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漫画「アルスラーン戦記 1」感想・ネタバレ・アニメ化

物語の概要

ジャンル
ヒロイック・ファンタジー/歴史ファンタジー漫画である。中東風の架空の大陸パルス王国を舞台に、若き王太子アルスラーンが国家の崩壊を経てもなお、理想と信念を胸に奮闘する叙事詩的物語である。荒川弘の手によって描かれた本作は、原作小説の世界観と登場人物をビジュアル化しつつ、戦場の空気や登場人物の心理を丁寧に再構成している。
内容紹介
パルス王国では、蛮族ルシタニアの再侵攻と味方将軍の裏切りにより絶体絶命の危機に陥る。14歳の王太子アルスラーンは初陣で敗北し、王国は壊滅的な打撃を受けた。生き延びた彼は忠実な傭兵騎士ダリューンとともに逃亡し、知略に優れた策略家ナルサスやその弟子エラムを仲間に加え、王都奪還を目指す旅に出る。だがその背後には、「銀仮面」の男による王位を巡る陰謀や正統性をめぐる大きな争いの影が蠢いていた。

主要キャラクター

  • アルスラーン:本シリーズの主人公であり、パルス王国の王太子である。優しい心と強い正義感を持ちながらも、自らの無力さと向き合い、成長を強いられる若き王子である。
  • ダリューン:パルスの有力な騎士で、アルスラーンの護衛兼剣士。非凡な戦闘力と忠誠心をもって若き王子を支える頼れる武人である。
  • ナルサス:知略と策略に長けた策略家で、アルスラーンの参謀的存在。巧みな戦略と洞察力で旅路を導く冷静な賢人である。
  • エラム:ナルサスの弟子兼随行者の少年であり、アルスラーンの旅に同行する。成長と葛藤を抱えながら旅を続ける存在である。
  • 銀仮面の男(ヒルメス):謎めいた“銀仮面”を身につけた人物であり、パルス王国の正当な王位継承者を自称する影の存在。物語の根底にある王位を巡る陰謀の鍵を握る。

物語の特徴

本作の魅力は、荒川弘 の繊細かつ力強い作画によって再現された戦場や人物の感情表現、および原作小説では描かれきれなかった細やかな心理描写が視覚的に補強されている点にある。若き王太子が国家の崩壊という圧倒的な逆境に晒されながらも、自分の信念を貫こうとする姿が、戦略・戦術・人間ドラマと融合して描かれている。さらに、裏切りや策略、国家の正統性をめぐる葛藤といったテーマが視覚的な迫力と相まって、原作小説とは異なるリアルさと緊張感をもたらしている。

書籍情報

アルスラーン戦記 1
著者:荒川弘 氏
原作:田中芳樹  氏

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あらすじ・内容

大陸公路の強国「パルス」の若き王子・アルスラーン。永遠と思われた国の栄華が終わりを告げた時、すべての運命が変わる!! 荒川 弘×田中芳樹の最強タッグで描く、世界最高の歴史ファンタジー、最新作!


国が燃えている‥。世界はどれだけ広いのか? 強国「パルス」の王子・アルスラーンは、いまだ何者でもなく、ただ好奇心にあふれていた。「頼りない」「気弱」「器量不足」と言われたアルスラーンが14歳になった時、遠国の異教徒がパルスへ侵攻。アルスラーンは初陣の時を迎える。パルス軍の強さは古今無双。この戦もパルスの圧勝に終わると誰もが信じていた‥‥。奈落へと落ちたアルスラーンの運命! 激動の英雄譚、開幕!!

アルスラーン戦記(1)

感想

読み終えて、まず感じたのは、原作の持つ重厚な世界観が、見事に漫画として表現されているということだ。田中芳樹先生の紡ぎ出す物語を、荒川先生ならではの力強い筆致で描き出しており、ページをめくる手が止まらなかった。

物語は、大陸公路の強国パルスの王子、アルスラーンの視点から始まる。まだ幼さの残るアルスラーンは、気弱で頼りないと言われることもある。しかし、その奥には、未来を見据える強い意志が秘められているように感じられる。そんなアルスラーンが、アトロパテネの会戦で、過酷な現実を突きつけられるのだ。

ユーザー感想メモにもあるように、アトロパテネの会戦は、物語の大きな転換点となる。アンドラゴラス王の傲慢さ、敵の巧妙な罠、そして、多くの兵士たちの命が失われていく様子が、荒川先生の迫力ある絵によって、より鮮烈に伝わってくる。

特に印象的だったのは、ダリューンの存在感だ。荒川先生の描くダリューンは、とにかくかっこいい。その武勇はもちろんのこと、アルスラーンに対する忠誠心、そして、冷静沈着な判断力。すべてにおいて、理想的な騎士像として描かれている。彼の活躍は、物語に希望の光を灯してくれる。

アルスラーン自身も、カーラーンに捕らえられ、絶体絶命の危機に陥る。しかし、ダリューンによって救出され、辛くも戦場から離脱する。この場面は、手に汗握る展開であり物語に引き込む力があった。

また、アルスラーンの表情が豊かに描かれているのも、この漫画版の魅力の一つだ。不安、悲しみ、決意。様々な感情が、彼の表情から伝わってくる。読者は、アルスラーンと共に、喜び、悲しみ、そして、成長していく過程を体験することができる。

会戦後、アルスラーンはダリューンと共に、反撃の機会を探るためバシュル山へと向かう。失意の中、それでも前を向こうとするアルスラーンの姿には、心を打たれるものがある。彼は、この苦難を乗り越え、真の英雄へと成長していくのだろうか。今後の展開が非常に楽しみである。

荒川弘先生の『アルスラーン戦記』は、原作の魅力を最大限に引き出し、さらに、漫画ならではの表現を加えることによって、新たな魅力を生み出している。原作ファンはもちろんのこと、初めて『アルスラーン戦記』に触れる人にも、自信を持っておすすめできる作品である。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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登場キャラクター

パルス王国

アルスラーン

王太子であり、初陣を迎えた若者である。父王から冷遇されつつも、民や捕虜の少年との交流を通じて、王とは何かを模索している。
・所属組織、地位や役職
 パルス王国・王太子。
・物語内での具体的な行動や成果
 剣術の稽古に励んだが未熟さを自覚した。市街で捕虜の少年兵に人質にされつつも彼を助けた。街の少年たちを寛大に許した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 民衆から頼りないと評される一方、少数から忠誠を誓われるなど評価が揺れている。

アンドラゴラス三世

国王であり、不敗を誇る存在として威厳を示していたが、戦場で敗北を喫し捕虜となった。
・所属組織、地位や役職
 パルス王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果
 アトロパテネで八万の騎兵に突撃を命じたが、罠に嵌まり潰走を招いた。戦場から退却を決断し、のちに銀仮面に捕らえられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 「不敗の王」の威信を失墜し、王国軍の士気を大きく損ねた。

タハミーネ

王妃であり、アルスラーンの母である。冷静な態度を保ちつつ、息子の成長に期待を寄せている。
・所属組織、地位や役職
 パルス王国・王妃。
・物語内での具体的な行動や成果
 アルスラーンに「立派な王」を目指すよう助言した。戦勝報告を受けた王の態度を見守った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王妃としての立場を崩さず、王と王子の間に温度差を感じさせた。

ヴァフリーズ

壮年の将であり、アルスラーンの剣術指南役である。理知的で冷静な人物である。
・所属組織、地位や役職
 パルス王国・大将軍。王都守護の任務。
・物語内での具体的な行動や成果
 アルスラーンに剣の基礎を教えた。戦場で国王を護衛し、敗北を悟って退却を進言した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 渓路で銀仮面に討たれ、戦場で命を落とした。

ダリューン

黒衣の騎士と称される将軍で、甥としてヴァフリーズに育てられた。忠義に厚く、王子を守る決意を固めている。
・所属組織、地位や役職
 パルス王国・騎士。黒槍を用いる。
・物語内での具体的な行動や成果
 王の命令に異を唱えたため叱責を受けたが、のちに単騎で戦場を駆け抜けアルスラーンを救出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王子の最重要な護衛となり、敗走後はナルサスを頼ることを提案した。

キシュワード

双刀を操る将軍であり、戦場での活躍が語られた。
・所属組織、地位や役職
 パルス王国・双刀将軍。
・物語内での具体的な行動や成果
 ルシタニア軍撃退の報を王都へもたらした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王の信頼を得て報告役を担った。

シャプール

万騎長の一人で、勇猛な将軍である。
・所属組織、地位や役職
 パルス王国・万騎長。
・物語内での具体的な行動や成果
 アトロパテネに参戦し、重傷を負った。部下が戦死者を報告したが、本人の安否は伏せられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 戦場で大きな損耗を受け、存命かどうかが不明とされた。

クバード

武将の一人であり、忠誠の在り方をめぐって諸将と対立した。
・所属組織、地位や役職
 パルス王国・将軍。
・物語内での具体的な行動や成果
 退却時にシャプールと意見を戦わせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 退却を巡る混乱の中で存在感を示した。

ナルサス

元官僚であり、博識の戦略家である。
・所属組織、地位や役職
 隠棲中の元パルス官僚。
・物語内での具体的な行動や成果
 山荘にてアルスラーンと再会した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王子一行の新たな拠点として迎え入れられた。

エラム

ナルサスに仕える侍童である。忠義心が強く、主を護ろうとする。
・所属組織、地位や役職
 ナルサスの侍童。
・物語内での具体的な行動や成果
 山荘に近づく侵入者に矢を放ち、警戒を示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アルスラーン一行と初めて接触した。

ルシタニア軍

捕虜の少年兵

ルシタニア軍に従軍させられた少年で、宗教的狂信を抱いていた。
・所属組織、地位や役職
 ルシタニア軍・捕虜。
・物語内での具体的な行動や成果
 パルスで捕虜となったが逃走し、アルスラーンを人質にした。奴隷制度を否定し、宗教的教義を説いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 逃亡後、西方へ姿を消した。

裏切り者・異端勢力

カーラーン

大将軍の一人であったが、裏切りによって王国を危機に陥れた。
・所属組織、地位や役職
 元パルス王国・大将軍。
・物語内での具体的な行動や成果
 戦場でアルスラーンを保護するふりをして接近し、ルシタニア軍と通じていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 裏切りが発覚し、ダリューンと激突したが逃走した。

銀仮面の男

正体不明の存在であり、強烈な怨嗟を抱えている。
・所属組織、地位や役職
 不明。
・物語内での具体的な行動や成果
 退却途上でヴァフリーズを討ち、アンドラゴラスを捕縛した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 十六年にわたる怨恨を吐露し、物語に大きな脅威として登場した。

展開まとめ

第一章 エクバターナの栄華

騎馬軍の突撃開始
戦場において、重装の騎馬軍が突撃の号令を受けて前進した。統率者が「突撃」を命じると、馬鎧で武装した騎兵たちが一斉に槍を構えて進軍し、敵の陣営に衝撃を与えた。

歩兵との衝突
騎兵は敵歩兵の盾と槍の陣に突入し、正面からの激突が起こった。馬と兵の突進により、歩兵側は弾き飛ばされ、盾や槍が破壊されるなど激しい乱戦となった。戦場には負傷兵が倒れ、布陣が乱れていった。

戦場の象徴的描写
戦闘の最中、旗を掲げて立つ兵士の姿が描かれ、戦場の緊迫感が象徴的に示された。また、空を飛ぶ鷲の姿とともに、戦場の広がりと都市エクバターナの景観が描写され、戦の舞台が強調された。

アルスラーンの剣術稽古
場面は変わり、若きアルスラーンが城内で剣の稽古をしていた。相手は壮年の将ヴァフリーズであり、彼はアルスラーンに基本の剣術を教えていた。アルスラーンは必死に剣を振るったが押され気味であり、剣を弾き飛ばされて倒れ込んだ。

ヴァフリーズの指導
ヴァフリーズは剣術の基本動作を鍛える重要性を説き、基礎を疎かにしては技の威力を失うと教えた。稽古を終えたアルスラーンは地面に座り込み、ヴァフリーズは彼に基本を磨くことを続けるよう指導した。

稽古の余韻
稽古後、アルスラーンはまだ未熟さを見せながらも努力を重ねていた。場面の締めくくりとして、彼が退屈そうに「つまらない」と口にしたことが描かれた。

ヴァフリーズの任務と剣の稽古
アルスラーンはヴァフリーズが遠征に随行しなかった理由を問うた。ヴァフリーズは、王都エクバターナの守護を担う役目を命じられていると説明した。さらに彼は、王となる者が剣の基礎をおろそかにしてはならないと説き、アルスラーンに稽古を続けるよう諭した。

母タハミーネとの会話
アルスラーンは母タハミーネ王妃に迎えられ、父のように立派な王を目指しているが、なかなか成果が上がらないと語った。王妃は大将軍ヴァフリーズの指導を高く評価しつつも、息子に期待を寄せていた。アルスラーンは「立派な王」とは何か、その意味に思いを巡らせた。

鷹狩りと報告の帰還
アルスラーンは鷹アズライールを迎え、無事の帰還を喜んだ。そこへ双刀将軍キシュワードが現れ、友邦マルヤムに侵攻したルシタニア軍をパルス軍が撃退したと報告した。さらに王アンドラゴラス三世の帰還が伝えられた。

アンドラゴラス三世の凱旋
王都の民衆はアンドラゴラス三世の凱旋を歓迎した。捕虜となったルシタニア兵の中には少年兵もおり、市民は異国の残虐さを口々に語った。また、王国の武将たち、カーラーンやクバードらの姿も描かれ、民衆から尊敬と畏怖を集めていた。

王とアルスラーンの対面
アルスラーンは父アンドラゴラス三世の凱旋に出迎え、無事を喜んだ。しかし王は遠征で敗北するはずがないと断言し、威厳を示した。ヴァフリーズには留守の報告を命じ、軍事的関心を最優先とする姿勢を示した。

アルスラーンの未熟さと周囲の評価
民衆の中には、アルスラーンを頼りないと評する声もあった。彼自身も「立派な王」となる道を模索していたが、その姿は周囲からまだ未熟と見なされていた。物語は、王都の裏路地に潜む存在の描写で次の展開へと繋がった。

捕虜の少年兵との出会い
アルスラーンは市中でルシタニア兵の捕虜の少年を目にした。少年は子供ながら戦場に立たされており、鎖につながれていた。市井の少年たちは捕虜を見て騒ぎ立て、彼を侮蔑的に扱った。

捕虜逃走の混乱
少年捕虜は機を見て逃走を図り、城門付近は一時的に混乱に包まれた。城門は急遽閉ざされ、出入りの商人や旅人たちも騒然となった。兵士たちは逃亡者を追跡し、市街は落ち着きを失った。

ダリューンの登場
そのころ騒ぎを耳にした騎士ダリューンが厩舎にて異変を知る場面が描かれた。報告を受けた彼は即座に行動を開始し、捕虜の逃走劇に関与していくことが示唆された。

アルスラーンの巻き込まれ
逃走した少年捕虜は、混乱の最中にアルスラーンを人質に取った。市街の兵士たちは包囲したが、捕虜はアルスラーンを盾にしながら抵抗した。その後、少年捕虜はアルスラーンを連れ、建物の中庭を経由して市中を逃走した。

市中での追走と転落
少年捕虜とアルスラーンは市街を駆け抜け、洗濯場へ転落した。民衆は驚きながらも、王子の姿を確認したことで騒然とした。少年捕虜はなおも逃走を続け、アルスラーンも必死にその後を追った。

再びの危機と救助
少年捕虜とアルスラーンは市場での追走中、動物檻の一角に飛び込んだ。キリンの檻に迷い込んだ二人は、もみ合いの末に転落しかけたが、アルスラーンが少年捕虜を助ける形で危機を免れた。

市場での逃亡の始まり
捕虜として捕らえられていた異国の少年は、奴隷として処分されそうになる状況から逃亡を試み、アルスラーンを人質にして市場の中を駆け抜けた。周囲の兵士たちは少年を追跡しつつも、王子を害することを恐れて手を出せずにいた。

市場での対話
逃亡の最中、アルスラーンは見慣れぬ動物や交易品に目を奪われ、この国が物資に恵まれていることを実感した。これに対し、少年は「奴隷の存在こそが国の歪んだ姿だ」と強く否定した。少年はイアルダボート神の教えに基づき「人は皆平等である」と語り、奴隷制度を不義と断じた。

宗教と文化の衝突
二人の会話は宗教の違いへと発展した。アルスラーンは「同じ神を信じているのになぜ争うのか」と疑問を呈したが、少年は「教えに従わぬ異教徒は滅ぼされるべきだ」と答えた。アルスラーンはその過激さに言葉を失い、宗派の違いが争いの原因であることを理解した。

王宮の場面
場面は王宮へ移り、戦勝の報告を受けるアンドラゴラス王と王妃タハミーネの姿が描かれた。王は威容を誇示し続け、王妃は冷静にそれを受け止めるが、二人の間には温度差が漂っていた。

城壁での決断
追い詰められた少年は、逃げ場を失いながらもアルスラーンを伴い城壁の上に立った。絶望の中で彼は人質ごと飛び降りる道を選び、周囲の兵士たちはその衝撃的な行動に声を上げた。

川への落下と逃走
少年奴隷に人質とされたアルスラーンは共に城壁から川へ落下した。二人は岸に辿り着いたが、少年は馬を奪って西方へと逃亡した。

街の少年たちの失態と叱責
アルスラーンが人質にされた原因を作った街の少年たちは、兵士から「覚悟はできておるのだろうな!」と厳しく叱責された。彼らは処罰を覚悟したが、アルスラーンは「良い、放してやれ」「無事ならそれで良い」と命じた。兵士は驚きつつ従い、少年たちは解放された。解放された少年たちは「大きくなったら必ず騎兵隊に入り殿下を守る」と忠誠を誓った。

アルスラーンの内省
アルスラーンは、自身を人質にした少年の言葉を思い返し、「王宮で教えられたものとは一味違っていて面白かった」と感じた。さらに「囚われている他のルシタニア人にも色々聞いてみよう」と決意した。

