物語の概要
ジャンルおよび内容 本作は、地下迷宮(ダンジョン)探索を主題とした冒険ファンタジーであり、既存シリーズ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』の世界観を引き継ぐ外伝作品である。本巻では、冒険者組織「ロキ・ファミリア」が59階層の決戦を制した後、帰還の途に就くも途中新たな“異常事態”に巻き込まれ、18階層での野営を余儀なくされる。そこに、主人公級の剣姫が再会を望む白髪の少年の姿があった。
主要キャラクター
アイズ・ヴァレンシュタイン:ロキ・ファミリア所属の女剣士。「剣姫」と称される実力者で、冒険・成長・自問を経て物語の中心を担う。
レフィーヤ・ウィリディス:エルフ族の魔導士で、アイズを慕う若き冒険者。18階層での出来事を契機に感情の揺れを見せる。
ベル・クラネル:シリーズの主人公としての立ち位置を持つ少年冒険者であり、本巻では彼の存在が外伝の物語にも影響を及ぼす。
物語の特徴 本作の魅力は、迫り来る異常事態という“緊迫”と、野営という一時の“休息”という対比を通じて冒険者の裏側を描いている点にある。59階層の決戦というハイライト直後という時間軸を扱いながら、冒険者たちが“帰還”しながらも平穏には戻らず、予期せぬ状況に対処せざるを得ない構造が読者の興味を引く。他作品と比して差別化されるのは、女性主人公視点が前面に出ていること、そして“休息編”という体裁をとりながらも冒険要素・キャラクター間の心理描写・再会の契機という物語構造が緻密に構成されていることである。さらに、本伝シリーズのキャラクターが外伝においても登場し、世界観の広がりを感じさせる点も読者の魅力となっている。
書籍情報
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア 5 (Is It Wrong to Try to Pick Up Girls in a Dungeon? On the Side: Sword Oratoria ) 著者:大森藤ノ 氏 イラスト:はいむらきよたか 氏 出版社:SBクリエイティブ (GA文庫 ) 発売日:2015年10月15日 ISBN:978-4-7973-8508-3
大森藤ノ/はいむらきよたか SBクリエイティブ 2015年10月15日頃
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あらすじ・内容
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』外伝、待望の第五弾! 59階層の決戦を制し帰還に移る【ロキ・ファミリア】。 だが道中、ダンジョンの異常事態により行動停止となる一行は18階層で野営を行うことに。 そこにはアイズが再会を望む白髪の少年の姿が…… 「ベル……?」 昇格の世界最速記録を樹立した少年に興味津々のアイズ達、そして一人不機嫌に陥るエルフの少女。 何とか我慢しようとするレフィーヤだったが──少年がもたらす騒動に、とうとう怒りが爆発する! 「待ちなさぁ────────い!」 「ひいいいいいぃいいいいいいい!?」 冒険者達の束の間の休息編! これは、もう一つの眷族の物語、 ──【剣姫の神聖譚(ソード・オラトリア)】──
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア5
感想
前巻の激戦直後ということもあり、今巻は18階層「迷宮の楽園」での野営から始まる穏やかな空気が印象的である。アイズたちが水辺で英気を養い、遠征隊が体勢を立て直す描写は、外伝第二部の緩やかな入り口として心地よい“ひと休み”を提供してくれる。
ロキ・ファミリアは50階層の異常事態から撤収し、毒被害で戦力の三分の一超が離脱する厳しい状況に。物資のやり繰りや特効薬の調達など、“現実的な遠征運用”が丁寧に描かれており、派閥運営の泥臭さが物語の厚みを増していた。
そんな野営地にベルたちが運び込まれ、アイズ・ティオナが興味津々、レフィーヤは複雑な対抗心をのぞかせる。アイズに憧れるレフィーヤから見たベルは、嫌でも意識してしまう相手。微笑ましい牽制と、同業者としての礼節が同居する距離感が楽しかった。
神会ではフレイヤやロキの探り合いが続き、都市の裏側の緊張感がにじむ一方、野営地では椿のキノコ騒ぎや小宴などの“ほっとする”小景が積み重なっていた。 ヘルメス来訪と滞在交渉、そして“覗き”騒動(黒幕はヘルメス)まで、コメディが前景化するが、背後では闇派閥と新種モンスターの影が着実に濃くなる。
レフィーヤとベルが迷い込んだ大森林で“地中の門番”と死闘を演じるくだりでは、レフィーヤの詠唱とベルの無詠唱【ファイアボルト】が同調して突破口を穿つ王道の共闘は、弱者が力を合わせて強敵に挑む“冒険の醍醐味”を真正面から描き、胸が躍る。ここで芽生える相互の信頼は、ライバル関係に温度差のある温かみを与える。
決戦後には覆面の冒険者=リューが颯爽と現れ、殲滅・治癒・状況整理まで一気呵成。 おいしいところを攫う冷静沈着さは健在で、シリーズ屈指の“クールビューティー”像を今巻でも強く刻む。
ベートの苛立ちや、アイズの不器用な独占欲(ときに嫉妬めいた反応)が可笑しくも愛おしい。 ベルとの別れは静かだが、地上帰還へ向けた行軍、闇派閥の痕跡、そしてアイズに絡む“精霊”の示唆が次巻への予兆を残す。 全体の空気感はまったりしつつ、伏線は確かに積み上がっている。
