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鬼姫1巻の表紙画像(レビュー記事導入用)

小説【鬼の花嫁 外伝】「鬼姫~運命の契り~」感想・ネタバレ

物語の概要

本作は和風ファンタジー恋愛ライトノベルである。鬼の一族に生まれながら強大な霊力を巧みに扱えず、落伍者として周囲から疎まれてきた少女・六花。彼女は病弱な妹を守るために懸命に生きていたが、ある日、神の血を引く“最強軍人”・一龍斎氷雨との縁談話が舞い込む。氷雨は優れた霊力を持つが、人間やあやかしを忌避する立場であり、二人は利害の一致によって偽装婚約を交わすに至る。愛などないはずの契約関係は、やがて互いの心に変化をもたらし、運命の契りとしての真実の絆へと発展していく。

主要キャラクター

  • 六花(ろっか)
    本作の主人公。鬼の一族に生まれながら霊力を上手く扱えない“落ちこぼれ”であり、妹を守ることを最優先に生きてきた少女である。
  • 一龍斎氷雨(いちりゅうさい ひさめ)
    神の血を引く最強軍人とされる男。絶大な霊力を持つ反面、あやかしを嫌悪する価値観を持つ。利害一致による偽装婚約から六花と関係を築いていく。

物語の特徴

本作の魅力は、“最弱と思われた少女”が運命の出会いを経て自らの強さを見出す王道成長譚と、偽装から真実へと変わる恋愛描写の融合にある。
主人公・六花は単なるヒロイン的存在ではなく、能力と現実のギャップ、周囲の評価や自身の葛藤を抱えながら成長する姿が丁寧に描かれる。また、相手役である氷雨との関係は偽装婚から始まるため、“利害関係→信頼→愛”という心理の変遷が読者の共感を誘う構造となっている。
さらに、あやかしと人間の境界や誤解、価値観の衝突と和解といったテーマも本作の魅力を高めており、単なる恋愛小説を超えた“和風ファンタジーとしての厚み”を持つ。

書籍情報

鬼姫 ~運命の契り~
著者:クレハ
イラスト:白谷ゆう
出版社:スターツ出版
レーベル:スターツ出版文庫
発売日:2025年12月28日

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あらすじ・内容

鬼の一族に生まれた六花は、強大な霊力を持ちながらも全く上手く使えない。最弱の落ちこぼれと疎まれながらも、病弱な妹を守るため懸命に生きていた。そんなある日、神の血を引く最強軍人・一龍斎氷雨との縁談が舞い込む。あやかしからの絶大な人気とは裏腹、氷雨自身は大のあやかし嫌い。ある利害の一致のためだけに、偽装婚約を交わす二人。そこに愛などないはずだったが…。「六花のどこが弱い」「お前に触れていいのは俺だけだ」「俺にはお前が必要だ。だから、俺を選べ」氷雨の隣で、六花は本当の自分を取り戻していく――。

鬼姫~運命の契り~

感想

クレハ先生の新作は、鬼の花嫁と同じ世界で同じ時代の物語。
主人公の六花は、裏の世界を牛耳る天鬼月の当主直系の系譜であり、当主の証と呼ばれている”宵闇”に選ばれながら、その力をまったく振るえない存在。
最弱と蔑まれ、力があるのに使えないという状況は、読んでいて胃が痛くなる。
一方で、それでも妹を守ろうとする姿勢が一貫しており、芯の強さがある人物として描かれている点が印象的であったが、妹の件でキレる弱点でもあった。

そんな彼女の前に現れるのが、一龍斎の長男で神の血を引く氷雨。
霊力が体内に溜まりやすい体質という設定は、最初から六花との対比として機能しており、祖父から婚約を命じられる展開も含めて、婚約を決めた者は判ってやってる感があった。
ただ、その強引さが嫌味にならないのは、二人の利害がきれいに一致していおり。
決めた張本人と六花との関係が良好なのが救いとなっていた。

特に印象に残ったのは、六花が氷雨の血を吸うことで宵闇を振るえるようになると判明する場面である。
「この二人、相性が良すぎる」という感想が自然に湧いて来た。
片方が溢れ貯まり体調不良となり、片方が空であるという関係性は、設定としても感情面としても説得力があり、力の共有がそのまま心の距離を縮めていく構図に納得感があった。

また、氷雨の態度も好印象である。あやかし嫌いという前提を持ちながら、六花個人を見て評価していく過程が丁寧であり、周りの評判に流されず「弱い」と決めつけない姿勢が六花を少しずつ変えていく。
六花が氷雨の隣で本当の自分を取り戻していく流れは、派手ではないが確かな変化として伝わってきた。

総じて本作は、力の強弱ではなく、お互いの弱点を補い合う相手と出会いを描いた物語であると感じた。
欠けているからこそ成立する関係性があり、その事実を受け入れたとき、人は前に進める。
六花と氷雨の関係は、その分かりやすい答えを静かに示してくれる。読み終えたあと、素直に「この二人なら大丈夫だろう」と思わせてくれる、安心感のある一冊であった。
お互い素直なら…

最後までお読み頂きありがとうございます。

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登場キャラクター

天鬼月六花

天鬼月当主の孫娘であり、妹の霞を救うために宝刀『宵闇』を手放せず、家の命令と現実の板挟みで動く人物である。
・所属組織、地位や役職
 天鬼月・暁天の孫娘。宝刀『宵闇』の保持者。
・物語内での具体的な行動や成果
 霞の看病を続けた。
 当主命令で一龍斎氷雨との縁談に臨んだ。
 任務で指名手配あやかしを捕縛して引き渡した。
 時雨との戦闘で『宵闇』を用いて刺突し、消滅を確認した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 氷雨の血を介した連携で『宵闇』の扱いが安定した。
 任務実績の増加により周囲の態度が軟化した。

天鬼月霞

六花の妹であり、腹部の黒い薔薇の刻印による発作に苦しみつつ、姉を支えようとする人物である。
・所属組織、地位や役職
 天鬼月家の一員。六花の妹。
・物語内での具体的な行動や成果
 六花の看病を受けながら日常を保とうとした。
 館での失踪事件で連れ去られた。
 時雨討伐後に刻印の消滅が確認された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 呪いの消滅により病の前提が変化した。

天鬼月暁天

天鬼月の当主であり、圧倒的な霊力で家を支配し、六花を縁談と当主候補の両面で動かす人物である。
・所属組織、地位や役職
 天鬼月・当主。六花の祖父。
・物語内での具体的な行動や成果
 六花に一龍斎との結婚を命じた。
 一龍斎側の事情を説明し、協定の必要性を語った。
 負傷した氷雨の治療を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 六花に「味方を作れ」と指針を与えた。

天鬼月紫電

天鬼月の次期当主最有力と見られ、六花への侮辱と干渉を重ねて対立の火種となる人物である。
・所属組織、地位や役職
 天鬼月・当主候補と見られる立場。六花の従兄。
・物語内での具体的な行動や成果
 回廊で六花を挑発し、暴力に及んだ。
 霞失踪の疑いを向けられ、関与を否定した。
 白霧の暴走時に押さえ役として動いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 六花の婚約を知り動揺を見せた。

香鬼白霧

暁天の側近として振る舞いながら、六花への敵意を抱え、時雨の介入で暴走する人物である。
・所属組織、地位や役職
 天鬼月・暁天の側近。
・物語内での具体的な行動や成果
 回廊で紫電を諫める形で介入した。
 霞を狙い短刀を振るい、六花とも交戦した。
 時雨から血を与えられて操られたとされる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 紫電が血を抜く処置で沈静化が図られた。

ナギ

六花が霞のために作った使役獣であり、毒舌と情報収集で場を揺らし、追跡の鍵にもなる存在である。
・所属組織、地位や役職
 六花の使役獣。霞の傍にいる存在。
・物語内での具体的な行動や成果
 使用人の陰口を拾って霞に伝えた。
 霞失踪時に気配追跡の手がかりになった。
 白霧の暴走現場で六花に警告し、腕にしがみついて抵抗した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 時雨討伐後に呪い消滅を喜び、場の空気を変えた。

一龍斎氷雨

星影の制服を着る一龍斎の直系であり、復讐と制御不能な力を抱えつつ、六花の『宵闇』を突破口に協力へ向かう人物である。
・所属組織、地位や役職
 国家機関「星影」所属。星影の隊長とされる立場。
 一龍斎の長男。直系。
・物語内での具体的な行動や成果
 六花との顔合わせで敵意を示し、対立を生んだ。
 時雨戦で六花を庇って負傷し、血を飲ませて連携を成立させた。
 霞失踪の場面で六花を叱責し、追跡の道筋を提示した。
 時雨拘束の結界を展開し、六花の刺突を支援した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 六花の霊力を吸わせることで体調を調整できる状態になった。
 婚約を「合理」として提案し、共同生活へ移行した。

一龍斎日方

一龍斎の当主として協定と縁談を進め、氷雨の状態を気にかけながら家を保つ人物である。
・所属組織、地位や役職
 一龍斎・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 顔合わせの中断を提案し、日程変更をまとめた。
 天鬼月との協定を背景に縁談を進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 氷雨の危うさを理解し、当主として繋ぎ止めようとしている。

時雨

六花と氷雨の仇として現れ、霞の呪いと館への介入を行い、最終的に『宵闇』で討たれる人物である。
・所属組織、地位や役職
 所属不明。六花と氷雨にとって討つべき相手。
・物語内での具体的な行動や成果
 ビル上で六花と氷雨を挑発した。
 白霧に血を与えて操ったと認めた。
 霞の呪いが近接で活性化する旨を示唆した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 六花の『宵闇』により肉体が消滅した。

鬼龍院千夜

鬼龍院の当主であり、表の影響力を担う家として暁天と接触し、六花の居心地をさらに悪くする存在である。
・所属組織、地位や役職
 鬼龍院・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 あやかしのパーティーで暁天へ気安く声をかけた。
 六花へ距離を詰め、息子の玲夜の名を出して会話を進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 六花の両親と親しかった過去が示される。

狐雪撫子

天狐の当主として場に介入し、『宵闇』へ視線を向けて六花を揺らす人物である。
・所属組織、地位や役職
 天狐・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 パーティーで六花の腰の『宵闇』に注目した。
 六花に「いまだ使えぬか」と言葉を投げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 宝刀持ち込みが特例扱いである点を浮かび上がらせた。

展開まとめ

プロローグ

世界大戦と日本の荒廃
多くの国を巻き込んだ世界大戦は日本にも甚大な被害をもたらし、人々は終戦に安堵しながらも、変わり果てた町の姿を前に深い悲しみと絶望を抱えていた。復興には長い時間と労力が必要であり、先の見えない状況が続いていた。

あやかしたちの表舞台への登場
そのような中、それまで人に紛れ陰で生きてきたあやかしたちが陽の下へ姿を現した。彼らは人を魅了する美しい容姿と人ならざる力をもって、戦後日本の復興に大きく寄与し、社会を支える存在となっていった。

現代社会と新たな問題
時代が進み、あやかしたちは政治、経済、芸能などあらゆる分野で能力を発揮し、確固たる地位を築いていた。一方で、人間と同様に罪を犯すあやかしも現れ、その強大な力ゆえに人との均衡が崩れる危険性が生じていた。

二つの家の役割
情勢の中、害なすあやかしを取り締まる二つの家が存在した。神の血を引くとされる一龍斎は、強い霊力をもとに国家機関「星影」を組織し、人の立場から対あやかしの秩序を担っていた。もう一方の天鬼月は、鬼の一族としてあやかし界の裁定者を務め、人との共生を望むあやかしの代表として星影との協力を表明していた。