奴隷商人との対話
奴隷商人のもとを訪れたアルスラーンは、既にルシタニア人奴隷が殺されていることを知った。商人は「ルシタニア人など獣と同じで、飼い慣らすことはできません」と語った。アルスラーンは「素直に奴隷となっておれば命を落とさずに済んだものを…なぜなのだ」と疑問を抱き、「私には解らぬよ、ダリューン」と吐露した。

未来への布石
その問いに対し、ダリューンは「いつか殿下が王位に御即位なされましたら、登用していただきたい友人がいます」と口にしたが、すぐに取り消した。アルスラーンは「なんだ、思わせぶりな! まだこの先何十年も父上の王位は揺るがぬだろうよ」と応じた。

第二章 アトロパテネの会戦

剣の稽古の成果
アルスラーンは大将軍ヴァフリーズの下で剣の稽古を重ねていた。しかし何度挑んでも剣を受け止めきれず、自らの未熟さに落ち込んでいた。ヴァフリーズは「確実に上達している」と励ましたが、アルスラーンは実感を持てずにいた。

戦の兆し
アルスラーンは、実際の戦に出れば自らの力量を理解できるのではと考えた。しかしヴァフリーズは「パルス王国に戦を仕掛ける者はいない」と楽観的に語り、戦の機会はまだ先であると見ていた。

王からの書状
その時、アンドラゴラス三世からの急報が届いた。ヴァフリーズは内容を確認し、事態の重大さに目を見開いた。書状には「戦が始まる」と記されており、状況が一変した。

不穏な儀式
同じ頃、暗黒の儀式が執り行われていた。仮面をつけた男と怪しげな僧侶たちが火炎の前で祈りを捧げ、ルシタニア軍の侵攻とパルス王国の滅亡を願っていた。その光景は不気味であり、異端の気配に満ちていた。

戦乱の幕開け
時はパルス暦320年秋、ルシタニア軍は西北方のマルヤム王国を滅ぼし、パルス領内へ侵入した。アンドラゴラス三世は自ら軍を率い、アトロパテネの野で侵略軍と戦う決断を下した。こうして王太子アルスラーンの初陣が定まったのである。

カーラーンの報告とアルスラーンの不安
アルスラーンは大将軍カーラーンから戦況を聞き、味方の兵力や敵軍ルシタニアの動向を学んだ。だが心中では父王の厳しさを思い出し、不安を募らせていた。鷹アズライールの偵察で湿った羽根が戻り、戦場に不穏な気配を感じ取った。

濃霧の到来
平原一帯を濃霧が覆い、視界が利かなくなった。兵たちも落ち着きを失い、初陣のアルスラーンは不安を隠せなかった。ヴァフリーズは「王子を軽んじるな」と周囲を戒めたが、霧下の戦は難航を予感させた。

本陣での口論
本陣ではダリューンが霧下での突撃を避けるべきだと進言したが、王アンドラゴラスはこれを臆病と見なし、不興を買った。ヴァフリーズは場を収めたものの、王と将軍の間には緊張が走った。

カーラーンの策謀
その裏でカーラーンはダリューンに王に忠言せよと進言しつつ、別の思惑を抱えていた。彼はルシタニア軍との戦で敗北を招きうる策を進めており、言葉の端々に不穏さが漂った。王はなおも強硬な態度を崩さず、反対する者を押さえつけた。

ヴァフリーズの忠告とアルスラーンの孤立
戦前、ヴァフリーズはダリューンに「アルスラーン殿下の味方であってほしい」と告げた。王太子は父王から冷遇され続け、孤立を深めていたためである。ダリューンは甥としての忠誠を誓い、王子を守る覚悟を固めた。

突撃命令と敵の布陣
戦場を覆う濃霧の中、敵の配置は視認できなかった。だがアンドラゴラス三世は伝統の祈りを捧げ、騎兵八万五千に突撃を命じた。王自らも先頭に立ち、旧王たちの霊に誓って軍を守ると宣言した。

罠に嵌まった騎兵
突撃した先には断崖と落とし穴が待ち受けていた。先陣は次々と転落し、混乱が後続に広がった。さらに地面には油が撒かれており、ルシタニア軍は火矢を放って一帯を火炎地獄へと変貌させた。

炎と矢の集中攻撃
霧に照らされた火勢によってパルス軍の位置は露見し、塔車からの矢雨が襲いかかった。逃げ場を失った騎兵は次々と炎に呑まれ、混乱と潰走が拡大した。勇猛に火壁を越えた兵も矢と火に倒れ、戦場は屍山血河と化した。

アルスラーンの初陣の惨烈
アルスラーンは目の前で兵が焼き尽くされる惨状を目撃し、声を上げて絶望した。ヴァフリーズやダリューンの姿を必死に探し求めたが、火焔と煙に呑まれ、仲間の安否も知れぬ状況に追い込まれた。

王子孤立とカーラーンの出現
アルスラーンは戦場で孤立し、混乱の中で部下を失った衝撃に苛まれた。そこへ現れたのはカーラーンであり、彼は王子を発見したと告げ、従兵と共に近づいてきた。アルスラーンは一時的に救われたかに見えたが、その眼差しには不穏な影が潜んでいた。

第三章 黒衣の騎士

カーラーン失踪と裏切りの露見
本陣ではアンドラゴラス三世がカーラーンの所在を求めたが、誰もその姿を確認できず、裏切りの疑念が濃厚となった。ヴァフリーズは冷静に状況を分析し、カーラーンの動向が戦局を左右することを看破した。国王もまたその裏切りを認めざるを得ず、戦略の基盤が揺らいだ。

ダリューンへの命と黒衣の突入
ヴァフリーズは国王の護衛に残ることを選び、甥のダリューンにアルスラーン救出を託した。ダリューンは黒衣に身を固め、ただ一騎で炎と矢の乱舞する戦場を駆け抜けた。その勇姿は千騎に匹敵し、王子のもとへ急行する様は兵たちに畏怖を与えた。

退却進言と王の決断
ヴァフリーズは敗北を明言し、退却を進言した。アンドラゴラスは帝国の威信を守ろうと逡巡したが、王妃の安否を引き合いに出され、ついに退却を決断した。王の撤退は兵士たちに動揺を走らせ、戦列は一層崩壊へと傾いた。

退却の波紋と諸将の対立
「王が逃げた」という報は瞬く間に広がり、兵たちの士気を一気に奪った。

シャプールは憤激しつつも王の威信を守るべきと叫び、クバードは忠誠の在り方を巡って反論した。両者の衝突は決闘寸前に至るが、敵襲により中断され、それぞれが自軍を率いて離脱路確保へと転じた。

戦場の総崩れ
アンドラゴラスの退却は「不敗の王」の権威を失墜させ、ルシタニア軍は勝利を確信して進撃を強めた。パルス軍は潰走寸前に追い込まれ、戦場は完全に敵の掌中に落ちたのである。

黒槍の突入とカーラーンの裏切り発覚
ダリューンは霧と炎の戦場でアルスラーンを捜索し、カーラーンの部隊と遭遇した。周囲の兵がルシタニア軍であることから、彼の裏切りが露見した。カーラーンは「王国の未来」を口実にアンドラゴラス排除へ加担したことを認め、万騎長解任もその布石であったと嘲笑した。

激戦と王子救出の優先
ダリューンは圧倒的な剣技で敵兵を斬り伏せ、カーラーンを追い詰めた。しかし敵弓兵の援護によりカーラーンは退却、ダリューンも王子保護を優先し、深追いを断念して転進した。彼は血まみれのアルスラーンを発見し、自らの手で守ることを誓った。

渓路での伏兵と銀仮面の襲撃
退却途上、王一行は狭隘な道で伏兵の矢雨を受け、アンドラゴラスとヴァフリーズが重傷を負った。動揺の中、銀仮面の男が出現し、ヴァフリーズを一刀のもとに斬殺した。男は十六年の怨嗟を吐き出し、アンドラゴラスを捕らえて連行した。

退却決断と「不敗の王」の失墜
ヴァフリーズを失った王国軍は総崩れとなり、アンドラゴラスは退却を決断した。しかしその報せは「不敗の王が逃げた」と戦場全体に響き渡り、パルス兵の士気を大きく削いだ。王都防衛の希望は崩れ、戦局は完全にルシタニア側へ傾いたのである。

第四章 旧友との再会

王子と黒槍の合流
アルスラーンは孤立して戦っていたが、ダリューンが駆けつけて彼を救出した。ダリューンは王都への退却を促しつつ、まずは知勇兼備の友ナルサスを頼るべきだと提案した。アルスラーンは残兵を見捨てることに心を痛めたが、生き延びて復讐を果たす決意を固めた。

黒槍の救援と戦況報告
アルスラーンのもとに駆けつけたダリューンは、重傷を負ったシャプールの部下を救い出した。部下は「万騎長マヌーチュルフとハイルは戦死した」と報告し、シャプールについては言葉を濁した。続けて「アンドラゴラス王はすでに退却され、それにより軍は総崩れとなった」と語り、息絶えた。

退路の模索とナルサスの名
アルスラーンは父王を見捨てるに等しい選択に動揺したが、ダリューンは現状を冷徹に分析し、エクバターナへ戻る道は危険と断じた。その代わりに、北西の山中に隠棲する元同僚ナルサスを頼ることを決定した。アルスラーンはその名を初めて聞き、不安と期待を胸に従った。

戦場の夜と虐殺
ルシタニア兵は月明かりの下で負傷したパルス兵を次々と虐殺した。捕虜に慈悲はなく、宗教的狂信のもとで火を放ち、血の川が流れた。アトロパテネの戦いはパルス側に壊滅的損害を与え、騎兵五万三千、歩兵七万四千が戦死した。ルシタニア側も五万以上を失い、両軍の犠牲は凄惨を極めた。

勝者の影と「王捕縛」の報
ルシタニア陣営ではボードワンが勝利を誇示したが、モンフェラートはマルヤム滅亡の惨状を想起して沈鬱な表情を見せた。やがて「パルス王アンドラゴラスを捕縛した」との報がもたらされ、戦局の帰趨は決定的となった。

ナルサス邸への道
敗走の途上、アルスラーンとダリューンはナルサスが隠棲する山荘を目指した。アルスラーンは敗戦の痛みを口にしたが、ダリューンは「敗残兵に過ぎぬ我らこそ、ここから再起を図るのだ」と諭した。

ナルサスの人物像
移動の途中、ダリューンはナルサスの人物について語った。彼は天体の運行から地理・歴史に至るまで博識であり、戦略眼に優れる一方、唯一の欠点は「絵画の才が絶望的に乏しい」ことだと説明した。アルスラーンはその奇妙な逸話に戸惑いながらも興味を抱いた。

山荘の警戒とエラムの登場
夜更け、森に入った二人は矢を受けて立ち止まった。矢を放ったのはナルサスの侍童エラムであり、侵入者に警戒していた。ダリューンは名を明かして「ご主人に会わせよ」と呼びかけ、ようやく通行を許された。

再会の時
エラムに案内されて山荘へ向かうと、懐かしい声で迎え入れたのはナルサス本人であった。彼は豪胆にして皮肉を帯びた調子で登場し、アルスラーンとダリューンを迎え入れたのであった。

同シリーズ

漫画版

アルスラーン戦記 1

小説版

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アルスラーン戦記 1 王都炎上

その他フィクション

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フィクション(novel)あいうえお順

痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。4巻の表紙画像(レビュー記事導入用)

小説【防振り】「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 4」感想・ネタバレ

物語の概要

本作はVRMMOを舞台とするファンタジーライトノベルである。ゲーム初心者の少女・本条楓(メイプル) は「痛いのは嫌だから」と、キャラクターのステータスポイントを防御力に極振りするという異例の育成方針を採る。その結果、膨大な耐久力と無数の防御スキルを獲得し、「移動要塞型」の最強キャラとして注目を浴びる。プレイヤー仲間や敵対勢力が入り乱れる中、楓はNewWorld Online の仮想世界で圧倒的な硬さを活かしつつ冒険とイベントを楽しみ、想像を超えるトラブルやバトルを乗り越える。第4巻では、ギルド対抗戦や強力な敵勢力との戦いを経て、仲間とともに更なる高みを目指す展開が描かれる。

主要キャラクター

  • 本条楓(メイプル)
    本作の主人公であるゲームプレイヤー。防御に極振りしたため、ほぼダメージを受けない圧倒的硬さを誇る“最硬キャラ”となる。自らのスタイルを貫きつつ、自由で無邪気な冒険を楽しむ性格である。
  • 白峯理沙(サリー)
    楓の親友であり、リアルでもゲーム内でも行動を共にする頼れる仲間。高い回避能力とプレイスキルを持ち、楓のバランスを取る重要な存在である。
  • クロム
    大盾使いの上位プレイヤー。楓と同じタイプの防御キャラとして親しく接し、戦術面でも仲間を支える兄貴分的存在。
  • イズ
    生産特化型プレイヤー。装備やアイテムの製作に長け、仲間たちの装備強化や補給面で活躍する。
  • カスミ
    刀使いの実力者で、落ち着いた判断力を持つ女性プレイヤー。楓・サリーの“ぶっ飛んだコンビ”を見守りつつ協力する。

物語の特徴

本作の魅力は、通常の無双系やチート系とは一線を画す“防御特化という逆張りビルド”が主役となる点にある。敵からの攻撃を耐え抜く“耐久力”を主体に戦うという発想は、一般的なアタッカー至上主義とは対照的であり、読者に新鮮なプレイ感を提供する。さらに、VRMMOのギルド戦・イベント戦・ボス攻略といったオンラインRPG的要素に、ユーモラスで奇想天外なスキル連携や戦術が絡むため、戦闘だけではなく戦略性と笑いの両立が楽しめる。
また、第4巻ではギルド対抗戦や大規模戦闘が中心となり、メイプルの“無敵系防御力”に対して敵・仲間ともに多様な戦略を繰り出す構図が描かれている。単なる“硬い主人公が殴られないだけ”ではなく、仲間との連携・対戦相手の策・ゲーム世界の奥行きが物語を支えている。

本作は原作小説のみならず、コミカライズ・テレビアニメ化も実現しており、それらメディアの人気と相まってファン層を拡大している。

書籍情報

痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 4
著者:夕蜜柑 氏
イラスト:狐印  氏

発売日:2018年8月10日
ISBN:9784040726977

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あらすじ・内容

メイプル率いる【楓の木】、最強の聖剣使いとNo1ギルドと激突!?
新たな仲間とスキルを手に入れ、ギルド対抗戦に挑むメイプルのギルド【楓の木】。百人を超える大ギルド【集う聖剣】【炎帝ノ国】も参戦を表明する中、質・量ともに圧倒的な敵とメイプル達はどう戦うのか!?

痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 4

感想

本書は、ゲームとしての不利条件を、発想と役割分担でひっくり返す痛快さが際立った巻である。第四回イベントという大規模な舞台を使いながら、「数が多い方が強い」という当たり前の前提を、丁寧に崩していく構成が印象に残った。

今回のイベントは、ギルド対抗のバトルロワイヤル形式であり、拠点のオーブを守りつつ、他ギルドのオーブを奪うという競技性の高い内容であった。百人規模の大手ギルドが有利なのは明白であり、実際に「集う聖剣」と「炎帝ノ国」が頭一つ抜けた存在として描かれている。その中に、小規模ギルドである「楓の木」が自然に食い込んでくる流れが、この巻の一番の見どころである。

特に面白かったのは、楓の木が正面から数の差を埋めようとしない点である。メイプルの絶対的な防御力によってオーブを鉄壁に守り、攻撃面は双子の鉄球による投擲で一気に制圧する。この流れが非常にわかりやすく、それでいて爽快であった。中規模ギルドの攻勢が、ほぼ無傷のまま崩れていく様子は、ゲームバランス的にどうなのかと笑いながらも、作品としての魅力を強く感じさせる。

さらに印象的なのは、攻撃の主軸をサリー一人に任せている点である。回避特化という尖ったビルドを活かし、単独で敵ギルドのオーブを奪って得点を重ねていく姿は、派手さよりも「うまさ」が際立っていた。防御役、殲滅役、攪乱役が明確に分かれており、少人数ギルドならではの戦い方がきれいに機能している。

戦闘が中心の巻ではあるが、仲間同士の信頼関係も自然に伝わってくる。誰かが突出しているようでいて、実際には役割が噛み合っているからこそ成立している構図であり、楓の木というギルドの完成度が一段上がった印象を受けた。メイプルの無自覚な規格外さと、それを前提として動く周囲の感覚のズレも、相変わらず楽しい。

総じて本巻は、大規模イベントという舞台を使いながら、「数ではなく戦術で勝つ」面白さを存分に味わわせてくれる一冊であった。強敵がはっきり存在するからこそ、楓の木の異質さが際立ち、読後には不思議な納得感が残る。防御極振りという一点突破の設定が、ここまで広がるのかと感心させられる内容であり、シリーズの勢いをしっかり感じさせる巻である。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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登場キャラクター

ギルド【楓の木】

メイプル

防御に全振りして上位プレイヤーになった者であり、ギルド【楓の木】の中心である。サリーと行動を合わせる場面が多い。イベントでは防衛と制圧の両面で戦況を動かした存在である。
・所属組織、地位や役職
 ギルド【楓の木】、ギルドマスター。
・物語内での具体的な行動や成果
 第四回イベントで拠点防衛の要として布陣した。
 【水晶壁】で侵入経路を止めて迎撃した。
 夜戦でサリー救援のために強行介入した。
 【捕食者】などの能力を戦闘で使用した。
 【集う聖剣】の来襲を返り討ちにして拠点を守った。
 最終的にイベントの最終順位で【楓の木】を三位に導いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ギルド設置アイテムの報酬を受け取った。
 運営の見所編集で映像の多くを占める対象になった。