アイズを可愛く見せるレフィーヤ視点が効いており、アイズ—ティオナ—レフィーヤの絡みはどれも楽しい。 レフィーヤとベルの共闘は熱く、正面から“冒険”を感じさせる名場面。 外伝第二部の幕開けとして、やわらかな読後感と次なる火種のバランスが心地よい一冊であった。 個人的には、アイズの不器用な独占欲と、レフィーヤの“認めたくないけど認めざるをえない”感情の揺れが、控えめに言って最高。 次の共闘もぜひ見たい。
最後までお読み頂きありがとうございます。
大森藤ノ/はいむらきよたか SBクリエイティブ 2015年10月15日頃
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登場キャラクター
アイズ・ヴァレンシュタイン
静かな気質で仲間思いである。ベルに対しては救助と指導の関係を保った。遠征では中核戦力として判断と行動を両立した。
所属組織、地位や役職 ロキ・ファミリア所属の第一級冒険者
物語内での具体的な行動や成果 50階層での戦闘に参加。18階層で負傷者を看護。森の光柱発生に単独で急行した。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 深層33階層の階層主を単独討伐しLv.6到達が公表された。二つ名【剣姫】を維持した。
レフィーヤ・ウィリディス
努力家の魔導士で自負と迷いが同居する。ベルに対して対抗心と協働意識を併せ持つ。フィルヴィスには感謝を率直に示した。
所属組織、地位や役職 ロキ・ファミリア所属の第二級魔導士
物語内での具体的な行動や成果 看護と採集任務に従事。ベルと連携して新種モンスターを撃破。フィルヴィスとの対話で変化を促した。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 高位障壁魔法を運用し信頼を高めた。ベルとの関係は衝突から協力へ進展した。
ベル・クラネル
若手前衛で成長速度が突出している。アイズに敬意と憧れを示し、失策には即時に謝罪で向き合った。
所属組織、地位や役職 ヘスティア・ファミリア所属の冒険者(Lv.2)
物語内での具体的な行動や成果 ミノタウロスを単独討伐。18階層でレフィーヤと共に門番個体を撃破。野営地で関係者へ順次謝罪した。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 一か月半でLv.2に昇格。都市の注目を集める存在となった。
フィン・ディムナ
冷静な指揮官で戦略と補給を両立した。帰還最優先の判断で戦力を保全した。
所属組織、地位や役職 ロキ・ファミリア団長
物語内での具体的な行動や成果 撤収隊形を設計。毒被害下で18階層へ突破させた。神会後の情報整理を主導した。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 勇気の魔法で士気を高めた。派閥の統率を維持した。
リヴェリア・リヨス・アールヴ
理知的な高位魔導士で医療と規律を担う。場の統率で混乱を抑えた。
所属組織、地位や役職 ロキ・ファミリア幹部
物語内での具体的な行動や成果 凍結魔法で大量発生に対処。野営地で治療と静粛を指示。現地調査を統率した。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 特効薬の必要性を判定。派閥の要として機能した。
ガレス・ランドロック
堅実な盾役で危機察知に優れる。隊列維持で退路を確保した。
所属組織、地位や役職 ロキ・ファミリア幹部
物語内での具体的な行動や成果 大量発生の兆候を警告。防御で後方被害を抑止した。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 遠征の安全弁として信頼を維持した。
ベート・ローガ
迅速果断な前衛で走力に秀でる。感情は激しいが任務遂行は的確である。
所属組織、地位や役職 ロキ・ファミリア第一級冒険者
物語内での具体的な行動や成果 地上で特効薬を調達。帰還後に配布して戦力を回復させた。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 行動で功を立て、野営の空気を立て直した。
ティオナ・ヒリュテ
朗らかな前衛で機動力が高い。場の緊張を和らげた。
所属組織、地位や役職 ロキ・ファミリア第一級冒険者
物語内での具体的な行動や成果 前衛として迎撃と護衛を担当。水浴びを提案し休養機会を創出した。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ベルの偉業を肯定し、周囲の理解を進めた。
ティオネ・ヒリュテ
冷静な判断で妹を補佐し、現場調整に長ける。
所属組織、地位や役職 ロキ・ファミリア第一級冒険者
物語内での具体的な行動や成果 採集班を編成。東端調査を補佐した。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 現場のまとめ役として信頼が厚い。
椿・コルブランド
豪快な鍛冶師で独断行動が早い。同盟関係の潤滑油となった。
所属組織、地位や役職 ヘファイストス・ファミリア幹部
物語内での具体的な行動や成果 街で物資を物々交換で確保。野営で食材提供と和ませ役を担った。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ヴェルフの事情を明かして対立を和らげた。
ヴェルフ・クロッゾ
誠実な鍛冶職で過去と向き合った。
所属組織、地位や役職 ヘファイストス・ファミリア所属の鍛冶師
物語内での具体的な行動や成果 精霊との伝承を証言。装備支援を実施した。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 クロッゾ家の異能を説明し理解を得た。
ロキ