運命的な出会いの兆し
互いに矜持を持ち、交わることのなかった二家であったが、天鬼月に生まれた最強の鬼と一龍斎に生まれた者は、星の巡りに導かれるように出会った。その邂逅がもたらす未来は、まだ誰にも分からなかった。

一章

星夜の契約
星が輝く夜、青年は女性に手を伸ばし、互いに必要だと告げた。女性は復讐心を宿した金色の瞳に息を呑みつつも、目的の一致を確信して手を取った。大切なものを守るためなら魂さえ売る覚悟があり、彼があやかしと“あの男”を憎むからこそ信用できると判断した。女性は彼の憎しみが以前より和らいだことも感じ取り、星合いの空の下で強く握手を交わした。 要約プロンプト

六花と霞の看病
天鬼月当主の孫娘・天鬼月六花は、病床の妹・霞の看病を続けた。霞は青白い顔で苦しそうに呼吸し、六花は恐怖に耐えながらも、霞を守れるのは自分だけだという責任感で離れなかった。霞は謝罪しつつも、六花がそばにいることで救われると笑い、六花はその儚さに不安を募らせた。 要約プロンプト

使用人の陰口と六花の抑制
部屋の外で使用人たちが六花と霞を侮蔑し、霞の存在を呪われた子として疎む声が聞こえた。六花は怒りで立ち上がりかけたが、霞が弱い手で止め、争いを避けるよう静かに訴えた。霞は真実を言われただけだとして気にしないと微笑み、六花は優しさゆえに現状を変えられない自分の無力さを痛感した。 要約プロンプト

当主への呼び出しと本家の冷淡さ
六花は当主側近から呼び出されるが、霞の容体を理由に渋った。しかし側近は取り合わず、当主の命令を最優先だと冷たく迫った。霞は自分は大丈夫だと六花を送り出し、六花は念話で“それ”に霞の見守りを頼んだうえで、黒薔薇の刻印がある刀を携え当主の館へ向かった。六花は直系の姫でありながら軽んじられる現実を受け止め、早く用件を済ませようと足を速めた。

天鬼月の役割と暁天の威圧
六花が暮らす天鬼月は、鬼龍院が表で経済と調和を担うのに対し、裏で秩序を守る役割を負う家であった。六花は当主・天鬼月暁天の孫娘であり、回廊を通って当主の館へ入った。暁天は圧倒的な霊力と存在感で場を支配し、六花は視線を受けてもひるまず対峙した。

結婚命令と一龍斎氷雨の名
暁天は前触れなく、六花の結婚が決まったと告げ、一龍斎の息子と結ばせると断言した。六花は相手が一龍斎氷雨であることを知り、天鬼月と一龍斎の結婚が前代未聞だとして理由を求めたが、暁天は説明を拒んだ。六花は霞のことを理由に断ったが、暁天は拒否権を認めず、先方は既に到着しておりすぐ顔合わせだと告げた。

氷雨との遭遇と刀の反応
扉を開けた六花の前に、星影の制服を着た青年が立っていた。整いすぎた容姿と金色の瞳、銀色の髪を持つその青年を見て、六花の刀が脈打つように反応し、六花は戸惑った。背後の男が青年を氷雨と呼んだことで、六花は相手が一龍斎氷雨だと確信し、常人離れした霊力も感じ取った。

天使の笑みと暴言
氷雨は柔らかな物腰で六花に名を確認し、一見すると天使のように微笑んだ。だが顔を近づけた直後、氷雨は鬼の協力は不要で惚れるなと低い声で言い放ち、六花は理解が追いつかず呆然とした。表向きの態度と内側の敵意の落差により、六花は氷雨を友好的とは捉えられなくなった。

隣室での衝突と周到な偽装
暁天の命令で六花と氷雨は隣室に通され、二人きりにされた。氷雨は落ちこぼれを選んだと六花を嘲り、六花も対抗して刀に手をかけた。氷雨も小刀を取り出して一触即発となるが、側近が戻ると氷雨は武器を隠し、穏やかな態度で六花が一方的に怒っているように装った。六花は氷雨の不敵な笑みを見て、相手の敵意と狡猾さを悟った。

顔合わせの中断
六花は暁天に結婚は無理だと訴えたが、氷雨は背後から耳元であやかしと仲良くする気はないと囁き、六花も同じだと言い返した。暁天と一龍斎当主・日方が困惑する中、氷雨は一瞬胸を押さえて顔色を変えた。日方は本日はタイミングが悪いとして日を改める提案をし、暁天も目的は達したとして了承した。日方は氷雨に心配そうな視線を向けつつ、二人は退出した。

二章

結婚命令と六花の反発
暁天は六花に「一龍斎との結婚は決定事項」と告げ、六花は理由と相手の選定根拠を求めた。暁天は六花をからかいながらも、六花が「天鬼月で最強の霊力を持つ」こと、そして宝刀『宵闇』が六花を選んだ事実を根拠に挙げた。六花は力量不足を自覚しつつも、宵闇が妹・霞を救うための唯一の可能性であるため手放せないと語り、結婚どころではないと強く拒んだ。

宵闇と当主候補としての重圧
宵闇は意思を持つ刀であり、選ばれた者が当主となってきた経緯があるため、六花は当主候補の一人として扱われていた。しかし六花は霊力の制御が未熟で、周囲から「役立たず」「落ちこぼれ」と陰口を叩かれていた。次期当主最有力と見られる従兄・紫電は実力を持ち、六花を見下す立場にあった。

回廊での紫電の挑発と暴力
二度目の顔合わせのため当主の館へ向かう途中、六花は「当主の回廊」で紫電と遭遇した。紫電は六花を「はみ出し者」と罵り、さらに霞を「一族のお荷物」と侮辱し、六花の怒りを煽った。六花は反発するが力の差で投げ飛ばされ、紫電は霊力まで行使しようとした。そこへ側近の香鬼白霧が介入し、「弱い者いじめ」を諫めて紫電を落ち着かせたが、六花は白霧が最後まで傍観していた点を偽善と見なした。

暁天との再対話と結婚の目的
六花は暁天に氷雨の人物像を尋ねるが、釣書と調査報告が用意されていたにもかかわらず未確認だったことが判明した。暁天は側近の嫌がらせや霞への陰口にも触れ、必要なら人員を入れ替える姿勢を見せた。結婚の理由として暁天は、一龍斎の「神の血」が薄まり力が弱まっていること、これ以上一龍斎だけでは人の世を守れず天鬼月との協定を求めてきたこと、そして次代の強い力を残すため天鬼月の霊力を血に取り込む必要があることを説明した。

顔合わせの急な中止と六花の激昂
しかし当日、先方は「急用」を理由に来訪を取りやめ、具体的な説明もなかった。六花は天鬼月を侮る行為だと憤り、破談を訴え、毒霧などの嫌がらせまで準備していたことも明かしたが暁天に没収される。暁天はこれは家同士の契約であり、跡取りである氷雨以外に替えられないと断じ、六花の拒否を退けた。

霞のもとへ戻る日常とナギの存在
六花は自分の館に戻り、霞の部屋へ向かった。霞は結婚話を側近から聞かされており、六花は情報を流した使用人への不信を強めた。霞の傍には六花が作った使役獣の日本人形・ナギがいて、使用人の陰口を拾って霞に伝えるなど毒舌であった。六花は霞を守る意識が強く、外出中も不安に襲われるほどであった。

発作の悪化と呪いの刻印
入浴後、霞が髪を梳かす穏やかな時間が訪れるが、霞は突然腹部の痛みを訴え発作を起こした。霞の腹には黒い薔薇の刻印があり、そこから瘴気が漏れていた。六花は宵闇に霊力を込めて瘴気を吸わせ、発作を鎮めたが、霞は気絶するほど消耗していた。ナギは発作の回数が増えていることを指摘し、時間がないと六花に突きつけた。

“あの日”の喪失と六花の決意
六花は過去、毒々しい赤黒い瞳の男に襲われ、両親を殺され、霞に呪いを刻まれた経緯を想起した。宵闇は破邪の刀として呪いの進行を一時的に抑えられるが、根本の解呪には呪った本人を討つ必要がある。六花は自分が宵闇を使いこなせない無力さに苦しみつつも、霞を救うために「どんなことをしても助ける」と宵闇と霞の手を握り締めて覚悟を固めた。

三章

六花の焦燥と宵闇への課題
六花は任務の少ない立場であり、暁天が便宜を図っている現状に支えられていた。しかし暁天が永遠に守れるわけではなく、六花は宵闇を使いこなし一族に認めさせる必要を痛感していた。霞の呪いの主を探すことと、宵闇を使えるようになることは直結しており、六花の焦燥は強まっていた。

指名手配あやかしの捕縛と“落ちこぼれ”の誤認
六花は末端のあやかしを発見し、挑発されつつも宵闇の一閃で氷の攻撃を散らし、蹴りで制圧した。相手は「落ちこぼれ」の噂を信じて油断していたが、六花は鬼としての身体能力と宵闇の破邪性で難なく捕縛し、下部組織へ引き渡した。

氷雨の出現と宵闇の異変
現場に一龍斎氷雨が現れ、鬼たちは過剰に浮き足立った。六花は氷雨に棘のある態度を取るが、氷雨も途中から本音を覗かせ、互いに険悪な空気となった。直後、宵闇が脈打つように反応し、六花は呪いの主が近いと確信して走り出し、氷雨も追従した。

時雨との再会と復讐の衝突
六花は血の臭いと霊力の残滓を辿り、袋小路のビル上で時雨を発見した。時雨は六花と氷雨双方を挑発し、氷雨は「仇」として強い憎悪を露わにした。さらに氷雨は神の力の負荷で苦しみ、時雨はそれを嘲笑しつつ、六花の宵闇だけが自分を討てると示唆した。

六花の決断と氷雨の負傷
霞の呪いを解くため、六花は時雨を殺す覚悟を固めるが、時雨の実力差は圧倒的であった。時雨は宵闇を奪い六花を刺そうとするが、氷雨が庇って負傷した。宵闇は一度時雨の手に収まるものの、拒絶して六花へ戻り、六花は追撃か治療かの選択を迫られた。

神の血で宵闇が“繋がる”
氷雨は六花に自分の血を飲めと命じ、六花が血を舐めると宵闇との一体感が生まれた。六花の一撃は時雨に直撃し、時雨は驚きつつ撤退した。六花は氷雨を連れ帰還し、暁天が治療すると、氷雨は異常な回復力を見せた。

霊力過多の問題と“吸血”による調整
氷雨は体内に霊力を溜め込みすぎて苦しんでおり、六花は直系の能力として血を介し霊力を取り込めると説明した。六花が氷雨の霊力を吸うことで氷雨の体調は改善し、険が弱まった。氷雨は時雨に両親と妹を殺された過去を語り、六花もまた両親を奪われ霞が呪われたと明かし、目的が一致することが確定した。

婚約という“合理”への着地
宵闇は神から下賜された破邪の刀であり、時雨を討てる唯一の手段である一方、六花は使いこなせない。氷雨の神の血が宵闇の力を引き出す鍵だと分かり、氷雨は今後も血を飲ませるための理由として婚約を進める案を提示した。六花は反発しつつも実利を認め、暁天へ報告する方針を取った。

