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漫画「追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する(13)」感想・ネタバレ

物語の概要

ジャンル
異世界転生ファンタジー/バトルアクションである。本作は、ゲーム知識を武器とした重騎士の無双譚を描くコミカライズ作品である。
内容紹介
主人公が転生の末に重騎士として再出発し、「ゲーム知識」という前世の武器を活かして異世界を駆け抜ける。本巻では、新たな鎧を求めて「魔銀の笛」と呼ばれるクランとの大規模依頼〈交易路の間引き〉に挑む場面が描かれ、希少装備の入手、強敵との対峙、そして仲間たちとの結束が物語を加速させる。

物語の特徴

本作の大きな魅力は、転生重騎士という設定と、その重装備・防御能力を前提に“ゲーム知識”というユニークな武器を組み合わせている点にある。通常の重騎士物語では重装甲・正面突破が主軸となるが、本作では「レアドロップ」「装備生成」「依頼仕様」といったゲーム的なフレームワークが戦闘・戦略に直結する。13巻では、大規模依頼・装備争奪・クラン抗争という構図が展開され、ストーリーのスケールがさらに拡大している。さらに、アニメ化が決定しているという報告もあり(2026年予定)、メディア展開も含めて注目度が高い。

書籍情報

追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する(13)
著者:武六甲理衣 氏
原作:猫子 氏
イラスト:じゃいあん  氏
出版社:講談社
レーベル:ヤンマガKCスペシャル
連載:ヤンマガWeb
発売日:2025年3月6日
ISBN:9784065389126

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あらすじ・内容

アニメ化決定!! 累計300万部目前!! これが「今一番来てる」異世界転生!!!
希少装備を作り出す錬金術師を捜し出せ! 覇権作品堂々漫画化第13巻!!

更なる強敵に備えるため、新たな鎧を求めるエルマ。
〈魔銀の笛〉と呼ばれるクランが凄腕の錬金術師を匿っているとの情報を手にした彼は、
新装備とレアドロップを求めて〈魔銀の笛〉との大規模依頼〈交易路の間引き〉に挑む!!

追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する(13)

感想

今巻では、エルマたちの新たな冒険が描かれる。物語の始まりは、かつての同行者ケルトがイカサマ賭博で起こしたトラブルからだった。巻き込まれる形で事件に関わることになったエルマたちだが、道化師ルーチェの圧倒的な幸運によって形勢を逆転させる。彼の豪運はもはや異常な域に達しており、仲間内でも「ギャンブル禁止令を出した方がいいのでは」と冗談が飛ぶほどであった。

一方、エルマは新たな鎧を求めて、凄腕の錬金術師を探す旅に出る。その過程で、錬金術師を匿っていると噂されるクラン〈魔銀の笛〉と出会う。鎧で顔を隠した巨体のリーダーは、一見して只者ではなく、エルマたちはその人物こそ目的の錬金術師ではないかと推測する。物語は、この出会いを軸に展開していく。

やがて、装備を強化するための交渉は思わぬ方向へ進み、エルマたちは悪徳クランとの戦いに巻き込まれる。混乱の中でも、ルーチェの幸運とエルマの判断力が状況を切り開いていく。戦闘の緊張感と仲間同士の軽妙なやり取りが絶妙に交錯し、シリーズらしいテンポの良い冒険劇が繰り広げられる。

また、今巻ではケルトの存在感が増している。彼の率直な物言いや、「いや、誘えよ」という言葉には、仲間を想う温かさと人間味が感じられる。以前のメンバー4人で過ごした日々を思い出させるような掛け合いも健在で、読者にとって懐かしさと安堵をもたらす。

総じて、今巻は戦い・日常・人間関係のバランスが取れた構成であり、シリーズの魅力が凝縮された一冊である。エルマたちが次にどのような冒険へ挑むのか、期待が高まる締めくくりとなっている。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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展開まとめ

第109話

暗雲通りの探索

ラコリナの裏街〈暗雲通り〉は賭博場や闇市場が立ち並ぶ治安の悪い地域であり、一般人は近づかない場所であった。エルマはこの地を訪れ、違法店の調査を行っていた。同行するルーチェは危険を感じつつも、エルマに付き添っていた。

エルマとルーチェの行動

通りを歩く二人は周囲の荒んだ雰囲気を警戒しながら情報を探っていた。エルマは〈命神の尖兵〉に関する手掛かりを求めていたが、確証を得ることはできなかった。ルーチェは自分も役に立ちたいと申し出て、エルマの側を離れないようにする。

ケルトとの再会と騒動発生

通りを進む途中、エルマとルーチェは知人のケルトが男達に取り押さえられている現場に遭遇した。ケルトは「嵌められた」と訴え、相手の男達を罵倒していた。エルマは状況を把握しようとし、ケルトを取り囲む者達に接近する。

賭博場でのトラブルの説明

エルマが事情を尋ねると、ケルトは賭博場〈絵札の冠亭〉での勝負に敗れ、多額の借金を負ったと説明した。現場に現れた店の主ロビックは、ケルトが持ち金以上の損失を出して逃げようとしたと主張した。彼は笑顔を見せつつも、厳しい取り立てを行っていた。

借金額の提示と不正の主張

ロビックはケルトの負債を「三千万ゴルド」と提示し、周囲を驚かせた。エルマは金額の多さに動揺しつつも、知人として立て替えを申し出る。しかしケルトは「自分は嵌められた」と叫び、イカサマを訴えた。ロビックは冷静に否定し、賭博の詳細を説明する。

イカサマ疑惑と〈絵札の冠亭〉の実態

ロビックの説明によれば、ケルトはレイドで知り合った冒険者仲間に誘われ、連勝で気を良くしたところを一気に負けに転じたという。その結果、掛け金を跳ね上げた末に破産した。ロビックはそれを「油断の結果」と述べ、店側の不正を否定した。
一方でケルトは、明らかに仕組まれた勝負であったと主張し、双方の言い分は平行線をたどった。

ロビックの提案と新たな勝負

ロビックはエルマの介入に対し、ケルトの借金問題を「一度の勝負」で清算する提案を行った。彼は、今回だけは情けとしてケルトの手持ち金を免除するが、代わりにエルマが勝負に挑むよう要求した。条件として、エルマが勝てば借金を帳消しにし、負ければ巨額の賭け金を支払うことになると告げた。

挑発とルーチェの決意

ロビックはエルマを「重騎士のエルマ」と呼び、その名声を引き合いに出して挑発した。掛け金は一千万ゴルドと高額であり、勝てばケルトの負債を帳消しにできるが、負ければ更なる損失が発生する仕組みであった。エルマはその裏を読み取り、ロビックがこの手で財を積み上げていることを察した。
だが、ルーチェはその挑発に憤り、自ら勝負を受けると宣言した。エルマは止めようとしたが、ルーチェは「任せてほしい」と強く主張し、この種のゲームで負けたことはないと自信を見せた。

幸運力とギャンブルの理

ルーチェは自身の「運の強さ」に絶対的な自信を持っていた。一方、ロビックはこの世界における「幸運力」という隠し能力を理解し、それを利用する術を心得ていた。彼にとってギャンブルとは、幸運と策略、そしてイカサマを織り交ぜて勝利を掴む場であり、純粋な運試しではなかった。
ルーチェの発言からも、彼女は真っ当な勝負など存在しないと理解した上で挑もうとしていた。

対立の激化と勝負の幕開け

ロビックはルーチェを挑発し、彼女の外見や振る舞いを揶揄するような言葉を放った。さらに身体に触れようとしたため、ルーチェは即座に制止し、強い拒絶の意を示した。彼女は「貴方のような男は嫌い」と言い放ち、勝負の舞台での対峙が決定的となる。
場には緊張が満ち、エルマとケルトが見守る中、〈絵札の冠亭〉での一戦が始まろうとしていた。

第110話

ロビックとルーチェの対決開始

ルーチェとロビックは、〈絵札の冠亭〉の一角に設けられたテーブルで対面した。勝負の形式は、山札から三枚のカードを引き、同じ数字を揃える「三貴族」と呼ばれるシンプルなカードゲームである。ルールは単純だが、相手の手練れぶりからして不正の可能性が高く、エルマとケルトは警戒を強めていた。

ルール説明と勝負の条件

ロビックは、初心者であるルーチェに配慮するという名目で、カードの交換や引き直しを禁止する簡易ルールを提案した。勝負は最初に配られた三枚の手札で決するというものであり、掛け金は一千万ゴルドと定められた。ルーチェは不正を見抜く自信を見せつつも、正面から受ける姿勢を崩さなかった。

仕組まれた開幕とイカサマの兆候

ロビックがシャッフルを終え、カードを配る段階でケルトは「カードのすり替えや隠し技を平然と行う男だ」と警戒を口にした。エルマもまた、ロビックの動作に違和感を覚える。ゲームは数字の大きさを競う単純な形式であり、「ダブル」が出る確率は二割、「トリプル」はわずか〇・二%という希少な役であった。ロビックは山札操作を行っている様子を見せ、観客たちの前で勝利を確信していた。

ルーチェの一手と予想外の勝利

ロビックの手札は「5のダブル」となり、悪くない出目を見せた。しかし、ルーチェがカードを開くと、そこには奇跡的な「10のトリプル」が並んでいた。確率的にほぼ不可能な役の出現に場内が騒然となる。ロビックは動揺を隠しつつも敗北を認め、ルーチェの勝利が確定した。
エルマとケルトはその結果に安堵する一方で、エルマはロビックが最初から細工を仕掛けていたことを見抜いていた。

新たな提案と次なる罠

ルーチェの勝利により一千万ゴルドを得たが、ロビックはすぐに「ダブルアップ」という次の勝負を持ちかけた。ケルトは「最初の一戦は花を持たせただけだ」と呟き、ロビックの狙いが別にあることを察する。ロビックは笑みを浮かべたまま、次なる博打へとルーチェを誘導していく。

ダブルアップの提案と新たな賭け

ロビックはルーチェの勝利を受け入れるふりをしながら、「ダブルアップ」と称した再戦を提案した。ルールは単純で、勝者が追加で一枚カードを引き、そのカードが〈A(エース)〉ならば勝ち金が倍になるというものだった。リスクはないと説明しつつも、その裏ではすり替えによる不正操作を仕込んでいた。

ロビックの狙いとルーチェの挑戦

エルマとケルトは、この仕組みが勝者を再び賭博の渦に引き込み、冷静な判断力を奪う罠であることに気付いた。しかしルーチェはその提案を受け入れ、再びカードを引く。周囲の観客たちは興奮し、ロビックは勝ち金を倍にして彼女を深みへと誘い込もうとしていた。

連続勝利と確率を超えた幸運

ルーチェは一度目の引きで〈A〉を引き当て、二千万ゴルドの勝利を得る。続いてもう一枚引くよう促されると、再び〈A〉を引き、勝ち金は四千万ゴルドに倍増した。確率にしてわずか0.5%の奇跡的な結果であり、観客たちは息を呑んだ。ロビックは動揺しながらも、平静を装ってルール通りに次のカードを引かせた。

三連続の奇跡と場内の騒然

ルーチェが三枚目を引くと、またしても〈A〉のカードが出現した。勝ち金は八千万ゴルドに到達し、場は騒然となる。観客の間からは「三連続は見たことがない」という声が上がり、ロビックの顔には明確な焦りが浮かんだ。ルーチェは静かに「もう一度」と告げ、さらなる一枚を引く。

四連続成功と完全勝利

四枚目のカードも再び〈A〉であった。確率にして二十七万分の一という奇跡的な成功であり、最終的な勝ち金は一億六千万ゴルドに到達した。ルーチェの圧倒的な幸運は、ロビックの策略を完全に打ち砕いた。

崩壊するロビックと勝負の終幕

ロビックは常軌を逸した表情で「イカサマだ!」と叫び、ルーチェを不正扱いしようとする。しかし観客たちは状況を理解しており、逆に彼の醜態を冷ややかに見つめていた。ロビックは自らが仕掛けた罠に溺れ、完全に敗北する形で幕を閉じた。
ルーチェは冷静な態度で勝負を終え、エルマたちの元へと歩み寄った。

ロビックの逃走と制圧
勝負に敗れたロビックは、怒りと混乱に駆られながら逃走を図った。煙玉を投げて視界を遮り、取り巻きを呼び寄せて混乱の中から抜け出そうとする。しかし、エルマは即座に〈影踏み〉を発動し、ロビックの動きを封じた。ロビックは反撃を試みたものの、圧倒的な力の差で制圧される。

決着と後始末
騒動後、エルマは壊された店内の被害を考慮し、「迷惑料込みで一億六千万ゴルド」と支払いを命じた。ロビックは泣き叫びながら金を差し出すしかなかった。ルーチェは事の顛末に肩の力を抜き、拍子抜けしたように「思ったより単純でしたね」と感想を漏らした。

戦いを終えて
現場を離れながら、ケルトは「エルマがすごいと思ってたが、ルーチェの方が化け物かもしれない」と呟いた。エルマは特に否定せず、冷静なまま次の行動へと移っていった。
こうして〈暗雲通り〉での騒動は、ルーチェの幸運とエルマの実力によって完全に収束した。