狡猾な主神で全体を俯瞰する。笑いの裏で敵を炙った。
所属組織、地位や役職 ロキ・ファミリア主神
物語内での具体的な行動や成果 神会を司会し情報共有を主導。被害者同盟を形成した。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 派閥間交渉で主導権を維持し、眷属の戦果を防衛した。
ヘスティア
少人数派閥の主神で庇護に徹する。行動は直情だが筋を通した。
所属組織、地位や役職 ヘスティア・ファミリア主神
物語内での具体的な行動や成果 18階層に来訪し面会。滞在交渉を行った。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ベルの昇格で注目を集めた。
ヘルメス
機略の神で情報収集に長ける。打算と誠意を使い分けた。
所属組織、地位や役職 ヘルメス・ファミリア主神
物語内での具体的な行動や成果 依頼書を提示し滞在と同行を要請。覗き騒動を誘発した。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 都市内外で情報を拡散し、被害者同盟の一角を担った。
アスフィ・アル・アンドロメダ
実務家の副官で規律を重んじる。
所属組織、地位や役職 ヘルメス・ファミリア副団長
物語内での具体的な行動や成果 覗き騒動でヘルメスを拘束。滞在費処理を担当した。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 他派閥から実務能力を評価された。
ディオニュソス
温厚な主神で理性を保ち、連携でロキを支えた。
所属組織、地位や役職 ディオニュソス・ファミリア主神
物語内での具体的な行動や成果 神会に参加しロキと協調。状況整理を補佐した。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 情報連携の要として位置付けられた。
フィルヴィス・シャリア
孤高の魔導士で自責が強い。レフィーヤとの交流で心が揺れた。
所属組織、地位や役職 ディオニュソス・ファミリア所属の魔導士
物語内での具体的な行動や成果 障壁魔法を授与し遠征を支援。再会で対話を受け入れた。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 自己嫌悪に変化の兆しが生まれた。派閥間の橋渡し役となる。
覆面のエルフ冒険者(名称不明)
高速機動と高火力を両立する。中立的立場で現場を支援した。
所属組織、地位や役職 所属不明の上位冒険者
物語内での具体的な行動や成果 食人花群を殲滅。【ノア・ヒール】で治療。闇派閥残党を追跡した。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 魔道具を回収し情報の端緒を残した。
フレイヤ
美と執心の主神で沈黙の影響力を持つ。
所属組織、地位や役職 フレイヤ・ファミリア主神
物語内での具体的な行動や成果 神会で成長要因の詮索を抑止。議論を収束へ導いた。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 不干渉の原則を盾に影響力を示した。
ガネーシャ
統率を重視する主神で公的責任を意識した。
所属組織、地位や役職 ガネーシャ・ファミリア主神
物語内での具体的な行動や成果 怪物祭の不手際を謝罪。殺害事件の情報提供を要請した。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 公的信頼の回復に努めた。
ウラノス
地下の秩序を司る古き神で観測者である。最小限の言葉で警鐘を鳴らす。
所属組織、地位や役職 ギルド中枢に位置する存在
物語内での具体的な行動や成果 祈禱断絶を感知して神の侵入を示唆した。
地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 迷宮管理の要として影響を維持した。
展開まとめ
プロローグ 水と憩いのひととき
アイズの静かな安息 アイズは全身を水に沈め、心身の疲れを癒していた。水泡の音が遠くに響く静寂の中、何も考えずただ安らぎを感じていた。金色の髪が水に広がり、その姿は精霊を思わせるほど神秘的であった。
レフィーヤの動揺 やがてアイズの前にレフィーヤが現れた。彼女は頬を赤らめながら、アイズを見惚れていたことを否定しようと必死に弁明した。アイズはその様子を理解できず、小首を傾げるばかりであった。
水浴びを楽しむロキ・ファミリア 周囲では【ロキ・ファミリア】の女性団員たちが泉で水浴びを楽しんでいた。ティオナとティオネの姉妹は滝で戯れ、リーネやアキもそれぞれ体を洗っていた。彼女たちの姿は健康的で、どこか扇情的であった。
団員たちの会話と警戒 ハーフドワーフの椿・コルブランドが滝行を終えて現れ、他の団員に話しかけた。アリシアとナルヴィは男が覗いた場合は容赦しないと語り、周囲の見張り役たちも油断なく警戒を続けていた。男性団員の立場は女性陣に比べて極めて肩身が狭いものであった。
18階層の安らぎ この場所は18階層にある「迷宮の楽園」と呼ばれる泉であった。深層での激戦を終えた一行は、地上に戻る前の休息をここで取っていた。ティオナがこの階層を好む理由を語り、アイズも同意しながらこれまでの出来事を思い返していた。
一章 経過と現状
未到達領域到達と未知の敵の出現 アイズ達は七日前に未到達領域50階層へ到達し、密林のように変貌した環境と穢れた精霊と遭遇した。精霊と怪物の混成である精霊の分身は呪文を用いる強敵であったが、辛くも撃破し、遠征拠点へ退却した。