暁天への報告と“恋人芝居”
六花と氷雨は暁天に婚約を報告し、互いに好意的な芝居を打った。氷雨は外向けの完璧な笑顔で六花の手を恋人繋ぎで握り、暁天を満足させた。ふたりは本家に滞在し共同生活を始め、情報収集と宵闇の訓練を進める利害関係を固めた。

紫電との遭遇と火種の確認
回廊で紫電が氷雨に激しく噛みつき、氷雨は容赦なく言葉で叩き潰した。六花が婚約を告げると、紫電はショックを受けたように勢いを失い、六花は珍しくすんなり通過できた。六花は過去に紫電との婚約話があったが拒否して破談にした経緯を説明し、氷雨はそれを聞いて複雑な反応を見せつつ話を打ち切った。霞は婚約を心から祝福し、六花と氷雨は“期間限定の利害婚約”を秘密にする方針で一致した。

白霧の慰めと内心の敵意
六花と氷雨が去った後、当主の回廊には意気消沈した紫電が残り、白霧が表向きは慰め役に回っていた。しかし白霧は紫電の落ち込みを見て内心で苛立ち、紫電と六花の関係に根深い感情を抱いていた。

紫電の幼い恋慕と拗れた加害
紫電と六花の婚約話が持ち上がった過去を白霧は覚えていた。六花は強い霊力を持ちながら扱えず嘲笑され、当主に寵愛される家への妬みも重なって陰口が増幅していた。紫電はその空気の中で育ち、六花に意地悪を重ねたが、白霧は止めなかった。紫電の視線に恋慕が混じることを白霧は見抜いており、紫電は高いプライドのせいで好意を歪め、嫌がらせで関心を引こうとしていた。

婚約拒否と紫電の未練
婚約話は紫電が当主へ直談判して生まれたものの、普段から嫌がらせを受けていた六花が受け入れるはずもなく、縁談はあっさり断られた。紫電は初めての失恋を境にさらに当たりが強くなり、成人後は昇華したと白霧は見ていたが、六花が氷雨と婚約すると聞いた際の反応は未練を残しているように映った。白霧は六花が当主にも紫電にも目をかけられている状況を「目障り」と捉え、六花が紫電を誘惑しているとまで決めつけて憎悪を深めていた。

一龍斎の血統と氷雨の資質
氷雨は一龍斎の長男として生まれ、神の血を守る直系に属していた。一方で分かれた別系統は血を軽んじて力が薄まり、金と権力に傾いた存在になっていた。直系側も近年は強い神子が減る中、氷雨は生まれつき神子としての高い才能を持ち、さらに年下の妹も強い霊力を有して一族の希望とみなされていた。

十四歳の帰宅と惨劇
氷雨は十四歳で星影に入隊し、才能ゆえに早期から中核を担っていた。七夕の頃、地方任務を終えて誕生日の妹への贈り物を抱えて帰宅したが、家は異常な沈黙に包まれていた。駆けつけた先には血の海と倒れる使用人たち、血まみれの両親、そして妹の首筋に噛みつく鬼の男がいた。妹は氷雨の前で力尽き、鬼は「神の血を飲みたかった」「邪魔だった」と薄い理由で虐殺を語り、氷雨の怒りを嘲るように笑った。

暴走する力と復讐への固定
氷雨は怒りで神の力を爆発させかけるが、周囲の人間を崩壊させる危険を示されて踏みとどまり、抑え込んだ反動で苦しみに沈んだ。その隙に鬼は去り、氷雨は追うことすらできなかった。以後の氷雨は復讐に支配され、叔父の日方が当主として氷雨を繋ぎ止めようとしつつも、氷雨の危うさを理解していた。氷雨は鬼を強く憎み、特に現場で会う天鬼月紫電にだけは仮面を外して衝突し、鬱憤をぶつけるようになっていた。

協定の縁談と六花との初対面
一龍斎の血の衰えを背景に、日方は天鬼月と協定を結び直系同士を結ばせる方針を示した。相手側は当主が最も可愛がる孫娘を出すと言い、こちらも直系の氷雨が指名された。氷雨は拒絶するが決定は覆らず、顔合わせで六花と初めて会った瞬間、その美しさと意思の強い眼差しに不覚にも心を掴まれる。しかし氷雨は認めまいとして毒づき、六花は当主に苦情を訴えるなど、想定外に気丈な反応を示した。さらに天鬼月内部では六花が「落ちこぼれ」と陰口を叩かれており、氷雨は客前で平然と身内を貶める空気に嫌悪を抱いた。

宵闇が示した光明と心の揺らぎ
氷雨は宿敵を見つけながら、肝心な場面で力が暴走して果たせなかった。その中で六花が持つ宵闇が突破口になり得ると見出す。六花が天鬼月である事実を知っても、六花自身を憎む感情は生まれず、六花も同じ被害者だと理解していた。六花と妹の霞は、呪いに苦しみつつ互いを思いやり続け、氷雨に失われた家族の記憶を呼び起こした。復讐だけで生きてよいのかという問いが氷雨の中に芽生え、六花の「今を生きる人のために足掻く」姿勢が、氷雨の復讐心に迷いという波紋を広げていった。

四章

同居開始で露骨に変わる館の空気
氷雨との婚約が正式化し同居が始まると、館の使用人たちは露骨に浮き足立ち、六花を「妄想」「分不相応」「お荷物」と嘲る噂話を平然と垂れ流した。六花は聞き慣れた扱いとして受け流そうとしたが、隣にいた氷雨は状況を見て黙っていられず、笑顔のまま「調教」を示唆した。

氷雨の“静かな粛清”と生活環境の改善
ほどなく騒いでいた使用人は総入れ替えとなり、真面目な者たちが配置されて館の運営が安定した。料理・洗濯・掃除なども行き届き、霞にとっても暮らしやすい環境へ変わる。六花が問い詰めても氷雨は微笑むだけで詳細を語らず、六花は藪蛇を避けて追及を諦めた。

血の摂取と宵闇の訓練が日常化
氷雨の協力で六花は宵闇を扱えるようになり、効果維持のため定期的に氷雨の血を摂取する必要が生じた。六花は多幸感に流されて飲み過ぎがちで、氷雨に腕を振り払われて叱られる。さらに氷雨は毎朝の剣術・体術訓練を課し、口の悪い鬼教官ぶりで六花を鍛え上げた。六花は星影隊長としての指導姿勢を疑うが、氷雨は飴と鞭でしごいていると即答し、六花は内心で引いた。

霞の前で“夫婦喧嘩”を演出する
口喧嘩の延長で霞の部屋へ向かうと、霞は不安げに「また喧嘩してたの」と問う。六花は霞を安心させるため氷雨の腕を組み、仲良しを装って喧嘩を「相互理解」と言い換えた。ナギは「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」と茶化し、霞は勘違いしたままほっとする。しかし霞が「もし私に何かあっても氷雨お兄ちゃんがいる」と口にすると六花は強く反応し、霞に自分を大切にするよう諭して抱きしめた。

氷雨の霞への眼差しと、六花の気づき
氷雨は霞相手だと攻撃性を引っ込め、穏やかで寂しげな目を見せた。六花はその視線が霞ではなく、亡くした妹の記憶を透かしているのではないかと感じるようになる。六花は宵闇の扱いが安定し任務もこなせるようになり、一族の評価もわずかに上向いた。

暁天の本音と“味方を作れ”という指針
難度の高い任務を任された六花は暁天へ報告し、暁天から紫電の資質への懸念を聞かされる。紫電は強いが挫折を知らず、弱者の気持ちを汲めず、力で抑えつける暴君になり得ると暁天は危惧していた。さらに暁天は、六花を縁談に推したのは気まぐれではなく、六花の霊力は本来抜きん出ており、欠けた“扱う力”は伴侶で補えると考えたからだと明かす。ただし当主として皆を率いる“力”が必要であり、そのために「味方を作れ」と六花に命じ、それは霞を守る力にもなると説いた。

霞が笑う日常と、六花の焦り
館へ戻ると霞は氷雨の武勇談で楽しそうに笑っており、氷雨を「お兄ちゃん」と呼んで懐いていた。六花は安心しつつも、自分がいずれ氷雨と別れる可能性を思い、霞にどう説明するかという不安を抱える。氷雨が六花にだけ厳しく、霞には優しい差を六花が指摘すると、氷雨は甘い声で“優しさ”を演出して六花を冷やし、すぐいつもの態度に戻った。霞とナギはそれを恋人のやりとりとして面白がった。

六花の“笑顔は武器”と周囲の態度変化
一か月後、任務を重ねた六花は宵闇が手に馴染む変化を実感し、暁天側近の態度も軟化していることに気づく。六花はこれまで無関心と虚勢で敵を増やしていたと自覚し、氷雨の助言「笑顔は武器」と暁天の言葉「味方を作れ」を重ね、愛想笑いで身を守る方針に切り替えた。六花は氷雨への感謝も芽生え、氷雨が六花にだけ外面を向けないことを信頼の兆しと受け取った。

紫電の絡みと白霧の毒、氷雨の介入
回廊で紫電に呼び止められた六花は「媚びがうまくなった」と嘲られ、紫電にだけは笑わないと突っぱねる。紫電は腕を掴み「俺にも笑え」と強要し、白霧は大人しく従えと甘言に毒を混ぜて六花を縛ろうとする。紫電は庇護を餌に屈服を迫るが、六花は応じず耐える。そこへ氷雨が現れ、紫電の手を振り払い、六花を抱き寄せて「触れていいのは俺だけだ」と挑発した。氷雨は六花を「弱い」と貶す紫電を一蹴し、妹を守り続けた六花の強さを言語化して突きつけ、紫電の幼稚さを周囲に晒す形に追い込んだ。

氷雨の“怒り”と次の段階への宣言
氷雨は六花を連れて立ち去りながら、六花が紫電に好き放題言わせたことに怒りを向けた。六花は耐えるしかないと返すが、氷雨は「今のお前なら互角にやれる」「次は地獄を二倍にする」と圧をかける。最後に氷雨は、目的は紫電ではなく時雨討伐だと釘を刺し、六花もそれを認める。去っていく二人を、紫電は呪詛のような敵意で見送った。

五章

評価の変化と焦りの加速
六花が宵闇を扱えるようになるにつれ、露骨な陰口は激減し、任務の出動回数も増えた。だが時雨の手がかりは途絶えたままで、霞の容体は目に見えて悪化している。六花は「早くしないと」と自分を追い込み、焦燥感を募らせた。

七夕の準備と束の間の平穏
七夕を前に暁天が大きな笹を用意し、霞は短冊や飾り作りに夢中になった。暁天に手紙を書いて礼を言う霞の姿に、六花は複雑さを覚えつつも温かさを感じた。一方ナギは短冊を量産して大興奮し、内容が危険すぎて六花は途中で読むのをやめた。

館の異変と霞の失踪
任務から戻った六花は館の静けさに違和感を抱き、廊下で倒れた使用人を発見して血の気が引いた。霞の部屋はもぬけの殻で、気配も追えない。ベッドの上には黒い薔薇が一輪置かれ、そこから時雨と同じ血の匂いが漂っていた。六花は霞が連れ去られたと悟り、恐怖で取り乱した。

氷雨の叱責と“ナギを追え”という突破口
駆け込んできた氷雨は六花を叱り、霞を守るために冷静さを取り戻せと促す。六花の状況説明を聞いた氷雨は、ナギが霞と一緒なら使役獣の気配を辿れると指摘した。六花が追跡すると、ナギの気配は本家の結界内に残っており、氷雨は内部協力者の存在を疑う。六花は念のため氷雨の血を飲み、宵闇の準備を整えた。