サリー

メイプルの友人であり、機動力と回避を軸に戦う者である。探索と奪取を担い、戦況整理も担当した。ギルド全体の行動計画を切り替える判断を担った。
・所属組織、地位や役職
 ギルド【楓の木】、主要メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
 単独偵察で資源不足と周囲の配置を把握した。
 中規模ギルドを乱戦へ誘導してオーブを奪取した。
 【炎帝ノ国】のオーブを強奪して離脱した。
 深夜に包囲されても回避と反撃で持ちこたえた。
 作り上げた広域マップ情報をカナデへ引き継いだ。
 「十位以内」を目的にした最適化へ方針を落とした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 作戦名「プランB」などの判断で行動の主導権を握った。
 観戦側で“徘徊ボス”に近い存在として扱われた。

クロム

大盾使いであり、前線維持と防衛の要員である。攻撃組にも防衛組にも参加し、状況に応じて役割が変わった。
・所属組織、地位や役職
 ギルド【楓の木】、主要メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
 攻撃担当として洞窟内の戦闘で前線を支えた。
 オーブの搬入と拠点管理を担った。
 大規模襲撃時に防衛線の一部を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 運営動画で戦闘面の評価が見直された。

カスミ

刀使いであり、探索と奇襲を担う者である。遠征や対人戦での勝利が明確に描かれた。
・所属組織、地位や役職
 ギルド【楓の木】、主要メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
 攻撃組として連携攻撃で敵を撃破した。
 爆撃を使った拠点攻略でオーブを回収した。
 【崩剣】シンと交戦し、撃破して撤退した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 戦闘の代償で装備耐久が大きく減った。
 帰還後にイズへ刀の作り直しを依頼した。

カナデ

本を使うタイプのプレイヤーであり、支援と拘束を担う者である。防衛と単独奪取の両方で動いた。
・所属組織、地位や役職
 ギルド【楓の木】、主要メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
 拠点防衛で【影縫い】などの拘束を使った。
 【ヒール】で前線維持を支えた。
 単独で夜にオーブを奪取して持ち帰った。
 イズと二人で拠点防衛を成立させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 サリーのマップ情報を記憶し、運用の中核になった。

イズ

生産職であり、物資と爆弾の供給を担う者である。素材変換と量産で継戦能力を支えた。
・所属組織、地位や役職
 ギルド【楓の木】、主要メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
 偽装用ローブを用意して情報を隠した。
 爆弾を量産して拠点攻略と防衛に使った。
 【ドーピングシード】を量産して配布した。
 カナデと二人で拠点防衛を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 補給設計によりギルドの長期行動を成立させた。

マイ

攻撃に極振りした者であり、ユイと対で動く場面が多い。拠点防衛では火力の要であった。
・所属組織、地位や役職
 ギルド【楓の木】、主要メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
 鉄球投擲で侵入者を撃破した。
 イベント中に【飛擊】を取得した。
 ドレッド侵入時に時間を稼いだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ユイと組んだ「二本目の大槌」の奇策を実戦で出した。

ユイ

攻撃に極振りした者であり、マイと連携して戦う。拠点戦と迎撃戦で成果が描かれた。
・所属組織、地位や役職
 ギルド【楓の木】、主要メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
 鉄球投擲で侵入者を撃破した。
 イベント中に【飛擊】を取得した。
 ドレッド侵入時に衝撃波で迎撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 同一武器を使った二連の衝撃波で想定外を作った。

シロップ

メイプルの行動に同行し、移動と防衛で使われた存在である。壁の生成などで戦闘の形を変えた。
・所属組織、地位や役職
 メイプルの同行戦力。
・物語内での具体的な行動や成果
 【城壁】で遮断壁を作った。
 【大自然】で蔓を伸ばし、拘束空間を作った。
 空中移動でメイプルの行動範囲を広げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 移動手段として作戦の制約と利点の両方になった。

サリーの行動に同行し、隠密と妨害に使われた存在である。
・所属組織、地位や役職
 サリーの同行戦力。
・物語内での具体的な行動や成果
 【瞬影】で姿を消す手段として使われた。
 【狐火】で追手の足止めを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 夜襲での逃走と強奪の安定に寄与した。

ギルド【集う聖剣】

ペイン

第一回イベント一位であり、大規模ギルドの中心戦力である。【楓の木】との勝負を求めて来襲した。
・所属組織、地位や役職
 ギルド【集う聖剣】、上位戦力。
・物語内での具体的な行動や成果
 拠点来襲でメイプルを瀕死まで追い込んだ。
 メイプルの反撃で捕食されて敗北した。
 戦後に次戦の対策方針を示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 来襲は合理性より「勝ちたい」という動機で描かれた。

ドレッド

ペインと並ぶ上位戦力であり、遠征隊を率いた。サリーと交戦し、後に拠点へ侵入した。
・所属組織、地位や役職
 ギルド【集う聖剣】、上位戦力。
・物語内での具体的な行動や成果
 サリーとの一騎打ちで撤退した。
 拠点へ侵入し、マイとユイを撃破した。
 帰還したメイプルに撃破された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 敗北後に「次は本気で狩りに来る」と言い残した。

フレデリカ

拠点防衛担当として描かれ、支援や防御系の多重展開を使う者である。
・所属組織、地位や役職
 ギルド【集う聖剣】、拠点防衛担当。
・物語内での具体的な行動や成果
 ドラグと二人で六十人規模の襲撃を迎撃した。
 夜戦で包囲側の指揮官として登場した。
 拠点来襲で撃破された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 MPが尽きない理由をはぐらかす描写がある。

ドラグ

拠点防衛担当として描かれ、広範囲の地形攻撃で戦線を作る者である。
・所属組織、地位や役職
 ギルド【集う聖剣】、拠点防衛担当。
・物語内での具体的な行動や成果
 【地割れ】などで襲撃隊の足を止めた。
 拠点来襲で【楓の木】側と交戦した。
 戦闘の流れで撃破された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 追撃を断念する判断を取る場面がある。

ギルド【炎帝ノ国】

ミィ

上位プレイヤーであり、強い火力で攻撃を担う者である。サリーにオーブを奪われ、対策と撤退を繰り返した。
・所属組織、地位や役職
 ギルド【炎帝ノ国】、上位戦力。
・物語内での具体的な行動や成果
 攻撃側で敵ギルドを壊滅させた。
 サリーにオーブを奪われた。
 メイプルの襲撃に対して迎撃に入った。
 【火炎牢】でメイプルを削る戦術を取った。
 最後に【自壊】で撤退を成立させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 切り札消耗後に撤退を決断し、勢力が離脱した。

マルクス

罠を扱う者であり、防衛の準備と設置で戦場を作る。罠情報の流出も弱点として描かれた。
・所属組織、地位や役職
 ギルド【炎帝ノ国】、防衛担当。
・物語内での具体的な行動や成果
 設置型の罠で侵入者を削った。
 迎撃時に罠構成を見直した。
 メイプル襲撃で撃破された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 罠地帯の強さが情報漏れと表裏で描かれた。

ミザリー

支援と攻撃を切り替える者であり、防衛戦で回復と貫通攻撃を使った。
・所属組織、地位や役職
 ギルド【炎帝ノ国】、防衛担当。
・物語内での具体的な行動や成果
 範囲回復と範囲攻撃を使い分けた。
 迎撃で貫通系の攻撃を撃ち込み時間を稼いだ。
 メイプルの追撃で撃破された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 マルクスの再設置に付き添い不安を抑える描写がある。

その他

シン

【崩剣】の使い手として登場し、カスミの因縁の相手である。
・所属組織、地位や役職
 所属は本文では不明である。
・物語内での具体的な行動や成果
 複数の剣を展開する戦法でカスミと交戦した。
 戦闘の末にカスミに撃破された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 撃破の代償としてカスミの装備が大きく損耗した。

展開まとめ

プロローグ

ギルド【楓の木】の結成とメンバー集結
防御力に極振りしたことでトッププレイヤーの一角となったメイプルは、友人のサリーと共にギルド【楓の木】を結成した。その後、同じ大盾使いのクロム、刀使いのカスミ、【神界書庫】でランダムにスキルを得られるカナデを誘い、戦力を整えていった。さらに、生産職のイズと攻撃極振りのマイ、ユイを加え、ギルドとしての体制が固まった。

第四回イベントの概要と不利な条件
全員で参加することとなった第四回イベントは、時間加速下で行われ、拠点に設置されたオーブを奪うか守り切ることで得点を競う形式であった。死亡するたびに能力値が低下し、五回死亡するとリタイアとなる厳しいルールが課されており、人数で勝る大規模ギルドに比べて【楓の木】は不利な立場にあった。

上位入賞を目指す決意と出陣
不利な状況であっても上位を狙うため、【楓の木】は事前に作戦を練っていた。メイプルの上位を目指すという言葉に全員が士気を高め、イベント開始とともに光に包まれて転送されていった。視界が白く染まる中、メイプルは拳を握り締め、戦いへの決意を新たにしたのであった。

一章 防御特化と第四回イベント。

洞窟拠点の把握と防衛方針の決定
転送後、メイプルたちの前に現れたのは緑色に輝くオーブと台座であり、洞窟最深部が【楓の木】の拠点であると判明した。周囲は守りやすい地形で、通路は三本のみであった。サリーとカスミが探索した結果、二本は行き止まりであり、残る一本が地上への一本道であることが分かり、防衛に適した構造であると判断された。

攻撃組と防衛組への分担
作戦に基づき、機動力と攻撃力に優れるサリー、カスミ、クロムが攻撃を担当し、拠点防衛にはメイプルを中心にカナデ、イズ、マイ、ユイが残る布陣となった。防衛側はメイプルの存在を隠すため、イズが用意した外見のみを覆うローブを着用し、少人数ギルドを狙う敵を迎撃する方針を取った。

攻撃組による最初の奇襲とギルド壊滅
攻撃組は森で他ギルドの五人組を発見し、サリーの奇襲から連携攻撃に移行した。誘導と待ち伏せにより敵を分断し、カスミとクロムの連携で次々と撃破した。意図的に一人だけ逃がし、その後を追って拠点を突き止め、洞窟内の中規模ギルドと交戦した。

中規模ギルドとの正面戦闘
洞窟内では三十人規模の敵と正面衝突となった。クロムは集中攻撃を受けながらも高い防御力と回復能力で前線を維持し、サリーとカスミが各個撃破を進めた。途中、クロムが麻痺状態に陥るも、装備スキルにより致命的状況を凌ぎ、最終的に敵ギルドを壊滅させオーブを回収した。

拠点防衛での迎撃戦
その頃、【楓の木】の拠点には別のギルドが侵入していたが、マイとユイの極端な攻撃特化による鉄球投擲が圧倒的な威力を発揮した。盾や武器ごと敵を粉砕し、侵入者は為す術なく全滅した。防衛側はほぼ消耗することなく拠点を守り切った。

サリーによる単独偵察と資源状況の把握
戦闘後、サリーは単独でフィールドを偵察し、周囲に複数のギルドが点在していることを確認した。同時に、回復アイテムや素材が乏しく、長期戦ではMP枯渇が深刻になると判断した。これにより、一日目のうちに積極的にオーブを確保する必要性を認識した。

剣ノ舞を用いた準備と中規模ギルドへの奇策
サリーは【剣ノ舞】の効果を最大まで高めるため、意図的に敵を誘導し回避を重ねて準備を整えた。その後、朧と共に中規模ギルドの拠点へ単独侵入し、幻影と高速移動を駆使して防衛を撹乱した。正面戦闘を避けたままオーブを奪取し、包囲を突破して脱出に成功した。

乱戦を利用した二つ目のオーブ奪取
さらにサリーは追手を別の中規模ギルドへ誘導し、両ギルドを衝突させることで大規模な乱戦を引き起こした。その隙に再度潜入し、防衛の薄い方向から奇襲をかけて二つ目のオーブを奪取した。追撃を振り切り、安全な【楓の木】へと帰還した。

一日目の主導権確保
サリーは回収したオーブをクロムに託し、防衛を任せた上で、さらなるギルドを狙う決断を下した。一日目に集中的に行動することで、大規模ギルドとの差を埋める狙いであった。こうして【楓の木】は第四回イベント初日から主導権を握り、戦場を大きく揺るがす存在となったのである。

オーブ搬入と防衛担当の再編
クロムはサリーから受け取ったオーブを拠点へ持ち帰り、メイプルたちの元に置いた。サリーの戦果を称えつつ、防衛担当はカナデ、マイ、ユイ、メイプルの四人に決定した。クロム、カスミ、イズの三人は奥で待機し、危険が生じた場合は凌いだ後に偵察と敵削りに出る方針となった。

水晶壁を軸にした迎撃準備
メイプルは攻撃参加を控え、相手の侵攻妨害に徹するため【水晶壁】を使える大盾へ装備を変更した。マイとユイは大槌を一本に絞り、切り札を温存する構えを取った。拠点側はメイプルの妨害とマイ、ユイの火力を主軸に、侵入者を短時間で叩き潰す形を固めた。

中規模ギルドの雪崩れ込みと迎撃
十五分後、青色装備の中規模ギルドが殺気立ったまま雪崩れ込み、魔法部隊の面攻撃で一気に制圧を狙った。しかし爆炎の後に現れたのは無傷の四人であり、天使の翼が光るプレイヤーの姿も見えた。敵は大盾持ちが防いだと判断して接近し、二人の大槌使いを後回しにして突破を試みた。

水晶壁と大槌の連携での殲滅
メイプルが【水晶壁】で進路を遮断すると、よろめいた侵入者にマイとユイの【ダブルスタンプ】が叩き込まれ、次々に撃破が進んだ。通常なら耐えられるはずの二連撃が一撃死へ変わったことで、敵は状況を誤認しつつも人数の優位を頼みに回り込みを決断した。

カバームーブによる範囲移動と影縫いの拘束
敵が翼持ちの排除を命じたのに対し、拠点側は大槌の二人を前進させ、メイプルが【カバームーブ】を連続使用して効果範囲を一気に後衛へ到達させた。危険を察した敵が退避を叫ぶ中、最奥にいた本棚を浮かべるプレイヤーが【影縫い】を発動し、敵全員を三秒間拘束した。拘束中に大槌が後衛を粉砕し、拘束が解けた時点で後衛は壊滅し、指揮官も倒され、前衛は退路を失った。敵はオーブ奪還を断念し、他ギルド襲撃へ切り替える判断に至った。

観戦用の町と【楓の木】への評価の揺れ
戦闘と同じ時間加速下で観戦できる町では、モニターで状況が確認でき、途中退出やリタイア者の受け入れも行われていた。観戦者の多くは大規模ギルドの勝利を予想し、【集う聖剣】や【炎帝ノ国】が優勢と語っていたが、【楓の木】の映像が流れるたびに意見は揺らぎ、異質さにざわつきが広がった。

サリーの小規模ギルド奇襲と次の探索方針
一方のサリーは崖下の小規模ギルドを発見し、朧の【瞬影】で姿を消して茂みに潜み、警戒が分散していることを確認した。上方監視役をあえて叫ばせてから倒し、注意が上に向いた四人を地上から斬り伏せてオーブを奪取した。オーブ所持で位置が露見する危険を踏まえつつ、さらなる探索を優先し、大規模ギルドの位置把握も含め未探索方向へ走り出した。

拠点防衛の成果と情報秘匿
防衛側は【身捧ぐ慈愛】以外の重要スキルを見せず、同スキルが防御貫通に弱いという情報も与えないまま迎撃を完遂した。疲労したマイとユイは休息に入り、カナデは再挑戦が起きにくいと見立て、メイプルも奇襲の難しさを踏まえて休憩を選択した。

偵察部隊狩りとドーピングシードの運用
クロム、カスミ、イズの三人は予定通り偵察部隊を屠っていた。イズは装備スキル【新境地】で作成できる【ドーピングシード】を大量生産しており、ステータスを一つ上げる代わりに別のステータスが下がる効果を利用してメンバーに配布していた。イズは【天邪鬼な錬金術】でゴールドを素材へ変換し、シードの素材を確保して量産を成立させた。カスミが【遠見】で標的を探し当てると、三人は先回りして集団を討伐し、戦況の主導権を維持する動きへ移った。

二章 防御特化と敵二人。

【集う聖剣】拠点の防衛担当と規模差
カスミたちが偵察部隊を屠っている頃、【楓の木】から遠く離れた【集う聖剣】拠点ではフレデリカとドラグが防衛を担当していた。【集う聖剣】は第一回イベント一位のペインと二位のドレッドが立ち上げた大規模ギルドであり、拠点の人数とレベルは【楓の木】と比較にならない規模であった。

地形不利を力で覆う迎撃態勢
【集う聖剣】のオーブは平地に囲まれた岩場にあり、侵入経路が多く、天井もないため奇襲も起こり得る配置であった。退屈を持て余していた二人の元へ、六十人規模の敵襲が報告されると、フレデリカとドラグは防衛部隊を下がらせ、二人で迎撃する判断を下した。

ドラグの広範囲制圧とフレデリカの多重詠唱
ドラグは【地割れ】で前方二十メートルに亀裂を無数に生み、敵の足を止めた。フレデリカは【多重詠唱】で【多重炎弾】を放ち、足を取られた敵を次々撃ち抜いた。ドラグは【重突進】で踏み込み、【バーンアックス】で高火力を叩き込み続けたが、飛来する攻撃はフレデリカの【多重障壁】【多重水壁】によって威力を削がれ、ドラグの強引な戦い方が成立した。

押し切りと撤退、そして二人の余裕
ドラグは【グランドランス】で岩槍を突き上げ、さらに【ノックバック付与】により防御した相手も吹き飛ばして戦線を崩した。敵は逃走を試み、残り十人程度まで減った段階でようやく全力で離脱したが、ドラグは足の差を理解して追撃を断念した。二人は勝ち切った後、フレデリカのMPが尽きない理由をはぐらかしつつ、【楓の木】ともいずれ戦いたいと語った。

ドレッドの遠征とサリーとの遭遇
ペインとドレッドは効率化のため別々に攻撃へ出ており、ドレッドは三十人を率いてオーブ二つの確保に成功していた。次の標的へ向かう途中、ドレッドは静かに佇むローブのプレイヤーを見つけ、直感で危険を察して部下を帰還させた。ローブの人物はサリーであり、ドレッドはここで潰す必要があると判断して二本の短剣を抜いた。