迅速な撤収と帰路の体制 フィンは第一級冒険者を前面に出し、拠点防衛を担っていた他団員を主力の支援に回す体制で帰還行動を開始した。幹部の負担軽減を狙った運用により、行軍中でも負傷者の休養が可能となり、帰路は順調に進行していた。
下層域での『大量発生』発生 下層域進行中、後方から悲鳴が上がり、大量の毒妖蛆が合流し続ける異常事態となった。ガレスの警告を受け、アイズの風とベートの銀靴、ガレスの防御、リヴェリアの凍結魔法で対処したが、各横道からの追加流入で切りがなく、迎撃継続は困難となった。
逃走判断と安全階層への退避 解毒用アイテムが枯渇しかける中、フィンは下層の安全階層での籠城を退け、18階層への強行突破を決断した。第一級冒険者が周囲をカバーし、負傷者を引きずって移送する形で突破し、18階層への退避に成功した。
野営と被害の集計 18階層南端の森林に臨時野営地を設営した。耐異常G未満の団員や多くの鍛冶師が毒で行動不能となり、遠征隊の三分の一超が戦力外となった。リヴェリアは高位の解毒魔法でも緩和が限界であり、専用特効薬が不可欠と判定した。
特効薬の調達と財政負担 俊足の利点からベートが地上へ特効薬調達に向かった。同時に不壊武器の製作や魔剣の消耗、深層素材の譲渡義務が重なり、派閥の財政は逼迫していた。フィンは次回遠征に先立つ資金確保の必要性を示した。
補給方針と自給自足の実施 リヴィラの街の物価は高騰しており、当面の食料は討伐魔石との物々交換と階層内の採集に頼る方針となった。ティオネの指示で班を編成し、水汲みと果実採集を実施した。
採集任務と感謝の伝達 アイズとレフィーヤは森で果実を採集し、希少果物の水晶飴を得た。アイズは50階層での救援への礼として水晶飴をレフィーヤに渡し、レフィーヤは成長の手応えを自覚した。
勇気の魔法への言及と評価の共有 レフィーヤはフィンが放った勇気の魔法に含まれたベル・クラネルの名について確認し、アイズは少年も冒険をしていたと述懐した。アイズはレフィーヤの戦果を評価しつつ、少年の初めての偉業が今後の変化を導くと認識していた。
18階層の夜と野営の食事 18階層に夜が訪れ、【ロキ・ファミリア】は魔石灯を囲んで食事を取っていた。供されたのは採集した果実や少量のパン、椿が大樹の迷宮で採ってきた巨大キノコの丸焼きであった。椿は看護を任せたまま勝手に動き街で物々交換まで行っていたが、首領達は遠征終盤ゆえ苦笑して見逃した。
椿の毒キノコ騒動と一時の笑い 椿が紫色の巨大キノコを炙って勧め、ラウルやレフィーヤが危険を訴えた。椿は耐異常があれば問題ないと応じ、ティオナが試食を申し出るなど、緊張下にあっても一時の笑いが生まれた。
就寝体制と見張りの運用 食後は就寝となり、見張りは交代制で運用された。負傷者用の天幕不足により、幹部を含む女性団員は同じ天幕で休んだ。レフィーヤは一度見張りに出、アイズは体力回復に努めた。
地上との時差と早朝の散歩 朝になると水晶群の発光が戻り、野営地が明るさを取り戻した。アイズは熟睡できない迷宮特有の環境と時差を意識しつつ起床し、剣の素振りも念頭に野営地を離れて散歩に出た。
ゴライアスの咆哮と緊急対応 地鳴りのような咆哮と強い震動が発生し、アイズは11階層最奥の広間で階層主ゴライアスが暴れていると即座に察知した。野営地が17階層連絡路に近い位置にあるため、同業の安否を案じて洞窟前へ急行した。
倒れた三人組の発見 洞窟前の草地で、ヒューマンの男性二人と小人族の少女が倒れているのを確認した。小人族の少女は失神し、赤髪の青年は左脚を重傷していた。アイズの視線は白髪の少年に釘付けとなり、額からの出血が顕著であった。
ベルの懇願と失神 白髪の少年はうつ伏せのまま動かず、アイズが近づくと左足を掴み、仲間を助けてくださいと懇願した直後に力尽きて手を離し失神した。アイズは血に濡れた額に触れ、ベルと名を呼んだが、少年の瞼は動かなかった。
迷宮の楽園での再会 猛牛との冒険から二週間後、迷宮中層の18階層で、アイズは予期せぬ形でベルと再会した。
間章 喜劇の裏側
神会の開幕とロキの狙い 【ロキ・ファミリア】遠征四日目、白亜の巨塔バベル三十階大広間でデナトゥス(神会)が開催された。司会進行はロキであり、彼女は情報交換を口実に、極彩色の新種モンスター騒動(怪物祭・18階層・24階層食料庫)に関する容疑者炙り出しを狙っていた。ロキは事前にディオニュソス、ヘルメスと連携し、円卓の反応を観察したのである。
情報交換とガネーシャの謝罪 神々の雑談が渦巻く中、ロキは王国情勢や新種モンスターの出没を整理し共有した。続いてガネーシャが怪物祭の不手際を謝罪し、18階層で団員ハシャーナ・ドルリアが殺害された件の情報提供を求めた。場は一時厳粛さを取り戻したが、騒動の真因は依然不明であった。
『命名式』の開始と“喜劇” 称号進呈の命名式が始まり、弱小派閥の眷属に“痛恨の名”が量産される恒例の地獄絵図となった。ディオニュソス案「【絶+影】」がヤマト・命に決定するなど、神々の下種な愉悦と主神の悲鳴が交錯した。
アイズの功績と称号維持 議題は【ロキ・ファミリア】のアイズ・ヴァレンシュタインへ移り、深層33階層の階層主ウダイオス単独討伐によりLv.6到達が公表された。神々は新称号を提案するも、ロキの威圧一閃で【剣姫】のブランドは死守された。
ベル・クラネル最速昇格の波紋 最後に【ヘスティア・ファミリア】所属ベル・クラネルの「一ヶ月半でのLv.2昇格」が読み上げられ、円卓がざわついた。ロキは嫉妬と好奇心も交えつつヘスティアを追及し、異常成長の要因を質した。ヘスティアは動揺し釈明に窮した。
フレイヤの介入と“黙認の契約” ここでフレイヤがタブー(他派閥ステイタス詮索の不干渉)を持ち出して介入し、「ミノタウロス撃破が特別な【経験値】をもたらした可能性」を示して議論を収束させた。ロキは過日の密談でフレイヤと交わした“今後の行動を黙認する契約”を想起し、彼女がベルに目をかけている事実を確信した。