第111話

ケルトの感謝と食事の席
ロビックとの騒動の後、ケルトはエルマとルーチェを高級レストランに招待した。今回の賭博事件で助けられたことに深く感謝し、「今日は俺のおごりだ」と言って豪快に二人をもてなした。ルーチェは場違いな高級店に恐縮するが、ケルトは気にするなと笑い飛ばした。

ルーチェの規格外の幸運
食事中、ルーチェは「無効試合にはならないのか」と心配を口にしたが、ケルトは「お前たちがいなければ金は全部失っていた」と感謝を重ねた。彼はまた、ロビックのような裏社会の人物が多数存在することを指摘し、〈暗雲通り〉の危険性を改めて語った。

エルマとケルトの分析
エルマは、ルーチェがあの勝負を制したのは単なる運ではなく、もはや規格外の幸運力によるものだと冷静に分析した。駆け引きや戦略を超えた「運の極振り」とも言えるその資質に、ケルトも「エルマ以上の化け物かもしれねえ」と感嘆した。ルーチェ本人は褒められているのか困惑していた。

談笑と新たな決意
食事の最後、三人は一億六千万ゴルドという巨額を手にしたことを惜しみつつも、今後は危険な賭場には関わらず、真っ当に稼ぐ方がよいと結論づけた。ケルトは「普通に〈夢の穴〉の攻略で稼いだ方が安全だ」と言い、場は和やかな笑いに包まれた。
その頃、別の場所でグラスを傾ける謎の人物が現れ、次なる動きを思案していた。

父アイザス・エドヴァン伯爵の憤り
同じ店の一角で、エルマの父・アイザス・エドヴァン伯爵は深酒を続けていた。執事が「討伐の準備もございます。早急に領地へ戻らねば……あまり深酒は」と進言するが、伯爵は聞く耳を持たない。
彼は怒りを露わにし、「ハーデンのやつめ、ヒーツ家やヴィルス家の前で恥をかかせおって! 一騎当千が古い考え方だと? 威厳を保つことが民と領地を守る貴族の役割ではないか」と嘆き、杯を握りしめた。彼の中には、古き貴族の誇りと、時代の変化への苛立ちが渦巻いていた。

父との遭遇を避けるエルマ
同じ店内でその姿を見たエルマは、顔を伏せて気配を消す。関係の悪い父との再会を避けたい一心で、「ラコリナに他領の貴族が召集された? まさかカロスの件で進展があったのか……?」と内心で焦燥を募らせた。
そんなエルマの様子に気付かぬルーチェは、「どうしたんですかぁ? エルマさん、そんなコソコソしちゃって。このお肉すっごく美味しいですよぉ!」と無邪気に話しかける。しかしエルマは動揺を隠せず、「わ、悪いルーチェ。急用ができた」と席を立った。

それぞれの反応と別行動
エルマはケルトにも「今日はありがとうな、ケルト」と感謝を告げてその場を離れる。ルーチェは慌てて「もう行くんですか? エルマさん。ごちそうさまでした、ケルトさん!」と後を追った。
残されたケルトは「お前らの頼みだったらなんでも引き受けるけどよ……なんだ? 杓子定規に」と呟きながら、二人の残した料理を食べ続けるのだった。

父の影と新たな動き
外に出たエルマは、追いついたルーチェに「すまない、ルーチェ。急に飛び出してしまって」と謝罪する。ルーチェは「それは構わないですけど、一体どうしたんですか?」と問いかけた。
エルマは真剣な面持ちで「アイザス伯爵が来ていた。恐らくカロスの件で近々大きな動きがあるだろう」と答える。その名にルーチェは驚き、「お義父様が!?」と声を上げた。
エルマは立ち止まり、「冒険者である俺達も無関係ではないはずだ。だから――」と決意を語り、足早に次の目的地へ向かうのだった。

黒鋼の鎧を求めて
エルマとルーチェは高級鎧専門店「トラフニーカ」を訪れ、特別な鎧を探していた。重騎士にとって鎧は武器と同等に重要であり、エルマは現在の「黒鋼の鎧」が老朽化していることを気にしていた。店主はハウルロッド侯爵家と面識のある上級冒険者であれば特別な鎧を見せられると述べ、彼らを奥の展示室へ案内する。

古代装備との対面
店主が布を外すと、そこには二つの希少な鎧が並んでいた。一つは古代人の技術で作られた「古代の鎧」(防御力+29・市場価値3500万G)、もう一つは火山の魔鉱石から精錬された「ヴォルケーノ・アーマー」(防御力+18・市場価値2600万G)であった。どちらも強力な防具だが、エルマは「思ったより……」と表情を曇らせ、理想には届かないと判断する。

装備選択の葛藤
エルマは「古代の鎧は防御力は高いがデメリットが大きい」「ヴォルケーノ・アーマーは黒鋼の鎧と性能差が小さい」と冷静に分析する。結局、既存の黒鋼装備が依然として“コスパ最強”であり、B級以上の冒険者が少ないこの世界では、装備の選択肢自体が限られていると結論づけた。ルーチェが「他の上級者に譲ってもらうのは?」と提案するが、エルマは「それも難しいだろう」と首を振る。

新たな決意と次の目的
現状に満足できないエルマは、「素材となる金属を探しに行こう」と決断する。ルーチェが「それがあればベルガの鍛冶屋さんに打ってもらえるんですね!」と明るく答えると、エルマは力強く頷き、「よし! この街の錬金術師を当たってみよう!」と宣言する。
こうして二人は、新たな装備を求める旅の第一歩を踏み出した。

第112話

錬金術師という職能
物語は、アイテムを合成・生成できるクラス「錬金術師」の説明から始まる。彼らは多種多様なアイテムを生み出すことができ、戦闘や支援の両面で活躍する存在である。腕の良い錬金術師と繋がりを持てば、欲しい装備を得るだけでなく、商業的な利益も期待できると語られる。

雷霧錬金工房の訪問
エルマとルーチェは「雷霧錬金工房」を訪れ、鍛冶素材を得るための相談を行う。迎えたのはタバコをくわえた個性的な錬金術師で、彼は戦闘面でも高い技術を誇る熟練者だった。彼は魔石や薬品を自在に操り、複数の魔法を掛け合わせて攻撃を展開するデモンストレーションを披露。しかし、威力の調整を誤って爆発を起こし、エルマとルーチェは巻き込まれて吹き飛ばされてしまう。

錬金術師の戦闘能力と多様性
その後、別の工房「クレイドールの天秤」を訪れた二人は、ゴーレムを操る錬金術師に出会う。彼女は魔法と錬成技術を組み合わせ、ゴーレムや植物系の召喚体を自在に動かしてみせた。消費資源が多く扱いは難しいものの、戦闘・支援・創造の全てに優れた“かなりの強クラス”であることが示される。

錬金術師の現状と社会的地位
ただし、エルマは「これはMW(マジック・ワールド)時代の話だ」と内心で語り、この世界では錬金術師の地位が低下していることを嘆く。上位の錬金術師は貴族に雇われ、個人では活動しにくい環境となっていた。結果として、錬金術師の多くは補助職として下位に留まり、家系として存続している者だけがかろうじてその技を継承している。
二人は結局、有力な協力者を得られずに工房を後にし、改めて「この世界では上位クラスの錬金術師がいかに貴重か」を痛感するのだった。

三軒目の錬金工房「小人の籠」
幾つもの工房を巡った末、エルマとルーチェは森の奥にある「小人の籠」という錬金工房を訪れる。店内は怪しげな標本や薬瓶が並ぶ奇妙な雰囲気で、二人を迎えたのは女性錬金術師カリスであった。彼女は穏やかに迎え入れつつも、どこか達観した空気を纏っていた。

カリスの見解と限界
エルマが鎧の素材を作ってもらえないかと相談するが、カリスは「大した金属は作れない」と即答する。彼女によれば、上級の錬金技術を持つ者はすでに商人や貴族に雇われており、独立して活動する者はほとんどいないという。自身もスキルの多くを戦闘以外に割いており、鍛冶に応用するほどの力は持たないと語る。

新たな手がかり「銀面卿」
ルーチェが「他に心当たりはないですか?」と食い下がると、カリスは思案の末に一つの噂を口にした。「ラコリナの大手クラン《魔銀の笛》には、凄腕の錬金術師が所属しているらしい」と。エルマはその名を聞き、「銀面卿のクランか」と頷く。彼はかつてからその名を耳にしており、冒険者の間でも名の知られた存在であった。

《魔銀の笛》と銀面卿の存在
クラン《魔銀の笛》は、全身を魔銀の鎧で覆う男――“銀面卿(ぎんめんきょう)”をリーダーとする謎多き組織である。メンバー構成や活動の実態は不明だが、その財力と勢力規模は群を抜いており、商人の間でもしばしば話題に上るほどだった。特に同格のクランと比較しても明らかに金回りがよく、背後に錬金術による支援があるのではと噂されていた。

リスクと決意
カリスは、「そのクランは秘密主義で、貴族でさえ関与を避ける」と忠告する。「あのクランの尻尾を追うのは難しい」と釘を刺すが、エルマは思案しながらも、「一流の錬金術師と直接交渉できるなら、多少の危険は承知の上だ」と内心で決意を固める。
こうして、彼の新たな目的は――謎のクラン《魔銀の笛》と、その主・銀面卿へと向けられていった。

錬金術師への接触の難しさ
カリスは、エルマたちが探している上位錬金術師が簡単には見つからないことを指摘した。貴族や商人に雇われることが多く、下手に探れば敵対関係に発展しかねないという。彼女は慎重な行動を勧めたが、アイリスは「エルマの鎧を作りたいだけなのに遠回りだ」と嘆いた。

銀面卿とクランの方針
エルマは、狙ったアイテムを手に入れるには相応の手間が必要だとして、「連中と接触する手段がある」と語る。カリスは銀面卿のクラン〈魔銀の笛〉の活動方針を説明し、それが錬金術を活かした金稼ぎであり、高レベル魔物の素材を集めてアイテムを生成・販売する流れにあると推測した。

エルマの決意とカリスの反応
エルマは「その方針に乗れば接触できる」と考え、危険を承知で挑む決意を示した。カリスは容易ではないと警告するが、アイリスは「エルマがいるから大丈夫」と信頼を込めて笑顔を見せる。カリスは呆れたように「そうかい?」と返しつつも、二人の覚悟を受け止めた。

第113話

魔銀の笛の情報収集
ラコリナ冒険者ギルドで、エルマはクラン〈魔銀の笛〉について資料を調査していた。主力はB級中位の冒険者たちで、錬金術による資金活動を主軸にしている様子が伺えた。依頼の傾向から察するに、彼らは薬草や鉱石、特に刻印石などの素材を狙って活動していると推測される。

ケルトとの再会と協力
そこへケルトが登場し、情報収集を手伝うことに。以前のぶっきらぼうな態度とは異なり、率先して協力的に動く姿にエルマとルーチェは驚く。ケルトは「借りを作っておけば後で得する」とあくまで実利を重視した理由を述べつつも、仲間意識を感じさせた。

〈魔銀の笛〉の評判
ケルトの調査によると、〈魔銀の笛〉は狩場の独占や暴力的な交渉で知られる、評判の悪いクランであった。指導者である“銀面卿”の素顔や出自は一切不明だが、元貴族の騎士、あるいは素行不良で追放された人物という噂がある。エルマは「貴族出身なら、情報網の広さも納得がいく」と推察した。

エルマの覚悟と決意
ケルトは「鎧一つのためにリスクを負う必要があるのか」と諫めるが、エルマは即座に「ある」と断言する。彼にとって装備とレベルは命の次に重要な要素であり、上を目指すためには一流の錬金術師の協力が不可欠だと語った。
さらに「場合によっては〈魔銀の笛〉から錬金術師を引き抜きたい」と真剣に口にし、ケルトを仰天させる。

仮想敵と今後の展望
エルマは、自分たちが打倒したカロス以上に危険な存在「夢神の尖兵」を仮想敵として掲げる。彼はA級冒険者層を抱える強敵に備え、錬金術師の支援を得て戦力を底上げする必要があると判断していた。ケルトとルーチェは呆れつつも、エルマの本気に押される形で同行を承諾する。

周囲の評価と締めくくり
周囲では、エルマがギルド長やハーデン候爵に気に入られていることから、多少の無茶は許容されているとの見方もあった。ルーチェは「目を付けられた相手の方が気の毒ですね」と笑い、ケルトも「冷静に考えれば、こっちの方が化け物だ」と冗談めかして言う。
こうして三人は、〈魔銀の笛〉との接触を目指し、新たな行動を開始するのだった。

依頼掲示板での発見
ギルドで資料を調べていたエルマたちは、それぞれ別々に情報を探していた。ルーチェが資料を整理している最中に一枚の依頼書を落とし、エルマが拾い上げる。彼の目に止まったのは、推奨レベル80の「〈交易路の間引き〉」という大規模依頼であった。

交易路の魔物騒動
依頼内容は、過去に攻略済みのダンジョン「夢の穴」および「鉱虫の森洞」から都市周辺に漏れ出た魔物群の掃討である。出現するのは金属の外殻を持つ「鉱虫系」の魔物たちで、防御力が高く、低確率で高級防具の素材を落とすという。
これを見たエルマは、「錬金術用素材を回収している〈魔銀の笛〉が関わる可能性が高い」と直感した。