回避同士の拮抗とドレッドの勘
戦闘はスキルを乱用せず、互いの攻撃を捌き合う形で進んだ。ドレッドの方が速度で勝り攻撃回数を稼いだが、決定打には至らなかった。ドレッドが【超加速】で踏み込んだ際、勘だけを理由に急停止して飛び退き、サリーは別種の回避技術を目の当たりにした。

【神速】と偽装された【流水】
ドレッドは二つ名にも関わる【神速】を発動し、十秒間姿を消した。サリーは音と風の流れで位置を探り、あえて隙を作って攻撃を誘導し、存在しないスキル名【流水】を叫んで短剣を弾き返した。サリーが距離を取ると、ドレッドは追撃せず撤退し、サリーはフレデリカとドレッドが同じギルドだと確信しつつ、勘で避ける技術の練習材料を得たと整理した。

ドレッド側の違和感と対策の芽
ドレッドはサリーの回避能力と感覚を評価し、ペインとメイプルに並ぶ危険度を想定した上で、自分が生き残った理由に疑問を抱いた。思考を放り投げた後、ペインに提案して自分たちのペースで倒しに行く構想を抱き、敵を狩る者の目つきへ変わった。

サリーの追加戦果と帰還判断
サリーはドレッド遭遇の前後でさらにオーブを掠め取り、小規模ギルドも潰してオーブ三つを保持する状態になった。時間経過とともに戦闘は激化し、夜になれば視界が悪化して襲撃はさらに苛烈になると見越したサリーは、得点加算のタイミングも意識しつつ帰還を選んだ。

【楓の木】防衛の継続とマイ・ユイの新スキル取得
拠点では侵入者が三人現れ、マイとユイが鉄球投擲で撃破した。二人は【投擲】で一定回数とどめを刺したことで【飛擊】を取得し、離れた敵へ衝撃波を飛ばせるようになったが、切り札として実戦投入は控え、奥で試すだけに留めた。カナデは【影縫い】の消費に絞り、メイプルは【身捧ぐ慈愛】を中心に夜へ備え、疲労したマイとユイには休息が指示された。

カスミとイズの爆撃攻略と堅実な回収
クロムの報告により、カスミとイズは洞窟拠点の小規模ギルドを攻略中であった。イズはゴールドを素材に変換し、大型爆弾をどこでも作れる強みを活かして量産し、カスミが入口の坂へ転がして爆撃を続けた。悲鳴が止んだ後、カスミが先頭で突入し、辛うじて生き残った敵を【一ノ太刀・陽炎】で斬り伏せた。サリーだけがこの攻撃を躱して反撃に繋げたことを思い返しつつ、カスミはオーブを回収し、復活される前に拠点へ戻る堅実な行動を選んだ。

勢力図の推移と【炎帝ノ国】の布陣
イベント序盤の上位争いは、大規模ギルドと特異な小規模ギルド一つが主導し、大規模勢では【集う聖剣】と【炎帝ノ国】が一歩抜け出していた。追走する形で【楓の木】が続いていた。【炎帝ノ国】は木の点在する草原地帯でオーブを防衛しており、防衛担当は八位の【トラッパー】マルクスと十位の【聖女】ミザリーであった。

マルクスの罠とミザリーの万能支援
ミザリーは範囲回復の専門家でありつつ範囲攻撃も得意で、状況に応じて治療と破壊を切り替えられる存在であった。マルクスは味方以外が侵入すると発動する設置型魔法を扱い、煙幕や火柱など多種の罠を戦場に仕込めた。ただし事前設置が必須のため攻勢には不向きで、防衛に回っていた。罠の情報は人づてに漏れ、ギルド規模が大きいがゆえの情報流出という弱点も示された。

罠地帯の機能と“勘”に支えられた配置
マルクスは不安を口にしながらも、彼の罠は実戦で猛威を振るった。罠は発動まで見えず、発動時点では回避が困難で、さらに設置数と位置取りが巧みであったため侵入者は次々に削られた。火柱や爆音が発生すれば侵入方向も把握でき、防衛側は対応しやすくなる。配置は一見すると適当にも見えたが、侵入者が面白いほど踏み抜くため、ギルドメンバーはその理屈を掴めず、結局は上位陣特有の“感性”と“勘”が支えているのだと整理された。

ローブの侵入者と罠の突破
襲撃者が減り始めて安堵した矢先、ミザリーは連続する火柱と爆炎を確認し、現場へ向かった。そこにはローブ姿の人物が一人いるだけであり、その人物は罠を踏んだ直後、まるで位置を把握していたかのように俊敏に回避していた。ローブの人物は「恐怖センサー」をより正確にしたいと呟き、そのまま離脱した。ミザリーは常軌を逸した存在だと評し、マルクスの再設置に付き添って不安を抑えた。

ミィの蹂躙と燃費の悪さ
攻撃に出ていた四位【炎帝】ミィは、杖を武器に先頭へ立ち、敵に退路を示しつつも容赦なく押し潰した。ミィは【炎帝】の発動で炎球を操り、【噴火】や【爆炎】など派手な高火力で敵を焼き尽くした。圧倒的火力は萎縮を生む一方、消費が激しいため、後方には大量のMPポーションを運ぶ補給部隊が随伴していた。

サリーの奇襲とオーブ強奪
ミィがギルドを滅ぼし、オーブ回収を指示して達成感に浸った瞬間、隠れて観察していたサリーが動いた。回収役のプレイヤーは即座に倒され、サリーはオーブを奪って離脱した。ミィは相手の危険度を直感で把握し、既に確保済みのオーブを持って部隊を撤退させ、自身は【フレアアクセル】で追撃したが姿を見失った。帰還後、ミィはオーブを一つ奪ったが一つ奪われた事実を報告し、再出撃の準備を命じつつ、内心ではサリーへの警戒を強めた。

観戦エリアの噂と“徘徊ボス”像
観戦エリアでは、臨時ギルドの参加者やリタイア組が強者に倒された体験談を語り合っていた。ペインの隙のなさや、サリーが木の上から降りて首を狩ったという話が共有され、サリーは“徘徊ボス”に準じる存在として認識されていった。

サリー帰還と【楓の木】のオーブ増加
サリーは危険を見て【楓の木】へ帰還し、オーブ四つを持ち込んだ。合流したメンバーの戦果を合わせると奪取は計八個に達していたが、三時間経過で元の台座に戻った分もあり、手元に残るオーブと自軍オーブの防衛が引き続き重要となった。サリーは小規模ギルドから奪った分が奪還に来る可能性を告げ、カナデはその異常な手腕に改めて言葉を失った。

即席同盟五十人の突入と“八人戦闘”の開始
クロムが気配を察した直後、複数の小規模ギルドが即席同盟を組んだ五十人規模の連合軍が突入した。六個のオーブと八人の防衛戦力を前に、連合軍は物量差と強欲で突撃し、【楓の木】は初めて八人全員が戦闘に関わる形で迎撃を開始した。

【身捧ぐ慈愛】を軸にした前進と前衛の粉砕
メイプルは【身捧ぐ慈愛】で自傷しつつ防衛線を維持し、減ったHPはカナデが即座に【ヒール】で戻し、隙を作らなかった。正面衝突の中、マイとユイは【ダブルスタンプ】で轟音と共に敵を弾け飛ばし、サリーとカスミは逃れた相手を狩り取った。

裏抜け狙いへの封殺とカナデの拘束
連合軍の一部は前衛を避けてオーブへ走るが、そこへイズの爆弾が降り注ぎ、突破者はカナデの低威力高確率麻痺【パラライズレーザー】で動きを止められた。麻痺した敵はサリーに仕留められ、連合軍は連携の粗さも相まって急速に崩壊し、心が折れた者から敗走に入った。

防御貫通への一矢と【ピアースガード】
なおも一矢報いようとした者は【跳躍】で前線を抜け、天使の羽を持つ支援役へ【ディフェンスブレイク】を叩き込もうとした。だがメイプルは【ピアースガード】で防御貫通の要素を奪い、渾身の一撃を無慈悲に弾いた。最期に襲撃者が見たのはフードの下の顔がメイプルだと判別できた瞬間であり、直後に大槌で打ち据えられて終わった。

完全敗北と夜の到来
連合軍は誰一人としてオーブに触れられず、完全敗北に終わった。ただし彼らは史上初の【楓の木】“八人戦闘”を体験したという点では、奇妙な意味で幸運でもあった。そうして空は闇に包まれ、夜襲と暗殺が本格化する初めての夜が訪れた。

三章 防御特化と夜。

夜の開始とサリーの獲物狩り
夜が訪れると暗殺と奇襲が本格化し、サリーは防衛を早めに抜けてフィールドを走り回った。三時間の防衛を成功させた【楓の木】はポイントを増やし、サリーはその間にオーブ二つを奪い、倒した相手は数え切れないほどに積み上げた。サリーは地形や修理アイテムの位置、ギルド規模、見張りルートや待ち伏せ地点まで書き込んだ膨大なマップ情報を武器にし、倒しやすいギルドが残る一日目のうちに先行逃げ切りを狙って動き続けた。

マイとユイの自分達なりの戦法模索
拠点ではマイとユイが、自分達は通常攻撃を避けづらいという弱点を確認しつつ、サリーの短剣動作なら比較的読みやすいと整理した。フルメンバー戦で全員が個性を発揮する姿を見たことで、二人も長所を最大限に使える戦法を考え始め、突飛だが二人なら成立する作戦を共有して笑い合い、細部の詰めに入った。

カナデの単独行動と中規模ギルドからの奪取
カナデはサリーの負担を減らすため偵察兼オーブ奪取に出た。記憶していた情報を頼りに夜闇に光るオーブを発見し、【魔導書庫】で魔導書を選定したうえで【巨人の腕】を使用し、離れた位置からオーブを掴み取った。さらに【フレアアクセル】で加速して追手を振り切り、【楓の木】へ持ち帰って戦力支援を果たした。

サリーの夜襲と“逃げ続ける”前提の強奪連鎖
サリーは朧と共に小規模ギルドへ忍び寄り、見張り人数や松明の明るさを見切って戦闘を避ける方針を取った。疲労を自覚しつつも【超加速】で一直線にオーブへ到達し、邪魔を切り捨て妨害を差し込みながら奪取して即離脱した。インベントリに複数のオーブを抱える以上、常に追手が来る前提で止まれず、朧の【狐火】で足止めしつつ暗闇へ紛れて位置を切り、必要なら別ギルドへ突っ込んで混乱を作るという逃走術を磨いていった。

メイプルの防衛術【水晶壁】と前線の圧殺
拠点防衛ではメイプルが【水晶壁】を活用し、突然の障害物で侵入者を止めて撃破する型を確立した。さらに【身捧ぐ慈愛】で前衛を“死なない”状態に押し上げ、マイとユイやクロムが被弾し続けても前線が崩れない構造を作った。回避をほぼ捨てて攻撃に時間を振り切れる【楓の木】に対し、侵入側は攻撃を避ける必要があり、攻撃時間の差が殲滅力の差として現れ、侵入者は順当に敗北した。

深夜の交代とサリーの孤立
零時を前に交代制で休む判断が下り、疲労がピークのマイとユイが先に休む段取りとなった。サリー、イズ、カスミは外出中でローテに組み込めず、人数が減る深夜帯の防衛が課題として残った。その一方で深夜一時、サリーは一度も帰還せず奪取を続け、インベントリには十個のオーブが溜まっていた。しかし索敵能力の低下で気づかぬうちに大規模な包囲に捕まり、百を超える潜伏から居場所が割れていることを悟った。奪ったオーブのどれかが大規模ギルドと繋がっていたと推測しても、特定できず捨てて逃げる判断は取れなかった。

【集う聖剣】包囲戦とサリーの限界突破
空に小さな太陽が浮かぶような照明魔法で逃走が封じられ、包囲側の指揮官の声から相手がフレデリカ率いる【集う聖剣】だと判明した。サリーはドーピングシードを飲み、殺気をまとって対峙した。サリーは【攻撃誘導】で相手の動きを変調させ、迷いと焦りを誘発しながら回避とカウンターを重ねた。恐怖センサーすら実用域で機能し、剣が遅く見えるほどの覚醒状態に入ったことで、攻撃は当たり、相手の攻撃は外れ続けた。さらに【背負い投げ】で魔法攻撃を“投げた相手”に遮らせ、自身へ届かせないなど、予想外の連鎖で戦場の主導権を握った。

崩れ落ちる膝とメイプルの強行救援
消耗の限界は突然訪れ、サリーの足は止まり膝から崩れ落ち、警戒されつつ隙間なく包囲された。サリーが「次は負けない」と呟いた直後、降ってきた流星のような爆炎が戦場を割り、立ち上がったのは白い翼を持つ黒鎧の少女メイプルであった。メイプルはシロップに【城壁】を命じ、天高く伸びる壁でフレデリカ達との間を遮断した。

自爆ロケット脱出と上空殲滅【毒竜】
メイプルはサリーを掴ませると【砲身展開】で壁内を兵器で埋め、砲口を下に向けて自爆同然に噴射し、二人をロケットのように上空へ打ち上げた。最高点へ至る間に【全武装展開】と【攻撃開始】を連続し、レーザーの雨で地面を穿ち、さらに【毒竜】で毒の海を作り出した。対メイプル装備ではない【集う聖剣】側は【毒無効】が乏しく、結果としてサリーが倒した数を遥かに上回る規模で送還者が発生した。生き残ったフレデリカは惨状の中でドレッドへ望みを託し、起死回生を狙う決意を固めた。

マイとユイ対ドレッドと“二人だけの隠し玉”
拠点ではメイプル不在の隙を突き、ドレッドが侵入した。マイとユイは【ドーピングシード】でSTRを上げ、ユイは【飛翔一撃】の衝撃波で迎撃するが、ドレッドは回避しながら距離を詰めた。マイが短剣の動作を身体で覚えていたため一撃目を偶然回避するも、追いつかれた局面でマイは捨て身で大槌を投げつけた。これは外す前提の囮であり、ドレッドが驚いた瞬間に、ユイが“二本目の大槌”として同じ武器を手に戻したことで、想定外の二回目の衝撃波が成立し、ドレッドを壁へ叩きつけた。二人は初めて自分達の力で一皮むけたが、なお積み上げの差は埋まらず、ドレッドのHPが1残った状態でマイが斬られ、続いてユイも倒された。

時間稼ぎの勝利と“勝負の敗北”
ドレッドは勝ったと判断してオーブへ向かうが、その瞬間に爆炎と共にサリーを抱えたメイプルが帰還した。マイとユイが稼いだ数分は値千金であり、ドレッドは試合には勝っても、結果として勝負には負けた形となった。

四章 防御特化と解放。

能力解禁の相談と初公開【捕食者】
メイプルは拠点へ戻る途中でサリーと「二日目にかけて能力を一つ解禁する」方針を決め、消費が少なく使い勝手の良いスキルを選んだ。拠点へ現れたドレッドに対し、メイプルは即座に【捕食者】を発動し、地面から二匹の醜悪な化物を出現させた。さらにシロップの【大自然】で蔓を伸ばし、内部空間を圧縮しながらドレッドを閉じ込め、逃走を封じたうえで撃破した。ドレッドは敗北を認めつつも「次は本気で狩りに来る」と獰猛に言い残し、策を匂わせて光となった。

帰還後の謝罪とオーブ十個の搬入
隔離を解除したメイプルはサリーの元へ戻り、無茶をしたことを叱って頬を引っ張った。復活したマイとユイへ二人は謝罪したが、マイとユイは強敵相手にオーブを守り切れたことを誇り、役に立てた点を喜んでいた。サリーはインベントリから十個のオーブを出し、戦果の大きさを示した。

サリーのマップ継承と「プランB」発動
サリーはカナデを呼び、十二時間走り続けて作り上げた広大なマップ情報を提示した。ギルド位置や規模、各種要素が詰まった情報を、サリーは限界のためカナデに書き写しを依頼し、カナデは即座に記憶して対応した。ここでサリーは「プランB」を宣言し、防衛の枷を外してメイプルを外へ放つ方針へ切り替えた。メイプルは移動手段が兵器破壊による打ち上げであるため、距離次第では一日に二往復が限度と見積もり、遠方から順に回収して帰還する段取りを整えた。

二日目の朝、メイプル解放の侵略開始
翌朝、夜襲が減って安堵していた中規模ギルドに「敵は一人」と警告が走り、漆黒装備のメイプルが真正面から歩いて現れた。メイプルは【捕食者】を使い、純粋な暴力で前衛を食い散らかしながら前進し、ギルドを正面から叩き潰してオーブを奪っていった。サリーのマップで探索が不要になり、メイプルは最短距離で標的へ到達できたうえ、正面制圧ゆえ追手もほとんど発生しなかった。

拠点側の停滞とカスミの単独狩り
拠点ではサリーが眠り続け、オーブも自軍分しかないため取り返しの襲撃が起きにくく、待機時間が増えた。クロムの提案でカスミが外へ出て競争相手を減らす役を担い、森で背後奇襲を繰り返してプレイヤーを削った。これは一日目にイズと連携して近場のデス数を増やしていた延長であり、【楓の木】襲撃者の減少にも効いていた。

カスミ対【崩剣】シン、装備破壊の代償勝利
カスミは森を抜けた先で、第一回イベントで因縁のある【崩剣】シンと遭遇した。シンは盾と片手剣を基盤に、剣を崩して宙に複数展開する戦法で射程と手数を押し付け、カスミは受け流しとHPの厚みで耐えながら接近機会を狙った。カスミは【一ノ太刀・陽炎】や連撃で押し込み、【七ノ太刀・破砕】で盾の耐久を削る方針へ転じたが、シンは二度目の【崩剣】で剣を二十本に増やし面攻撃へ拡張した。追い詰められたカスミは【始マリノ太刀・虛】を発動し、姿を消して背後から貫く形でシンを撃破したものの、代償として装備耐久が大幅に削れ、装飾以外が崩壊して刀も失った。カスミは予備武器で撤退し、帰還後にイズへ刀の作り直しを依頼して立ち直った。