ロキの警告と幕引き ロキは去り際にヘスティアへ「目を光らせておけ」とだけ忠告し、フレイヤの今後の干渉を示唆した。やがて最後の二つ名が決まり、命名式は閉会した。神会は、道化の笑いの裏側で、怪物騒動と“少年”をめぐる水面下の駆け引きが進行していることを露わにしたのである。
神会後の残留と手応えの乏しさ 神会閉会後、広間に残ったのはロキ、ディオニュソス、ヘルメスのみであった。三者は円卓で反応を精査したが、露骨に怪しい挙動は愉快犯程度に留まり、黒幕の手掛かりは得られなかったという結論に至ったのである。
ヘルメスの出立と風聞の持ち去り ヘルメスは昇格名簿を一瞥し「土産話」を得たとだけ告げて都市外へ出立した。彼は配下に情報収集を継続させると約して去り、残されたロキとディオニュソスは彼の気紛れな行動に眉をひそめたのである。
黄昏の館の停滞と主神の退屈 神会から十日後、黄昏の館の応接間でロキは遠征隊の不在に退屈を募らせていた。ディオニュソスが届けた葡萄酒で暇を紛らわせつつも、眷属の帰還を当然視しながら待機を続けていたのである。
ベートの単独帰還と緊急動員 やがてベートが単独で帰還した。彼は挨拶も最小限に、館内の団員を即時動員し装備と食料の手配を命じた。遠征本隊は18階層で行動停止に陥り、多数が『毒妖蛆』の劇毒に倒れているため、地上で専用特効薬を都市横断で掻き集めて搬送する必要があると説明したのである。
解毒薬調達の方針と負債の勘案 特効薬は希少で在庫が薄く、【ディアンケヒト・ファミリア】の治療資源への依存は大きな貸しを生む懸念があった。ベートは自らディアンケヒトへ向かう一方、他班を道具屋巡回に放つ複線調達を指示し、費用と時間の双方を圧縮する策を取ったのである。
フィンの書簡と敵情の核心 出発直前、ベートはフィンから託された巻紙をロキへ手渡した。赤字で綴られた報は、50階層で判明した『彼女』の正体が『穢れた精霊』であること、並びに都市崩壊を狙う敵勢力の計画骨子であった。ロキはこれを読み終えるや、的確な行動と戦果をもたらした眷属に満足の笑みを浮かべ、背を押して送り出したのである。
二章 ラビット・ルーキー
野営地の騒擾と負傷者の搬入 18階層の朝光が満ちる中、【ロキ・ファミリア】の野営地に階層主に襲われた三人組が運び込まれたのである。リヴェリアらが包帯固定と治療魔法で応急から根治まで処置し、椿ら【ヘファイストス・ファミリア】も同盟として見舞いに加わった。三名はサラマンダー・ウールのインナー、着流し、ローブ姿と各々装備は損耗しており、戦闘と強行突破の痕跡が顕著であった。
レフィーヤの再会認識と静粛の叱責 人だかりに駆け付けたレフィーヤは、アイズの陰に見える白髪の少年を確認し、ベル・クラネルと即断して大声を上げた。これに対しリヴェリアが即座に静粛を命じ、野営地は治療と安静を優先する体制へ戻ったのである。
アイズの看護と到達階層の異常 アイズはテント内で看護に当たり、道具と武装を失った三名の状態から中層での決死行を推察した。二週間前はLv.1であった少年が18階層へ至った事実から、ミノタウロス戦を契機とする【ランクアップ】を確信したのである。
覚醒直後の混乱と“抱擁事故” 覚醒した少年は仲間の名を叫んで跳ね起きたが、全身の痛みで悶絶した。さらに転倒の勢いでアイズの胸当てへ顔面から飛び込み、赤面ののち盛大に仰け反って後頭部を打つ失態を演じ、場を一層気まずくしたのである。
仲間の無事とアイズの労い アイズは青年(鍛冶師)と小人族の少女の治癒完了を伝え、少年の額包帯に触れて労った。弟を案ずる姉のような所作により、少年は礼を述べつつも羞恥で挙動不審となった。
自立心の発露とアイズの逡巡 アイズが手を差し伸べたが、少年は“男の意地”としてこれを辞退した。アイズは自身の過度な接触を省みて落胆したが、少年は痛みによる不発交じりで弁明し、どうにか自力で立ち上がったのである。
団長への報告へ—野営地の視線 アイズはフィンへの引き合わせを告げ、少年をテント外へ導いた。眼前に広がる大規模遠征の野営風景に少年は驚嘆したが、周囲の団員達は刺々しい視線を向けた。第一級冒険者が少年に甲斐甲斐しく付き添う構図が反感の火種となっている事実を、当のアイズのみが自覚していなかったのである。
野営地の噂とティオナの歓喜 ティオナは野営地にベルの来訪を知り「アルゴノゥト君」と呼んで歓喜した。詳細を知らなかった彼女は、後で会いに行くと上機嫌であった。
男性団員の嫉妬と女性陣の見解 野営地ではアイズがベルを看護したことに下位男性団員の嫉妬が渦巻いた。一方でアキ、ナルヴィ、リーネは「同業者として助け合うべき」「アイズの知己なら当然」と穏当な見解を示した。アキは入団当初の鬼気迫るアイズを回想し、今は周囲(ティオナ・ティオネ・レフィーヤ)の影響で柔らいだと述べた。
レフィーヤの複雑な感情 レフィーヤはベルへの反感と好奇心が交錯しつつ、短期間で18階層に到達した理由に疑念と対抗心を募らせた。
アイズ同行のベルとレフィーヤの牽制 アイズに伴われ本営を出たベルは野営の視線に緊張。レフィーヤは挨拶の裏で鋭い一睨みを送り、市壁での追走劇の当人であると悟ったベルは硬直した。
ティオナ姉妹の接触と反感の増幅 ティオナ・ティオネがベルに親しく接触し、アイズを含む三人に囲まれた構図が周囲の嫉妬を増幅。レフィーヤと男性団員の視線砲に晒されたベルは撤退した。
ミノタウロス討伐の事実の露見 レフィーヤが理由を質すと、ティオナ姉妹は「LV.1でミノタウロスを単独撃破」と明言。アイズも肯定し、レフィーヤは言葉を失った。