推論と出発の決定
彼は「彼らが鉱虫を狙っていれば間違いなく現れる」と考え、もしそうでなくとも未加工の金属素材を大量に持ち出せば、連中の方から接触してくる可能性があると推測。ルーチェの無自覚な行動からヒントを得たエルマは「これだ!」と閃き、さっそく依頼を受諾することを決意した。

レイドへの参加
翌日、正式に〈交易路の間引き〉の討伐依頼を受けたエルマとルーチェは、都市ラコリナの裏門近くに設けられた集合地点へと向かった。そこには他の冒険者たちやクランがすでに集結しており、戦闘前の緊張が漂っていた。

謎の冒険者たちとの遭遇
待機所には様々な冒険者が顔を揃えていたが、その中にひときわ目立つ一団がいた。仮面の戦士を中心に、妖艶な女戦士や重装の戦士たち――その装備と威圧感から、エルマは直感的に彼らが〈魔銀の笛〉の関係者であると察した。
地面が震動を始め、魔物の群れが近づく音が響く中、エルマは静かに呟いた。

「どうやら当たりのようだな」

こうして、〈魔銀の笛〉との直接的な接触の機会が、戦場において訪れようとしていた。

第114話

敵クラン〈魔銀の笛〉との対峙
エルマとルーチェが参加したレイド現場には、噂に聞くクラン〈魔銀の笛〉の一団が待ち構えていた。彼らの副長を名乗る男・フラングは、エルマたちの参加を快く思わず、「余計な部外者」として排除の意図を隠さない態度を見せる。彼は空気を読まずに割り込んできた者を嫌悪し、敵意を露わにした。

フラングの実力とクラス
フラングの装備は赤く細身の剣――炎を纏うように輝く「真紅の剣士」であり、そのクラスは〈炎剣士〉。その剣術は名の通り炎を操り、近接戦闘を主体としながらも中・遠距離にも対応可能な汎用型であった。メインスキル〈猛火の剣客〉を中心に補佐・回復系スキルも扱えるバランス型で、ルーチェは「なかなか渋いクラス」と評している。

同行する女冒険者とのやり取り
フラングと共にいた女冒険者は、踊り子系の装備を身にまとった人物で、冷静かつ妖艶な物腰を見せる。彼女は「他の冒険者と交流するのもレイドの楽しみ」と軽口を叩き、フラングの険悪な態度を和らげようとするが、彼の方はあくまで敵意を崩さなかった。彼女の発言から、二人が〈魔銀の笛〉の中核メンバーであることが明らかになる。

エルマの反論とギルドの構造
フラングは「このレイドは我々で十分だ」と言い放ち、エルマたちに帰るよう勧告する。しかしエルマはこれを一蹴し、「俺たちは正規の手続きを経て参加している」と主張した。彼の説明によれば、この都市ラコリナのギルドは特定クランの勢力集中を防ぐため、冒険者の独占行為を警戒しているという。
実際、〈魔銀の笛〉は過去に〈夢の穴〉などのダンジョン資源を独占し、市場支配を行っていたとされる。そのため、ギルド側は彼らに対しても監視を続けている状況であった。

対立の火種
エルマの理詰めの発言により場の緊張が増す中、〈魔銀の笛〉側の面々は明らかに苛立ちを見せる。フラングは「貴様らのような余計者がレイドを乱す」と吐き捨て、両陣営の間に不穏な空気が漂う。
ギルドの監視下で行われる今回のレイドは、単なる討伐戦ではなく、クラン間の思惑が交錯する政治的な火種を孕んでいた。

目的の明示と作戦の説明
エルマは今回のレイド参加の真の目的をルーチェに明かす。それは〈魔銀の笛〉が抱えている錬金術師との接触を図ることにあった。敵対は避けられないとしても、相手の求めるアイテムを先に確保し、交渉の糸口を掴むことが狙いである。彼は〈魔銀の笛〉が汚い手段を辞さないクランであると踏んでおり、慎重な立ち回りを決意する。

フラングの挑発と謎のスキル
交渉の場が緊迫する中、フラングは「我々は部外者の失態の責任を取れん」と挑発的に発言し、手のひらに炎の魔法陣を展開した。その光景を見たエルマは驚愕する。というのも、〈炎剣士〉の専用スキルツリーでは習得できないはずの魔法――火球系魔法〈ファイアボール〉を彼が発動していたからである。

スキル構成の矛盾と謎の解明
エルマは理論的に分析を始める。〈炎剣士〉のメインスキルツリー〈猛火の剣客〉では、同属性の魔法スキルを併用する利点がないどころか、重複による効率低下を招く。ゆえに〈ファイアボール〉の取得はスキルポイントの無駄――通常ではあり得ない選択であった。
しかし、フラングの発言によって真相が明らかになる。彼が習得しているのは「上級火魔法」であり、それには“属性攻撃力を底上げする補正効果”が付与されていたのだ。

エルマの理解と分析の修正
この発言により、エルマは自身がこの世界のシステムを一部誤解していた可能性を悟る。スキルの選択や成長ルートには、単なる効率以外の「隠し効果」や「相乗特性」が存在するのではないか――その仮説が脳裏をよぎる。彼は改めて、この世界のゲーム構造の深さを実感した。

一触即発の空気
フラングの挑発により、周囲は騒然となる。女踊り子が「フラング様、落ち着いて」となだめるが、彼は怒気を収めず、殺気を露わにした。ルーチェはエルマに「敵に回しても仕方ないのでは?」と苦笑するが、エルマは冷静に状況を見据えていた。
フラングが放つ強烈な炎の魔力を前に、エルマは彼の実力をB級冒険者の最上位と判断し、「即地の実力が高い炎剣士」として内心で評価を改める。

対峙の終幕と皮肉な一言
緊迫する空気の中、フラングは怒鳴りながら炎を放とうとするが、踊り子の仲間に制止される。エルマは冷静に構え、挑発を受け流した。ルーチェはそんな彼の分析的な態度を見て、「もしかして、煽ってません?」と皮肉を返す。エルマは苦笑しつつも否定し、「そんなつもりはない」と答えるのだった。

オレアント群の出現
レイドが開始されると、地鳴りと共に大量の魔物「オレアント」(Lv.65)が姿を現した。金属質の外殻を持つ巨大な蟻型魔物で、その数は予想を超えていた。ルーチェは「なかなかのレベル」と驚き、数の多さに警戒を強める。

エルマの冷静な分析
エルマは群れの動きを観察しつつ、敵の密度や出現位置を確認。彼の目的は討伐そのものよりも、〈魔銀の笛〉との接触を果たすことにあったため、「ひとまず目的は達した」と判断する。そして「これだけの数ならドロップ率も期待できる」と冷静に語る。

希少素材への執念
エルマは珍しい鉱素材の入手を優先視し、「元々ドロップ率が低い分、希少性は十分」と満足げに分析。しかしルーチェは呆れ気味に「エルマさんの目にはドロップアイテムしか映っていない」と皮肉をこぼす。彼女の視線の先では、エルマの索敵スキル〈Elymas’s Perception〉が作動し、周囲のレア素材の位置を正確に捉えていた。

平常運転のエルマ
ルーチェはそんなエルマの様子に笑い、「エルマさんがいつも通りで安心しました」と冗談を交える。戦場であっても冷静に利益を追求する彼の姿勢が、彼女にとってはむしろ頼もしく感じられたのだった。

第115話

二重の目的とエルマの狙い
エルマはルーチェに、今回のレイドには二つの目的があると明かす。第一は〈魔銀の笛〉が抱える錬金術師との接触を通じ、その背後にある秘密を探ること。第二は討伐対象である鉱虫(オレアント)のドロップ素材〈魔虫銀〉を先取りすることであった。〈魔虫銀〉は高純度金属として鎧の素材にもなりうるため、交渉材料と実利を兼ねた一石二鳥の計画である。

敵勢力オレアントの脅威
レイド地に巣食うオレアントはレベル65の高位魔物であり、HPと敏捷性は平均以下ながら、攻撃力と防御力が突出して高い個体であった。中近距離のスキルを併用し、冒険者の群れを容易に圧倒する戦闘能力を持つため、軽率な接近は危険と判断された。
エルマは冷静に戦力を分析しながらも、「俺達なら対応できる」と自信を示す。

〈魔銀の笛〉の介入とフラングの権限
そこに〈魔銀の笛〉の副長フラングが姿を現し、自身がギルドから「レイド監督兼指揮官」に任命されていると告げる。つまり、他のクランは全て彼の指揮下に置かれる立場であった。フラングは「貴様らの行動は俺次第」と権威を振りかざし、従うよう圧力をかける。
しかしエルマは動じず、「強権を盾に無茶を言うなら、こちらも異議申立書を出す」と冷静に返し、ギルドの制度を持ち出して対抗する。その姿勢にフラングは苛立ち、「目障りなガキだ」と吐き捨てつつも、内心でエルマの知識と胆力を認め始める。

強制的な命令と策略
議論の末、フラングは「レイド監督の命令」としてエルマ達に前線への出撃を命じた。名目上は「先陣を切り敵を減らすため」だが、実際には危険な囮役である。背後では自分達〈魔銀の笛〉が安全圏から戦況を見守り、状況を見て加勢するという形を取る。フラングは「重騎士と道化師(ルーチェ)で先陣を務めろ」と命じ、あくまで命令違反を避けさせる巧妙な手口を取った。

圧力下の決断
命令を拒めばギルドへの報告で不利になり、受け入れれば危険な戦場に晒されるという二重の罠。エルマは即座に状況を把握し、ルーチェに退路を確保させつつ出撃を受け入れる。彼は「利用されるなら、その間に情報を取る」と冷静に判断していた。
一方フラングは勝ち誇った表情で、「敵の数が減るまで護衛を任せる」と告げる。

危険な先陣命令
フラングの命令により、エルマとルーチェの二人だけが先陣を任されることになる。フラングの仲間アイネは「人が悪い」と皮肉を言いながらも、内心では二人が無事に戻れないだろうと笑みを浮かべる。フラングは「折を見て加勢する」と言い放つが、実際には二人を囮にするつもりであった。

エルマの即断と突撃
エルマは一瞬の逡巡の後、「その話、受けさせてもらう!」と宣言し、馬車の上から飛び出して戦場へ突入する。ルーチェが慌てて追う中、フラングは呆れ顔で「死ぬつもりか」と嘲笑するが、エルマの表情には恐れはなかった。

分析と戦術の転換
エルマは走りながら冷静にオレアントの特性を分析する。敵はHPと速度こそ低いが、防御力が極めて高く、中近距離攻撃スキルを併用する強敵である。しかし、動きは単調で読みやすく、反応速度も遅い。そのため「俺たちとの相性はいい」と結論づけ、攻撃のリズムを構築する。ルーチェも即座に理解し、「そういうことですね」と笑みを返した。

連携攻撃の開始
エルマが敵の攻撃を受け流して隙を作り、ルーチェが前衛からの指示に合わせて突撃する。彼女の放つスキル《竜殺突き》がオレアントの外殻を貫き、一撃で撃破に成功した。爆発的な威力に周囲は驚愕し、フラングでさえ「頑丈なオレアントが一撃で!?」と叫ぶ。

クリティカルの特効効果
撃破後、エルマは「ルーチェのクリティカルが特効を引いた」と冷静に分析。オレアントが持つ再生能力を貫く特効判定が発生し、瞬殺に繋がったことを見抜いていた。二人の息の合った攻撃は、明らかに周囲の予想を超えるものだった。

戦闘後の反応と次なる行動
驚愕するフラング達を背に、ルーチェは落胆した様子で「ドロップなし、ハズレでした」と報告する。エルマは気にせず「数はいる、どんどん行くぞ!」と次の敵へ向かう。彼の目的は依然として〈魔虫銀〉の確保にあった。
一方、後方に残された〈魔銀の笛〉の面々は、二人の予想外の実力に言葉を失うのだった。

第116話

群れとの遭遇
エルマとルーチェは、鉱虫の巣窟跡地に到着し、辺りを埋め尽くすオレアントの群れを確認した。数はざっと二十体前後。彼らは護衛の馬車を背に、目前の敵群を迎え撃つ態勢に入る。エルマは周囲を一瞥し、戦場全体を把握した上で「俺とルーチェで引き受ける」と決断した。

戦闘の開始と連携
オレアントの数体が牙を鳴らして突進。ルーチェを狙う個体に対し、エルマは即座に前へ出て剣を構え、「俺とじゃれ合ってもらうぞ」と挑発。敵の注意を自らに集め、ルーチェの支援射線を確保した。
ルーチェが距離を取る中、エルマは自身のスキル《影踏み》を発動。敵の影を踏みつけて動きを一瞬止め、間合いを詰める隙を作り出した。

オレアントの特性とスキル解析
戦闘の最中、エルマは敵の挙動を観察し、オレアントの危険なスキルを三種に整理した。

  1. 《鉄爪(てっそう)》:鋭い脚部を刃のように振り下ろす連撃技。近距離での破壊力が高い。
  2. 《突進》:一直線に相手へ高速で突っ込む攻撃。重量と勢いを兼ね備え、受け止めるのは困難。
  3. 《ロックキャノン》:巨岩を砲弾のように射出する遠距離攻撃。命中すれば重装でも致命的な威力を持つ。

