、心の奥底ではしこりが残っていた。

ネリムへの想いと葛藤

クレーエは、戦えない少女であるリトレインの脆さを理解しつつも、彼女を犠牲にすることなどできなかった。友人としての情と職務との狭間で揺れ動く中、ネリムとの対話でその思いを確かめていた。リトレインは「善き行いをすれば善きことがある」と語るが、その純粋さがクレーエの心を一層締めつけた。

ヴィットーリオの出現と悪意の提案

邪悪なる者ヴィットーリオが現れ、ネリムの父ヴェルデルが死亡した事実を告げ、ネリムを誘拐する代わりに蘇生を提案した。この提案はクレーエの怒りを買い、聖剣を手にしようとするが、体が動かず、その場での対話を強いられた。

言葉による破壊とネリムの絶望

ヴィットーリオは巧みにネリムを追い込み、父親との再会が偽物だったこと、善き行いに意味はないことを暴露した。ネリムは現実を受け入れられず、涙を流して崩れ落ちた。クレーエもまた精神的に追い詰められ、抵抗する力を失った。

最終提案と誘惑の本質

ヴィットーリオは、破滅の神イラ=タクトに従えば永遠の幸福が与えられると語り、その甘言によって二人を揺さぶった。「死者の蘇生」「平穏な日々」「安寧と幸福」が現実のものとして語られ、聖なる信念が揺らぐ危機が訪れた。

絶望の静寂と涙

提案を拒絶したクレーエは、リトレインと抱き合い、悲しみを分かち合った。邪悪なる者の去った後に残されたのは、救いようのない絶望と冷たい静寂だけであった。

第十四話    屈服

闇の調略とアムリタの崩壊

ヴィットーリオによる調略工作により、アムリタの住民の大半がイラ教へ改宗した。聖女リトレインを中心とした聖教側は説法や治療に尽力したが、敵の進行には及ばず、実力ある人材の離脱も続出した。状況の悪化に対し、聖騎士団はリトレインに奇跡の行使を求め、少女に過度な犠牲を強いようとする姿勢を見せた。

クレーエの葛藤と孤立

異端審問官クレーエは、リトレインの犠牲に強く反発し会議を離脱したが、その行動により完全に組織から排除された。失意と怒りの中で孤独に沈む彼女は、もはや聖教の内部で少女を救う手立てがないことを痛感した。

ヴィットーリオの登場と新たな選択

イラ教陣営に囚われていたヴィットーリオは、道化のような言動で折檻を受けながらも、クレーエに接触し信仰の転向を持ちかけた。エルフール姉妹やヨナヨナの言葉にも後押しされ、クレーエは神を捨てイラ教へと転向する決断を下した。その選択によって、彼女の心に安堵と希望が芽生えた。

奇跡の代償とリトレインの行動

クレーエの決意が固まり、事態が収束へ向かうと思われた矢先、奇跡を行使したリトレインが現れる。彼女はもはや人の手の届かぬ存在となっており、ヴィットーリオすらその行動を止めようとした。聖なる少女が進もうとする先に、救いか破滅かは示されぬまま物語は幕を下ろした。

第十五話    極光

クレーエとの別れとネリムの決断

ネリムはクレーエとの最後の対話を通じ、過去の後悔と感謝を告げたうえで、自身の祈りを捧げた。彼女は思い出を力に変え、クレーエを救うという意志を神に捧げた。祈りは神に届き、ネリムは強大な聖なる力を得た。

記憶喪失と日記による再起動

祈りの代償としてネリムは全記憶を喪失した。結果、幼児のような無垢さで再び目覚めるが、日記の記述を読み返すことで目的を再認識した。神はその行動を奇跡と認め、彼女にさらなる力を与えた。

神の設計ミスとネリムの進化

本来なら記憶を失った聖女は無力な人形になるはずであったが、ネリムは日記を読むという習慣によって目的を補完した。この設計の不備により、彼女は無限に奇跡を引き出す存在と化し、圧倒的な力を得た。

聖女ネリムの暴走とマイノグーラ側の苦境

ネリムは記憶を喪失しつつも日記の指示に従い、悪を討つ力を求め続けた。その力はキャリアとメアリアの攻撃すらも通用しないほどであり、次第にマイノグーラ側は圧倒されていった。信徒は失われ、戦力も削られていく。

クレーエへの攻撃とさらなる記憶の混乱

クレーエを助けるという指示と、邪悪を討つという指示が衝突し、ネリムの判断に矛盾が生じた。彼女は再び記憶を喪失し、次々に目標を切り替えながら暴走を続けた。やがて彼女の興味は人々を助ける方向へと移る。

ヴィットーリオの最後と聖女の暴走終結

ヴィットーリオは戦局を覆す策を打てず、ネリムの圧倒的な力の前に敗北した。彼はタクトへの忠義を貫きながら最期を迎えた。一方、ネリムは血塗れの日記を読み返しながら、次なる行動を考え始めた。

結末の静寂と少女の空虚

戦場に残されたのは、血に染まった日記と、空虚な少女の姿だけであった。記憶を失いながらも、日記に導かれるままに彼女は新たな道を歩み出す兆しを見せた。それは希望か、さらなる破滅の始まりであるかは、誰にも分からなかった。