夜宴の開始と派閥間の交歓 フィンの音頭で小宴が開かれ、【ロキ】と【ヘファイストス】は簡素ながら工夫された食事と水で労をねぎらった。場は和み、笑いが絶えなかった。
椿とヴェルフの再会、誤称の小喜劇 椿がヴェルフに絡みつつベルを「クラ・ベルネル」と誤称して握手を強行。ベルは否定しつつ応対した。
首脳陣の証言とレフィーヤの悔恨 レフィーヤの問いに、リヴェリアとフィンはベルの単独討伐を確認し、アイズが助力を拒まれた事実にも触れた。レフィーヤは自身がミノタウロスを単独で退けたのがLV.3以降であることを思い、悔しさを新たにした。
新たな騒動の兆し 宴の最中、野営地外から幼い少女の悲鳴が響く。ベルは即座に走り、ヴェルフ、小人族の少女、アイズらも続く。野営地は再び騒然となり、招かれざる来訪の予感が漂った。
間章 和解の裏側
不意の来訪者と面会 宴の最中に悲鳴とともに現れたのは主神ヘスティアであり、続いてヘルメスと眷族・救助隊が来訪した。フィン、リヴェリア、ガレスら首脳陣に加え、アイズ、ティオナ、ティオネ、ラウルが面会した。アイズは24階層共同戦線の縁で、アスフィに静かに応対したのである。
依頼の提示と滞在・同行要請 ヘルメスはギルド認可の依頼書(報酬四十万ヴァリス)を示し、①野営地での滞在許可、②【ロキ】隊の出発時の同行を要請した。救助隊は野営装備の不足とリヴィラ宿泊の危険を理由に挙げ、費用精算や謝礼の支払い意思も明示した。フィンは「騒動を起こさない」ことを条件に受諾し、保護継続の方針を示した。
状況共有と交渉の地ならし フィンは遠征隊の現況――17階層のゴライアス在、ポイズン・ウェルミスの強襲と毒被害――を説明した。ヘルメスは同盟派閥【ヘファイストス】のヴェルフ案件もちらつかせ、誠意と打算を織り交ぜて場をまとめたのである。
50階層の探りと即時の拒絶 話の締めでヘルメスは「50階層の発見」へ探りを入れたが、リヴェリアは「得体の知れない神に話す義理はない」と一刀両断した。場は一瞬張り詰めたが、ヘルメスは軽く引き下がった。
“被害者連合”と地上出入口仮説の通告 ヘルメスは、ロキ・ディオニュソスとの“被害者同盟”を結成したと明かし、極彩色のモンスターと闇派閥残党への対処で協調中と述べた。続けて「バベル以外にもダンジョンの地上出入口が存在する公算」を通告し、帰還後にオラリオ内外の本格調査を希望すると伝えた。
去り際の“宿代”と余韻 ヘルメスは金を置いて退室し、アスフィもこれに続いた。静寂の天幕で、フィンは「帰還後も休む暇はない」と総括し、野営地の“和解”の裏側に横たわる大問題の連鎖を見据えたのである。
女天幕での緊急協議 ヘルメス一行との面会後、ティオネは5階層進攻組や第二軍(アキら)を女天幕に集め、事態の整理を開始した。椿も同席し、ダンジョン出入口が「大穴」以外にも存在する可能性について意見交換が行われたのである。
“精霊”とアイズへの照準 ティオナは50階層で遭遇した『精霊の分身』がアイズを「アリア」と呼んだ点を最重視し、アイズの挙動の異常と照らし合わせて関連を推測した。アキら古参も過去のアイズの寡黙さを想起しつつ、手掛かりを渇望した。
ヴェルフの招致と身上の暴露 椿がヴェルフを連行し、彼が『クロッゾの魔剣』の血筋であることを明かした。アリシアは過去の侵略戦争で森を焼かれた怨恨から激昂したが、椿はヴェルフが一族と“魔剣鍛造”を捨てた事実を示し、緊張を緩めた。
“精霊の血”という系譜 ティオネの追及に対し、ヴェルフは先祖が精霊に救われ血を分けられた伝承を認めた。これによりクロッゾ家の異能(魔法様の砲撃=魔剣)の根拠が説明され、面々は「精霊の血」の現実性を具体像として把握した。
ベルへの聞き取りと伝承の齟齬 英雄譚の造詣が深いベルが召喚され、『迷宮神聖譚』の“アリア”周辺情報を確認した。原典での明記は乏しい一方、祖父制作の絵本伝承ではアルバートに子がいた旨が語られ、エルフ王族セルディアに関する記述を巡り、アリシアとレフィーヤが強く反発した。公式伝承と民間・脚色伝承の乖離が露呈したのである。
アイズ=“精霊の血”仮説の共有 ヴェルフ証言を踏まえ、面々は「アイズにも精霊の血が流れる」可能性に収斂した。ただし経路・経緯は不明で、英雄譚側からの裏付けは得られず、決定的核心には届かなかった。
リヴェリアの制止と願い 騒擾を受けて来訪したリヴェリアは、「詮索の強要」を戒めつつも、アイズに“精霊の血”が流れている事実のみを認めた。本人が語る時を待つべきだと諭し、「知った後も変わらず接してほしい」と家族としての姿勢を求めた。
“家族”としての確認 ティオナは即答で受諾し、ティオネ、レフィーヤ、アキらも同意した。少女達は「アイズはアイズ」と再確認し、当面は保護と信頼を優先する方針が共有された。
並行する本営での本音 同時刻、本営ではフィンとガレスがアイズに「今は話せない」胸中を聴取し、彼女の“強さへの恐れ”と“仲間の目への不安”を受け止めた。フィンは急かさず、帰還後も含めた長期的支援を見据えたのである。
三章 1/3の純粋な激情
朝の予定とレフィーヤの動揺 18階層の朝、アイズがベル達の観光案内を務めると知り、レフィーヤは衝撃を受けた。看病当番のため同行は断念したが、内心ではアイズへの関心とベルへの対抗心がせめぎ合い、早く任務を終えて合流しようと焦燥を募らせたのである。
看護当番の空回り 負傷者の看護に張り切るあまり、レフィーヤは勢いが過ぎて患者を疲弊させ、リヴェリアから叱責を受けた。自省しつつも、感情の矛先は無意識にベルへと向かい、心はなお落ち着かなかったのである。
不意の来訪者フィルヴィス 交替後に合流へ向かおうとした矢先、レフィーヤは【ディオニュソス・ファミリア】のフィルヴィスと再会した。24階層事件以来の交流相手であり、レフィーヤは50階層決戦で授かった障壁魔法【ディオ・グレイル】が皆を救った事実を感謝とともに伝えた。