これら三つのスキルを巧みに使い分けるため、オレアントは単体でも脅威であり、群れでの戦闘では極めて危険な存在であった。

戦況の整理と次なる一手
エルマは敵の行動パターンを把握しつつ、冷静に立ち回りながら「敵のスキル発動を誘導する」戦術に切り替える。彼の目的は、ルーチェの支援魔法を最大限に活かすため、オレアントの行動を制御することであった。
一方ルーチェは、エルマの精密な動きと指示に従い、援護射撃の準備を整える。二人の間には、すでに信頼と役割分担が確立されていた。

岩弾を利用した迎撃
戦場で次々と《ロックキャノン》を放つオレアント達。エルマは迫り来る巨大岩弾を真正面から受け止めることなく、盾の角度を変えて軌道を逸らし、反対側から突進してきた別のオレアントへと弾き飛ばした。岩弾の衝撃で突進していた個体の勢いが止まり、戦線に一瞬の隙が生じる。

連携による初撃破
その隙を逃さず、ルーチェがエルマの《影踏み》で動きを封じられたオレアントに突進。スキル《竜殺突き》を発動し、魔力を纏う槍で一気に貫いた。爆発的な魔力の奔流とともに敵の外殻が砕け散り、最初の一体を撃破する。

空中連携による二体目の撃破
続けてルーチェは、エルマの肩を足場にして跳躍。高く跳び上がると同時に、上方から巨大岩弾《ロックキャノン》を放ったオレアントに狙いを定め、再び《竜殺突き》を叩き込む。雷鳴のような轟音とともに敵は崩壊し、二体目が沈んだ。

三体目への戦術的誘導
だが、エルマの目前には新たな脅威。突進してくる一体のオレアントと、その背後からさらに二体が《ロックキャノン》を同時発射。エルマは瞬時に判断し、突進個体に対して《シールドバッシュ》を繰り出して動きを止める。
直後、自身は後方へ跳び退き、《影踏み》でその場に固定された敵を拘束。その結果、背後の二体が放った巨大岩弾が回避できず、拘束された個体に直撃。轟音とともに粉塵が上がり、敵は大きな損傷を負う。

連携による止めと勝利
動きを止められたオレアントに、ルーチェが間髪入れず《竜殺突き》を放つ。魔力の槍が閃光のように突き抜け、三体目が爆散。
戦場には静寂が戻り、戦闘結果を示すシステムメッセージが浮かぶ。
「経験値713取得」「Level UP 80→81」。

戦闘後の余韻
エルマは静かに盾を構え直し、ルーチェと並び立つ。連携の精度はさらに高まり、二人の戦闘はもはや熟練の域に達していた。
爆煙の中、オレアントの残骸を背に、エルマの目は次なる戦場を見据えていた。

戦闘の余韻と驚愕
ルーチェとエルマの連携により、オレアントの群れは次々と撃破された。わずかな時間で戦場は静まり返り、フランツ一行は呆然と立ち尽くす。あまりの速さに「オレアントがあっという間に……!」と驚愕の声が上がり、フランツは目を剥いて「なんなんだ奴らは!」と叫んだ。圧倒的な実力差を前に、彼らの戦意は完全に奪われた。

目当ての戦利品発見
戦闘後、地面から大きな鉱石の塊が現れ、ルーチェが歓声を上げる。「出ましたよ、エルマさん!」と声を弾ませ、エルマも「よし、これが目当てのアイテムだ」と応じる。その正体は**〈魔虫銀の鉱石塊〉**であり、市場価格は2600万Gに達する高価な魔鉱石だった。魔鉱石を食して育つ魔虫の体内で生成される特殊な魔金属で、強力な魔法伝導率を持つが不純物が多く、精製には錬金術師の手が必要とされる。

フランツ達の焦燥と正体の察知
その希少価値に気づいたフランツは顔を青ざめさせ、「ラーナのように爆散していくではないか!」と叫びつつ焦燥する。アイネが冷静に「あの二人……もしかして《黒き炎刃》を倒したパーティでは!?」と告げると、場の空気が一変した。エルマが重騎士、ルーチェが道化師という上位職の組み合わせであることに気づいたフランツは、「珍しいクラスだ……!」と驚愕。
強欲に駆られた彼は、「部外者に魔虫銀を持っていかれて堪るものか!」と叫び、配下を引き連れて二人のもとへ向かう。

戦果の整理と幕引き
その頃、ルーチェとエルマは淡々と戦果を確認していた。
「七体目撃破です!」とルーチェが報告し、エルマは「魔虫銀、これで三つ目だ」と冷静に応じる。周囲では他の隊員達がオレアントに攻撃を仕掛けるが、「全然ダメージが通らない!」「めっちゃ硬てぇ……!」と悲鳴を上げる有様だった。
一方、ルーチェは仲間の負傷者に向かって「ヒール」と回復魔法を施し、戦場の整頓を進める。

フランツがなおも「勝手に回復するな!お前ら、しっかりしろ!」と叫ぶ中、エルマ達は冷静に任務を遂行し、魔虫銀の採取を続けるのだった。

第117話

ルーチェの《ダイススラスト》発動
戦闘が続く中、ルーチェは自身の攻撃スキル《ダイススラスト》を繰り出す。
その一撃はサイコロの出目によって威力が変動する特異な技であり、この時の出目は「6」。最大値の威力を発揮した突きは、オレアントを貫通し、爆裂するように粉砕した。
クリティカルヒットの閃光が走り、戦場は静まり返る。敵は一撃で沈黙した。

順調な討伐と収穫
ルーチェとエルマの連携は円熟し、次々とオレアントを撃破。
「いい調子ですね!」と笑顔を見せるルーチェに対し、エルマは冷静に「これで10体目だ」と告げる。
戦果として〈魔虫銀の鉱石塊〉が4つ集まり、エルマは「1つ2600万Gだから、合計1億Gの大台だな」と計算する。
ルーチェは数分前にも「出ました!5000万Gゲットです!」と歓声を上げており、自分でも金銭感覚が麻痺していることを自覚し始める。

金銭感覚の崩壊と自己ツッコミ
大量の高額鉱石を前にルーチェは頭を抱え、「絶対に金銭感覚おかしくなってますよう……」と混乱。
その瞬間、脳裏に浮かんだのは仲間・ケルトの顔であった。
幻聴のように「まず値段だろうがよ!」と怒鳴る姿を想像し、自分たちの暴走気味なテンションに内心ツッコミを入れる。

エルマの冷静な分析
エルマはその様子を見て苦笑し、「ケルトさんみたいに突っ込んでくれる人がいないと不安になりますね」と軽く漏らす。
同時に、「ここまで順調なら、今回も誘っておいても良かったかもしれないな」と内心で考えた。

戦況は完全に掌握され、オレアント討伐と鉱石採取は順調に進行。
しかし、膨大な収益を前に、ルーチェの金銭感覚だけが少しずつ狂い始めていた。

〈魔銀の笛〉の奮戦
峡谷地帯での戦闘は続き、〈魔銀の笛〉の隊長フラングを中心に、部隊はオレアントの群れを相手取っていた。
隊員たちは連携を取りながら果敢に攻撃を仕掛け、ようやく2体目を撃破。
しかし今回もドロップアイテムは得られず、フラングは苛立ちを露わに「クソッタレがぁぁ!」と叫んだ。

異変の兆候と天運のスカラベ出現
戦闘直後、周囲の空気が歪むような気配が走る。
エルマが険しい表情で視線を向けた先、崖の上に黄金色の輝きを放つ甲虫が姿を現した。
それは――天運のスカラベ
同系統のボーナスモンスター「成金ラーナ」と並ぶ希少種であり、討伐すれば莫大な経験値を得られる存在であった。
防御力と素早さに極めて優れ、さらに混乱を引き起こす魔法《パニッカ》を操る、危険度の高い魔物である。

混乱する〈魔銀の笛〉
フラングは即座に号令を発した。
「ボーナスモンスターに違いない! あれを仕留めろ!」
隊員たちは一斉に突撃するが、スカラベが放った《パニッカ》によって隊は混乱に陥る。
眩い光と幻惑の魔力が渦巻き、仲間同士で動きが乱れ、戦列が崩壊していった。

踊り子の反撃《妖精舞踊》
混乱する仲間たちを前に、女性の踊り子が怒りを露わにする。
「舐めてくれるんじゃないわよ!」
彼女は双環刃を構え、通常スキル《妖精舞踊》を発動。
蝶が舞うような優雅な身のこなしで速度を高め、華麗なステップから連撃技《竜爪舞》を放つ。
だがスカラベの硬質な外殻は攻撃を受けても微動だにせず、防御力500という数値がその驚異を証明していた。

援護に向かうエルマとルーチェ
戦況を見たエルマは即座に判断し、「ルーチェ、援護に向かうぞ!」と声をかける。
「はいっ!」と返したルーチェと共に、二人は〈魔銀の笛〉の救援へ走る。
防御不能の敵に対し、有効打を持たないまま苦戦するフラング隊。
エルマは「このままでは死人が出かねない」と冷静に分析し、戦場へと駆け抜けた。

スカラベはなおも飛び回り、光の残滓を引いて逃げ続ける。
〈魔銀の笛〉は窮地にあり、エルマたちの介入が勝敗を左右する局面を迎えていた。

天運のスカラベ追撃開始
戦場から逃走した天運のスカラベを目撃したエルマとルーチェは、ただちに追撃に移る。
ルーチェは「でもアタシの素早さで追いつけますでしょうか……?」と不安を漏らすが、エルマは「大丈夫だ、俺に策がある」と自信を示した。

超レアドロップへの執念
エルマはスカラベが落とすドロップアイテムを狙っており、その価値を冷静に説明する。
「奴の落とすドロップアイテムは、MWではプレイヤーが血眼になって集めていた超レアアイテムだ。あれ1枚で今回のレイドの元が取れる」
この言葉にルーチェも気合を入れ直し、二人は並んで全速で走り出す。

次なる標的へ
エルマは前方を指し、「天運のスカラベは――俺たちが討伐するぞ!」と叫ぶ。
狩猟対象を完全に視界に捉え、二人の猛追が始まるところで物語は次回へと続く。

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その他フィクション

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フィクション(novel)あいうえお順

漫画「追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する(12)」感想・ネタバレ

物語の概要

ジャンルおよび内容
本作は、ゲーム的な知識を武器に転生した重騎士が、異世界で無双を目指す異世界転生/ファンタジー漫画である。主人公を含む冒険者パーティが、モンスター討伐やクエスト攻略、スキル運用・装備強化といった“ゲーム的設計”を現実世界に近い異世界で実践していく。第12巻では、物語のクライマックスに近づき、A級冒険者「カロス」が本性を現し、主人公側は持てる全てを結集して死力を尽くす“総力戦”へと突入した。

主要キャラクター

  • エルマ(※訳注:主人公格重騎士):ゲーム知識を活かして「重防御職」から転じ、多彩なスキル・装備運用を行う重騎士。仲間への支援と自身の戦闘力両面で成長を遂げる。
  • ルーチェ:エルマのパーティ仲間であり、支援・攻略面での立ち位置を担う。第12巻では連携プレイによる“共闘”の鍵を握る。
  • カロス:A級冒険者にして「魔剣士クラス」「対人戦最強」と称される強敵。第12巻にて本性を露わとし、主人公たちにとって最大の試練となる。

物語の特徴
本作の魅力は、典型的な“異世界転生+チート無双”の枠組みを取りながらも、「ゲーム知識を現実の異世界に適用する」というメタ的な設定を軸にしている点である。装備グレード、スキルシナジー、クラン・パーティ編成など“RPG的思考”が細かく描写され、読者にとっての“攻略感”を感じさせる。また、第12巻では単純なモンスター討伐ではなく、冒険者同士・クラン同士の駆け引きや“死力を尽くした総力戦”というスケール感が強く、他の作品と差別化されている。「防御特化から攻撃特化へ」「パーティメンバーの連携強化」といった成長戦略も鮮明で、読者に“手応えある戦闘”と“物語の盛り上がり”を提供している。さらに、アニメ化決定・累計200万部突破という商業的な成功も、本作の現在性・注目度を裏付けている。

書籍情報

追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する(12)
著者:武六甲理衣 氏
原作:猫子 氏
イラスト:じゃいあん  氏
出版社:講談社
レーベル:ヤンマガKCスペシャル
連載:ヤンマガWeb
発売日:2024年12月6日
ISBN:9784065379042

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あらすじ・内容

凶悪ビルドの魔剣士を、共闘連携で打ち破れ! 覇権作品堂々漫画化第12巻!!

本性を露わにしたA級冒険者カロス。対人戦最強と言われる魔剣士クラスに加え、
強力なシナジーを活かしたスキルで構成された最強の相手に、
エルマたちは持てる全てを結集させて死力の総力戦を仕掛ける!!