メイプルの目立つ空中移動と正面制圧の合理性
メイプルは歩行を嫌ってシロップに乗り空を飛び、【アシッドレイン】で削ってから【捕食者】で刈り取り、オーブを回収していった。毒や正面破壊でギルドを潰すため、サリーのように追跡戦が起きにくく、予定より早いペースでオーブが集まった。

争奪戦場への落下介入と「分からないなら全滅」
メイプルは複数ギルドが争う戦場に、次に狙うオーブがあると知ると躊躇なく中心へ飛び降りた。即座に【毒竜】を放ち、毒の噴水と毒地形で近寄れない状況を作ったが、オーブは既に誰かに持ち去られていた。メイプルはシロップの【大自然】で蔓の牢獄を展開し、サリーのメモ「上手く取れない時は全滅させよう」に従って、誰が持っているか不明なら全員を倒す方針を取った。足の遅さで捕まえきれないと判断すると、自分を蔓の球体に閉じ込めて上空に吊り、【砲身展開】から【攻撃開始】で毒地形とレーザーを重ね、回避不能の圧力で残党を削り切った。最終的に毒に浸かったオーブを回収し、二日目昼前のうちにさらに戦果を積み増した。

観戦側の恐怖拡散と危険度の急上昇
拠点は暇を持て余す一方で、観戦エリアでは「毒以外も使える」「砲撃や翼」「両脇の醜悪な化物」などが話題となり、メイプルの危険度が倍増したと認識されていった。さらに、天使のような翼は範囲内の攻撃を肩代わりするような挙動ではないかという推測も流れ、対峙そのものが悪夢扱いされ始めた。メイプルだけでなくマイとユイの大槌の異常火力も話題となり、「一般人が近づけない」「ランカーと化物の領域」という空気が強まっていった。

五章 防御特化と出撃準備。

サリーの覚醒と次の動きの再設計
二日目の昼過ぎ、【楓の木】の奥でサリーが目を覚まし、マップでメイプルの帰還ルートを確認した。防衛が無事であることに安堵しつつも、まだ本調子ではなく、昼間の外出は奇襲失敗のリスクが高いと判断して夜行動を視野に入れた。拠点ではカスミが新しい刀に夢中で、【崩剣】シン撃破の戦果も共有され、終盤ほど強者同士の潰し合いで荒れる見通しが語られた。

メイプル帰還とオーブ九個の追加
メイプルが拠点へ戻り、オーブ九個を持ち帰った。サリーは自分の戦果に近い量を平然と運んでくるメイプルに呆れつつ、マップが役立ったことを認めた。メイプルはスキル回数の枯渇と、万一の総襲撃に備えてしばらく拠点に残る判断を取った。戦場は各地で争いが継続し、強者の暴れによって激戦の連鎖が途切れていない状況と分析された。

マイ・ユイの再評価と「三人出撃」への転換
防衛は地形とマイ・ユイの火力が噛み合い安定していたが、二人は鈍足で外での活躍が難しいという課題があった。サリーは「外で活躍させる」案を持ち込み、メイプルが単独で動く負担を減らすため、マイ・ユイを随伴させる出撃計画へ切り替えた。メイプルは疲労が溜まりにくい移動形態である点もあり、三時間後に「最強の矛を二つ」携えて再出撃した。継続火力不足のメイプルと耐久に難のあるマイ・ユイが互いを補完し、歪な能力値が合体して凶悪さが増す構図が成立した。

上位候補の絞り込みと【炎帝ノ国】の警戒強化
二日目昼以降、首位争いに残るギルドは絞られ、【楓の木】、【炎帝ノ国】、【集う聖剣】が頭一つ抜けた存在として認識された。【炎帝ノ国】では【トラッパー】マルクスが罠構成を見直し、【聖女】ミザリーも含めてメイプルとの相性の悪さを共有していたところへ、「亀が飛んでくる」という報告が入り、ミィを呼び戻しつつ迎撃準備に入った。

迎撃開始、罠と貫通での時間稼ぎ
飛行から姿を消したメイプルたちは地上に降下し、純白の翼と異形の従者を持つメイプル、二本大槌のマイとユイという異常な三人が姿を現した。マルクスは勝利を狙わず、耐えて時間を稼ぐ方針を徹底し、拘束系の植物罠でメイプルを止める策を当てたつもりだったが、マイとユイが拘束植物を一撃で粉砕し、罠の主旨が崩れた。ミザリーは指揮下で貫通魔法を撃ち込み、回避によるロスを強制して時間を稼いだ。

メイプルの偽装解除と局面打開
メイプルはサリーの助言に従い、【機械神】の正体を隠すための偽装として【武器成長】と【刀剣展開】を用い、短刀側の腕を巨大な剣へ変形させて拘束を切り裂いた。罠と貫通の組み合わせで進軍は遅れたものの、三人の前進自体は止まらず、マルクスは他のプレイヤーを撤退させ、ミザリーと二人で最終防衛線を形成した。

硬直から【毒竜】で崩壊、ミィの介入で逆転の芽
メイプルは【瞑想】で回復し、マイ・ユイが遠距離の【飛撃】で牽制する硬直状態に入ったが、回復が終わるとメイプルは【毒竜】で一気に盤面を奪い、マルクスの逃げ場を消した。ミザリーは【リザレクト】でマルクスを蘇生し、マルクスも遠隔設置の罠で妨害を続けたが、貫通とノックバックが絡むと防衛側が先に崩れる流れが濃くなった。そこへ炎を纏うミィが到着し、【炎帝】と【爆炎】でノックバックを発生させ、メイプルの位置をずらして無敵圏を動かし、マイ・ユイを地雷原から引かせる効果を生んだ。メイプルはマイ・ユイをシロップで上空退避させ、単独でミィらと対峙する形になった。

【火炎牢】での強制削りと「枷」破壊【完全武装展開】
ミィは切り札の【火炎牢】を発動し、防御無視の定期ダメージでメイプルを炎の檻に封じ、MPポーションを大量消費しながら維持して削り切りを狙った。これにより三人は、メイプルに「今のままでは勝てない」と判断させることに成功し、メイプルはついに【完全武装展開】で兵器を全身に纏い、攻勢に転じた。レーザーと銃撃の【攻撃開始】で距離支配が成立し、ミィ側は「見られただけでも収穫」と撤退を決めるに至った。

撤退阻止の追撃、三人連続撃破とミィの自爆
撤退行動中、メイプルは壊れた兵器の勢いを使って急接近し、剣化した腕の【刀剣展開】でミザリーを瞬殺し、続いてマルクスも背後から貫いて撃破した。MP枯渇寸前のミィは最後の手段として【自壊】を発動し、道連れでメイプルを焼き払ったが、メイプルはVITが五桁級に達しており耐え切った。結果として【炎帝ノ国】の迎撃隊は壊滅し、メイプルは戦場制圧を継続した。

オーブ不在の奇策と「とばっちり」六連戦
メイプルたちが【炎帝ノ国】拠点へ向かうと、オーブもプレイヤーも消えていた。ミィは「オーブを持って逃げる」策でメイプルの行動を空振りさせつつ、拠点周辺の危険プレイヤー処理をメイプルに押し付ける狙いを取っていた。ユイの提案でメイプルは周辺の多数ギルドを正面突破しながら、逃げたオーブ保持者の痕跡を探す方針に切り替え、結果として近隣ギルドを六つ巻き込み、道場破りのように蹂躙して回った。【炎帝ノ国】はオーブごと退避に成功したものの、得点機会を失い、後に強力ギルドの全力襲撃を招く危険を背負うことになった。こうして二日目夜へ向け、状況は再び大きく動き始めた。

六章防御特化と布陣変更。

順位確認と「十位以内」への現実的最適化
二日目夜、【楓の木】は全員が拠点に揃い、【炎帝ノ国】のオーブ逃走が痛手だと整理した。メイプルの襲撃で罠は壊滅したものの、オーブを抱えて逃げられると追撃が無駄足になりやすい。目的は十位以内であり、報酬差がない以上、無理に一位を狙うより「上位に残るための効率」を優先した。現状【楓の木】は六位で、大規模ギルドに挟まれた“小規模の異物”として逆に目立つ立場になっていた。

夜戦の布陣変更と二チーム運用
話し合いの結果、イズとカナデを拠点防衛に固定し、残りは夜の戦場へ出た。編成はサリー・マイ・ユイ組と、メイプル・カスミ・クロム組に分割した。狙いは、クロム側で安定してポイントを拾いつつ、サリー側でマイ・ユイの奇襲火力が「通る相手がまだ残っているか」を検証することだった。観戦側ではギルドの全滅が急増し、展開速度が予想以上に加速していることが話題になった。

サリー組の奇襲は“囮と処刑”の分業で成立
サリーは回避能力の復調を確認して前線復帰し、茂みから飛び出してオーブへ突進した。敵が連携して囲みに来るところを、サリーが注意を独占しつつ斬りつけ、視線と判断を固定させた瞬間、マイとユイの鉄球と大槌が背後から叩き込まれた。さらにサリーは【影分身】で混乱を上塗りし、敵がマイ・ユイに向けば背後から狩り、サリーに向けばマイ・ユイが潰すという悪い冗談みたいな制圧構造を作った。結果、三人は被弾ゼロのままオーブを奪い、次の目的地へ移動した。

拠点防衛はカナデとイズだけで“過剰火力”
一方の拠点では、暇を見て遠征してきたギルドが「前衛なしの生産職と後衛だけ」と誤認して突入した。イズの爆弾投擲に、カナデが【神界書庫】由来の幻で時間を稼ぎ、発動時間のかかる【破壊砲】を間に合わせて正面を焼き払った。さらにイズの【新境地】産アイテムでカナデのMP回復を加速させ、魔法陣展開で心理的圧力をかけて撤退させた。深追いしないのは温情ではなく、資源管理と次の大物に備えるためである。

メイプル組の空襲は“オーブ不足”で空振り
メイプル・カスミ・クロムはシロップで高高度を移動し、小規模ギルドを一つ潰してオーブを確保したが、その後は「オーブのない拠点」が続いた。ギルド総数が減り、オーブが場に残りにくくなったため、鈍足組には致命的に効率が落ちた。成果のない移動で消耗が進み、サリーから「戻れ」の連絡が入る。

連続襲撃の理由と“第二段階”への移行
帰還直後、拠点が襲撃されていた形跡があり、逃げた敵が入口でメイプル組と鉢合わせて即死した。防衛のイズとカナデは消耗が激しく、オーブ回収も両チームとも伸びなかった。原因は展開速度の想定外の速さで、中規模以下が次々リタイアし、オーブそのものが枯れ始めたこと、そして【楓の木】を知らない遠方ギルドが“カモ狙い”で突っ込んでくることだった。足の遅いマイ・ユイ・メイプルでは、強さがあっても「オーブに触れない」問題が露骨になり、サリーは予定を前倒しして次段階へ移ると決めた。

【集う聖剣】来襲は“勝ちたい”という厄介な動機
次の段階とは【集う聖剣】待ちであった。丑三つ時が迫るころ、十五人が来訪し、その中に最高戦力のペイン、ドレッド、フレデリカ、ドラグの四人が揃っていた。ポイント差から見れば合理性は薄いが、彼らは【楓の木】との勝負を欲していた。しかも偵察で【身捧ぐ慈愛】の弱点、武装展開、【悪食】の回数制限まで把握し、メイプルが最も消耗している時間帯を狙って踏み込んできた。

弱点突きの突撃、ペインの一撃でメイプルが瀕死
開戦直後、フレデリカの支援で前衛が加速し、ドラグの【土波】とノックバックで【身捧ぐ慈愛】圏外へマイ・ユイを押し出す流れが作られた。サリーはペインの進軍を止めようとするが、レベル差と盾捌きで振り切られ、ペインは大盾の死角から【断罪ノ聖剣】を叩き込んだ。大盾は両断され、鎧ごと抉られ、メイプルのHPは1まで削られた。これで【楓の木】側に動揺が走り、ドラグの一撃がクロムにも刺さって【不屈の守護者】頼みの瀕死に追い込まれる。

後衛突破と“見えない砲口”の逆転【カウンター】
ペインは黒煙で距離を詰め、カナデの【黒煙】阻害やイズの爆弾を剣で薙ぎ払いながら後衛を切り捨て、メイプルへ最後の一撃【壊壁ノ聖剣】を狙った。しかし、その瞬間、大盾の陰に隠されていた左手の砲口が露わになり、メイプルが【カウンター】を発動する。受けた最大威力がそのまま返され、光の奔流がペインを焼却した。ペインもHP1で踏みとどまるが、メイプルは【暴虐】へ変形し、手数とリーチで押し潰して捕食した。

最高戦力の連鎖崩壊と完全殲滅
【暴虐】の異常さにドレッドとドラグも対応できず、炎ブレスと拘束で飲み込まれていく。撤退を試みた後衛も出口を塞がれ、フレデリカは反射的に【多重障壁】で防ごうとしてマイ・ユイの【フライングストライク】に粉砕されて散った。勝敗を分けたのは【暴虐】の情報有無であり、知らなければペインの最後の一撃でメイプルが落ち、前線が崩れていた可能性が高かった。戦後、サリーがオーブを回収し、メイプルは消耗リソースを確認した。

第二段階の開始
サリーは宣言する。「第二段階だよ」。丑三つ時、闇に紛れた化物が、七人の“化物”を背に乗せて次の狩りへ向かい始めた。

七章 防御特化と夜の闇。

夜襲の舞台と“化物”の登場
深夜の森や平原では、大規模ギルドが灯りを点けて防衛していたが、暗闇から巨大な化物が出現した。茂みに近づいた警戒役は化物の頭部を目視した直後に捕食され、化物は拠点中央へ突進して防衛線を崩壊させた。多数の襲撃は想定されていても、単体の怪物による蹂躙は想定外であり、混乱が連携を破壊した。

“暴虐メイプル”による一夜の加速作戦
化物の正体は【暴虐】状態のメイプルであり、背に七人(【楓の木】全員)を乗せて各拠点を連続襲撃した。サリーはオーブ奪取と撤退タイミングを管理し、爆弾・鉄球・衝撃波・魔法を混ぜた攻撃で短時間に戦力とオーブを削った。メイプルが“メイプルと判別されにくい”ことが、貫通対策の判断遅れを生み、天災に近い被害が拡大した。

観戦側の反応と“人の括り外”評価
【集う聖剣】戦の結末が観戦エリアで語られ、勝敗は戦略で優位だった【集う聖剣】をメイプルの未知の切り札が覆した、と整理された。特に【暴虐】は理解不能の域であり、視聴者は“化物になるのがやばい”という一点で一致した。

朝までの成果と“奪わせる防衛”への移行
夜明けまでに【楓の木】は多数のオーブを確保し、所持は十個に達した。メイプルは疲労のため【暴虐】解除を避けたまま休息に入った。以後の方針は、奪還に来たギルド同士が道中で潰し合う状況を作ることであり、防衛の成否そのものは致命にならない設計へ移った。

七十人規模の侵攻と布陣運用
朝、盾役を先頭に七十人規模が侵入した。【楓の木】はサリー・クロム・カスミを前列に置き、マイとユイの正面を空けて鉄球投擲を主軸にした。イズが鉄球を補給し弾切れを封じ、カナデは【氷雪大地】で短時間拘束してマイとユイの必中時間を作った。クロムは【カバームーブ】で魔法を受け止めつつ回復スキル群で耐え、カスミは瞬間移動と跳躍で盾持ちを削った。

眠れる親玉の威圧と“被害ゼロ撤退”
騒音で奥から“化物”が這い出し、侵入者は自分たちを襲った存在が拠点内部にいる事実に動揺した。結果、侵入側は深入りを断念し、【楓の木】は“誰も倒されない”条件を優先して自軍以外のオーブを一旦明け渡し、奥へ退避してやり過ごした。相手が去った後、自軍オーブだけを設置し直して態勢を回復した。

サリーの追跡と炎帝ノ国の包囲戦発生
サリーは奪ったオーブを持つ大集団を尾行し、そこへ【炎帝ノ国】(ミィ)が突入して大規模ギルドを壊滅させる現場を確認した。勝ち残りを狙う複数ギルドが【炎帝ノ国】を囲む流れが形成され、サリーは全員集合を指示して“潰し合いの最大化”へ舵を切った。

炎帝ノ国の死地と“天災の共闘”
【炎帝ノ国】は千超の包囲を受け、ミザリーは広域自動回復の大技で耐久を支え、ミィは【炎帝】で殲滅を狙った。そこへメイプル(化物)が突入し、後衛を食い千切って大規模ギルドを荒らし始めた。目的は【炎帝ノ国】ではなく、群がる大規模ギルドの壊滅であり、ミィら四人は“生かす”方針で実質共闘が成立した。

再臨する絶望と幻影世界の増殖
【暴虐】が一度切れて狙われたが、メイプルは即座に持ち直し、さらに当日分の【暴虐】を再発動した。サリーとカナデが【幻影世界】で分身を作り、それらが吸収されて“化物メイプルが七体”となり、戦場は地割れ・炎・聖剣・毒・幻想が重なる地獄へ変質した。三分経過で分身が消える頃には半数以上が消失し、ようやく貫通攻撃の集中でメイプルは元の姿へ戻された。

全武装展開と毒海での制圧
落下直後にメイプルは【全武装展開】を発動し、【滲み出る混沌】【毒竜】で周囲を毒海に沈めつつ火力と制圧を両立した。毒無効がない者は接近不能となり、遠距離の貫通魔法も大盾で抑えられたため、包囲側はメイプル攻略を諦めて離脱したが、メイプルは爆炎飛行で追撃し戦線をさらに崩した。

集う聖剣の撤退判断と戦場の収束
【集う聖剣】は奇襲失敗後に周囲を足止めしてカウンターを回避し、競争相手の削りへ切り替えた。ペインは“万全同士では倒し切れない”と結論し、被害拡大前に撤退を選んだ。最終的に場に残ったのは【楓の木】と【炎帝ノ国】のみであり、【炎帝ノ国】は切り札枯渇と損耗から撤退を決め、ミィが爆発的離脱でミザリーら三人を連れて退いた。