王女リヴェリアへの畏避と自己嫌悪 そこへ現れたリヴェリアが丁重に礼を述べると、フィルヴィスは即座に距離を取り退去した。彼女は「自分は汚れている」と自己を呪詛し、王族を“汚す”ことへの恐怖から、同席を拒んだのである。
レフィーヤの掴みと告白の引き出し レフィーヤは逃げるフィルヴィスの手首を掴み、「本当に汚れている者は私に魔法を授けない」と真っ向から否定した。理屈を超えた肯定で罪責を揺さぶり、さらに「主神いわく貴女は“ツンデレ”」と軽口で緊張を崩しつつ、「私の側は良くてリヴェリア様は駄目なのか」と自分の存在意義をぶつけ、執拗に手を離さなかった。
揺らぎと変化の兆し 押し問答の末、フィルヴィスは「お前に会ってから自分がおかしくなっている」と本音をこぼした。レフィーヤはその変化を喜び、二人は手を繋いだまま木漏れ日の下で心を和らげた。罪はなお消えないが、彼女の硬直した自己嫌悪にほころびが生まれたのである。
オチと余韻 レフィーヤは夢中で語らい、リヴィラ行きをすっかり失念した。気付けばアイズ達は観光から帰還しており、レフィーヤは慌てふためいたのである。
水浴びの提案と出発 昼、リヴィラから戻った直後、ティオナが水浴びを提案し、女神ヘスティア一行やアスフィ、タケミカヅチ派の少女らを含む約二十名が参加した。レフィーヤは見張り役に回ったが、先のフィルヴィスとの再会で上の空であった。
滝の泉での水浴び 一行は18階層の滝下の泉に到着し、アイズ、ティオナ、ティオネ、ヘスティア、アスフィらが先に入浴した。見張りのレフィーヤは厳重な警戒を敷きつつも、内心では光景に見惚れていた。
覗き騒動の発生 頭上の樹冠からベルが誤って泉中央へ落下し、アイズの裸身を含む一同の水浴びを目撃する事態となった。レフィーヤは激昂して追跡したが、ベルは羞恥に極限解放された速度で逃走し、レフィーヤは致死級魔法の詠唱に入るも周囲に制止された。
野営地の混乱と黒幕の露見 騒動は瞬時に野営地へ広がり、団員らが蜂起寸前となった。アスフィがヘルメスを捕縛した結果、森の樹上での“覗き計画”はヘルメスの唆しによるものと判明し、ヘスティアとアスフィの制裁で収束に向かった。
解毒薬の到着と全体の収束 夜の帳が下りる頃、ベートが各所から集めた特効薬を携えて帰還し、毒に苦しんでいた団員が快方に向かった。首脳陣はベートに謝意を示し、野営地の空気は落ち着きを取り戻した。
ベルの帰還と全面謝罪 覆面の冒険者(リュー)に伴われてベルが帰還し、アイズに土下座で謝罪した。その後も関係各所へ順次謝罪して回り、ヘルメスの関与が考慮され、厳罰は回避された。
レフィーヤの“第二波” 鎮静化の裏で、レフィーヤの怒気はなお燃え上がり、闇中に戻ったベルの背後へ“殺意の妖精”として出現した。再び追撃が開始され、二人は森の奥へ消えた。アイズは夕餉の準備の中、二人の所在を案じていた。
18階層大森林の迷走 ベルとレフィーヤは、18階層の大森林で追走の末に道を見失い、夜の危険に晒されながらも状況整理に努めたのである。口論の発端はアイズへの特訓や入浴覗きの件で、レフィーヤの鬱屈が露呈したが、空腹を機に一時休戦となった。
樹上偵察と闇派閥の察知 レフィーヤは大木へ登り地形を把握し、近傍を移動するローブ姿の二名を視認した。装束や行動様式から闇派閥の残党と判断し、好機と見て独断で尾行を決断した。ベルは装備と力量の不安があるため同行させた。
水晶林と陥穽への転落 岩壁に近い水晶林を抜ける進路で、足下の蓋が割れ落とし穴に転落した。底部は薄紫の溶解液に満たされ、冒険者やモンスターの白骨と装備が散見された。縦穴の肉壁構造と悪臭は、生体系の罠であることを示していた。
“地中の門番”の出現 縦穴上部から人型上半身と触腕を備えた“極彩色のモンスター”が出現した。闇派閥が要所防衛のため設置したトラップ型個体と推察され、魔石灯や外周からの退避は困難であった。
初期対応と弱点の把握 敵の攻撃は二本の触腕による鞭打ちであった。レフィーヤは単眼の視線と攻撃軌道の連動を見抜き、先読み回避で凌いだ。ベルは機敏さを活かしてヒット・アンド・アウェイで肉壁を傷付けたが、厚さと耐性により突破効果は薄かった。
怪音波と致命圧の局面 敵は冠状器官から強力な怪音波を放ち二人の平衡を奪取。ベルが白金の盾で致命打を辛うじて受け流すも重傷となった。レフィーヤは囮を兼ねた並行詠唱に移行したが、触腕に絡め取られ中断の危機に陥った。
反撃の端緒:無詠唱の稲妻 ベルは奪取した大戦斧で触腕を断ち、無詠唱の【ファイアボルト】連射で冠状器官を焼破。怪音波を封じ、レフィーヤの詠唱再開に必要な時間を獲得した。
役割分担の確立 レフィーヤは囮と詠唱、ベルは側面から触腕を弾く防御と時間稼ぎに専念した。これはアイズから叩き込まれた“側面弾き”の技術が生きた連携であり、第二級魔導士と第三級前衛の協働が機能したのである。
決着:アルクス・レイ×ファイアボルトの重奏 極大魔法【アルクス・レイ】が上方蓋で拮抗すると、敵は肉壁を隆起させ自壊圧殺に移行した。臨界でベルが純白光を纏う【ファイアボルト】を砲身固定の形で同調発射し、光柱と炎雷の合成出力で冠部・蓋・本体を同時粉砕。縦穴は崩落し、天蓋を穿って脱出口が開いた。
脱出と示唆 レフィーヤは重傷のベルを抱え跳躍し、崩落瓦礫を蹴破って地上面へ脱出した。大森林に隠された“門番”の存在は、闇派閥が18階層東端の要所を秘匿防衛している事実を示し、後続の調査と報告の必然性を強く裏付けたのである。
光柱の発生とロキ・ファミリアの反応 18階層の森上空へ光柱が立ち上り、野営中の【ロキ・ファミリア】や宿場街からも確認された。アイズは即座に単独で現場へ向かった。