追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する(12)

感想

カロスの言葉は中身が薄く、求めているのは「戦いの愉楽」だと判明した。背後の組織より自己の高揚を優先する姿勢が、以後の不穏さを示した。

〈ダークブレイズ〉と高速連撃に対し、エルマは影拘束と受け流しで間合いを作り、ルーチェとケルトの挟撃で一時的優位を得た。力押しでは届かず、知略連携が要となった。

カロスは禁忌装備〈苦痛の首飾り〉〈黒縄剣ゲヘナ〉で毒を回復へ反転する“対人特化ビルド”であった。A級相当の不死性が露見し、戦況は再び拮抗した。

封魔を付与した矢で毒循環を断ち、エルマが胸部へ再度の一撃を通して勝機を掴んだ。カロスは「夢神の尖兵」への忠誠を口にしつつ自ら黒炎で消滅した。師弟の断絶とヒルデの慟哭が余韻を残した。

組織の全貌は掴めず、転生者級の知識を持つ者が暗躍する可能性が濃厚となった。エルマ単独の力では厳しさが増すと感じられ、さらなる成長の必然性が示されたのである。

〈水没する理想都〉の再攻略では、スノウが的確に采配し、連携火力で〈夢の主〉を討伐した。総力戦の最適解を選ぶ運用が機能し、物語は“知で勝つ”方向性を強めた。

侯爵家の歓待で、エルマの知識と「尖兵」の情報源が探られた。貴族権力と異端組織の接点が仄めかされ、エルマの父の思惑も含め政治劇の火種が置かれたと見える。

禁断の大森林での実験疑惑が浮上し、北方貴族は「尖兵」との戦争を宣言した。大討伐は魔物駆逐に留まらず、知識・技術の出所を巡る政治戦へ拡張した。

総括
謎の組織と“ゲーム知識保持者”の存在が緊張を跳ね上げ、力任せでは突破できない段階に入った。エルマは連携とビルド対策で活路を開いたが、次は格上の知と権力への対処が要る。父の企図と転生者級の敵が絡むなら、成長とスキル更新は不可避であり、次巻への期待は大きい。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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登場キャラクター

エルマ

冷静な分析と前衛適性を併せ持つ重騎士である。仲間の生存を最優先し、戦術連携を主導する立場である。
・所属組織、地位や役職
 エドヴァン伯爵家の出身者である。冒険者である。
・物語内での具体的な行動や成果
 〈影踏み〉や〈パリィ〉で間合いを制し、〈ライフシールド〉と〈死線の暴竜〉で攻撃力を増強した。〈不惜身命〉を選択して正面突破を敢行した。カロスの〈毒ダメージ反転〉を看破し、封魔矢の作戦を事前に指示した。〈夢の主〉討伐戦では前衛として包囲を維持した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 カロス討伐の戦果でレベルが上昇した。ハウルロッド侯爵家から公式に招待を受け、情報面でも評価を得た。

ルーチェ

高機動とクリティカル特化の攻撃役である。エルマの指示で死角からの決定打を狙う。
・所属組織、地位や役職
 冒険者である。
・物語内での具体的な行動や成果
 〈ドッペルイリュージョン〉で撹乱し、〈ダイススラスト〉で確定クリティカルを叩き込んだ。〈竜殺突き〉で〈夢の主〉に致命打を与えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 挟撃連携の要として信頼を得た。負傷後も戦線復帰し士気を維持した。

ケルト

弓と接近格闘を併用する機動支援である。味方救出と好機創出に長ける。
・所属組織、地位や役職
 冒険者である。
・物語内での具体的な行動や成果
 〈脱兎〉と〈影沈み〉でメアベルを救出した。〈アサシンアタック〉でカロスに有効打を与えた。封魔の〈エンチャントアロー〉に〈ポイゾプロテクト〉を載せ、毒反転機構を無効化した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 身を挺した護衛で信頼を高めた。射撃支援の要として評価が上がった。

メアベル

回復と防御術式を担う僧侶である。迅速な結界展開で致命傷を防ぐ。
・所属組織、地位や役職
 冒険者である。僧侶である。
・物語内での具体的な行動や成果
 〈マナバリア〉で黒炎を阻止した。〈ポイゾプロテクト〉を矢に付与し、敵の回復ギミックを封殺した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 支援魔法の運用で作戦成功に寄与した。隊の生存率に直結する役割を確立した。

カロス

A級の称号を持つ魔剣士である。対人特化の自傷強化型構成を採用する強敵である。
・所属組織、地位や役職
 〈黒き炎刃〉に所属した。〈夢神の尖兵〉に通じた。
・物語内での具体的な行動や成果
 〈ダークブレイズ〉と〈クリムゾンウェーブ〉で圧力をかけた。〈苦痛の首飾り〉と〈黒縄剣ゲヘナ〉で毒反転回復を成立させた。最終局面で自壊し情報を遮断した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 裏切りが露見し討たれた。師弟関係の誤解を残し、組織の実在を示す証左となった。

ヒルデ

カロスに私淑していた若手冒険者である。戦後に誤解と対峙した。
・所属組織、地位や役職
 冒険者である。
・物語内での具体的な行動や成果
 戦闘終結時に一団へ詰問した。カロスの最期の言葉を受け取り、敵対を回避した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 師の死を経て関係を整理した。感謝の言葉を残して退場した。

スノウ

ハウルロッド侯爵家の次期当主候補である。前線指揮で統率を示す。
・所属組織、地位や役職
 ハウルロッド侯爵家・後継候補である。大規模依頼の指揮官である。
・物語内での具体的な行動や成果
 〈水没する理想都〉再攻略で退避と攻勢の切り替えを適切に指示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 実戦指揮で評価を上げた。公的晩餐で功績の顕彰に立ち会った。

ハウルロッド侯爵ハーデン

北方有力貴族である。実利重視の政治判断で局面を動かす。
・所属組織、地位や役職
 ハウルロッド侯爵である。北方貴族会議の主催者である。
・物語内での具体的な行動や成果
 カロス事案を報告し、〈夢神の尖兵〉との戦を宣言した。私兵と報酬でレイドを支援した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 作戦資源の供出で影響力を示した。情報収集の窓口として発言力を強めた。

アイザス・エドヴァン

エドヴァン伯爵家当主である。武の矜持を掲げる当事者である。
・所属組織、地位や役職
 エドヴァン伯爵家・当主である。
・物語内での具体的な行動や成果
 北方会議で貴族の在り方を主張した。大討伐への備えについて応酬した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 戦力不足を指摘され外圧を受けた。上級冒険者の外部調達を容認する局面に立った。

カリュブディス(〈夢の主〉)

存在進化を果たしたダンジョンボスである。高い再生力と多肢で戦線を攪乱する。
・所属組織、地位や役職
 〈水没する理想都〉の支配存在である。
・物語内での具体的な行動や成果
 レベル90相当として出現した。包囲戦で触手を用いて抵抗した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 再攻略戦で討伐された。討伐成功により依頼は収束へ向かった。

イザベラ

ハウルロッド侯爵家の関係者である。来賓対応で進行を補佐する。
・所属組織、地位や役職
 ハウルロッド侯爵家・館の実務担当である。
・物語内での具体的な行動や成果
 来訪したエルマらを出迎え、場の意図を代弁した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 式次第の円滑化に寄与した。発言で場の硬直を緩和した。

展開まとめ

第100話

違和感と見抜き
エルマはカロスの語る内容に空虚さを感じていた。自らの在り方に酔っているように見えても、その言葉には本質的な関心が欠けていた。彼は人から聞いたことを繰り返しているような印象を受け、そこに違和感を覚えた。エルマは最終的に、カロスが求めているのは「戦いを楽しむこと」だと見抜いた。

カロスの目的と挑発
カロスは背後の組織に関心を示すことなく、己の強さを十全に発揮できる“最後の目標”を求めていた。彼にとって重要なのは信念ではなく、戦いそのものを愉しむことだった。カロスはエルマに向けて「せいぜい楽しませてくれ」と言い放つ。

黒炎の発動
カロスは剣を掲げ、魔法陣を展開。四つの黒炎を生み出し、それらをエルマたちへ放つ。エルマはそれが追尾機能を持つスキル〈ダークブレイズ〉であると即座に見抜いた。

回避と分断
エルマは遮蔽物を盾にして一撃をしのぎ、仲間のルーチェとケルトは機敏な動きで追尾を振り切った。しかし僧侶メアベルは速度が足りず、炎が迫る。

救出と潜行
ケルトが〈脱兎〉でメアベルのもとに跳び、彼女を抱えて〈影沈み〉を発動。二人は影の中に潜り、黒炎の爆発を回避した。炎は地面に落ちて爆ぜ、爆炎が広がる。だが、影潜りは攻撃無効化ではなく、着地点が悪ければ命を落としていた危険な回避であった。

裏切りの英雄カロス
カロスは笑みを浮かべながら、エルマたちの連携を称賛した。動きは的確で、互いへの信頼も見て取れたと語るが、同時に二人を仕留め損ねたことを残念がった。彼の所属する〈黒き炎刃〉が裏切り者だったという事実は、エルマの想定の中でも最悪の展開であった。

想定外の強敵
カロスはA級冒険者の中でも「英雄」と称される存在であり、レベル差は圧倒的だった。数の利があっても攻撃は通らず、逆に一撃でも受ければ致命傷となる。命が一つしかない現実世界で、己の才覚のみでA級に到達した実力が脅威と化していた。

ためらいと後悔
エルマはカロスが裏切る可能性を考慮していたが、仲間に共有できずにいた。憧れの英雄を疑うことができなかったのだ。そのため、事前準備や戦力の動員ができなかったことを悔やむ。カロスは冷たく「さて、誰から行こうかな」と呟き、次の瞬間上空へと跳躍した。

奇襲と迎撃
ケルトがカロスの姿を見失う中、ルーチェの頭上に刃が迫る。エルマの警告でルーチェは〈ドッペルイリュージョン〉を発動し、分身で回避を試みたが、カロスは高速の連撃で分身を次々と消し去った。彼は「三分の二を外したか、意味はないけどね」と余裕を見せる。

盾の防御と一撃の衝撃
カロスの攻撃がルーチェを狙う中、エルマが飛び込み盾で受け止める。〈マジックガード〉を展開して防御力を強化するも、衝撃に耐えきれず吹き飛ばされる。ルーチェが叫ぶ間もなく、カロスは冷ややかに次の標的を定めた。

影踏みの反撃
吹き飛ばされながらもエルマはカロスの影を踏み、〈影踏み〉でわずかに動きを封じることに成功。その隙にルーチェが〈竜殺突き〉を放つが、カロスは容易く受け流す。大振りすぎると指摘し、「対人戦ではそんな攻撃は通じない」と笑う。

戦闘の温度差
カロスはこの戦いを本気ではなく、あくまで「遊戯」として楽しんでいた。エルマたちが命懸けで挑む中で、彼だけが余裕と冷静さを崩さず、戦場を支配していた。

死線の覚醒
エルマは限界まで追い込まれながら〈ライフシールド〉を展開し、生命力を防壁へと転化した。HPを削ることで〈死線の暴竜〉の発動条件を満たし、身体から赤い光を放ちながら攻撃力と速度を倍増させる。リスクの高い賭けであったが、仲間の犠牲を避けるためにはこの一手しかなかった。

第101話

決死の対抗策
カロスの強さは過去に対峙したどの敵よりも圧倒的で、正面から挑めば全滅は必至だった。エルマは〈燻り狂う牙〉を組み込んだ戦術で、ルーチェの〈死神の凶手〉と連携し、格上の冒険者にも通用する一撃を狙う。彼の目的は、カロスの攻撃リソースを引き付け、味方の行動機会を確保することにあった。

英雄の驚愕
赤光を纏ったエルマの姿を見たカロスは、「まさか〈燻り狂う牙〉を能動的に組み込むとは」と驚愕し、興味を示した。彼はこの世界の仕様を深く理解しており、単なる技量頼みの戦士ではないことが判明する。エルマはその底知れなさに恐怖を覚えつつも、影を踏み締め〈影踏み〉で動きを封じ、渾身の一撃を放つ。

連携の再構築と反撃の兆し
エルマは正面からカロスに突進し、重騎士として唯一その剣圧を受け止め得る立場を取った。カロスは余裕を崩さず挑発的な笑みを見せたが、エルマは〈パリィ〉で軌道を逸らし、正面からの力勝負を避ける。

賭けの一撃とクリティカル発動
上空からルーチェが〈ダイススラスト〉を発動。六の目を引き当て、確定クリティカルを得る。さらに〈奈落の凶刃〉の効果でダメージが倍増し、カロスを押し返すことに成功した。さすがのカロスも受け流しきれず体勢を崩し、わずかに驚きを見せる。

連続攻撃の隙を突く策
死角からケルトの矢が飛び、カロスは首を傾けて回避。しかし、その回避動作を読んでケルトが〈アサシンアタック〉を繰り出し、風切り音を利用して接近。蹴りでカロスの側頭部を打ち抜くことに成功する。直後の剣撃は反動を利用して回避し、無傷で離脱した。

士気の上昇と連携の再確立
ケルトの一撃は決定打ではないが、パーティーの士気を大きく高めた。カロスの優勢に押されていた戦場の空気が変わり、エルマは即座に指示を飛ばす。「ルーチェは背を取れ、俺が正面を叩く」と。ルーチェが後方に回り込み、暴竜と死神の挟撃態勢が完成した。

暴竜と死神の挟み撃ち
攻撃特化の重騎士とクリティカル特化の道化師が、正面と死角から同時に襲いかかる構えを取る。仲間の連携が完全に噛み合い、かつてないほど戦意を高めた彼らが、ついに英雄カロスを包囲する構図が出来上がった。