辿り着いた先は紫電の館
ナギの気配の先は紫電の館だった。六花は紫電が霞を攫い、時雨と手を組んだと決めつけて扉を叩き、氷雨は蹴破る寸前までいく。現れた紫電は困惑し、氷雨の質問に「ここにいるはずがない」と否定するが、霞の状態を知っている不自然さを見せる。六花は疑うが、氷雨は紫電が犯人ではないと判断し、まずナギの声を追うよう促した。

中庭の惨状と白霧の暴走
中庭の噴水付近で霞が倒れ、白霧が馬乗りになり短刀を握っていた。ナギは白霧の腕に必死でしがみつき、六花に遅いと叫ぶ。紫電は白霧の行動を否定し、白霧は「あなたのため」と陶酔した口調で歪んだ忠誠を口にする。白霧の瞳は赤黒く変質しており、六花は直系の血を取り込み“血に呑まれている”と見抜いた。六花は血を抜けば戻ると判断し、紫電に押さえるよう命じる。

寸前の刃と氷雨の結界
白霧はナギを振り払って紫電に投げつけ、自由になった手で短刀を霞へ振り下ろした。だが霞を覆う見えない壁が刃を弾き、氷雨が結界で防いだことが示される。六花は霞の意識を確認し、気絶しているだけだと安堵するが、直後に白霧が六花へ斬りかかり、六花は霞を抱えて間一髪で回避した。

白霧の怨恨と黒幕の存在
白霧は六花への妬みと憎悪を噴出させ、暁天が紫電ではなく六花を当主にしたがっているという情報が漏れていることも明かす。さらに白霧は「あの方」の命令で霞を殺し、六花の心を徹底的に壊すつもりだと語った。そこへ屋根の上から時雨が姿を現し、自分が白霧に血を与えて操ったとあっさり認める。時雨は暁天の結界すら超える力を誇示し、霞の呪いが近接で活性化していることも示唆された。

氷雨が切り込み、六花が刺す
六花が宵闇を抜いて対峙する中、氷雨はいつの間にか時雨の背後へ回り、体術で攻める。時雨は余裕でいなし続けるが、氷雨は事前に置いた石を起動し、光の柱で時雨を閉じ込める結界を展開する。氷雨の合図で六花が突入し、宵闇を時雨へ突き刺した。時雨は吐血して倒れ、六花は無表情のまま止めを重ね、宵闇の破邪で時雨の肉体は痕跡すら残さず消滅し、血痕だけが残った。

呪いの消滅と残る後始末
氷雨の確認で時雨の死が確定し、六花は霞の腹部の黒薔薇刻印が消えているのを見て、呪いが解けたことを確信する。ナギは大喜びする。一方で、紫電は白霧の首に噛みついて血を抜き、暴走の沈静化を図っていた。白霧が時雨の侵入に加担した事実は重く、紫電には責任を問う声が避けられない状況となった。

【もうひとつの鬼の大家】

不本意なパーティー出席
六花は暁天に連れ出され、あやかしたちのパーティーへ出席していた。六花は表情を崩さないが内心は不機嫌で、暁天だけがそれを見抜いていた。六花は早く帰りたがり、暁天はそれを許さず小言を言い合う流れとなった。

紫電の“珍しい接近”と暁天の悪癖
暁天は「今回は紫電が自分から話しかけてきた」と面白がって語った。紫電が暁天を恐れて普段は近づかないため、暁天にとってその怯えた様子が愉快だった。六花は紫電を連れてくればよいと主張するが、暁天は紫電が他家と繋がろうとする動きも含めて放置しているらしく、六花はその真意を測りかねた。

天鬼月の立ち位置と六花の居心地の悪さ
天鬼月は“裁定者”として孤高を貫く家であり、他家の口出しを許さない。六花は落ちこぼれとして好奇の視線を浴び、場の空気自体が苦痛だった。暁天に「紫電を見習って顔を売れ」と言われ六花は強く反発し、紫電への積年の感情が露骨に表に出た。

鬼龍院千夜の登場と“逃げ失敗”
会場に圧倒的な霊力が満ち、鬼龍院千夜が暁天に気安く声をかけて現れた。六花は苦手意識から距離を取りたがるが、暁天に手を掴まれて逃げられない。千夜は鬼の二大勢力の一つ・鬼龍院の当主で、表舞台や政財界への影響力を担う存在だが、見た目も言動も軽く、六花は余計に対応に困った。

千夜の馴れ馴れしさと六花の比較意識
千夜は六花に親しげに接し、息子の玲夜の名を出して「もっと気軽でいい」と距離を詰めた。六花は、落ちこぼれの自分と次期当主が確定している玲夜は立場が違うと考え、深入りを避ける。六花は鬼龍院の“後継争いのない平和さ”に羨望を抱きつつ、千夜が父親である点には妙な憐憫も覚えた。また千夜が六花の両親と親しかったこと、父の気質が千夜寄りだったことが回想され、六花が暁天に気にかけられている背景として父の存在が示された。

天狐当主・狐雪撫子の介入と宵闇への視線
天狐の当主・狐雪撫子が現れ、場はさらに“上の連中の集会”感が増す。撫子は六花の腰の宵闇に注目し、破邪の宝刀が特例として持ち込み許可されている事実が強調された。撫子は「いまだ使えぬか」と六花に刺さる一言を落とし、六花は悔しさで動揺する。

当主たちの茶番と六花の限界
千夜は撫子の発言を“いじめ”と止めようとし、撫子は事実だと返し、言い回しで火花が散る。暁天も巻き込まれそうになって口を出し、暁天と撫子は千夜の当主らしからぬ軽さに呆れる。会話は実質的に当主同士の悪口合戦に近く、六花は「こんなくだらない話のためにいる意味がない」と判断する。

六花の離脱と後日の理不尽
六花は暁天に掴まる前に機敏に逃げ、帰宅した。後日、パーティーに鬼龍院と狐雪の当主が揃っていたと知った紫電が、なぜか六花に文句を言いに来た。しかし六花は呼んでいないため、理不尽だと切り捨てた。

【番外編 ナギと氷雨】

ナギの役割と最近の嗜好
ナギは六花が霞のために作った使役獣であり、日常の大半を霞と過ごしている。性格はひねくれており毒舌も標準装備だが、最近は館に来た氷雨を密かに気に入っていた。理由は高尚でも何でもなく、氷雨の反応がいいからである。

深夜の“ホラー映画ごっこ”発生
夜中に帰宅した氷雨は、部屋に入る前から不気味な笑い声を聞き、警戒を強めた。電気をつけようとした瞬間に腕へ何かが触れ、鳥肌が立つ。明かりがついたと同時に、日本人形のような恐ろしい形相のナギが腕にしがみつき、さらに顔面へ這い上がってきたため、氷雨は思わず絶叫した。

六花の介入と温度差
氷雨の悲鳴は一階の六花の部屋まで届き、六花は慌てて二階へ駆け上がった。だが現場を見ても呆れるだけで、氷雨に「何をやっている」と冷めた反応を示した。ナギは“ホラー映画ごっこ”だと平然と言い放ち、氷雨は「ごっこじゃない」と反発する。

ナギの煽りと氷雨の降参
ナギは「これくらいで叫んでいては時雨討伐など無理」と煽り、氷雨は疲労もあって反論を飲み込んだ。氷雨はせめて夜はやめろ、できれば明るい時間にしろと懇願するが、ナギは楽しそうに笑って誤魔化した。氷雨は恐怖で思考が回らず、その頼みが“起床時の覗き込み”という最悪ルートを呼び込む可能性に気づいていない。

外伝 鬼姫 一覧

鬼姫1巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
鬼姫~運命の契り~

本編 鬼の花嫁 一覧

鬼の花嫁 ~運命の出逢い ~の表紙画像(レビュー記事導入用)
鬼の花嫁 ~運命の出逢い ~
鬼の花嫁 二 ~波乱のかくりよ学園~の表紙画像(レビュー記事導入用)
鬼の花嫁二~波乱のかくりよ学園~(二)
鬼の花嫁 三~龍に護られし娘~の表紙画像(レビュー記事導入用)
鬼の花嫁 三~龍に護られし娘~
鬼の花嫁 4巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
鬼の花嫁 四 ~前世から繋がる縁 ~
鬼の花嫁 5巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
鬼の花嫁 五 ~未来へと続く誓い ~
鬼の花嫁 新婚編 四 ~もうひとりの鬼~の表紙画像(レビュー記事導入用)
鬼の花嫁 新婚編 四 ~もうひとりの鬼~
鬼の花嫁 10巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
鬼の花嫁 新婚編 五~天狗からの求婚

鬼の花嫁 10巻の表紙画像(レビュー記事導入用)

小説「鬼の花嫁 新婚編 五~天狗からの求婚 (十)」感想・ネタバレ

物語の概要

本作は和風あやかし恋愛ファンタジーに分類されるライトノベルである。
鬼の花嫁として鬼龍院玲夜と結ばれた柚子は、新婚生活を送りながらも、人とあやかしの世界が交錯する中で様々な出来事に巻き込まれていく。新婚編第五巻では、天狗一族が関わる新たな騒動が発生し、柚子の前に「天狗からの求婚」という予想外の事態が持ち上がる。鬼の花嫁という立場が他種族にも影響を与える現実が描かれ、夫婦としての絆と覚悟が改めて試される展開となっている。

主要キャラクター

  • 柚子
    本作の主人公であり、鬼の花嫁である少女。人間でありながらあやかしの世界に深く関わり、新婚編では花嫁としての自覚と成長が描かれる。
  • 鬼龍院玲夜
    柚子の夫であり、鬼の頂点に立つ存在。花嫁を守る強い意志を持ち、他種族からの干渉にも毅然と対応する。

物語の特徴

本作の特徴は、和風あやかし世界観と一途な夫婦愛を軸に物語が展開される点にある。新婚編第五巻では、恋愛要素に加えて他種族との関係性や立場の違いが強調され、花嫁という存在が持つ意味がより明確になる。甘さと緊張感が同時に描かれ、単なる恋愛譚に留まらない広がりを見せている点がシリーズの魅力である。

書籍情報

鬼の花嫁 新婚編五~天狗からの求婚~
著者:クレハ
イラスト:白谷ゆう
出版社:スターツ出版
レーベル:スターツ出版文庫
発売日:2025年12月28日

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あらすじ・内容

玲夜そっくりな鬼のあやかしによる襲撃が落ち着き、ひと段落した柚子と玲夜。しかし、息をつく間もなく、今度は天狗のあやかし・烏羽家が鬼龍院家に襲い迫る。過去の因縁から鬼への復讐を企んでいた烏羽家だったが、その事情は大きく変わる。「柚子は俺の花嫁だ」なんと、柚子は烏羽家当主の”花嫁”でもあった――。本気で柚子を求める恋敵に、玲夜の柚子への独占欲と愛はさらに加速し…。「柚子は俺の花嫁だ。なにがあろうとな」天狗と鬼、二人のあやかしが花嫁を奪い合う、天狗編開幕。