戦後処理とオーブ確保
【楓の木】は戦闘の混乱を利用してオーブ確保に成功し、イベント展開はさらに加速した。残存ギルドが大規模中心へ収束する流れが決定的となり、十位以内確定へ向けた環境が整った。

八章 防御特化と安全圏。

帰還と休息による“安全圏”の成立
メイプルは【暴虐】を再使用できないため、メイプル達はシロップに乗ってゆっくり拠点へ帰還し、手持ちのオーブをすべて設置して休息に入った。展開が高速化し死亡回数が危険域へ近づく中、あえて死地に踏み込む者は減り、オーブを大量に抱える【楓の木】の拠点が逆説的に最も静かな場所となった。

ランキング監視と大規模ギルドの壊滅連鎖
メイプルはサリーの表示するパネルでランキングを確認し、大規模ギルドの壊滅が発生している事実を知った。サリーは原因を【集う聖剣】か【炎帝ノ国】の暴れと推測し、特に【炎帝ノ国】が限界状態のままライバル潰しに走り、順位維持を運任せにする可能性を見立てた。ただし、その行動は負担が大きく長続きしないとも判断した。

“殲滅力”の比較とメイプルの役割の整理
サリーは、殲滅速度そのものはミィのほうが上だと整理した。メイプルの【暴虐】は跳ね飛ばしで混乱を生む一方、全滅には時間がかかり、初見殺しが通用した今回の条件依存でもあった。対してミィは回避と超火力で押し切る戦い方であり、自爆飛行の要領まで掴んだ今なら短時間壊滅も可能だと位置付けられた。

“外に出ない”勝ち筋と防衛準備
サリーは、オーブを守り切れれば十位以内がほぼ確定であり、外へ打って出る必要性は薄いと結論した。メイプルも疲労を認め、拠点内で休みつつ、万一に備えて【水晶壁】と銃撃の準備を続ける方針となった。ここでの【楓の木】は、戦うより“崩れないこと”に価値が移った状態である。

運営側の認識:四日目早朝で実質終了
ゲーム外では運営陣が残存ギルド数を示す表示を見て、残りが「六」まで減少し、しかも全ギルドが既に十位以内だと確認した。これにより十位以内は確定し、五日予定のイベントは四日目早朝に実質終了へ到達した。減り続けていた表示が動かなくなり、運営は見所編集へ作業を切り替えた。

見所編集と“メイプル偏重”の不可避
運営は録画データから見所シーンを抽出したが、映像の半分近くがメイプルになる事態が発生した。メイプル抜きで見所を作るのは不可能に近く、【楓の木】に引っかき回されたことがイベントの想定崩壊の主要因として語られた。あわせて、次回イベントでは日数や仕様、とりわけギルド規模設計を見直す必要があるという議論が進んだ。

“メイプルは今何をしているか”予想大会
運営陣は、当たった者に奢るという条件で、現在のメイプルの行動を予想し合った。予想はボードゲーム、飛行訓練、双子のお手玉、鍛冶武器を齧ってスキル取得狙いなどから始まり、巨大化した亀の口内、サリーとの戦闘、亀を齧るといった混沌へ発展した。

答え:羊毛の塊と兵器の異様な散歩
映像に映っていたメイプルは、全身を羊毛の塊で包み、その塊から兵器をニョキニョキ生やした状態で、マイとユイに担がれながら拠点を歩き回っていた。運営はそのワンシーンを無言で見所集へ追加し、理解の範囲を超えたものを処理する作業に戻っていった。

エピローグ 防御特化とつながり。

イベントの終息と最終順位
運営が「実質終わった」と踏んだ通り、四日目以降は戦闘が一切起きず、ランキングも変動しないまま五日目が終了した。メイプル達は通常フィールドへ転移し、青いパネルで最終順位を確認した結果、【楓の木】は今回も三位となった。十位以内なら報酬差がないため上位を狙う意図は薄かったが、大規模ギルドのオーブをまとめて得たことが順位に直結した。

報酬と“次階層への鍵”
報酬としてギルドメンバー全員に銀メダル五枚と木札一枚が配布され、ギルドマスターのメイプルには全ステータス5%上昇のギルド設置アイテムが贈られた。木札は【通行許可証・伍】であり、名前入りで貸し借り不可という仕様から、次階層での通行や解放要素に紐づく“個人キー”として位置付けられた。

打ち上げ準備とメイプルの“つながり”暴発
十位内入賞を祝う打ち上げが数日後に企画され、料理スキルを極めたイズの腕前も当てにされていた。しかし当日、メイプルだけが買い物に出たまま戻らず、サリーが探しに行こうとした瞬間、メイプルが帰還した。しかも後ろには【集う聖剣】の四人と【炎帝ノ国】の四人が揃っていた。メイプルは外で出会って会話の流れでフレンド登録し、「強い者同士でつながりを持つ」感覚でそのまま招待したと説明した。サリーは、それが一般的な“友達作り”とは別種の危険な集合体に見えることを理解しつつ、言葉を飲み込むしかなかった。

同席の食卓と運営ハイライト動画
突然のゲストにも対応できる拠点規模だったため、イズは料理を増産し、全員が席に着いた。そこへ運営から通知が届き、同一のハイライト動画が配布されたため、メイプルはギルド備え付けモニターで再生した。映像はペイン、ミィ、サリーらの戦闘が切り替わり、ほとんどが“この部屋にいる連中”のやらかしで占められていた。フレデリカは自分の失態シーンに悲鳴を上げ、次は当てると息巻き、サリーは軽く受け流しつつ再戦の約束が成立した。

“普通だと思っていた男”クロムの再評価
動画終盤で、クロムが【カバームーブ】による変則移動と異常な回復で後衛四人を守り切る場面が流れると、周囲の視線が変わった。メイプルの異常性が強すぎて相対的に霞んでいただけで、クロムも十分に怪物側であるという事実が、ここでようやく共有された。

ペインの課題設定と次の衝突の予感
ペインは「次は勝つ」と宣言し、今回で確認できたスキルをもとに対策を組む姿勢を見せた。クロムは「毛玉になったり化物になったりする相手に勝てるのか」と現実を突きつけたが、ペインは予想外への耐性不足が敗因の一つだったと認め、既知スキルから潰していく方針へ切り替えた。今回の勝敗は固定ではなく、再戦の余地が残された。

掲示板の総括:楓の木“感染説”の拡散
プレイヤー達は動画視聴後、メイプルの呼称が「歩く要塞」から「走る要塞」、そして人外そのものへと更新されたと嘆いた。武装展開や身体変化の成長速度は“電光石火”と評され、突然変異級だと結論づけられた。さらに、双子の鉄球やサリーの回避、クロムの異常回復まで含めて【楓の木】全体がまともではないという認識が強まり、「メイプルという特性は感染するのか」という冗談めいた説すら真顔で語られた。四日目以降の唯一の映像が“羊毛毛玉に兵器が生える神輿散歩”だったことも、プレイヤーの思考停止を決定づけた。

同シリーズ

痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。

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痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。
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痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 2
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その他フィクション

フィクション(novel)あいうえお順

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小説「フルメタル・パニック!短編集1 放っておけない一匹狼?」感想・ネタバレ

物語の概要

本作はSFミリタリー×学園ライトノベルシリーズ『フルメタル・パニック!』の短編集である。主人公の《ミスリル》所属兵士・相良宗介が、“戦争ボケ”した軍人気質を高校生活へ持ち込み、日常的な学園生活の中でも常に戦闘的発想で行動する様を描く。校舎内外での銃撃戦や爆発、狙撃行為といった“非常識な日常”が、戦争の現実と青春の日常という相反する状況をユーモラスに描写している。ラブレターや怪事件、狂騒的な戦闘行動が混在し、宗介の普通ではない高校生活が展開される。これらは本編の延長線上にあるが、短編形式ならではの軽快さが特徴である。

主要キャラクター

  • 相良宗介
    本シリーズの主人公であり、《ミスリル》に所属する特殊兵士。戦闘技能と戦術目線を日常へ持ち込み、学園生活のささいな場面にさえ過剰な対応をする“戦争ボケ兵士”である。不器用だが使命感は厚く、護衛対象や周囲を守ろうとする一面も強い。
  • 千鳥かなめ
    宗介の護衛対象として登場するヒロイン。平凡な高校生活を送りたがる普通の少女であり、宗介の不器用さと非常識さに振り回されつつも共に行動することが多い。

物語の特徴

本作の魅力は、“軍事的常識 × 日常高校生活”という矛盾した設定をユーモアと戦闘描写で昇華している点である。通常の「戦闘無双」や「異世界冒険」といったジャンルとは異なり、主人公が“普通の日常”に自分のリアルな軍事価値観をぶつけてしまうため、その斜め上な展開が笑いと緊張を同時に生む。校舎での狙撃、ラブレターを巡る陰謀、日常の騒動が非日常へ変容する過程は、シリーズ本編のシリアスな軍事戦記と対をなす魅力を持つ。

書籍情報

フルメタル・パニック! 放っておけない一匹狼?
Full Metal Panic
著者:賀東 招二 氏
イラスト:四季童子  氏
出版社:KADOKAWA
レーベル:ファンタジア文庫
発売日:1998年12月17日
ISBN:9784829128572

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あらすじ・内容

今日も元気だ狙撃がキマル。校舎に轟く爆発音。他人の迷惑なんのその――。戦争ボケ高校生相良宗介の、日常的な1日である。だが、そんな彼にひとつの転機が訪れた。なんと宗介の下駄箱に一通のラブレターが置かれていたのだ! 差出人はいったい? うまくいったら戦争バカも社会復帰か? そんな微かな希望をあざ笑うように、狂戦士・相良宗介はラブレターの影に潜む陰謀を打ち砕かんと動き始めた!! 危うし差出人! 危うし学校! 宗介の無謀な作戦を、誰が止められるのか!?(『南から来た男』より) 前代未聞のバイオレンス(笑)学園ラブコメ! 彩り豊かな5本の傑作に、書き下ろしを加えた衝撃の短編集!!

フルメタル・パニック! 放っておけない一匹狼?

感想

本編の張り詰めた空気を知っているほど笑えてしまう、危険な短編集である。戦場の論理を一切疑わない相良宗介を、平和な日本の学園に放り込むとどうなるか。その実験結果を、容赦なくギャグとして叩きつけてくる一冊であった。

まず衝撃的なのは、ラブレターに対する反応である。爆破するという発想は、普通の感性では絶対に出てこない。しかし紛争地帯で育った戦争バカにとっては、「正体不明の紙片=危険物」という判断は極めて合理的であり、本人は終始大真面目である。その真剣さがそのままギャグになる構造は、本作の笑いの核であり、読んでいて腹立たしいほど完成度が高い。

本編とのギャップも強烈である。世界の命運や軍事バランスを巡る物語の裏側で、同じ人物が学園でドタバタラブコメをやっている。この落差が成立してしまうのが、フルメタル・パニック!という作品の異常な強度である。シリアスを知っているからこそ、コメディがより刺さるという、なかなか意地の悪い構成であった。

個人的に特に印象に残ったのは「恋人はスペシャリスト」である。ロシアの民謡を歌い出し、プリクラを拳銃に貼り付けるという行動の数々は、徹底してズレている。それでも宗介本人は一切ボケているつもりがなく、文化の違いを全力で消化しようとしているだけなのが恐ろしい。この「本人は正解を選んでいるつもりなのに、結果だけが間違っている」様子は、『テルマエ・ロマエ』のルシウスにも通じる可笑しさがあった。

また、本作が後にアニメ『フルメタル・パニック?ふもっふ』へとつながる原作である点にも納得がいく。コメディとしての切れ味、テンポ、ネタの積み重ね方は非常に洗練されており、本編とは別方向で完成している。シリアスとギャグという二面性を、どちらも中途半端にしない姿勢は見事である。

時代を感じさせるネタも味わい深い。PC-FXという単語に一瞬首をかしげつつ、発行日が平成10年だと知って納得するあたり、読者の年齢を静かに選別してくるのもこの短編集らしい。「シンデレラパニック」の「この魔法は○時を過ぎると自動的に消滅する」というネタも、今では通じる層がかなり限られているだろうが、それすら含めて時代の空気として楽しめた。

総じて本作は、相良宗介というキャラクターの異常性を、最も分かりやすく、最も容赦なく描いた短編集である。本編の重さに疲れた時に読むと腹筋を破壊されるが、同時に「だからこそ本編が成立するのだ」と再確認させられる。シリアスとギャグ、その両極端を行き来できる作品はやはり強い。笑いながら、つい感心してしまう一冊であった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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展開まとめ

南から来た男

校長室での問題視と黙認
教頭は、相良宗介の転入以降に発生した器物破損の請求書を校長へ突きつけ、被害が先週分だけで高額に達していると訴えた。校長は相良宗介を紛争地帯育ちの戦争被害者として扱い、学校側が受け入れて癒すべきだとして、教頭の追及を強引に打ち切った。

登校直後の靴箱騒動と爆破処理
千鳥かなめは登校中、玄関の靴箱付近で騒ぎを見つけ、相良宗介が自分の靴箱に爆弾があると警戒している場面に遭遇した。宗介は細工の痕跡を理由に爆発物を疑い、周囲の反対を押し切ってプラスチック爆薬で靴箱を爆破したが、爆弾は存在せず玄関を破損させる結果となった。

生徒会での処理と手紙の誤読
事件後、千鳥かなめと宗介は生徒会室へ呼び出され、林水敦信が事情説明を求めた。宗介は爆破処理を合理的手段として報告し、林水もそれを肯定して教職員への対応を引き受けた。宗介は爆破で焼け残った紙片から自分宛ての手紙だと判断し、内容を脅迫状だと決めつけて放課後の体育館裏へ向かう準備を始めた。

体育館裏の待ちぼうけと不良の襲撃
放課後、千鳥かなめは常盤恭子に誘われ、体育館裏で待つ佐伯恵那の存在を目撃した。宗介は現れず時間だけが過ぎ、やがて恭子は帰るが、かなめは佐伯恵那を気にかけて残った。そこへ不良グループが現れて佐伯恵那に絡み始め、かなめは止めに入ったが逆に取り押さえられ、危険な状況へ追い込まれた。

宗介の待ち伏せ救援と恋文の破綻
不良たちはゴムボール弾で次々と撃退され、茂みから迷彩と偽装網に身を包んだ宗介が現れた。宗介は五時限目から待ち伏せしていたと明かし、佐伯恵那に銃口を向ける想定までしていたため、かなめは激怒した。佐伯恵那は恋文の返事を求めるが、宗介は脅迫状と誤認し、手紙は爆破で失われたと告げたため、佐伯恵那は泣いて去った。

翌朝の弁当と関係の変化
翌朝、宗介は再び靴箱の不審物を疑い爆破しようとするが、千鳥かなめが止めて開閉を実演し、恐怖を押し切って確認させた。靴箱には新品の上ばきと風呂敷包みの弁当、そして助けた礼と食生活を気遣うメモが入っており、宗介はそれを大切に抱えて教室へ向かった。

相良宗介

陣代高校に転入した男子生徒であり、危険を前提に考える立場で動く者である。千鳥かなめとは同じ学年の関係であり、彼女から強く止められながらも独自の判断を押し通す場面が多い。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 自分の靴箱に不審物があると考え、立入禁止のテープを張って調べた。
 不審物の処理として爆薬で靴箱を爆破し、玄関ホールを騒動にした。
 体育館裏で迷彩の姿で待ち伏せし、不良生徒らをゴム弾で倒して千鳥を助けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 転入後から校内の破損や修理の請求が増えた原因として扱われた。
 授業より安全を優先し、欠席して準備に動く判断を取った。

千鳥かなめ

陣代高校の女子生徒であり、言い方は強いが状況を見て動く者である。相良宗介とは同級生であり、彼の行動を止めたり後始末に関わったりする関係である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒。生徒会の副会長。
・物語内での具体的な行動や成果
 玄関ホールで宗介を止めようとし、結果の爆破に怒って殴った。
 生徒会室で事情説明を求められ、宗介の説明に巻き込まれた。
 体育館裏で佐伯恵那を助けるため、不良生徒に立ち向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 副会長の立場として、宗介の騒動の説明役に指名された。
 翌朝は宗介の爆破を止め、靴箱を開閉して安全を示した。

佐伯恵那

陣代高校の女子生徒であり、相良宗介に手紙を書いた当人である。待ち合わせに来て待ち続ける立場であり、千鳥かなめに助けられる側にもなった。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 放課後に体育館裏で宗介を待ち、長時間その場に残った。
 不良生徒に囲まれて抵抗し、千鳥の介入で場が動いた。
 宗介の態度と手紙の扱いを知り、泣きながら走り去った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 学園祭のミス陣高で二位になったと語られた。
 学年末の成績が上位であると話題にされた。

常盤恭子

千鳥かなめのクラスメートであり、彼女と一緒に登校し行動する者である。噂話にも強く、かなめをからかいながら様子見に誘う関係である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 朝にかなめと会話し、玄関ホールの騒ぎに向かった。
 宗介の手紙の話を聞き、かなめに様子見を提案した。
 体育館裏で待ち合わせ場所を見に行き、先に帰った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 とくに変化は書かれていない。

生徒会

林水敦信

生徒会長であり、落ち着いた態度で場を仕切る者である。千鳥かなめを副会長として使い、相良宗介の行動を受け止めて処理を進める関係である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒会長。
・物語内での具体的な行動や成果
 生徒会室にかなめと宗介を呼び、事情説明を求めた。
 宗介の爆破処理を「確実」と認め、教職員側を言いくるめる方針を示した。
 かなめに「様子を見て来い」と伝えたとかなめが述べた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 発言が校内対応に影響し、宗介の問題がその場で収まった。

教職員

校長

陣代高校の校長であり、宗介を受け入れる方針を取る者である。教頭とは対立気味であり、話を切って指示で終わらせる関係である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の校長。
・物語内での具体的な行動や成果
 修理費の請求書を見て、金額と期間を確認した。
 宗介を戦争の被害者として扱い、指導の必要を述べた。
 寄付金の話題を否定し、教頭に退出を命じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 校内方針として、宗介の問題をある程度は見過ごす空気を作った。