戦況の均衡と反撃の兆し
エルマは〈ライフシールド〉を展開し、生命力を防壁に転化した。意図的にHPを削ることで〈死線の暴竜〉の発動条件を整え、攻撃力と速度を倍化させた。ルーチェやケルトと連携し、圧倒的な力量差を埋める戦術に出た。カロスはその判断に興味を示し、同時にエルマの力量を認める発言を残した。

協調攻撃と優勢の獲得
ルーチェの〈ダイススラスト〉がクリティカルを引き、ケルトが〈アサシンアタック〉で追撃。これによりカロスの体勢が一瞬崩れ、士気は大きく上昇した。エルマは前衛として正面から受け、ルーチェは死角を取る挟撃態勢を構築。暴竜と死神の二重攻撃が形となった。

優位の確立と不穏な兆候
主導権は一時的にこちらへと移ったが、カロスのスキル構成は依然不明のままだった。彼は戦況を静観しながら「本当にいいパーティーだ」と笑い、赤く輝く剣を掲げる。直後、広範囲炎撃〈クリムゾンウェーブ〉が放たれ、全方位に獄炎が広がった。エルマは即座に盾で防御し、爆炎を利用して距離を取る。

決死の攻防と新たな脅威
カロスはさらに四つの黒炎を浮かべ、追尾型魔法〈ダークブレイズ〉を発動した。彼は「まずは確実に一人落とす」と宣言し、標的を分散させる。ルーチェを追う炎と、エルマへ向かう三発が同時に動き出す中、エルマは全てを引き受ける覚悟で前に出る。カロスは剣を構え、殺意を露わに突進した。

第102話

黒炎の猛威と隙の発見
カロスが〈ダークブレイズ〉を発動し、四つの黒炎が追尾する。ルーチェを狙う一発と、エルマへ迫る三発が同時に動き出した。エルマは雷を纏って地面を蹴り、迎撃の構えを取る。黒炎の中を縫うように突進し、カロスの剣撃を〈パリィ〉で受け流すことで接近戦へと移行した。

術者の弱点を突く一手
エルマは〈ダークブレイズ〉の追尾が甘くなる特性を利用し、跳躍してカロスを飛び越える。黒炎が標的を見失い、カロスの周囲に墜落。その爆炎を避けるため、カロスは後退を余儀なくされた。エルマはその隙を逃さず、〈影踏み〉を発動して動きを封じ、連撃を浴びせた。

重騎士の反撃と体勢崩し
カロスは自らの魔法に巻き込まれかけながらも笑みを浮かべ、「重騎士の動きか」と驚嘆を漏らす。エルマは〈当て身斬り〉を放ち、さらに〈影踏み〉の拘束で体勢を崩す。カロスはついに膝をつき、攻防の主導権がエルマ側へと傾いた。

死線を越えた連携攻撃
カロスが立て直しかけた瞬間、ルーチェが跳躍して突撃する。彼女は〈ダイススラスト〉を選び、運命のサイコロが【6】を示した。クリティカル発動により、ナイフはカロスの防御を貫き胸を裂いた。カロスは膝をつきながら呻き、血を流す。

勝利の確信と昂揚
致命打を与えたルーチェは震える手でナイフを握りしめ、「やりました!」と叫ぶ。メアベルも「このまま行けば勝てる」と声を上げ、パーティー全体が勝利を目前にした高揚に包まれた。

違和感の発生と戦況の分析
ルーチェの一撃で倒したかに見えたカロスが立ち上がり、敗北を認めるような仕草を見せた。だがエルマは戦況に違和感を覚えていた。A級冒険者がこの程度で致命傷を負うはずがないと推測し、「上手く進みすぎている」と警戒を強めた。剣筋や立ち回りの不自然さから、カロスの技量とレベルが釣り合っていないことを見抜く。

カロスの変貌と敵意の顕在化
カロスは苛立ちを露わにし、エルマたちを「恵まれた貴族」と罵倒した。自身の過去と階層への憎悪をぶつけ、「お前のような人間が一番嫌いだ」と叫ぶ。激しい怒気とともに魔法陣を展開し、新たな武装を呼び出す。

禁忌の装備〈苦痛の首飾り〉と〈黒縄剣ゲヘナ〉
カロスの首には拷問具のような首飾りが現れ、胸元の魔法陣からは黒い瘴気を放つ剣が抜き出された。それぞれ強力な能力を持つ代償として使用者に継続的な苦痛と猛毒を与える、いわば“自傷強化型”の装備であった。

魔剣士ビルドの真の姿
これまでカロスのスキルツリーが見えなかった理由は、彼が通常のスキルではなく装備効果に依存した構成を取っていたためであった。〈苦痛の首飾り〉で受けるダメージを倍化させ、〈黒縄剣ゲヘナ〉でその痛覚を攻撃力に転化する。魔剣士の中でも極端な“対人最強格”のキャラビルドであり、ゲームでも忌避されていた戦術である。

再生と恐怖の兆候
ルーチェの攻撃で刻まれた致命傷が、黒い煙と共に癒えていく。彼の体表には呪詛のような紋様が浮かび上がり、周囲を覆う瘴気は増大。エルマはそれを見て、完全に状況を誤認していたことを悟る。

対人特化型の覚醒と戦闘再開
カロスは瘴気の塊に包まれ、背後に異形の影を具現化させる。これは〈マジックワールド〉においても最凶と呼ばれた“対人最強格キャラビルド”の発動であり、もはや常人の戦闘ではない領域に達していた。彼はエルマに視線を向け、「その剣をどこで手に入れた」と問うエルマに、「茶番はここまでだ、あの御方のためにも」と冷ややかに答え、完全な殺意を解き放った。

第103話

違和感の発覚
戦闘の最中、エルマは戦況に異常を察知していた。カロスの受けたはずの致命傷が急速に癒えており、動きもA級冒険者の技量としては不自然なほど粗雑であった。

カロスの正体提示
カロスは自嘲気味に笑みを浮かべ、苦痛の首飾りと黒縄剣ゲヘナを取り出した。どちらも強力なデメリットを伴う禁呪級装備であり、同時に身に着けた瞬間、禍々しい瘴気が周囲を覆った。

装備とスキル構成の解説
カロスの構成は〈魔人の剣戟〉〈ポイゾウーズの心〉〈彫像の天使〉の三系統から成る複合スキルツリーであった。毒ダメージを回復へ反転させる特性と最大HP上昇、さらに持続回復を重ね、猛毒を利用して攻撃力を極限まで引き上げる構造である。
これは〈マジックワールド〉においても「毒ゾンビ型魔剣士」として知られた危険な戦術であり、通常の手段では撃破が困難とされていた。

不死性の発動
〈苦痛の首飾り〉によって倍化した毒が、〈毒ダメージ反転〉の効果で回復へ変換され、カロスの傷を瞬時に癒やしていく。さらに〈祝福の聖歌〉による神聖魔法が重なり、完全な持続回復状態へと移行した。

戦術の再構築
エルマは冷静に状況を分析し、正面突破を選択した。防御力を捨て攻撃力を倍化させる〈不惜身命〉を発動し、ルーチェとの連携による同時攻撃で勝機を見出そうとする。回復役メアベルの突入は即座に制止し、後衛支援に専念させた。

死闘の激化
ケルトの放つ矢も瞬時に癒え、カロスは無表情のまま前進を続けた。毒と回復を循環させる不死の体は、もはや常識的な戦闘法では崩せない。
エルマは渾身の一撃を構え、カロスは黒縄剣を掲げながら冷笑する。

激突の終端
両者は〈背水の陣〉の構えで斬り結び、黒と青の光が交錯した。
カロスが「掻き消えろ、エルマ」と叫ぶ中、戦闘は新たな段階へ突入していた。

毒竜斬撃波の発動
カロスが〈毒竜斬撃波(ヒュドラブレイク)〉を放ち、地を裂くような紫の斬撃が放たれた。エルマは即座に後方へ跳び、〈ライフシールド〉で直撃を防いだものの、盾は砕けて毒の影響を受けた。軽度の毒状態により動きが鈍る中、戦況はさらに厳しくなった。

分身を用いた反撃
エルマが態勢を立て直す間、ルーチェは〈ドッペルイリュージョン〉で分身を作り、逃げ回りながら時間を稼いだ。カロスは分身の動きから本体を見抜き、斬撃で分身を破壊する。しかし、これはブラフであり、ルーチェは背後から〈竜殺突き〉を放った。だが、カロスは裏拳で反撃し、ルーチェを吹き飛ばした。

再連携の構え
ルーチェは悔しさを滲ませながらも立ち上がり、エルマと合流した。エルマは「焦るな、狙うのは暴竜と死神の同時攻撃だ」と指示し、無理な単独攻撃を抑制した。二人は再び息を合わせ、次の好機を伺う。

カロスの狙い変更
カロスは冷静に状況を分析し、「エルマから落とすのは難しい」と判断。万一の脅威を避けるため、狙いをルーチェへと切り替えた。彼の掌には再び黒炎が集まり、〈ダークブレイズ〉が展開される。

黒炎の標的
四つの黒炎がルーチェを狙って放たれた。カロスは嘲るように笑い、「彼女から狙うしかない」と言い放つ。エルマが「お前……!」と叫ぶ中、ルーチェの表情には動揺が走り、次の瞬間、黒炎が迫る場面で幕を閉じた。

第104話

黒炎への対抗策
ルーチェは四発の黒炎〈ダークブレイズ〉を前にしても怯まず、「その黒い炎の対処法は先程エルマから学んだ」と宣言した。彼女は華麗な動きで黒炎の進行軌道を誘導し、術者であるカロスとの間に射線を作って干渉を狙った。小柄な体格と高い機動力を活かし、黒炎の追尾性能を削ぐことに成功した。

自傷覚悟の突進
しかし、カロスはその戦法を見切り、自身の黒炎を受けながらも前進を強行した。〈毒ダメージ反転〉によって自傷を回復へと変換するため、爆炎を恐れずに突撃したのである。カロスの剣がルーチェへ迫り、ルーチェは必死にナイフで受け止めるも、黒炎の追撃を受けて爆炎に巻き込まれた。

仲間の救援と大技の兆し
吹き飛ばされたルーチェのもとへカロスが迫るが、背後からエルマが斬撃で割って入る。カロスは剣を振り上げて防ぎ、戦闘の主導権を維持した。
カロスの剣身には赤紫の光が宿り、広範囲殲滅技〈クリムゾンウェーブ〉の発動が予兆された。もし放たれれば、地に倒れるルーチェは逃れられない状況であった。

ケルトの決断
その瞬間、ケルトがルーチェを抱き上げ、退避行動に移った。彼は「俺にはこんなことしかできねえ」と叫びながら全力で走り、エルマは〈シールドバッシュ〉を発動してカロスの攻撃を逸らし、ケルトの逃走を援護した。
エルマは盾の反動を利用して自らも後方に飛び、迫る炎熱の波を回避した。

犠牲と守護
爆炎が収まると、ルーチェを庇って地に伏すケルトの姿があった。背中は焦げ付き、皮膚が焼け爛れていたが、彼は微笑を浮かべ「ルーチェはちゃんと守った」と呟いた後、力尽きて崩れ落ちた。
メアベルは悲鳴を上げ、二人へ駆け寄りながら「ルーチェさん、ケルトさん!」と叫び、戦場に緊迫が走った。

毒に蝕まれた抵抗
エルマはルーチェとケルトが戦線復帰できない中、単身でカロスを引き付ける覚悟を固めた。体力も魔力も限界に近く、状態異常〈毒(小)〉に侵されながらも前へ出た。彼はメアベルに「ケルトを頼んだぞ」と叫び、仲間を託して突撃した。

決死の攻防と挑発
カロスは「一人で耐えるつもりか」と冷笑しつつ攻撃を仕掛けた。エルマは〈パリィ〉で受け流しながら「お前自身は大したことがない」と挑発し、敵の冷静さを削ごうとした。毒で動きの鈍ったエルマに対し、カロスは剣速を上げ、苛烈な連撃を繰り出した。

絶技の予兆と追い詰められる戦況
カロスは「じきに〈毒竜斬撃波〉のクールタイムが終わる」と宣告し、再び必殺技の発動を示唆した。エルマはその一撃を避けられぬと悟り、立て直しの猶予を得るために〈マジックガード〉を発動し、残るMPを全て注ぎ込んだ。

一撃必殺の突き
〈マジックガード〉によって攻撃を相殺した瞬間、エルマは盾を手放し、剣を突き出してカロスの胸部を狙った。不意を突かれたカロスは防御が遅れ、胸を深く貫かれた。致命傷には至らなかったが、勢いで吹き飛ばされ膝をついた。

逆転の兆しと仲間の援護
カロスは「馬鹿め、私は回復できる」と嘲笑し、再び剣に毒炎を纏わせた。〈毒竜斬撃波〉のクールタイムが解け、必殺の赤紫の光が迸った。しかし、その肩に一本の矢が突き刺さる。矢から白い光が放たれ、剣を包んでいた毒の輝きが消えた。

封魔の矢と仕組まれた策
矢は〈魔法付与の矢(エンチャントアロー)〉であり、メアベルの白魔法〈ポイゾプロテクト〉が封じ込められていた。ケルトが放ったその矢は、カロスの毒を打ち消し、彼のスキル発動条件を無効化した。ケルトは弓を構えながら「これでいいんだよな」と呟き、メアベルは静かに魔力を注ぎ込んで矢に力を与えた。