鬼の花嫁 新婚編五~天狗からの求婚~

感想

物語が一段深い神話領域へ踏み込んだ転換点の巻であると感じた。
新婚編でありながら、緊張感が前に出ており、「天狗編」と呼ばれるのも納得であった。

本巻で大きく変わったのは、柚子が鬼の玲夜だけでなく、天狗の朝霧にとっても花嫁であると判明した点であった。
この事実が物語全体に重くのしかかり、単なる恋敵の構図では終わらない運命性を帯びてくる。
神器を失った天狗が、神子である柚子という花嫁を見付けたとうい構図には、背後に神の意思があるのではないかと考えさせられ、玲夜が神へ悪態をつくのも頷ける。
龍との口喧嘩がセットだが‥

そして、天狗たちが再び鬼龍院家の防衛網に襲いかかる展開は、先代の悲劇を思い起こさせるものであり、「今度こそ鬼は花嫁を護れるのか」という不安が常につきまとう。
新婚という安らぎの時間がほとんど与えられず、試練が連続する構成は気の毒に思えて来る。

柚子自身の立ち位置も重要である。
攫われる可能性や、天狗に靡くのではないかという疑念が示されつつも、彼女が神子として、そして一人の人としてどう在るのかが静かに問われているように感じた。
ただ守られる存在ではなく、選ばれる存在であることの重さが、行間から伝わってくる。

また、玲夜の側も印象的である。柚子への独占欲と愛情はさらに強まりつつも、それが単なる激情ではなく、「護る覚悟」として描かれており重いヤンデレとは一線を画すようになった。
鬼と天狗という種族間の因縁を背負いながら、それでも花嫁を守り抜こうとする姿勢が、この新婚編の核になっていると思う。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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登場キャラクター

鬼龍院家(本家・関係者)

柚子

人間でありながら神子の素質を持ち、複数の勢力から「花嫁」として狙われる存在である。護衛と結界に守られつつも、自立の形を模索している。
・所属組織、地位や役職
 鬼龍院家当主家の屋敷に身を寄せる人間。玲夜の花嫁として扱われる。
・物語内での具体的な行動や成果
 襲撃後も学校へ復帰し、将来と店の計画を考え直した。花茶会で花嫁たちの技術を集める拠点案を出し、場を動かした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 烏羽家当主からも花嫁と断言され、争いの中心性が増した。

鬼龍院玲夜

次期当主として後始末と防衛を担い、柚子を「渡さない」と明確に宣言する者である。強い独占欲と責任感が同居している。
・所属組織、地位や役職
 鬼龍院家の次期当主。柚子の夫として行動する。
・物語内での具体的な行動や成果
 本邸襲撃では青い炎で侵入者を結界外へ追い出し、追撃を指示した。柚子の罪悪感を否定し続け、守りの方針を本家移動へ切り替えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 「神であろうと排除する」と言い切り、神の領域に踏み込む敵意を示した。

鬼龍院千夜

当主として卓越した結界技量と人心掌握を見せる者である。軽い態度の裏で冷静に核心へ踏み込む。
・所属組織、地位や役職
 鬼龍院家の現当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 結界破壊直後に新たな結界を張り直し、侵入の異常事態を収束へ向けた。座敷牢で夜斗から朝霧の正体を引き出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 当主としての技術と統率が示され、玲夜に当主像の重さを理解させた。

夜斗

鬼の気配を持ち、天狗の里で酷い扱いを受けた過去を語る捕虜である。朝霧の侵入手口の鍵を握る。
・所属組織、地位や役職
 鬼龍院本家の座敷牢に置かれた捕虜。
・物語内での具体的な行動や成果
 朝霧が烏羽家当主であり、結界破壊が内側からの攻撃だったことを認めた。自分に子も孫もいないと述べ、朝霧の血縁疑惑を否定した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 処遇は保留となり、情報源として扱われる局面が強まった。

沙良

柚子の護衛として側に付き、強い霊力で警戒と捜索に関わる者である。状況判断が早い。
・所属組織、地位や役職
 柚子の護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 朝霧失踪の捜索を担い、結界内にいる可能性を説明して柚子を落ち着かせた。朝霧の正体判明後は千夜へ確認に走った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 玲夜が仕事に集中できる護衛戦力として重用されている。

桜子

柚子の護衛として同席し、強さの背景を説明して状況整理を助ける者である。
・所属組織、地位や役職
 柚子の護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 夜斗の頑強さを「先代当主と花嫁の子なら不思議ではない」と説明した。子鬼たちの規格外さを指摘し、柚子の自由への影響を共有した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 護衛としての存在が、柚子の行動範囲の議論に直結した。

アオ

黒髪の子鬼であり、柚子の側に常に付き従う使役獣である。守護のため容赦がない。
・所属組織、地位や役職
 柚子の使役獣。
・物語内での具体的な行動や成果
 蒼い炎で夜斗を吹き飛ばし、部屋を貫く大穴を作る結果となった。柚子に頭を撫でられ、守れたことを喜んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 霊獣由来の力を疑われるほどの戦闘力として警戒対象になった。

ソウ

白髪の子鬼であり、アオと共に柚子の護衛の中核を担う使役獣である。
・所属組織、地位や役職
 柚子の使役獣。
・物語内での具体的な行動や成果
 アオと連携して夜斗を瞬殺し、柚子への脅威を排除した。柚子の言葉で表情を明るくした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 「使役獣の範疇を超える」と評され、柚子の護衛体制を過剰にする要因になった。

高道

玲夜の実務を引き継ぎ、後処理を支える者である。
・所属組織、地位や役職
 鬼龍院本家側の実務担当。
・物語内での具体的な行動や成果
 玲夜から書類を引き継ぎ、千夜の「休憩」中も処理を進めた。襲撃時は追撃を命じられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 玲夜の指示系統の一部として戦力運用に組み込まれている。

成道

高道の父であり、千夜への敬意を強く示す者である。
・所属組織、地位や役職
 高道の父。鬼龍院本家側の関係者。
・物語内での具体的な行動や成果
 後処理の場に同席し、千夜を崇拝に近い形で評価した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 千夜の当主としての威信を周囲へ補強する立場になった。

道空

屋敷の出入り口で警戒に当たり、偽装侵入で判断を誤らされる者である。
・所属組織、地位や役職
 屋敷の警備・対応役。
・物語内での具体的な行動や成果
 「玲夜の車」を招き入れかけ、霊力の酷似で黒スーツ集団を通してしまった。柚子と龍の制止が入ったことで異常に気づいた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 敵が霊力偽装を使う危険性を示す事例となった。

雪乃

柚子の自責を即座に否定し、精神面を支える使用人側の存在である。
・所属組織、地位や役職
 鬼龍院家の使用人側。
・物語内での具体的な行動や成果
 柚子の「荷物」発言を否定し、責任の所在が天狗にあると釘を刺した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 柚子の心理を止めるブレーキとして機能した。

玖蘭

朝霧の背景に関わる過去を明かし、血縁推定の材料を提供した者である。
・所属組織、地位や役職
 立場の詳細は本文内で限定される。
・物語内での具体的な行動や成果
 先代当主に花嫁がいた事実や、天狗による連れ去りの経緯を示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 朝霧が花嫁の血縁者である可能性を高める情報源となった。

烏羽家(天狗側)

鳥羽朝霧

烏羽家当主であり、姿を偽って柚子の周囲へ入り込む者である。柚子を自分の花嫁と断言し、奪取計画を進める。
・所属組織、地位や役職
 烏羽家当主。天狗の隠れ里の統率者。
・物語内での具体的な行動や成果
 天狗の神通力で五歳児の姿を演じ、鬼龍院側を欺いた。柚子を傷つけない方針へ切り替え、最高の待遇を命じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 鬼龍院の結界破りが「内側からの攻撃」だった疑いを確定させる存在となった。

綿理

朝霧に仕え、奪取計画の実務を担う者である。手段が苛烈になりやすい。
・所属組織、地位や役職
 烏羽家当主側近。
・物語内での具体的な行動や成果
 柚子の扱いを残忍に提案し、朝霧に制止された。柚子を傷つけられない制約を難題として計画を練り直した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 朝霧の方針転換により、実行手段の再設計を強いられた。

霊獣・超越存在

霊獣として介入し、戦闘・治癒・情報提供で物語を押し動かす存在である。柚子と玲夜に「選ぶ権利」を突きつける。
・所属組織、地位や役職
 霊獣。鬼龍院側に現れるが独自の判断で動く。
・物語内での具体的な行動や成果
 朝霧は逃げたと告げ、侵入の理解を促した。天狗襲撃では清廉な力で敵を吹き飛ばし、護衛の傷も癒した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 花嫁は柚子が選ぶと断じ、玲夜の独占を揺らす論点を固定した。

学校・友人(人間側)

芽衣

柚子へ現実的な助言を叩き込み、将来設計の甘さを指摘する友人である。言葉は辛いが方向性を示す。
・所属組織、地位や役職
 柚子の料理学校の友人。
・物語内での具体的な行動や成果
 欠席による卒業危機を告げ、柚子に自己優先を促した。動機の浅さを指摘しつつ、試して探せと諭した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 柚子の「精神的自立」へ思考を切り替えるきっかけになった。

柚子の友人として訪れるが、天狗側の手で拉致の導線にされる人物である。感情が歪んだ形で表に出る。
・所属組織、地位や役職
 柚子の料理学校の友人。
・物語内での具体的な行動や成果
 黒い羽を取り出し、転移で柚子を竹林へ移した。柚子を憎むように睨み、友人らしさを失っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 拉致成立の直接要因となり、柚子が敵側へ引き込まれた。

猫田家(猫又側)

透子

柚子の友人であり、家庭事情を理解して守ろうとする者である。言葉と行動が一直線で、場を動かす。
・所属組織、地位や役職
 猫田家の関係者であり、東吉の妻。柚子の友人。
・物語内での具体的な行動や成果
 柚子の家庭が「妹中心」だと語り、怒りを隠さなかった。柚子を猫田家へ招き、安心できる居場所を作ろうとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 柚子の支援ルートを家庭外へ広げ、物語の安全網を増やした。

東吉

猫又であり、透子の言動に振り回されながらも柚子を受け入れる者である。過保護と警戒が混ざる。
・所属組織、地位や役職
 猫田家の者。透子の夫。
・物語内での具体的な行動や成果
 透子の通話内容から柚子の存在を疑い、面会を要求した。柚子と対面後は「透子の友人なら俺の友人」と受け入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 猫田家が柚子の出入り先となり、対外的な支えになった。

花嫁たち・周辺

撫子

花茶会を主導し、柚子の計画へ辛口評価も含めて介入する者である。現実と安全を優先する。
・所属組織、地位や役職
 花嫁側の中心人物として花茶会を回す。
・物語内での具体的な行動や成果
 柚子の店計画を「甘くない」と切り捨てた。柚子の拠点案へ賛同し、狐雪家から護衛を出すと後押しした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 柚子の構想を現実の運用へ近づける後ろ盾となった。

藤史郎

撫子から「嫁馬鹿」扱いされるほど偏った愛情表現をする者である。空気を甘く変える側にいる。
・所属組織、地位や役職
 撫子の夫。
・物語内での具体的な行動や成果
 花茶会前に撫子へ絡み、追い払われて退場した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 家庭内の空気変化を象徴する存在として扱われた。

菜々子

花嫁になる前に資格を取った経験を持ち、「できなくなった好き」を共有する側に立つ者である。
・所属組織、地位や役職
 花嫁の一人。
・物語内での具体的な行動や成果
 フラワーアレンジメント講師資格の取得を明かし、場の沈みを具体化した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 柚子の提案が刺さる土台を、体験談で作った。