教頭

陣代高校の教頭であり、宗介を重大な問題として扱う者である。校長に請求書を突きつけ、強い口調で対応を求める関係である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の教頭。
・物語内での具体的な行動や成果
 修理費の請求書を示し、被害の大きさを訴えた。
 宗介の身上書を出し、名前を明言して問題視した。
 宗介の行動例として、窓ガラス破損や誤認の話を挙げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 校長に押し切られ、最終的に退出を命じられた。

不良生徒

タカちゃん

不良生徒の集団の中で中心に立つ者である。千鳥かなめに殴られたことで場の空気が変わり、仲間が一斉に暴力へ動くきっかけになった。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒。不良生徒の一人。
・物語内での具体的な行動や成果
 佐伯恵那を取り囲む集団の先頭に立ち、かなめにも近づいた。
 かなめに鼻を殴られ、出血した。
 仲間に呼ばれ、かなめへの攻撃の流れが強まった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 その後、宗介のゴム弾の攻撃で集団が倒され、場が収束した。

愛憎のプロパガンダ

朝の対比と“同じ日常”
千鳥かなめはベランダの物音で目覚め、猫を見て拍子抜けしつつ、身支度と持ち物点検を“普通の高校生”として整えて登校した。一方、相良宗介も同じく物音で起きたが、彼の“普通”は拳銃と戦闘装備の点検であり、戦場の常識のまま通学へ向かった。同じ朝でも、二人の世界の基準が噛み合っていないことが示された。

白井の口説きと宗介の過剰防衛
駅で白井がかなめに交際を迫り、拒否されても乱暴に食い下がったため、宗介が背後からナイフで制圧した。かなめは白井を「ただの民間人」と断じて収めたが、宗介は脅し文句まで戦地仕様で、かなめは呆れつつも礼を言って登校を急いだ。

トイレ落書きによる中傷と“噂の拡散装置”
昼休み、生徒会長の林水敦信が、トイレの壁に書かれた赤字の誹謗中傷をポラロイドで提示した。内容は援助交際・薬物・性的噂など悪質で、かなめは怒りつつも「犯人探しは不要」と突っぱねて教室を出た。宗介は逆に「弱みを握られている」と疑い、平和な学校に戦時の論理を持ち込んでいく。

“善意”が地獄になる午後と宗介の暴走
放課後、噂を信じた風間信二が金を持って“恥ずかしい写真”の取引を持ちかけ、かなめは激怒して撃退した。さらに宗介が白井を拳銃で拉致して男子トイレで尋問を始め、かなめと恭子が止めに入る騒動へ発展した。林水は宗介に「安全保障問題担当・生徒会長補佐官」として委任状まで渡し、状況は完全にコントみたいにエスカレートした。

真犯人は稲葉瑞樹、動機は嫉妬
白井の彼女である稲葉瑞樹が乱入し、かなめを悪者扱いして責め立てたが、宗介は“男子トイレの落書きを見た”という発言の矛盾から瑞樹を容疑者として追い詰めた。落書きは授業中に書かれた可能性が高く、瑞樹は白井が駅でかなめを口説いていたのを見て嫉妬し、噂を書き散らしたと認めた。

かなめの選択と、噂の“反転”
宗介は見せしめの処罰を主張したが、かなめは「何もしない」と決め、瑞樹の感情も理解して手を引いた。翌日、落書きには「それはウソだった。噂を信じるな」という追記が入っており、噂が“中傷”から“教訓”へ反転した。かなめは皮肉ではなく穏やかに笑い、「情けは人のためならず」と受け止めて物語は終わった。

鋼鉄のサマー・イリュージョン

真夏の砂浜と、いつものズレた日常
千鳥かなめはクラスメート一同の買い出し係として、スイカ三つを抱えて砂浜をよたよた歩き、置き去りの荷物が積まれたビーチパラソルへ戻った。常磐恭子らは既に泳いで遊び、宗介は「防犯」のつもりで荷物に手榴弾トラップを仕込んでいた。かなめは呆れつつもスイカ割りの準備に付き合うが、恭子たちの悪ノリで目隠しされた宗介がパラソル方向へ進み、ショットガンでスイカを撃って爆散させ、かなめが全身スイカまみれになる。宗介は悪気なく追い打ちの失言まで重ね、かなめはバットで宗介を殴って怒り、ひとり防波堤へ退避した。

謎の金持ち邸宅と、病弱少年の暴走ロマンス
防波堤で鬱々としていたかなめは、黒スーツの「謎の東洋人」に半強制で邸宅へ案内される。そこにいたのは病弱で繊細な少年、日向柾民であり、かなめに一目惚れして招いたのだと判明した。柾民は紅茶でもてなし、かなめも気の毒さと暇つぶしで応じるが、宗介が正門に現れると、かなめは意地と勢いで宗介を「凶悪な変態ストーカー」と嘘で説明し、柾民は召使い兼ボディーガードの鷲尾・鮫島・豹堂を差し向けて排除を命じてしまう。

救出と称した侵入作戦、そして屋敷は戦場になる
宗介はかなめが誘拐監禁されたと解釈し、装備を整え邸宅へ侵入する。豹堂のボウガン、鮫島のナイフ、鷲尾のヌンチャクと次々に襲撃されるが、宗介は容赦なく制圧し、途中で実弾のグレネードを誤って使うなど危なっかしい突破を続ける。邸内が静まり返り、柾民は最後の手段として折り畳みナイフを取り出して対抗しようとするが、そこへ宗介が踏み込み、柾民は一瞬で武器を弾かれる。

嘘の後始末と、かなめの本音が刺さる
宗介は「助けに来た」と主張するが、かなめは謝罪もなく中学生を脅す態度に激怒し、拳で宗介を殴る。柾民はかなめが宗介と友人だと知って裏切られたと感じ、傷つきながら糾弾するが、宗介は「騙される方が悪い」と戦場基準の説教を浴びせ、かなめを連れて強引に脱出を決行する。

断崖ダイブと、ぎこちない和解
宗介はかなめを抱えて断崖から飛び降り、巨大なバルーンにぶら下がって降下するという無茶で逃走した。柾民は宗介の言葉を妙に納得して「気迫が必要」と受け止め、かなめは後悔して詫びの手紙を出すべきだと考える。降下中、宗介はかなめを心配して助けに来たことを認め、かなめも謝り、宗介は「無事ならいい」と返し、かなめは宗介の肩に頬を寄せて微笑んだ。

千鳥かなめ

陣代高校の生徒会副会長である。普段は現実的で、相手の言動が度を越すと強く制止する。相良宗介とは同級生で、彼の過剰な警戒心に振り回される関係である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校。生徒会副会長。二年四組。
・物語内での具体的な行動や成果
 泉川駅のホームで白井に絡まれ、相良の介入を受ける。校内トイレの落書き写真を示され、誹謗中傷の拡散により教室を離れる。男子トイレでの相良の尋問を止め、白井が無関係であると主張する。稲葉瑞樹の挑発に反応し、腕時計への侮辱だけは拒絶する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 副会長という地位が「要人」扱いの根拠として利用される。騒動後、各トイレの落書きに「噂は嘘だった」と追記され、風向きが変化する。

相良宗介

陣代高校への転校生である。戦場経験に基づく判断を優先し、学校内でも治安対応の発想で動く。千鳥かなめを要人とみなし、白井や稲葉を脅迫犯候補として扱う。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校。生徒会長補佐官。安全保障問題担当。
・物語内での具体的な行動や成果
 泉川駅で白井を拘束し、コンバットナイフで威嚇する。落書き内容を読み、千鳥を疑う。林水の委任状を根拠に、白井を男子トイレへ連行して尋問する。張り紙の下の新しい落書きを発見し、稲葉が授業中に男子トイレへ入った矛盾を突く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 委任状により「この問題に限り」強い権限を持つ立場となる。校内で拳銃・手錠を用い、状況を暴力的に進める。

林水敦信

陣代高校の生徒会長である。状況を整理し、噂が生む影響を冷静に見積もる。相良宗介に調査権限を付与し、事件処理の枠組みを作る立場である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校。生徒会長。
・物語内での具体的な行動や成果
 トイレの落書きを部下に撮影させ、写真を千鳥へ提示する。落書きは張り紙で隠したと説明する。千鳥の醜聞調査について、相良に「あらゆる権限」を与える委任状を出す。常盤恭子に金銭を渡し、放課後のケアを指示する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 校内で影響力を持ち、教師や生徒から一定の敬意を受ける。権限付与により、相良の独走を制度面で可能にする。

白井

千鳥かなめに交際を迫る男子生徒である。強引な接触が相良宗介の警戒を招く。稲葉瑞樹の恋人であり、騒動の中心に巻き込まれる。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒。二組。
・物語内での具体的な行動や成果
 泉川駅で千鳥を呼び止め、手首を掴む。相良に拘束され、男子トイレで尋問を受ける。稲葉の自白により、落書きの犯人ではないと判明する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 事件の容疑者として扱われるが、最終的に無関係と確認される。相良から「感謝状が送られる」と告げられる。

常盤恭子

千鳥かなめの同級生である。周囲を見ながら現実的に動き、千鳥に付き添う役割を担う。相良宗介の言動にあきれつつも、情報を伝える立場になる。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校。千鳥と同じクラスの生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 昼休みに千鳥の相談相手となり、状況を聞く。林水から金銭を渡され、放課後の同行を指示される。翌日、女子トイレの落書きの追記を千鳥に見せ、変化を共有する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 立場の変化はないが、騒動の経過を千鳥に伝える媒介となる。

風間信二

千鳥かなめの同級生である。落書きの噂を信じ、金銭を持ち出して接触する。千鳥により即座に制止される。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校。千鳥と同じクラスの生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 千鳥に茶封筒を渡し、金銭と引き換えの撮影を持ちかける。千鳥に鞄で殴られ、要求を拒絶される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 立場の変化はないが、噂の実害が現実化した例として描かれる。

稲葉瑞樹

白井の恋人である女子生徒である。白井を守る目的で介入し、千鳥を攻撃する。落書きを書いた当事者として追及される。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒。名字は稲葉。
・物語内での具体的な行動や成果
 男子トイレに飛び込み、白井に抱きついて介入する。千鳥を「汚い女」などと罵り、噂を半分は真実だと決めつける。相良により、授業中に男子トイレで落書きを見たという矛盾を示される。白井への嫉妬を理由に、落書きを書いたと叫ぶ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 真犯人として露見するが、千鳥は報復や処分を求めず「放置」を選ぶ。騒動後に各トイレへ擁護の追記が出る。

恋人はスペシャリスト

稲葉瑞樹の失恋と“後始末”
稲葉瑞樹は白井悟に振られた直後、涙を流しながら一人で部屋に倒れ込み、衝動のまま大量の出前を注文した。さらに隣家から死臭がすると通報まで行い、別れの悔しさを「白井」へ叩きつける形で気持ちに区切りを付けた。

生徒会室での“恋愛学習”と代役依頼
陰気な雨の放課後、生徒会室で千鳥かなめは相良宗介の奇妙な言動に付き合っていた。宗介は恋愛シミュレーションゲームを「治安対策の学習」として真顔で進めており、恋愛を合理的に理解しようとしていた。そこへ瑞樹が現れ、翌日の友人への紹介に備えて「白井の代役としてデートしてほしい」と宗介へ依頼し、宗介は実戦訓練の一環として即答で引き受けた。

“白井らしさ”の詰め込みとかなめの複雑さ
瑞樹は宗介に服のブランドや特技などを叩き込み、かなめの家で深夜まで“恋人ごっこ”の特訓を続けた。宗介の受け答えは要領を得ないはずだったが、「好きだ、瑞樹」と繰り返す声だけは妙に穏やかで、かなめは理由の分からない疎外感と落ち着かなさを覚えた。

吉祥寺デートと友人たちの違和感
翌日、瑞樹の中学時代の友人三人と合流し、六人で食事やカラオケ、映画、ゲームセンターを回った。宗介は席の安全性を語り、ロシア語で民謡を歌い、戦争映画を戦術面から酷評し、心理ゲームでは「爆破する」と答えるなど、どう取り繕っても“普通の彼氏”からは逸脱していた。友人たちは笑いながらも徐々に不信と困惑を強め、瑞樹も焦りを募らせていった。

本物の白井悟の登場と宗介の強引な処理
口論が激化したところへ本物の白井悟が現れ、瑞樹の仕返しを責め立てた。状況を読んだ宗介は白井を「精神異常者」と断じて嘘で押し切ろうとし、かなめも咄嗟に白井を叩いて場を制した。さらに宗介は実弾で威嚇射撃まで行い、友人たちの不安は決定的になった。

“証明”としてのキスと瑞樹の崩壊
友人たちは疑いを晴らす条件として「キス」を要求し、宗介は迷いなく瑞樹を抱き寄せて唇を奪った。瑞樹は衝撃で硬直したのちに激怒し、宗介を殴って池へ突き落とし、そのまま泣きながら逃走した。友人たちは瑞樹の内面を理解して追いかけ、かなめだけが取り残される形になった。

人工呼吸とキスの混同、かなめの揺れ
池から上がった宗介は自分の非を理解できず、かなめの追及に対して「これまで様々な男たちとキスをしてきた」と語り、人工呼吸とキスの区別が曖昧であることを露呈した。かなめは怒りながらも宗介の頬を拭き、近すぎる距離に一瞬心が揺れたが、誤魔化すように歩き出した。宗介は心配を口にし、二人は噛み合わない言い合いを続けながら暗い公園を後にした。

千鳥かなめ

陣代高校の生徒である。相良宗介の危険な発想を止める立場である。常磐恭子とは友人関係である。日向柾民には招かれた側である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒である。
・物語内での具体的な行動や成果
 浜辺で西瓜の買い出しを担った。手荷物の放置を問題視した。手榴弾の罠に怒った。散弾銃の発砲で西瓜の破片を浴びた。相良宗介を金属バットで殴打した。防波堤で男の誘いを拒否した。鷲尾に屋敷へ案内されて入った。相良宗介を「凶悪な変態」と言って追い払いを依頼した。日向柾民の前で嘘を認めて謝罪した。相良宗介を拳で殴打した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位の変化は記されていない。屋敷側の判断を動かす発言をした。相良宗介の行動目的になった。

相良宗介

陣代高校の転校生である。軍事的な判断を日常へ持ち込む人物である。千鳥かなめを優先して行動する立場である。常磐恭子に状況を指摘された。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒である。
・物語内での具体的な行動や成果
 手荷物の山に手榴弾の罠を仕掛けた。安全ピンを目印として置いた。西瓜割りで散弾銃を使って西瓜を撃った。千鳥かなめを探すため屋敷へ向かった。塀と監視設備を確認した。戦闘装備を整えて救出を宣言した。崖側から侵入した。豹堂のボウガン攻撃を訓練弾で無力化した。鮫島を訓練弾で無力化した。鷲尾と交戦した。実弾の誤使用で爆発を起こした。日向柾民の刃物を一閃で弾いた。日向柾民を背負い投げした。千鳥かなめを抱えて断崖から離脱した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位の変化は記されていない。武器の使用で周囲の行動を左右した。救出の主導権を握った。

常磐恭子

陣代高校の生徒である。場を動かす役回りである。千鳥かなめを「カナちゃん」と呼ぶ関係である。相良宗介の言動を指摘する立場である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒である。
・物語内での具体的な行動や成果
 浜辺で千鳥かなめに声をかけた。西瓜割りを提案した。相良宗介を目隠しして回転させた。千鳥かなめの不在を気にした。相良宗介へ「怒っている」と説明した。相良宗介の想像を問いただした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位の変化は記されていない。相良宗介の行動選択に影響した。集団の空気を作った。

日向柾民

屋敷の主である。千鳥かなめに会いたいと望む立場である。鷲尾を部下として使う。千鳥かなめへ好意を示す。
・所属組織、地位や役職
 別荘の主である。
・物語内での具体的な行動や成果
 望遠鏡で浜辺を見た。千鳥かなめを屋敷へ招いた。外出を止められていると述べた。自分の名を名乗った。病気を自律神経失調症と説明した。従姉妹の話をした。相良宗介を追い払う指示を出した。侵入者の報告を受けた。鮫島と豹堂を呼び出した。侵入者の排除を命じた。折りたたみ式の刃物を出した。相良宗介に制圧された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位の変化は記されていない。屋敷側の警備運用を指示した。千鳥かなめの発言を根拠に判断した。

鷲尾

日向柾民の召使いである。案内役として動く立場である。屋敷の警備にも関与する。柾民の命令に従う。
・所属組織、地位や役職
 日向家の召使いである。運転手である。
・物語内での具体的な行動や成果
 バルコニーで柾民に応答した。屋敷の奥へ下がった。千鳥かなめを屋敷へ案内した。インタフォンで応答した。崖側の侵入者反応を報告した。終盤に三階のリビングへ入った。柾民の無事を確認した。海上の黒い風船を目視した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位の変化は記されていない。屋敷の判断伝達を担った。警備情報の連絡役になった。

鮫島

日向柾民の召使いである。警護役を兼ねる立場である。刃物の使い手として紹介された。相良宗介の侵入を止める側である。
・所属組織、地位や役職
 日向家の召使いである。コックである。
・物語内での具体的な行動や成果
 柾民の呼び出しで現れた。侵入者の排除命令を受けた。松林で相良宗介の前に立った。ナイフを二本構えた。相良宗介の訓練弾を受けて倒れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位の変化は記されていない。侵入阻止は失敗した。相良宗介の進行を止められなかった。

豹堂

日向柾民の召使いである。警護役を兼ねる立場である。ボウガンの使用者として紹介された。崖側の迎撃を担う。
・所属組織、地位や役職
 日向家の召使いである。庭師である。
・物語内での具体的な行動や成果
 柾民の呼び出しで現れた。侵入者の排除命令を受けた。崖の上でボウガンを構えた。矢を放った。相良宗介の訓練弾で転落した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位の変化は記されていない。迎撃は失敗した。警備網の一部が突破された。