戦略の全容
この策はエルマが事前に二人へ指示していたものである。カロスのスキル構成が毒ゾンビ型である可能性を警戒し、毒無効化魔法を矢に付与する戦法を仕込んでいた。〈ポイゾプロテクト〉は対象を一定時間毒から守る効果を持ち、〈黒縄剣ゲヘナ〉の回復反転機構を封じる鍵でもあった。

形勢の逆転
毒を失ったカロスは動揺し、剣を振り上げたまま攻撃を中断した。エルマはその隙を逃さず突撃し、カロスの防御を弾いて胸部に再度の一撃を叩き込んだ。カロスの身体は大きく後退し、地に膝をついた。

黒炎の終焉
胸を押さえたカロスは血を吐き、「有り得ない……この私が、格下相手に」と呟いた。彼の剣からはもはや黒炎も毒光も消えており、全身を覆っていた異様な気配も霧散していった。
エルマは疲労困憊の中で剣を構えたまま立ち、勝利を確信した。

第105話

カロスの崩壊と回想の始まり
胸を貫かれたカロスは、よろめきながら立ち尽くしていた。戦場に静寂が訪れ、遠くで鳥の群れが飛び立つ中、彼は虚ろな目で自らの敗北を受け入れつつあった。意識が遠のく中、過去の記憶が脳裏に蘇った。

幼少期と〈加護の議〉
カロスの故郷は海沿いの小さな街であった。古びた教会で〈加護の議〉を受け、クラス「魔剣士」としての加護を授かった。攻撃性能に優れた強力な職業と聞かされ、彼は純粋に喜び、英雄への憧れを抱いた。

憧れと傲慢の芽生え
当時の彼は、人を助ける崇高な志よりも「認められたい」「格好つけたい」という虚栄心に支配されていた。夢見がちで傲慢、他者の評価に依存する性格がその原点であった。それが後の悲劇の種となる。

仲間との不和と孤立
魔剣士はパーティー戦に不向きな職であり、個々の方針が衝突しやすかった。カロスはたびたび仲間と対立し、ついにはギルド内で孤立していった。彼の街の冒険者たちも貧困と恐怖に苛まれ、互いを思いやる余裕を失っていた。

冤罪と追放
些細な誤解と利害の不一致が積み重なり、カロスは探索中の窃盗容疑をかけられた。ギルドは彼を切り捨て、盗賊の濡れ衣を着せられたまま、仲間たちからも見放された。彼は失意の中で街を逃げ出すように去った。

流浪と挫折
知識も人脈もない彼は、新たな街で下級冒険者として再起を試みたが、田舎者として嘲られ、都会の冒険者に利用された。日々の失敗と蔑みにより、次第に自信を喪失し、自分には冒険者としての才能が欠けていると悟るに至った。

絶望と憎悪の蓄積
生活は困窮し、努力は報われず、理想は砕かれた。かつて憧れた英雄像は遠い幻想となり、彼の心には世界への憎悪だけが残った。「世界中の人間が憎い」と思い始めたその頃、転機が訪れる。

運命の出会い
路地裏で、カロスはフードを被った謎の人物に声を掛けられた。その人物は「君には凡人にはない才能が眠っている。英雄になれる器だ」と語り、「私には君の力が必要だ」と手を差し伸べた。
カロスはそれが甘言であると理解していた。それでも、初めて「必要だ」と告げられた言葉に胸を打たれた。

堕落の選択
その言葉には強い魔力と威圧が宿っており、抗う余地もなかった。嘘と分かっていながら、カロスは嬉しさを覚え、差し伸べられた手に縋るように従った。彼はその瞬間、英雄への憧れではなく、歪んだ力への渇望によって運命を決定づけられたのである。

絶叫と最後の抵抗
致命傷を負いながらも、カロスは「こんなところで負けるわけにはいかない」と叫び、炎の魔法〈クリムゾンウェーブ〉を放った。彼の渾身の魔力が地を震わせ、赤黒い衝撃波が放たれるが、それは焦燥に駆られた最後の抵抗に過ぎなかった。

エルマの反撃と決着
エルマは跳躍して炎を避け、一気に間合いを詰めた。カロスは「私に近づくなぁっ!」と絶叫して剣を振るうが、エルマの一閃が彼の腕を断ち切る。魔剣〈黒縄剣ゲヘナ〉が宙を舞い、カロスは力尽きて膝をついた。エルマは剣を構え、「これで終わりだ」と告げて止めを刺した。

戦闘の終結と分析
倒れたカロスを前に、メアベルがルーチェを支えながら駆け寄り、ケルトも続いた。ケルトは「エルマ! そんな外道、さっさと殺せ!」と怒号するが、エルマは「それはできない」と制止した。カロスは〈夢神の尖兵〉と呼ばれる、貴族をも凌ぐ知識を持ち、大災害を目的とする組織に属していたためである。

異端組織の存在
エルマは、この組織が何者かの権力者と繋がっている、もしくは自身と同じ「転生者」が関与している可能性を推測した。自分が生前の記憶を保持している以上、他にも同様の存在がいても不思議ではないと理解したのだ。カロスの証言は、世界の根幹に関わる情報であった。

再び襲う黒炎
ケルトは激昂し、「このクソ野郎が!」と叫びながらカロスを罵倒した。カロスは無言のまま地に伏していたが、その背後から突如、闇の魔力が発動する。
「〈ダークブレイズ〉!」という叫びとともに黒炎の弾丸が放たれた。メアベルが即座に〈マナバリア〉を展開し、辛うじて防御に成功する。黒炎は結界に阻まれたが、そこに潜む新たな脅威の存在を、彼らはまだ知る由もなかった。

ヒルデの乱入と誤解
戦闘の終結直後、ヒルデが仲間の冒険者を引き連れて現れた。彼女はカロスの危機を目にし、激昂して剣を構える。「オレの師匠に何やってやがる!」と叫び、エルマ達を裏切り者と断じた。カロスの誤解を解くには状況が悪く、エルマも即座の説得は不可能と判断していた。

師弟の断絶と最期の言葉
カロスは弱々しく口を開き、「最後まで馬鹿なガキだ。君の師匠になった覚えはない」と静かに言い放った。ヒルデは動揺しながらも耳を傾け、カロスは「私は人の師に立てるような真っ当な人間ではない」と告白した。
彼は過去の理想を演じることしかできなかった己を自嘲し、「エルマ、君は私とは正反対の人間だ」と語った。かつて信じた理想を演じることでしか己を保てなかったことを悔い、最後の対話を交わした。

カロスの告白
エルマが「話してくれ、カロス」と問いかけると、彼は過去を語り始めた。
「私はあの御方に救われた。人としての魂を売り、その御方に仕えることを選んだ」と言い、〈夢神の尖兵〉に身を置く理由を明かした。彼にとってその存在は唯一の救済であり、裏切ることは自らの存在を否定することに等しかった。
カロスの掌に巨大な黒炎が生まれ、その中心に魔法陣が展開される。

決断と自己消滅
カロスは「もしあの御方を裏切るというのなら、私は本当に何者でもなくなってしまう」と呟き、暴発寸前の魔法を制御しながら、自らの胸へと放った。その瞬間、黒炎が炸裂し、彼の身体を呑み込んだ。
ヒルデが「師匠ぉぉぉっ!」と絶叫する中、カロスの肉体は消滅し、虚空に灰が舞った。

終焉と報酬
システムの表示が現れ、エルマの視界に「経験値16500取得」「レベル75→80」と告げられた。無機質な通知とは対照的に、ヒルデの慟哭が戦場に響き渡る。煙が立ち上り、戦いの舞台は静寂に包まれた。
師弟の悲劇的な決別と〈夢神の尖兵〉の闇を残したまま幕を閉じた。

第106話

カロス討伐後の行動
エルマ達はカロス戦を終え、ヒルデが率いる冒険者達の護衛を受けながら〈夢の穴〉の出口へ向かった。カロスの裏切りが発覚したため、〈夢の主〉討伐レイドの中止が全冒険者へ通達された。

エルマの謝罪と仲間の応答
エルマはヒルデ達に誤解されたことを詫び、情報伝達の遅れを謝罪した。メアベルは「無理もない」と宥め、ケルトは「最後までタイミングが掴めず頭を抱えた」と愚痴をこぼした。理解が追いつかぬ中でも、ケルトは的確な射撃でカロスの肩を射抜き、〈毒ダメージ反転〉を中断させ、勝利を決定づけた。

戦闘後のやりとり
エルマはルーチェの奮闘を称え、彼女は笑顔で感謝した。メアベルは「先に警告していたら怖がって来ていない」と冗談を言い、ケルトが苦笑して場を和ませた。彼らは犠牲者を出さずに勝利したことを喜び、短い安堵の時間を得た。

ケルトとの密談
その後、ケルトがエルマに接近し、「カロスのスキルツリーを知っていたのか」と問う。エルマは「最悪の事態を想定していたら、たまたま当たった」と答え、ケルトは「本当に底知れない奴だ」と呟いた。

カロスの死と残る謎
エルマは今回の勝利が奇跡的な結果にすぎないと自覚していた。カロスが自害したため、背後組織〈夢神の尖兵〉の情報は得られず、依然として謎のままだった。エルマはこの一件が終わりではなく、新たな陰謀の序章だと察していた。

ハーデン侯爵の洞察とカロスの目的
エルマはスノウ暗殺未遂時のハーデン侯爵の「時間稼ぎ」という言葉の意味を理解する。カロスの真の狙いは〈夢の主〉の第二段階存在進化〈夢壊(ゾーク)〉を人為的に起こすことだった。そのためには多数の高レベル冒険者の命を犠牲にする必要があり、それを実現する手段として〈大規模依頼(レイドクエスト)〉を利用していた。

カロスの計画と破綻
だが、エルマ達が〈嘆きの墓所〉での計画を阻止したため、カロスは次の手段を練る間もなく焦り、再びレイドを企てた。疑いの目が自分に向く前にハウルロッド侯爵家を陥れ、スノウ暗殺未遂を偽装して注意を逸らす。暗殺そのものが目的ではなく、侯爵家の内部抗争を演出することが狙いであった。

結末と侯爵の判断
ハーデン侯爵は早くからカロスを容疑者と見抜いており、事件後に周囲から怪しい気配が消えていたこともその証左だった。侯爵は事態を静観しつつ、事の全貌を見通していたのである。

戦闘後の空気とメアベルの声掛け
カロスの自害により戦闘が終わった後、一行には重苦しい空気が漂っていた。
メアベルは「結果オーライなんよ! まだレイド自体は片付いてないけど、全部終わったらみんなで美味しいものを食べに行くんよ!」と明るく声を上げ、沈んだ雰囲気を払拭しようとした。
しかしその言葉に振り向いたヒルデと目が合い、彼女は言葉を詰まらせる。

ヒルデの沈黙と心情
ヒルデは憔悴した様子で立ち尽くし、表情からは感情の色が消えていた。
目の前で尊敬する人物が裏切り者として散った事実を受け止めきれず、混乱の中にあった。
メアベルは気まずげに名を呼びかけるが、ヒルデは小さく息を吐き「まだ頭が追い付いていないが、別にオレだってこれで逆恨みする程馬鹿じゃねぇよ」とだけ答える。
続けて「さっきの魔弾、悪かったな」と呟き、淡々と前を向いた。
彼女の声は冷たくも、どこか力を失っており、普段の快活さは完全に消えていた。

師弟の記憶と残響
ヒルデの脳裏には、最期の瞬間に語ったカロスの言葉が蘇っていた。
「君がここまで来られたのは、君の才覚と努力の賜物だ」「私は人の師に立てるような真っ当な人間ではないのだから」。
その言葉は、彼女に対する最初で最後の真正面からの賛辞だった。
ヒルデはそれを受け止めきれずに立ち尽くし、複雑な感情を押し殺すように背を向ける。

別れの言葉と静かな終幕
沈黙ののち、ヒルデは背中越しに小さく呟く。
「……あの人を止めてくれてありがとうな」
その言葉には、仲間への感謝と、失った師への惜別が滲んでいた。
エルマたちは黙ってその背を見送り、ヒルデは静かに去っていった。
地面には、風に吹かれながらカロスの形見である徽章が残り、灰となって消えゆく。

第107話

〈水没する理想都〉再攻略の開始
数日後、〈夢の主〉カロスの件を経て再び〈水没する理想都〉の大規模依頼が実施された。目的は〈夢の主〉の討伐である。
今回の指揮官はハウルロッド侯爵家の次期当主候補であるスノウが務め、侯爵ハーデンが依頼者として高額な報酬と自らの私兵を提供していた。戦闘は通常より余裕のある布陣で行われた。

進化した〈夢の主〉との遭遇
敵として出現したのは、〈存在進化〉を果たした“夢の主”カリュブディスであった。
その姿は青い肌の人型上半身と巨大な十の触手を持つ異形であり、レベル90という強大な存在であった。冒険者三十名と私兵による包囲網が敷かれ、作戦通りボス部屋から引きずり出して集団戦に持ち込む。