蛇塚

結婚式の準備で「正装耐性」が問題視される側の者である。
・所属組織、地位や役職
 結婚式の当事者。
・物語内での具体的な行動や成果
 杏那の暴走により本番の混乱が予測され、事前対策の対象となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 準備段階の危機管理を促す話題の中心となった。

杏那

結婚式準備で周囲を凍らせる比喩が出るほど暴走する者である。
・所属組織、地位や役職
 結婚式の当事者。
・物語内での具体的な行動や成果
 ドレス採寸だけで場が凍るほどの過剰反応が語られ、対策が必要とされた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 式の安全運用という観点で問題人物として扱われた。

花梨

過去に問題を起こし、反省の上で扱いが揺れる者である。柚子の割り切りを試す存在になる。
・所属組織、地位や役職
 花嫁候補として話題に上がる。
・物語内での具体的な行動や成果
 反省しているとされ、迎える案が検討されていると語られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 柚子が「口出ししない」と線を引く判断材料になった。

瑶太

花梨と並んで反省が語られ、接触禁止令の解除で動く側の者である。
・所属組織、地位や役職
 花梨の関係者として扱われる。
・物語内での具体的な行動や成果
 接触禁止令が解けるとすぐ動いたと語られ、空気の変化を示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 過去の問題が「未来へ進む」話題へ転換する引き金になった。

伝承・因縁(最初の花嫁周辺)

サク

最初の花嫁として、鬼と天狗の双方に花嫁と認識された前例を示す存在である。
・所属組織、地位や役職
 「最初の花嫁」として語られる人物。
・物語内での具体的な行動や成果
 花嫁が複数に認識され得る根拠として挙げられ、柚子の状況説明に使われた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 柚子を巡る是非の議論を、前例として固定した。

一龍斎

「最初の花嫁」に関わる神子の系譜として語られる存在である。柚子の血筋説明の核になる。
・所属組織、地位や役職
 一龍斎の神子として言及される。
・物語内での具体的な行動や成果
 鬼龍院を選んだ神子として語られ、天狗との確執の起点になった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 柚子がその血を引くという主張の根拠に使われた。

展開まとめ

プロローグ

世界大戦後の日本と復興の始まり
多くの国を巻き込んだ世界大戦は、日本にも甚大な被害と深い悲しみを残した。人々は戦争の終結に安堵しつつも、変わり果てた町の姿を前に復興の困難さと喪失感に沈んでいた。

あやかしたちの表舞台への出現
そのような状況の中、日本の復興を支えたのは、これまで人に紛れ陰で生きてきたあやかしたちであった。彼らは人を魅了する美しい容姿と人間ならざる能力をもって陽のもとへ現れ、戦後復興に大きく貢献した。

現代社会におけるあやかしの地位確立
時代が進み、あやかしたちは政治、経済、芸能など多方面で能力を発揮し、社会の中で確固たる地位を築いていった。彼らは時に人間の女性を花嫁として選び、その行為は人間側にとって大きな名誉と受け止められていた。

花嫁という唯一無二の存在
あやかしにとって花嫁は本能によって選ばれる唯一無二の存在であり、深い愛情をもって大切にされる存在であった。その在り方は、多くの人間の女性が憧れるものとなっていた。

最初の花嫁と二つの一族の確執
その昔、「最初の花嫁」を巡り二人のあやかしが存在した。最終的に花嫁が選んだのは鬼であったが、選ばれなかった天狗もなお花嫁を愛し続けた。その結果、天狗は花嫁を守りきれなかった鬼を許さず、両者の一族は深い確執を残した。

花嫁の幸福と残された問い
花嫁は短い生涯ではあったものの、最愛の相手に抱かれ看取られて生を終えた存在であった。また、天狗に対しても恋慕とは異なる愛情を抱いていた。自らを巡る争いによって二つの一族が仲違いした事実を、花嫁が悲しまなかったはずがないという問いが、物語の根底に残された。

一章

襲撃事件の終結と本家の警戒強化
本家が他のあやかしに襲撃された事件は、先代当主の花嫁の息子であり現当主でもある千夜の異母兄弟を捕らえたことで、ひとまず終結していた。千夜は前より厳重にすると言い、さらに強固な結界を張ったため、表向きは落ち着きを取り戻しつつあった。

柚子の護衛体制と残敵への懸念
柚子はひとりにならないよう、黒髪のアオと白髪のソウを肩に乗せ、念のため桜子も付き添っていた。神子の素質があっても柚子は人間であり、あやかしに抗う術がないためである。侵入者は捕らえたが、千夜の結界を破られる異例の状況があった以上、気付かれず潜む者がいないとも限らず、調査が続いていた。襲撃の目的が柚子の誘拐であった可能性もあり、琮夜にとっての弱みである柚子を放置できない状況であった。

玲夜の離席と大穴の残骸
玲夜は付き添いたい気持ちを抱えつつも、次期当主として事件の後始末があり、千夜とともに外へ出ていった。部屋に残った柚子は、隣室まで突き抜ける大穴を前に唖然としていた。それはアオとソウが柚子を守るため、千夜の異母兄弟を蒼い炎で吹き飛ばした際に生じたものであった。

子鬼への感謝と恐怖の緩和
アオとソウはやりすぎたと反省してしょんぼりしていたが、柚子は責任を感じる必要はないと告げ、守ってくれた礼を述べて頭を撫でた。子鬼たちは柚子の言葉で表情を明るくし、柚子もふたりの笑顔を見て気持ちが和らぎ、襲われかけた恐怖心が薄れていった。

捕虜の異母兄弟の頑強さと子鬼の規格外
柚子は捕らえた千夜の異母兄弟が攻撃直後は気絶していたのに、座敷牢で会った時には大きな怪我もなく平然としていたことを思い出し、感心していた。桜子は、彼が先代当主と花嫁の子であるなら強く生まれても不思議ではないと説明した。柚子は神様から名をもらって強くなったらしい子鬼たちがそれでも瞬殺した事実に驚き、桜子はもはや使役獣の範疇を超えていると述べた。柚子と桜子は、子鬼たちの存在が玲夜の安心にもつながり、柚子の行動の自由にも影響すると理解して苦笑していた。

朝霧失踪の発覚と捜索の難航
そこへ沙良が現れ、朝霧がどこを捜しても見つからないと報告した。柚子は朝霧が見つからないことに動揺し、沙良も捜せない事態に困惑していた。沙良と桜子はいずれも柚子の護衛として側についており、強い霊力を持つため、玲夜が任せて仕事に集中できていた。沙良が一時的に離れていたのは、本家襲撃後に姿を消した朝霧を捜すためであった。

朝霧の背景整理と本家預かりの決定
朝霧は柚子に異常に懐き、玲夜の隠し子疑惑まで出るほど玲夜に似た顔立ちであったが、玖蘭が明かした過去により、先代当主に花嫁がいたことや天狗による連れ去りなどが判明し、朝霧はその花嫁の血縁者である可能性が高いとされた。玲夜や千夜の子ではないと結論づけられ、本家で預かることが決まった直後に襲撃が起き、柚子は朝霧を思い出して屋敷内を捜したが見当たらなかった。

結界内にいる確信と千夜の状況
本家の敷地は広大で、人手も後始末に取られ捜索が進みにくかった。桜子は千夜なら把握できるのではないかと問うたが、沙良は千夜が大事な話の最中で動けないと答えた。沙良は、結界が破られてから千夜が新たな結界を張るまでの短時間で子供が敷地外へ出るのは不可能であり、朝霧は敷地内のどこかにいるはずだと説明し、柚子はようやく安堵した。

神が三家に与えたものと因縁の継承
遥か昔、神は鬼龍院に神子を花嫁として、狐雪家に分霊した社を、烏羽家にあやかしの本能を消す神器を与えた。最初の花嫁である一龍斎の神子は鬼龍院を選び、天狗側は意思を尊重して身を引いたが、花嫁は結果として非業の死を遂げ、天狗は守れなかった鬼龍院を深く恨んだ。以後、鬼と天狗の交流は途絶え、烏羽家当主は表に出ず、現当主の素性は千夜や撫子ですら知らなかったが、最近代替わりしたという情報だけが伝わっていた。

隠れ里の鳥羽家と朝霧の帰還
天狗の住まう隠れ里は木々に覆われ、強い結界に守られていた。竹林の中の屋敷で、綿理が朝霧に帰宅を告げた。そこでの朝霧は柚子に懐いていた五歳児の姿とは違い、大人びた言葉と険しい表情を見せ、鳥羽家当主としての立場を示していた。

偽装解除と鬼への嫌悪
朝霧は鬼の気配が不快だとして、人差し指を噛んで血を流し、偽装を解いた。姿は一気に大人のあやかしへ変わり、玲夜に似た顔立ちも消えた。朝霧は一時的に鬼の血を取り込むことへの嫌悪を露わにし、綿理は鬼龍院の当主を欺くには鬼の気配を宿す必要があったと説明した。

千夜評と神器の行方
綿理の問いに、朝霧は千夜を馬鹿っぽいが表面だけで、笑顔の下で冷静かつ冷酷に判断する者だと評した。目的であった神器については、噂通り神に返されたらしいと述べ、綿理は鬼が隠している可能性を疑ったが、朝霧は本当のようだと判断した。

花嫁発見による方針転換
神器喪失にもかかわらず朝霧は機嫌が良く、花嫁が見つかったと告げた。綿理が鬼龍院の花嫁の扱いを残忍に提案すると、朝霧は柚子に手を出すなと激しく制止し、奪う計画は続けるが指一本触れず丁重にもてなせと命じた。

柚子が朝霧の花嫁であるという断言
綿理が理由を問うと、朝霧は柚子が自分の花嫁であり、鬼龍院の次期当主である玲夜の花嫁でもあると断言した。綿理は混乱し、妄想ではないかと疑ったが、朝霧は柚子が一龍斎の血を引き霊獣の加護も持つこと、最初の花嫁が鬼と天狗両方の資質を持っていたことを根拠に挙げた。

神の存在を巡る認識と霊獣の示唆
綿理は神の存在自体に懐疑的であったが、朝霧は鬼と妖狐の当主が神を認めたこと、霊獣が神の存在を幾度もほのめかしたことを理由に、神はいると述べた。朝霧は、柚子の存在こそが神の存在を証明し、普通ではあり得ない関係を成立させていると語った。

奪取計画の再設計と警戒対象
朝霧は柚子を手に入れるため計画を進め、最高の部屋ともてなしを用意するよう命じた。さらに、柚子と常にいる子鬼の使役獣が夜斗を瞬殺するほど強く、霊獣から力を与えられている可能性があるとして、なめるなと綿理に警告した。綿理は柚子を傷つけられない制約を最大の難題として計画を練り直し、朝霧は最終的に「あれ」を使うよう指示し、できなければ捨てるだけだと冷淡に言い放った。

二章

本家の後処理と千夜の異質な当主像
朝霧が天狗の里へ戻った頃、鬼龍院本家では玲夜と千夜が後処理に追われていた。玲夜が淡々と指示を出す一方、千夜はへらへらと緊張感のない表情で、命令ではなくお願い口調で人を動かしていた。それでも誰ひとり千夜を侮らず、当主としての地位に異論は出なかった。玲夜は、結界を破られた直後に千夜が即座に新たな結界を張り直した異常な技量を思い、力だけではなく経験と技術、そして人をまとめる術が当主に必要なのだと痛感していた。