砂浜で声をかけた男

防波堤で千鳥かなめに声をかけた人物である。遊びの誘いを口にした。千鳥かなめの拒絶で退いた。
・所属組織、地位や役職
 不明である。
・物語内での具体的な行動や成果
 千鳥かなめへ誘いをかけた。千鳥かなめの命令で立ち去った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載はない。物語への影響は小さい。

芸術のハンバーガーヒル

写生会の開始と「テーマ」崩壊
陣代高校の写生会で、担任の神楽坂恵里が二年四組を含む大量の生徒を集め、節度ある行動を呼びかけた。特に問題児の相良宗介には念押ししたが、宗介は軍人めいた返答で「武力行使は最低限に」とズレた宣誓をした。続いて美術科の水星教諭が「自然と人間」をテーマに掲げるが、例のごとく誰にも理解できない長講釈を延々と続け、結局“具体的に何を描くか”は一切明確にならないまま解散となった。

モデル選出と宗介の致命的な勘違い
二年四組は「風景とモデルを一緒に描く」方針で進め、嫌がる者ばかりの中から宗介がモデル役に決まった。ところが宗介は、モデルなのに絵を描けないことに納得がいかず、水星に相談した結果「自然と一体化し、画家の目を欺く実存になれ」という詩的暴走指示を真に受けた。宗介は“目に見えない存在になる”ことを任務だと解釈し、クラスがポーズを決める頃には姿を消していた。

捜索作戦とトラップ地獄の開幕
宗介不在で困ったかなめたちは連絡を取るが、宗介は電話口で「自分はここにいる、見えないだけだ」と主張し戻らない。さらに水星が「モデル変更は認めない、描けなければ全員Cマイナー」と脅迫し、四組は宗介の捜索に踏み切った。宗介は逆に“任務妨害者に教訓を与える”と判断し、落とし穴や振り子丸太など本気の罠を山道に仕掛け、探索班を次々行動不能にしていった。

粘着地雷と「死にかけ告白」コント
体育会系の小野寺(オノD)班が宗介に迫るが、山腹で爆音が響き、粘着地雷によってウレタン樹脂まみれで木に接着される。小野寺は電話越しに瀕死を演出してかなめに告白し、かなめは一瞬うろたえるが「却下」と即答して切り捨てた。実際は非致死性の粘着兵器で、宗介は「もっと持ってくればよかった」と反省するなど、倫理観が戦場側に寄り過ぎていた。

かなめの突撃号令とハンバーガーヒル
時間切れと単位危機に追い詰められたかなめは、残存兵力をまとめて“総員突撃”を敢行した。仲間が次々罠にかかって脱落していく中、かなめだけは執念で突破し、最終トラップの吊り天井(ウレタン塗布)すら耐えて山頂付近で宗介を追い詰めた。ボロボロの制服姿で現れた四組の生徒たちの殺気に、宗介は「俺は殺される」と直感し、脱兎のごとく逃走した。

水星宅での大惨事と宗介の確保
一方その頃、教師陣は水星の自宅の縁側で優雅にお茶をしていた。そこへ宗介が垣根を飛び越えて逃げ込んできて、かなめたちも猛牛のように突入し、襖や畳や家具を破壊して家中を蹂躙した。宗介は追い詰められて水星の母親を盾にナイフを突きつけるが、かなめが湯呑みを投げつけて阻止し、宗介は生徒たちにねじ伏せられ連行された。かなめは教師陣に「夕方までに描き終える」と妙に攻撃的な誓約を残して撤収した。

展示作品のオチと芸術的報復
一週間後、代表作品展示で校長は各クラスの水彩画を称賛するが、二年四組の三点だけは異様だった。明るい自然風景の中で、モデルの宗介が荒縄で縛られ逆さ吊りにされて描かれていたためである。水星は「前衛的」「虚無感」などと適当な解説で取り繕い、作品タイトルは『狩りの成果』『因果応報』『馬鹿の末路』となっていた。要するに四組は、単位のために描き切りつつ、モデルへ最大級の社会的報復も同時に完了した。

稲葉瑞樹

強気で押しが強い生徒であり、体面を優先して行動を組み立てる性格である。千鳥かなめと相良宗介とは過去の事件で面識があり、白井悟とは交際関係にあった。

・所属組織、地位や役職
 二組の女子生徒である。

・物語内での具体的な行動や成果
 白井悟と別れた直後に、友人へ彼氏を紹介する約束を守るため、相良宗介を替え玉としてデートに同行させた。
 相良宗介に服装や受け答えを暗記させ、当日の場を取り繕おうとした。
 終盤、相良宗介の強引なキスに反発し、平手と掌底で制止した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 友人関係の維持が目的であり、立場の変化は描写されない。

千鳥かなめ

状況を観察して場を整える立場に回りやすい生徒である。相良宗介とは生徒会室で日常的に会話し、稲葉瑞樹とは一連の出来事で行動を共にした。

・所属組織、地位や役職
 生徒会室に出入りする生徒である。

・物語内での具体的な行動や成果
 稲葉瑞樹の依頼に流される相良宗介を見守り、食事の場を用意した。
 白井悟が現れた場面で、衝突の拡大を止めるために打撃で制止した。
 三人娘に対して、相良宗介が白井姓を名乗る理由を即興で説明した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 同席者の間を取り持つ役割が目立つが、役職の更新は示されない。

相良宗介

規律と実用を優先する思考を持ち、一般的な高校生の感覚を理解しにくい人物である。千鳥かなめを会長格として扱い、稲葉瑞樹の依頼を「学習機会」として受け入れた。

・所属組織、地位や役職
 生徒会室で「安全保障問題担当・生徒会長補佐官」に就任した生徒である。

・物語内での具体的な行動や成果
 恋愛シミュレーションを使い、恋愛行動を治安対策の学習対象として扱った。
 稲葉瑞樹の替え玉として白井悟を名乗り、友人三人との外出に同行した。
 場面終盤、相手の足下へ実弾を撃ち込み、集団を退避させた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 就任直後であり、役職名そのものが特筆事項である。
 父の姓が「相良」であり、母方の姓として「白井」を名乗った経緯が語られる。

白井悟

容姿と人気を持つ男子生徒として語られ、稲葉瑞樹の元交際相手である。終盤に本人が現れ、稲葉瑞樹へ直接抗議した。

・所属組織、地位や役職
 稲葉瑞樹と同じクラスの生徒である。

・物語内での具体的な行動や成果
 別れ話の中で、価値観の不一致を理由に関係を終わらせた。
 稲葉瑞樹宅への大量注文と通報について、当人へ問い詰めた。
 相良宗介の発砲を受け、連れの男女とともに退避した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 「本物の白井悟」であることが、替え玉騒動の決定要因となった。

赤城真奈美

稲葉瑞樹の友人の一人であり、状況の違和感を言語化して確認に動く人物である。終盤、瑞樹を追う判断を最初に示した。

・所属組織、地位や役職
 稲葉瑞樹の旧友である女子生徒である。

・物語内での具体的な行動や成果
 相良宗介の言動に不自然さを感じ、瑞樹へ直接確認した。
 瑞樹が走り去った後、追いかける行動を選んだ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 集団の空気を変える発言が多いが、立場の変化はない。

黄楊まどか

稲葉瑞樹の友人の一人であり、軽い調子の会話を担う人物である。相良宗介の危険な言動に対して、怖さを言葉にした。

・所属組織、地位や役職
 稲葉瑞樹の旧友である女子生徒である。

・物語内での具体的な行動や成果
 相良宗介へ景品獲得を頼み、失敗後の行動を止める側に回った。
 宗介の発言内容を不安材料として指摘し、瑞樹へ共有した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 役割は友人としての同席に限られ、変化は示されない。

碧川祥子

稲葉瑞樹の友人の一人であり、落ち着いた観察を行う人物である。心理ゲームの意図を説明し、宗介の回答を引き出した。

・所属組織、地位や役職
 稲葉瑞樹の旧友である女子生徒である。

・物語内での具体的な行動や成果
 三択心理ゲームの設問意図を千鳥かなめへ説明した。
 宗介へ回答を促し、「爆破する」という返答を引き出した。
 終盤、真奈美へ促しを入れて瑞樹追走へ移った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 場の理解を助ける説明役として機能するが、立場の更新はない。

クルツ

相良宗介が衣服を入手する手段として名前が出る人物である。宗介の装いを成立させる裏方として扱われる。

・所属組織、地位や役職
 所属や肩書は本文内で明示されない。

・物語内での具体的な行動や成果
 相良宗介の依頼により、物々交換で衣類の調達に関与した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 登場は間接的であり、詳細情報は示されない。

大隅先生

相良宗介が「中学時代の担任」として挙げた教師である。過去の襲撃被害の例として引用される。

・所属組織、地位や役職
 陣代中学の教師である。

・物語内での具体的な行動や成果
 過去に食事中の襲撃を受けた人物として語られた。
 右肩に九ミリ弾の傷跡があると説明された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 現時点の動向は不明であり、過去情報のみが示される。

シンデレラ・パニック!

継母一家による支配とシンデレラへの虐待
裕福な屋敷で育った美しい娘は、母の死と父の再婚をきっかけに転落した。継母ミズキと三人娘マナミ・マドカ・ショーコは嫉妬から執拗ないやがらせと暴力を繰り返し、父の急死後は屋根裏に押し込めて労働力として搾取した。舞踏会の日も、継母は侮辱的な命令で支配を誇示し、参加を願う彼女を一斉に拒絶した。

舞踏会への憧れと、軍人魔法使いの乱入
屋根裏で孤独と惨めさに沈む娘の前に、魔法使いを名乗るサガラ・ソースケ軍曹が現れた。神秘性より火薬臭のする男であったが、舞踏会へ行かせると断言し、カボチャとネズミとトカゲを用意させたうえで、対戦車ロケットを「魔法」と称してぶっ放した。爆炎の後、娘は華麗なドレス姿へ、カボチャは馬車へ、ネズミは馬へ、トカゲは御者へ変わり、偽造招待状まで渡されて城へ向かった。

城の舞踏会と、王子の一目惚れ
城では王ハヤシミズが理屈と思想審査を並べ、舞踏会の目的を台無しにしていたが、娘の登場で空気が一変した。キョーコ王子は彼女の美しさに心を奪われ、名を取り違えながらも踊り続けた。音楽はワルツからあらゆるジャンルへ暴走し、二人は夢中で踊り抜いたが、鐘が鳴り始めたことで娘は魔法の制限を思い出し、苦しい言い訳を残して脱出を図った。

脱出戦と魔法解除、残されたガラスの靴
逃走を阻む衛兵に追い詰められた娘を、軍曹がショットガンで制圧して救出した。門の閉鎖には手榴弾で穴を開け、馬車は煙と破片を突っ切って脱出したが、直後に魔法が解けて娘は投げ出された。軍曹は身を挺して受け止め、川へ落下して追っ手をやり過ごした。娘は元のぼろ服に戻り、夢の終わりと現実の辛さに打ちのめされた。

敗北主義への説教と、娘の反撃計画
娘が「夢など見ない方がいい」とこぼすと、軍曹は戦場の理屈で反論し、他人に頼る生き方を戒めた。去り際に「頭を使え。工夫しろ」と言い残した言葉は娘に刺さり、彼女は屋敷の所有と理不尽を再確認して怒りを燃やした。やがて娘は家財一切を売り払って資金を確保し、継母一家の生活基盤を根こそぎ奪って姿を消した。

王子の捜索失敗と、二人の旅立ち
キョーコ王子はガラスの靴を手がかりに大規模な捜索を命じたが、該当者は見つからなかった。継母一家は拘留の末に戻るも屋敷は空っぽで、泣き叫びながら靴合わせに敗れた。一方、軍曹が西へ歩く途中、旅装束と馬車を整えた娘が現れ、同じく西へ行くと告げて同乗を促した。娘は「灰かぶり」の名を捨てる決意を滲ませ、二人は夕日に向かって進んだ。

後日談としての王子の成長
花嫁探しが実らず王子は落胆したが、仕事と学びに追われるうちに立ち直った。手に入らないものの存在を学んだ経験は王子を鍛え、のちに名君として名を残す結末へつながった。

シンデレラ

屋敷でこき使われる立場に置かれた娘である。反発心は残しつつも、状況に合わせて耐える面がある。サガラ・ソースケ軍曹の介入で舞踏会に参加し、その後は自分の判断で行動を変えた人物である。
・所属組織、地位や役職
 特定の所属は示されない。屋敷では下働きの立場である。
・物語内での具体的な行動や成果
 継母の嫌がらせを受けつつ家事を続けた。舞踏会に出てキョーコ王子と踊った。魔法解除の直前に逃走し、最終的に自力で旅支度を整えて西へ向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 「灰かぶり」と呼ばれる状態から離れようとした。屋敷の財産を売り払い、継母側を困窮させた。以後は旅人として移動する立場になった。

サガラ・ソースケ軍曹

無愛想で命令口調の若い魔法使いである。〈ミスリル〉から派遣されたと名乗り、任務として支援を行う立場である。シンデレラに現実的な助言を与えた人物である。
・所属組織、地位や役職
 極秘の魔法使い協会〈ミスリル〉の派遣員である。階級は軍曹である。
・物語内での具体的な行動や成果
 カボチャなどを用意させ、ロケット弾の「魔法」で変身を成立させた。偽造の招待状を渡し、舞踏会の現場でも護衛として介入した。脱出時に衛兵を制圧し、門を爆破して突破させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 任務として「アフターケア」まで行った。シンデレラに「頭を使え」と方針を示した。最後は同乗者として同行を受け入れた。

ミズキ

シンデレラの継母であり、屋敷の支配者として振る舞う人物である。見栄と欲を優先し、娘たちと一緒に支配を固めた立場である。舞踏会後は生活基盤を失う側に回った人物である。
・所属組織、地位や役職
 屋敷の女主人を自称する。作中では未亡人と呼ばれる。
・物語内での具体的な行動や成果
 シンデレラに暴力を振るい、家事を強要した。娘たちを舞踏会へ連れて行き、権力に近づこうとした。舞踏会の騒動で拘留され、帰宅後に屋敷の家財を失った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 屋敷内での支配力を持っていた。舞踏会後は財産を失い、疲弊した様子になった。シンデレラへの支配は維持できなくなった。

マナミ

ミズキの娘の一人である。母に同調し、シンデレラへの加害に加わる立場である。舞踏会の情報を語る役割も担った人物である。
・所属組織、地位や役職
 ミズキの娘である。屋敷内では母側の一員である。
・物語内での具体的な行動や成果
 母の呼びかけに応じてシンデレラを叩いた。舞踏会が開かれる事実を説明した。舞踏会では城の兵士に連行された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 屋敷内では強者側として振る舞った。舞踏会後は拘留の影響で落ち込んだ状態になった。家財喪失で生活が傾いた。

マドカ

ミズキの娘の一人である。母の方針に従い、シンデレラを見下す立場である。舞踏会の目的を言葉にする役を持つ人物である。
・所属組織、地位や役職
 ミズキの娘である。屋敷内では母側の一員である。
・物語内での具体的な行動や成果
 母の命令でシンデレラへの暴力に加わった。舞踏会が「花嫁選び」である点を説明した。舞踏会では騒動の末に連行された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 屋敷内の優位を前提に行動した。舞踏会後は拘留と損失で勢いを失った。家財喪失で立場が弱まった。

ショーコ

ミズキの娘の一人である。母と姉妹に合わせて動く立場である。舞踏会の招待範囲を語る役割も担った人物である。
・所属組織、地位や役職
 ミズキの娘である。屋敷内では母側の一員である。
・物語内での具体的な行動や成果
 シンデレラへの暴力に参加した。舞踏会に国中の若い娘が招待される点を話した。舞踏会では城の兵士に連行された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 屋敷内での優位に依存していた。舞踏会後は拘留と損失で弱体化した。以後は沈んだ様子で描写された。

王宮関係者

キョーコ王子

花嫁を選ぶ立場にある王子である。素直に相手へ惹かれやすい面がある。シンデレラと踊り、強く執着する人物である。
・所属組織、地位や役職
 王宮の王子である。舞踏会の主役である。
・物語内での具体的な行動や成果
 舞踏会でシンデレラに強く惹かれた。彼女を追って衛兵に停止を命じた。靴の複製品を大量に作らせ、探索隊を編成した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 探索は成果を得られなかった。父王から仕事と勉強を課され、日常へ戻った。後世に名君として名を残したと語られた。

ハヤシミズ王

理屈を重んじる王である。国政への影響を警戒し、花嫁選定にも条件を付ける立場である。王子と情報室に指示を出す統治者である。
・所属組織、地位や役職
 一国の王である。王宮の最高権力者である。
・物語内での具体的な行動や成果
 舞踏会の条件として思想傾向などを列挙した。慣習を理由に舞踏会を実施した。側近にシンデレラの身元調査と尾行を命じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 舞踏会の運用方針を決める影響力を持つ。王子の探索に情報を与えない姿勢を示した。統治者としての警戒心が強調された。

王立情報室長

王の側近として動く人物である。舞踏会の場で調査と尾行を命じられる立場である。具体名は示されない。
・所属組織、地位や役職
 王立情報室の室長である。王の側近である。
・物語内での具体的な行動や成果
 王から「経歴と背後関係の調査」を指示された。王から「尾行」を指示された。実際の調査結果は本文にない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王命で動く立場が明示された。情報収集が職務である点が示された。成果の有無は記述されない。

探索の使者

カザマ卿

王子の命令で動く家来の一人である。靴を持って民家を回る実務担当の立場である。ミズキの家を訪ねた人物である。
・所属組織、地位や役職
 王子の家来である。貴族として「卿」の称号を持つ。
・物語内での具体的な行動や成果
 靴を持って屋敷の扉を叩いた。屋敷の荒廃を見て事情を聞いた。ミズキたちに靴を試させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 探索隊の末端として行動した。屋敷側の没落を目撃した。探索自体は不成立で終わった。

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