第十六話    再演

アムリタからの脱出と信徒の行方

マイノグーラ陣営はヴィットーリオの献身によって聖女の追撃を回避し、アムリタの街を脱出した。信徒の大半は奪還されたものの、旧来の仲間たちは無事であった。逃亡中、代理教祖ヨナヨナは異端審問官クレーエ=イムレイスを保護し、信仰を失った彼女に休息と再起の道を示した。

ヴィットーリオの死と一行の悲哀

脱出の代償として、ヴィットーリオが殿を務め命を落とした可能性が濃厚となる。一行はその犠牲に沈痛な思いを抱きつつ、支配下の都市セルドーチへの撤退を開始した。だが情勢は厳しく、セルドーチの放棄も検討される状況となっていた。

死からの復活とヴィットーリオの演説

ヴィットーリオは死後、マイノグーラの宮殿で復活し、玉座の前で勝利を宣言した。彼は《名も無き邪神》であるイラ=タクトの再定義を行い、信徒たちの認識によって新たな神格を定着させたと語った。これにより拓斗の意識回復が実現したと信じていた。

邪書による神格化の構図とその矛盾

邪書にはイラ=タクトを神格化する記述がなされており、ヴィットーリオはそれに従って「理想の神」としての拓斗像を構築していた。しかし、拓斗はその再定義を否定し、ヴィットーリオの信仰が個人の信念に基づいた幻想に過ぎないと断じた。

拓斗の真の意図とヴィットーリオの敗北

ヴィットーリオの策は緻密であり、イラ教の創設や信徒の認識操作、聖女との対決を通じて拓斗の復活を成し遂げたように見えた。だが、拓斗はそれを全て見抜いており、予備策として擬態能力を持つ赤子を用いて自身の影武者を用意していた。

信仰の崩壊と存在階層の真実

ヴィットーリオが信仰の中心に据えたイラ=タクトは、実際にはゲーム世界『Eternal Nations』における人格に過ぎず、拓斗の本質はその上位にある存在「伊良拓斗」であった。そのため、《名も無き邪神》の影響を受けても、本体たる拓斗には影響がなかったという構造が明かされた。

信仰と忠誠のすれ違い

ヴィットーリオは、自らの理想に合致しない拓斗の姿を受け入れられず、神を再定義しようとした。しかしそれは、主を侮辱する行為であり、結果として自らの信仰を破綻させる愚行となった。拓斗はその狂信的忠誠を理解しながらも、「君はセカンドプランだった」と告げて退けた。

狂信の昇華と敗北の受容

敗北したヴィットーリオは、自らの作戦が全て看破されていたこと、そして拓斗が常に自分の上を行っていたことに気づき、涙を流した。だがその敗北すら、彼にとっては主に認められた証であり、心の底からの満足をもたらすものとなった。

第十七話    流転

アトゥの奪還とヴィットーリオの敗北

イラ=タクトは、アトゥが彼を再び召喚するか、あるいはヴィットーリオに助けを求めるかを含めた複数の展開を予測し、全てに対して勝利を収める算段を整えていた。結果としてアトゥは意識を取り戻し、ヴィットーリオの策を見抜いたタクトに感動しきりであった。アトゥはタクトに抱きつき、勝利の喜びをあらわにしたが、彼女の反応はやや過剰で、タクトを戸惑わせた。一方、ヴィットーリオは敗北に打ちひしがれ、「寝取られた」と錯乱状態に陥った。

主従関係の再確認とヴィットーリオの暴走

アトゥはタクトへの忠誠を強く再表明し、ヴィットーリオを恋愛面でも蹴落としたと勝ち誇った。ヴィットーリオはそれに反発し、自身もヒロインとしての地位を主張したが、二人に完全に無視された。タクトはこの騒動を通じて国家運営の再編を進めつつ、次元上昇勝利という最終目的を見据え、歩みを進めていた。ヴィットーリオは今後も忠誠を尽くすと誓ったが、同時にまたも暗躍を始めようとした。

世界の新たな動きと魔女ヴァギアの宣言

タクトのもとに、突如巨大な声が響き渡る。それは「サキュバスのヴァギア」による全プレイヤー・国家への宣言であった。彼女は「争いはナンセンス」として停戦と会合を提案し、そのための使者を各勢力に派遣すると告げた。この予想外の動きにより、タクトは慎重な対応を迫られた。ヴァギアの存在と魔女軍勢はこれまで不明であり、完全に後手に回った情報状況にタクトは警戒を強めた。

世界情勢の加速と次なる波乱の兆し

ヴァギアの登場は、アトゥとヴィットーリオにも驚きを与えたが、特にヴィットーリオは演出面での敗北を感じ取り、対抗心を燃やすそぶりを見せた。タクトは彼の行動を制御するため釘を刺し、ヨナヨナやエルフール姉妹などへの連絡を怠った件についても処罰を予告した。こうして再び動き出した世界の中で、タクトは《次元上昇勝利》を目指し、拡大した国土と混迷する状況に立ち向かう決意を新たにした。最後に、システムメッセージが神の名を伴って通達され、物語は次なる局面へと動き始めた。

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