休憩の名目と座敷牢への移動
千夜は「休憩」を提案し、玲夜は書類を高道へ引き継いだ。高道の父である成道も同席し、千夜への敬意を崇拝に近い形で示していた。千夜の向かう先が当主の屋敷ではないと気づいた玲夜が問いかけると、千夜は座敷牢に置いた異母兄弟の元へ行くと答え、加えて朝霧が見つからない件も聞くつもりだと告げた。玲夜は朝霧に対して理由の分からぬ警戒心を抱き、千夜はその反応を含み笑いで眺めていた。

夜斗への面会と千夜の主導権
座敷牢は幾重にも結界が施されていたが、夜斗は予想外に強くないように見えた。玲夜は「千夜より弱い夜斗が、どうやって千夜の結界を破って侵入したのか」という疑問を強く抱いていた。千夜は陽気に夜斗へ絡み、兄と呼ぶか兄ちゃんと呼ぶかと揶揄し続け、夜斗は激昂しつつも押し切られ、名を「夜斗」と吐き捨てる形で名乗らされた。玲夜は短時間で度量の差を見せつけられ、夜斗にわずかな憐憫すら覚えた。

朝霧の所在を巡る否定と混乱
玲夜は夜斗に、行方不明の五歳ほどの子供の所在を問い詰めた。鬼の気配を持つ以上、夜斗の血縁者だと判断するしかないからである。しかし夜斗は子も孫もいないと否定した。玲夜は「玲夜に似た子供は誰なのか」という混乱に沈み、千夜は当主としての含みを帯びた笑みで、その動揺を見透かすように振る舞った。

龍の登場と「逃げられた」という答え
霊獣である龍が現れ、朝霧は既に逃げたと告げた。玲夜は置いてけぼりにされ、苛立ちをぶつけるように龍を掴み上げて説明を迫った。千夜は玲夜を宥めつつ、夜斗から必要な情報だけ引き出す方針へ切り替え、朝霧を知っているかと問いかけた。夜斗の表情で千夜は察し、ポーカーフェイスの欠如を指摘した上で核心に踏み込んだ。

朝霧の正体の判明と侵入手口
千夜が「朝霧は烏羽家の当主だね」と問うと、夜斗は現当主が鳥羽朝霧であると認め、結界を破って自分たちを招き入れたのもその当主だと明かした。夜斗は朝霧が五歳児ではなく玲夜と同年代の男だと主張したが、千夜は天狗の神通力なら姿を変えるのは容易だと説明し、龍もそれを肯定した。結界が破れたのは内側から攻撃されたためだという千夜の推測に玲夜も納得し、自分が見抜けなかった事実に苦さを覚えた。

烏羽家の狙いと柚子の位置づけ
玲夜が目的を問うと、千夜は神器か柚子が妥当だと述べ、襲撃時の発言から柚子を引き渡す約束があった可能性にも触れた。龍は、神器はおまけで柚子を狙う意図が大きかったと見立てつつ、朝霧は柚子を傷つける意思を失い、真綿で包むように大事にするだろうと断じた。千夜もそれを裏づけるように反応し、玲夜は「天狗が柚子を花嫁と認識した」という示唆を受けて、胸の奥に嫌な鼓動を覚えた。

花嫁はひとりではないという現実
玲夜は花嫁が複数のあやかしに認識されることの是非を問うたが、龍は最初の花嫁サクが鬼と天狗の双方の花嫁であった事実を挙げ、神子の素質を持つ柚子なら不自然ではないと答えた。玲夜は「柚子は俺だけの花嫁だ」と強い意志を言葉にしたが、龍は決めるのは柚子だと突き放し、花嫁にも選ぶ権利があると説いた。玲夜は否定しきれない視線に言葉を失い、龍は嘲るように笑った。

夜斗の処遇保留と別問題への移行
夜斗は自分の処遇を問うたが、千夜は曖昧に笑いながら思案し、夜斗が天狗の里を逃げ出した後の経緯を尋ねた。夜斗は外の世界を知らず、天狗の里で鬼として酷い扱いを受けていたと語り始め、玲夜は話の先に危うさを感じつつも、今は口を挟むべきではないと判断して黙っていた。

柚子の待機と帰還の気配
一方、当主の屋敷で柚子は沙良と桜子と茶を飲みながら朝霧を案じていた。沙良が話を止め「帰ってきた」と告げると、アオとソウが跳ねて玲夜の帰還を伝えた。桜子は、霊力が尋常でない二人が揃って近づけば気づかぬあやかしはいないと説明し、柚子は玲夜と千夜の格を改めて思い知らされた。子鬼たちは柚子の神気を称え、沙良と桜子も同調し、柚子は羞恥と困惑で顔を伏せた。

玲夜の帰還と朝霧の正体の共有
騒ぐ龍の声と共に玲夜が現れ、柚子は安堵したが、朝霧の名で玲夜が眉をひそめたことに気づいた。玲夜は朝霧が鳥羽家当主本人だと告げ、柚子だけでなく沙良と桜子も衝撃を受けた。沙良は千夜に話を聞くため飛び出し、玲夜の目配せで桜子も退出し、柚子は玲夜が視線だけで人を動かす力量に感心した。

柚子の自責と玲夜の否定
柚子は、懐いていた朝霧が自分を連れていくためだったのかと理解し、自分のせいで騒ぎが起きたのではと責めかけた。玲夜は即座に否定し、夜斗の恨みが根にあり、烏羽家の思惑が重なって利用されたのだと整理した。柚子がなお罪悪感を抱くと、玲夜は優しい口づけで気持ちを鎮め、柚子を争いに巻き込んだのは自分の方だと謝った。

玲夜の独占と神への敵意
玲夜は柚子を誰にも渡さないと強く宣言し、神であろうと排除するとまで言い切った。龍は神への不敬に激昂したが、玲夜は意に介さず、柚子を守ることだけが全てだと言い放った。挑発した龍は尻尾を掴まれて投げ飛ばされ、子鬼たちが回収に走った。玲夜は柚子を強く抱きしめ、柚子は安心と同時に「いつもの玲夜とどこか違う」不安を覚えた。玲夜の鋭い眼差しは、抱かれている柚子からは見えぬまま、外へ向けられていた。

三章

学校復帰と「普通に生きろ」圧
本家の後始末を経て、柚子は久々に学校へ復帰する。事件があったのに登校許可が出たのは、沙良の「普段通りでいろ」「相手のせいでこちらが縮こまるな」という主張が玲夜に刺さったからである。柚子はありがたい反面、どこか上の空で落ち着かない。

芽衣の冷徹な現実パンチ
芽衣と会い、休んでいる間に授業が進みすぎて卒業が危ういと告げられる。さらに澪も同時期から欠席していると分かり柚子は心配するが、芽衣から「他人より自分の卒業を心配しろ」と切られる。

「料理人になる理由」を根本から疑われる
芽衣は柚子の将来計画を聞き、富裕層向けの店を一年程度の学習で回せるのかと詰める。柚子が「玲夜と対等でいたい」「依存したくない」と語るほど、芽衣は「その動機で料理を選ぶのは浅い」「続かない」と断言する。柚子は“自分の武器がない恐怖”を自覚し、焦りが露呈する。

芽衣の「焦るな」処方箋
芽衣は父が転職を繰り返した話を出し、天職は最初から見つかるものではない、試していいと諭す。柚子は「ゆっくり考える」方向へ一度持ち直す。

猫田家での人生会議(透子は通常運転)
放課後、柚子は透子と東吉に相談する。透子は芽衣の率直さをむしろ称賛し、東吉は「混ぜるな危険」と警戒する。透子は柚子の“反抗期っぽさ”も指摘しつつ、「最終的には柚子優先」と言い切る。

「精神的自立」なら、試行で良いという結論
透子と東吉は、柚子の求めているのは金銭的自立より精神的自立だと整理する。店は鬼龍院の財力なら赤字でも回せる、経験として試していけばいい、という方向で柚子を支える。透子は「自信を持て」「横柄になれ」と背中を押し、花茶会で義母や撫子に相談する案も出る。

蛇塚・杏那の結婚式が氷河期すぎる問題
話題は蛇塚と杏那の結婚式へ。杏那はドレス採寸だけで店内を冷凍庫にするレベルで暴走し、対策が必要。柚子が「蛇塚の正装耐性も先に付けさせないと本番が吹雪でチャペル崩壊」と気づき、東吉が慌てて連絡する。結果、事前に気づけて一同安堵する。

花梨の“更生”と、柚子の割り切り
柚子は花茶会で撫子に「花梨をまだ恨むか」と問われたことを話す。花梨と瑶太が反省しているため、花嫁として迎える案があり、柚子は「私が花梨の幸せを決める権利はない」と口出ししない姿勢を示す。ただし、今後パーティー等で会う可能性に気づいておらず、透子と東吉に呆れられる。

玲夜の異変(睡眠と弱音)
屋敷に戻ると玲夜が珍しく熟睡しており、柚子はそばで見守る。柚子は「力が欲しい」「守られるだけでは足かせ」と思い詰めるが、玲夜は起きて「柚子がそばにいるのが一番」と言う一方、他の男に靡くなと弱さも見せる。龍の言葉で“柚子にも選ぶ権利がある”と突きつけられ、玲夜は自分の傲慢さを自覚して揺れている。

夫婦の距離を詰める会話と、柚子の宣言
柚子は「一方通行は嫌」「共有してほしい」と訴え、玲夜も葛藤を吐露する。柚子は「玲夜に守られていればいいと言わせない」「いつか私がいなきゃ回らないと思わせる」と壮大に宣言し、無計画さで玲夜に笑われる。それでも柚子は料理学校は卒業したい、店のことも花茶会で相談して玲夜とも改めて話す、と前向きに締める。

四章

花茶会前の空気変化
撫子は藤史郎の「嫁馬鹿」ぶりが以前より悪化したと呆れるが、当人は褒め言葉として受け取った。柚子が到着すると、菜々子と藤史郎の間の険悪さは消え、甘ったるいほど穏やかな空気に変わっていた。花嫁たちもそれを微笑ましく眺め、藤史郎は撫子に追い払われて花茶会が始まった。

花茶会の雑談と柚子の悩み
沙良と撫子は藤史郎の変化を話題にしつつ、柚子へ卒業後の店の計画を尋ねた。柚子は高級志向の店を考えていたが、自分の料理技術が追いつかず迷っていると打ち明ける。撫子は辛辣に「素人が成功できるほど甘くない」と切り捨て、柚子は落ち込んだ。

花嫁たちの“できなくなった好き”の共有
菜々子が花嫁になる前にフラワーアレンジメント講師資格を取っていたと明かし、他の花嫁たちもパティシエ経験、ラテアート経験、動画編集の職歴などを次々に語った。しかし花嫁となってからは自由に働けず、好きなことができない現状に皆が沈んでいった。

柚子の提案で場が一転する
柚子は提供された好立地を「レストラン」ではなく、花嫁たちが技術を持ち寄るワークショップ兼憩いの場にする案を提案した。料理・菓子・飲み物・花などを互いに振る舞い、好きな時に集える場所にする構想に花嫁たちは熱狂する。撫子と沙良も賛同し、狐雪家からも護衛を出すと撫子が後押しした。

接触禁止令の解除と柚子の心境
花茶会後、撫子は「接触禁止令を解いたら瑶太がすぐ飛んでいった」と愉快そうに語り、柚子は過去は変えられないが未来を見るべきだと自分に言い聞かせた。子鬼たちは「守る」と息巻き、柚子は温かい気持ちになった。