現場の惨状と二人の生還 崩落した水晶林と天蓋の大穴の下で、レフィーヤとベルは地中の門番を撃破して脱出した直後であり、ベルは出血と溶解液の損傷で大きく消耗していた。
闇派閥の出現と食人花の包囲 闇派閥の残党二名が接近し、檻から多数の食人花を解き放って二人を包囲した。レフィーヤは玉砕覚悟で応戦を決意した。
覆面の冒険者の介入と殲滅 覆面のエルフの冒険者(木刀+短刀)が疾風の機動で群れをなぎ払い、レフィーヤの助言(打撃無効・斬撃有効、魔力反応)を受けつつ『並行詠唱』で高火力魔法【ルミノス・ウィンド】を発動し、食人花を一斉殲滅した。圧倒的な速度と詠唱精度は上位魔導士級の火力と前衛機動を両立していた。
治療と誤解の解消 覆面の冒険者は【ノア・ヒール】でベルとレフィーヤの外傷を治療し、夜の森を再迷走したベルを諭した。レフィーヤは自らの判断でベルを巻き込んだことを認め、彼が自分を救った事実を明言して庇い、覆面の冒険者はそれを評価した。
アイズの到着と指揮系統の整理 アイズが到着し、続いてティオナ・ティオネ・リヴェリアが合流した。現地調査は上位戦力(アイズ不在で)ティオナ・ティオネ・リヴェリアが担当し、レフィーヤは団長フィンへの報告を優先、アイズはベルとレフィーヤの護送を命じられた。覆面の冒険者は気になる事案があるとして撤収した。
帰路と関係性の変化 帰路でベルの装靴が溶解で使用不能となり、レフィーヤは責任を感じて代替のブーツを用意すると申し出た。アイズは二人の距離が縮まったと評し、レフィーヤは強く否定したが、ベルとの間に一定の信頼が芽生えた兆しが描かれた。
間章 舞台の裏側
闇派閥残党の追跡と尋問 覆面の冒険者は、レフィーヤたちを襲撃した闇派閥の残党二名を追跡し、森の奥で拘束した。尋問の目的は、地中の門番を含む新種モンスターの出所と意図の解明であった。男たちは自決用の火炎石を全身に巻き、沈黙を貫こうとしたが、覆面の冒険者は容赦なく問いを続けた。
禁忌の誘いと暗殺者の介入 エルフの青年が「死者との再会」を餌に、闇の主への忠誠を促す禁忌の言葉を口にした直後、頭上から投刃が飛来した。二人の男は喉を貫かれて即死し、直後に現れた仮面の人物が緋色の魔剣を振るって爆炎を放ち、火炎石を誘爆させた。覆面の冒険者は間一髪で爆風を回避したが、残党とともに情報は全て焼失した。
“D”の刻印を持つ魔道具 爆心地の瓦礫の中から、覆面の冒険者は手のひら大の金属球体を発見した。内部に赤い球体が埋め込まれ、表面には共通語や神聖文字と異なる「D」の記号が刻まれていた。爆炎にも耐えた強度を持ち、闇派閥の関与が濃厚な魔道具と見られた。彼女はこれを懐に収め、その場を後にした。
翌朝の捜索と撤退決定 翌朝、【ロキ・ファミリア】はレフィーヤの報告を基に18階層東端を調査したが、闇派閥の痕跡は一切発見されなかった。地中の門番の戦闘跡地は急速に修復されつつあり、フィンは現地調査の継続を断念。再装備と再編成の上での再調査を指示し、一行は階層東端から撤収した。
エピローグ 帰る場所へ
ベートの動揺とアイズの対応 帰還準備の最中、ベートはベルの滞在を知って激昂した。さらに水浴び騒動の真偽を問い、アイズの肯定に動揺した。ベートはベルの所在確認を求めたが、アイズは両者を会わせまいと意図し、故意に別方向を示して回避したのである。
出発前の編成と指示 フィンは先鋒隊を統率し、ティオナ・ティオネ・ベートを前衛、アイズを中衛に配置し、魔導士一斉砲火で階層主を短期殲滅する方針を示した。異常続きの遠征で消耗が大きいことから、万全を期した布陣で帰還を優先する決定であった。
アイズとベルの別れ 出発直前、ベルはアイズに「気を付けて」と言葉をかけ、アイズも微笑を返して再会を期した。レフィーヤはベルに礼と謝意を伝えつつも、責任の所在を明確にし、私情を抑えた態度を示した。
ダンジョンの震動と進軍継続 上層進行中、ダンジョン全体に微震が走り、ウラノスは祈禱断絶を感知して「神の侵入」による暴走を示唆した。フィンは冷静に帰還優先を維持し、連絡を取りつつ前進を続けた結果、前衛部隊は問題なく地上へ到達した。
地上帰還と隊の合流 遠征隊はバベルを抜けて地上に出、夕焼けの中央広場で後続隊と合流した。【ヘファイストス・ファミリア】とは握手を交わし解散。市民の歓呼に迎えられながら、それぞれの本拠へ向かった。
『黄昏の館』への凱旋 本拠前で団員の出迎えを受け、ロキが女性陣に飛びつこうとしてレフィーヤに見事に投げられた。フィンは無損耗と収穫を報告し、ロキはまず眷族の帰還を労う言葉を贈った。アイズたちは「ただいま」と応え、旗は茜に翻った。
遠征の終幕 かくして【ロキ・ファミリア】の長い遠征は、無事の帰還と次なる変転の予兆を抱えたまま、ひとまずの終幕を迎えたのである。
同シリーズ
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア1
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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか21
アストレア・レコード 1 邪悪胎動
アストレア・レコード 2 正義失墜
アストレア・レコード 3巻 正邪決戦
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか オラリオ・ストーリーズ
アルゴノゥト 前章 道化行進
ファミリアクロニクル episode リュー2
ファミリアクロニクル episodeアスフィ
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