車への襲撃と天狗の拉致未遂
帰路の車が衝撃を受け、外に出ようとした柚子は護衛の鬼に止められる。黒スーツの男たちが現れ、柚子を「花嫁」と呼んで連れ去ろうとする。護衛の鬼の炎は錫杖の音で霧散し、相手が「天狗」であることが判明する。柚子は逃げ場を塞がれ、危機が迫った。

龍の救援と撤退
別行動していた龍が現れ、清廉な力で天狗を吹き飛ばして次々に気絶させたうえ、鬼の護衛の傷まで癒した。柚子は龍の背に乗って結界のある屋敷へ退避し、使用人たちに保護される。

偽装侵入と本邸襲撃
屋敷前に「玲夜の車」が到着し、道空が警戒しつつも招き入れようとしたが、柚子と龍が同時に制止する。間に合わず車が門内へ入ると、黒スーツ集団が雪崩れ込み、さらに玲夜そっくりの個体が混じっていた。霊力が玲夜と酷似していたため道空たちは騙されたが、柚子は直感で別人と見抜いた。

玲夜の帰還と制圧
門側に青い炎が燃え上がり、玲夜が厳しい表情で登場して侵入者を結界の外へ追い出した。高道に追撃を命じつつ深追いは禁じ、玲夜は柚子を抱きしめて遅れたことを詫びる。柚子はその温もりでようやく心から安堵した。

五章

襲撃後の緊張と本家への退避方針
二度の天狗襲撃から二日が経ち、屋敷は警戒一色となった。柚子は登校を控え、玲夜も仕事どころではなく常にそばで守りに徹していた。玲夜は千夜と電話し、屋敷の安全が確保できるまで本家の結界内に移り、より厚い戦力で守る方針を固めた。移動時は千夜の同行まで頼み、危機感の強さが示された。

柚子の罪悪感と玲夜の否定
柚子は自分が「荷物」ではないかと呟き、雪乃が即座に否定する。玲夜も電話を切って柚子の前に膝をつき、襲撃の原因は柚子ではなく天狗だと言い切った。龍や使用人も同調し、柚子の自責を止めようとする。柚子は納得しきれないが、玲夜の言葉を信じるしかない状況に押し戻された。

友人来訪の申し出と短時間の面会
道空の報告で、料理学校の友人である芽衣と澪が来ていると判明する。警戒中のため玲夜は「十分だけ」面会を許可し、その間は結界を強めると言った。柚子は負担を気にするが、玲夜は気分転換の必要を理由に押し切り、柚子も会うことを決めた。玲夜は天狗の狙いが柚子だけである点を根拠に、友人への危険は低いと判断した。

応接間での異変の兆し
応接間には芽衣と澪が揃って座っていたが、澪は暗く、視線も合わず不調が目立った。柚子が体調を案じて額に触れようとすると、澪が突然柚子の手首を強く掴み、異様な笑みを浮かべた。芽衣が止めるが澪は放さず、ポケットから黒い羽を取り出す。

黒い羽による転移と拉致成立
黒い羽から強風が巻き起こり、柚子は目を閉じた直後に場所が変わった。気付けば応接間ではなく、見覚えのない竹林の中に立っていた。そこには地面に座り込む澪と、背後から現れる見知らぬ若い男がいた。澪は柚子を憎むように睨み、以前の友人らしさは消失していた。

“隠れ里”と花嫁宣言
若い男はここを「隠れ里」と呼び、柚子に対して「俺のただひとりの花嫁」と告げた。柚子は状況を理解できないまま、完全に敵側の支配空間へ引き込まれた形で章が締められた。

外伝 猫又の花嫁~紹介編

東吉の嫉妬と疑念
透子が電話を切るなり、東吉は「柚子に会わせろ」と不機嫌に要求した。透子が会話で柚子の名を頻繁に出すのに、メッセージのやり取りを見たことがないことから、男や元カレを疑い始める。透子は呆れつつも、柚子はスマホを持っておらず学校でしか話せない事情を説明し、誤解を叩き潰した。

柚子の家庭事情と透子の怒り
透子は柚子の家が「妹(妖狐の花嫁)中心」で回っており、柚子が露骨にないがしろにされていると語った。東吉は花嫁が話題の中心になりがちだと受け止めるが、透子はそれを「異常」と断じ、両親と妹への怒りと無力感を吐露する。柚子が期待を諦めていく様子を見続けてきた透子の苛立ちが強調された。

“鬼ならどうにかなる”という現実と諦め
東吉は妖狐や鬼が最上位で、猫又は下位だと説明し、妖狐に楯突く無謀さを語る。透子は「柚子が花嫁になれば助かるかも」と願うが、東吉は花嫁の希少性を理由に現実的ではないと否定する。それでも透子は柚子を守りたい気持ちを抑えられず、東吉は「会わせるなら連れてこい」と牽制を口にしてスリッパを投げられる。

東吉の“余計な心配”と花嫁問題のこじれ
東吉は、あやかしの容姿が整っているため「紹介したら友人が惚れて修羅場になる」可能性を持ち出した。透子はナルシスト扱いで一蹴するが、東吉は過去に花嫁絡みで人間に言い寄られた経験があると示し、花嫁が「結ばれる可能性」を錯覚させる危険を語る。透子は苛立ちつつも、東吉側にも事情があると察して怒りを少し落とした。

猫田家での初対面と柚子の“距離感”
透子は東吉に柚子を会わせ、猫田家に招く。柚子は屋敷の規模に圧倒されるが、東吉には媚びも興味も示さず、礼儀正しく淡白に挨拶した。東吉は警戒していた分、拍子抜けする。一方で透子は、柚子が他人に深入りせず壁を作る癖を見抜き、それが自衛であることを理解して不安を抱く。

透子の宣言と“安心できる居場所”の芽生え
透子は「柚子を大切にできないなら花嫁を辞めて実家に帰る」と言い切り、柚子もそれに苦笑しつつ信頼を示す。東吉も「透子の友人なら俺の友人」と受け入れる姿勢を見せ、柚子は安心した。以後、柚子が猫田家に出入りしやすくなり、透子は「柚子が笑って安心できる場所になればいい」と願って締めた。

【もうひとつの鬼の一族】

透子との外出と過保護な護衛体制
柚子は透子と外出し、玲夜の付けた鬼の護衛に見守られていた。柚子側には子鬼と龍もおり、護衛の必要性すら薄い状況である。透子も東吉の過保護ぶりを笑いながら、今日は遊び尽くすと意気込んだ。

久々の“自由時間”と夫たちの迎え
ランチと買い物で気晴らしをし、カフェのテラスで休憩する流れとなった。帰宅時間を連絡すると玲夜と東吉が迎えに来ると言い出し、ふたりは苦笑しつつ待つことにした。透子は玲夜を“目の保養”扱いし、柚子は東吉の嫉妬を心配するが、透子は信頼関係が揺らがないと笑い飛ばした。

謎の美しい女性と“鬼の気配”
テラスから、赤い瞳を持つ美しい女性が歩く姿を透子が見つけた。柚子も直感的に鬼だと確信し、目の色の鮮烈さと雰囲気に引き込まれる。女性がこちらを見上げた瞬間、柚子は緊張を覚えた。

玲夜の到着と異例の挨拶
玲夜が背後に現れ、女性を見て「天鬼月の者」と断じた。女性は玲夜に軽く会釈し、玲夜も同様に頭を下げた。柚子と透子は、玲夜が“対等に挨拶した”事実に衝撃を受ける。女性はそのまま去っていった。

天鬼月という“もう一つの頂点”
玲夜は天鬼月を「鬼龍院と双璧をなす鬼の一族」と説明し、鬼の多くが鬼龍院か天鬼月のどちらかに属していると語った。鬼龍院が表であやかしをまとめる一方、天鬼月は裏から秩序を維持しているという。

女性の正体と柚子の今後
女性は天鬼月現当主の孫娘だが、玲夜自身は詳しく知らないという。天鬼月は宴や社交の場にほとんど出ず、表舞台に出ないため、柚子や透子が知らないのも自然であった。玲夜は柚子が今後天鬼月と会う機会が増えると示唆した。

“当主”への圧と柚子の複雑な気持ち
玲夜は天鬼月の当主を「天道を十人合体させたような威厳と威圧感」と評し、千夜と並べると同じ鬼の当主とは思えないと漏らした。柚子は会うことに気後れしつつも、先ほどの女性には会ってみたいという興味も抱いた。透子はどこか猫又の花嫁であることに安堵しているように見えた。

鬼の花嫁 一覧

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鬼の花嫁 ~運命の出逢い ~
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鬼姫~運命の契り~

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(ネタバレ)結界師の一輪華 全巻あらすじ・感想まとめ【巻数別レビュー 一覧】

結界師の一輪華 巻数別レビュー 一覧

『結界師の一輪華』は、和風幻想と恋愛要素を軸に描かれる小説シリーズである。
本ページでは、各巻ごとのあらすじ・感想・物語の見どころを巻数別に整理している。
初めて読む人も、続巻の内容を振り返りたい人も参考にできる構成となっている。

結界師の一輪華 1

結界師の一輪華1巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
結界師の一輪華 1

『結界師の一輪華 1巻』では、五つの柱石に支えられた日本を背景に、名家の影で生きてきた少女・華の内側に起きた変化が描かれる。
力を隠し平穏を選ぶ姿勢と、家や血筋が押し付ける役割とのズレが、物語の軸として書かれている。
人物関係や出来事の整理、踏み込んだ感想については1巻レビューにてまとめている。

結界師の一輪華 2

結界師の一輪華2巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
結界師の一輪華 2

『結界師の一輪華 2巻』では、呪具盗難事件を軸に、華の立場が家の内外で揺さぶられていく。
別荘での騒動や学園での対立を通じ、隠してきた力と人間関係が表に出始める点が大きな転換となる。
事件の背景や人物同士の思惑、細かな展開については、2巻レビューにて整理している。

結界師の一輪華 3

結界師の一輪華3巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
結界師の一輪華 3

『結界師の一輪華 3巻』では、昇級試験を契機に新たな術者が登場し、華の過去と家の問題が再び表面化していく。
学園生活と家系の対立が絡み合い、守る側と狙う側の思惑が明確に交錯する点が大きな見どころ。
事件の経緯や人物関係の変化については、3巻レビューにて整理している。

結界師の一輪華 4

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結界師の一輪華 4

『結界師の一輪華 4巻』では、学祭と交流戦を表の舞台に、呪いを巡る不穏な動きが静かに進行していく。
日常と非日常が交錯する中で、華の学園、家での立場や力の扱われ方に変化が生じる点が重要な転換となる。
事件の背景や人間関係の揺れについては、4巻レビューにて整理している。

結界師の一輪華5

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結界師の一輪華5

『結界師の一輪華 5巻』では、葛の反乱後を引き金に、呪いの連鎖と五家の思惑が同時進行で描かれていく。
審議会の判断や契約の重さが浮き彫りとなり、華と朔に突きつけられる選択が物語を大きく揺らす転換点となる。
事件の真相や人物の決断については、5巻レビューにて整理している。

結界師の一輪華6

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結界師の一輪華6

『結界師の一輪華 6巻』では、五家の中枢に隠されてきた制度と、華の将来を巡る問題が一気に表面化していく。
進路や契約の重さが突きつけられる中で、国と個人の選択が物語の核心として浮かび上がる点が転換となる。
主柱の真実や登場人物の判断については、6巻レビューにて整理している。

その他

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