戦闘指揮とスノウの奮戦
スノウは前線で指示を出し、「ダメージを受けた者は即時に下がって回復を受けろ」と指揮を飛ばす。
かつて声を出すのが苦手だった彼女は、見違えるような統率力を発揮していた。ルーチェはその成長を称えたが、エルマは「本人は気にしているから言うな」と苦笑する。
敵の再生速度が予想以上に速く、エルマは一時〈燻り狂う牙〉の使用を考えるが、スノウが持ち前の判断力で対応を指示した。

ルーチェの突撃と反撃の合図
ルーチェが「私が行きます!」と名乗り出て、エルマの〈シールドバッシュ〉でカリュブディスへ突進。
敵の人型部分の背後に回り込み、「竜殺突き」を放って肉体を貫いた。
巨体が悲鳴を上げてよろめくと、スノウが即座に「今です! 一気に畳みかけてください!」と号令。
冒険者たちが総攻撃を仕掛け、触手を次々と切り落としていく。

〈夢の主〉の討伐と戦闘の終結
ルーチェの一撃を決定打としてカリュブディスは崩れ落ち、戦闘は終結した。
こうして〈水没する理想都〉の攻略は成功を収め、参加者たちは勝利の歓声を上げる。
エルマとルーチェは互いに労いの言葉を交わし、三日後の報告と式典を控えることとなった。

ハウルロッド侯爵家からの招待状
討伐の三日後、エルマとルーチェのもとにハウルロッド侯爵家からの正式な招待状が届いた。
「大規模依頼での功績と勇猛さを称える特別な晩餐を設ける」と記されており、二人は再び侯爵家の館へと向かう。
ケルトたちも招待したいと考えたが、名が記されていないため今回は控える判断を下す。

招待と到着
エルマとルーチェがハウルロッド侯爵邸に再招待され、玄関でイザベラとスノウが出迎えた。短期間での再招待にエルマは礼を述べた。

スノウの挨拶不発
スノウは感謝を伝えようとして言葉に詰まり、イザベラが代弁した。内容は「二度の歓待は功績の証。今回の討伐への貢献に侯爵家として感謝」であった。ルーチェはレイド時との落差に戸惑った。

先行案内の理由
エルマが「次期当主候補が案内役か」と疑問を向けると、スノウは「父が来ると自分のペースで話されるため、無作法だが先に礼を述べたかった」と説明した。前回は父の独演でスノウが置物化していたというWEB描写と一致。

侯爵像の前置き
イザベラは「侯爵は忙しく偏屈で好き嫌いが激しい」と説明。上位貴族相手でも会合をすっぽかす人物であると示し、場が硬直した。

歓待開始
侯爵が満面で再会を喜び、エルマを気に入っていると発言。席に着くやカロス討伐への謝意と、カロスの「面白いスキル構成」への見解を求めた。ルーチェが小声で「竜のような口」と漏らし、エルマが肘で制した。

招待の狙いの示唆
侯爵はエルマがクラスやスキルに詳しい点を追及。エルマは「自分は廃嫡の身で家への怨恨もない」とかわす。ケルトとメアベルが招かれなかったのは、冒険者ではなく“エドヴァン家の人間”としてエルマと話したかったためとエルマが推測(WEB準拠)。

尖兵の情報源への問い
侯爵は「王国が積み上げた加護知識を上回る無名の教団は不思議」とし、エルマの知恵を借りたいと迫る。エルマは「心当たりはない。家のことも勝手に話せない」と回答しつつ、内心では転生者絡みを連想し身構えた。

応酬と牽制混じりの賛辞
侯爵はエルマを「武功だけの親父とは違い、ちゃんと貴族」と持ち上げながら談笑を続行。スノウは歓待の席趣旨から外れる進行に恐縮。エルマは気楽にと応じて場を収めた。

仮説の提示と不穏な示唆
侯爵は〈夢神の尖兵〉の背後について「他国機関」または「国内の悪辣な貴族の子飼い」か、それでなければ「得体の知れぬ何か」と結論。エルマは“この世界を作り物として知る者”の可能性を連想し冷汗を覚えたところで場面が切れた。

第108話

北方貴族会議の趣旨
ハウルロッド侯爵ハーデンが主催する会議は、ベルネット公爵家からの要請に基づく前段調整であった。公爵家から「例の森(禁断の大森林)の魔物の間引き」を行ってほしいとの連絡が入っており、実質的には王家からの命であった。

出席者の顔ぶれ
出席者はハウルロッド侯爵(ハーデン)、ヴェルム・ヴィルス、ヒルマン・ヒーツ、そしてエドヴァン伯爵家当主アイザス・エドヴァンであった。各貴族がそれぞれの立場と戦力を暗に主張する構図が描かれた。

ハーデンの報告内容
ハーデンは自領でA級冒険者が人為的に魔物災害を企てた事件を報告した。該当の冒険者は討伐されたが、その技術と知識の出所が問題であった。特に「夢の穴」を用いる実験や制御に関する知見が外部で再現されうる点を重視した。

「夢壊」と禁断の森の疑念
問題の目的は〈夢壊〉であるとされ、もし〈夢壊〉が現実化すれば甚大な被害が出ると懸念された。ハーデンは、これだけの知識と技術を集めるには実地での実験が必要であり、王家の感知の届かぬ未開拓地、すなわち禁断の大森林で何らかの実験が行われていた可能性を指摘した。

領主同士の応酬
アイザスは討伐の間隔が短い点に疑念を示し、今回の大討伐は誰の意思かを問いただした。ハーデンは自らは調査と報告をしたにすぎないと釈明しつつ、他家の戦力や資源を列挙してエドヴァン家の弱点を暗に指摘した。両者は緊張したやり取りを交わした。

会議の空気と含意
会議は表面的には協調的であったが、各当主の思惑と牽制が交差する場となった。禁断の森での「実験」の可能性と、それに伴う王権・貴族間の責任問題が本討伐の背景事情として浮かび上がった。

結語的示唆
会話の終盤で、禁断の森での実験という仮説が会議の中心命題となり、今後の大討伐は単なる駆逐行為に留まらず、知識・技術の出所を巡る政治的な争点にもなったことが示唆されて終わった。

ハーデンの挑発と圧力
ハーデンは会議の席上で、エドヴァン家の準備不足を指摘し「ベルネット公爵家に顔が立たぬ」と断じたうえで、恩着せがましく「貴殿の指揮する戦力として上級冒険者を見繕ってやる」と申し出た。実際に戦力と資金に余裕のないアイザスは苦渋の表情を見せる。

貴族の在り方を巡る激論
ハーデンが「一騎当千など時代遅れ」と言い放つと、アイザスは激昂し立ち上がる。「自らの手で魔を討ち滅ぼす、それこそが王国の剣たる貴族の本来の在り方だ」と反論し、武を誇る伝統的貴族観を主張した。
これに対しハーデンは、「王家より託された領地を守ることこそが貴族の本質であり、時代に合わせて形を変えるのが当然」と説き、加護に依存し子を追放したアイザスを暗に非難した。

両者の対立の頂点
アイザスは「他家に口出しされることではない」と怒号し、会議場は緊張に包まれる。ハーデンはそれを受け流しつつ、「王家の面子を保つために不足を補う」と言いながらも、冷たく「ノルスン王国の貴族に無能はいらん」と言い放ち、エドヴァン家の立場を脅かした。

討伐の本質と新たな脅威
その後、ハーデンは本題へと移り、A級冒険者カロスの行動を報告する。彼が「禁断の大森林」に頻繁に出入りしていた証言を挙げ、カロスが関係していた謎の教団〈夢神の尖兵〉の存在を明かした。今回の大討伐は、その正体を暴くための戦いであると宣言する。

戦争宣言
ハーデンは会議の結論として、「これは我々北方貴族と〈夢神の尖兵〉との戦争の幕開けである」と告げた。彼の発言は挑発的でありながらも、貴族たちに否応なく戦の準備を強いる形となり、会議は緊迫した空気のまま終結した。

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小説【ダンまち外伝】「ソード・オラトリア5」感想・ネタバレ

物語の概要

ジャンルおよび内容
本作は、地下迷宮(ダンジョン)探索を主題とした冒険ファンタジーであり、既存シリーズ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』の世界観を引き継ぐ外伝作品である。本巻では、冒険者組織「ロキ・ファミリア」が59階層の決戦を制した後、帰還の途に就くも途中新たな“異常事態”に巻き込まれ、18階層での野営を余儀なくされる。そこに、主人公級の剣姫が再会を望む白髪の少年の姿があった。

主要キャラクター

  • アイズ・ヴァレンシュタイン:ロキ・ファミリア所属の女剣士。「剣姫」と称される実力者で、冒険・成長・自問を経て物語の中心を担う。
  • レフィーヤ・ウィリディス:エルフ族の魔導士で、アイズを慕う若き冒険者。18階層での出来事を契機に感情の揺れを見せる。
  • ベル・クラネル:シリーズの主人公としての立ち位置を持つ少年冒険者であり、本巻では彼の存在が外伝の物語にも影響を及ぼす。

物語の特徴
本作の魅力は、迫り来る異常事態という“緊迫”と、野営という一時の“休息”という対比を通じて冒険者の裏側を描いている点にある。59階層の決戦というハイライト直後という時間軸を扱いながら、冒険者たちが“帰還”しながらも平穏には戻らず、予期せぬ状況に対処せざるを得ない構造が読者の興味を引く。他作品と比して差別化されるのは、女性主人公視点が前面に出ていること、そして“休息編”という体裁をとりながらも冒険要素・キャラクター間の心理描写・再会の契機という物語構造が緻密に構成されていることである。さらに、本伝シリーズのキャラクターが外伝においても登場し、世界観の広がりを感じさせる点も読者の魅力となっている。

書籍情報

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝ソード・オラトリア 5
(Is It Wrong to Try to Pick Up Girls in a Dungeon? On the Side: Sword Oratoria)
著者:大森藤ノ 氏
イラスト:はいむらきよたか 氏
出版社:SBクリエイティブGA文庫
発売日:2015年10月15日
ISBN:978-4-7973-8508-3

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あらすじ・内容

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』外伝、待望の第五弾!
59階層の決戦を制し帰還に移る【ロキ・ファミリア】。
だが道中、ダンジョンの異常事態により行動停止となる一行は18階層で野営を行うことに。
そこにはアイズが再会を望む白髪の少年の姿が……
「ベル……?」

昇格の世界最速記録を樹立した少年に興味津々のアイズ達、そして一人不機嫌に陥るエルフの少女。
何とか我慢しようとするレフィーヤだったが──少年がもたらす騒動に、とうとう怒りが爆発する!
「待ちなさぁ────────い!」
「ひいいいいいぃいいいいいいい!?」
冒険者達の束の間の休息編!

これは、もう一つの眷族の物語、
──【剣姫の神聖譚(ソード・オラトリア)】──

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア5

感想

前巻の激戦直後ということもあり、今巻は18階層「迷宮の楽園」での野営から始まる穏やかな空気が印象的である。アイズたちが水辺で英気を養い、遠征隊が体勢を立て直す描写は、外伝第二部の緩やかな入り口として心地よい“ひと休み”を提供してくれる。

ロキ・ファミリアは50階層の異常事態から撤収し、毒被害で戦力の三分の一超が離脱する厳しい状況に。物資のやり繰りや特効薬の調達など、“現実的な遠征運用”が丁寧に描かれており、派閥運営の泥臭さが物語の厚みを増していた。

そんな野営地にベルたちが運び込まれ、アイズ・ティオナが興味津々、レフィーヤは複雑な対抗心をのぞかせる。アイズに憧れるレフィーヤから見たベルは、嫌でも意識してしまう相手。微笑ましい牽制と、同業者としての礼節が同居する距離感が楽しかった。

神会ではフレイヤやロキの探り合いが続き、都市の裏側の緊張感がにじむ一方、野営地では椿のキノコ騒ぎや小宴などの“ほっとする”小景が積み重なっていた。
ヘルメス来訪と滞在交渉、そして“覗き”騒動(黒幕はヘルメス)まで、コメディが前景化するが、背後では闇派閥と新種モンスターの影が着実に濃くなる。

レフィーヤとベルが迷い込んだ大森林で“地中の門番”と死闘を演じるくだりでは、レフィーヤの詠唱とベルの無詠唱【ファイアボルト】が同調して突破口を穿つ王道の共闘は、弱者が力を合わせて強敵に挑む“冒険の醍醐味”を真正面から描き、胸が躍る。ここで芽生える相互の信頼は、ライバル関係に温度差のある温かみを与える。

決戦後には覆面の冒険者=リューが颯爽と現れ、殲滅・治癒・状況整理まで一気呵成。
おいしいところを攫う冷静沈着さは健在で、シリーズ屈指の“クールビューティー”像を今巻でも強く刻む。

ベートの苛立ちや、アイズの不器用な独占欲(ときに嫉妬めいた反応)が可笑しくも愛おしい。
ベルとの別れは静かだが、地上帰還へ向けた行軍、闇派閥の痕跡、そしてアイズに絡む“精霊”の示唆が次巻への予兆を残す。
全体の空気感はまったりしつつ、伏線は確かに積み上がっている。

アイズを可愛く見せるレフィーヤ視点が効いており、アイズ—ティオナ—レフィーヤの絡みはどれも楽しい。
レフィーヤとベルの共闘は熱く、正面から“冒険”を感じさせる名場面。
外伝第二部の幕開けとして、やわらかな読後感と次なる火種のバランスが心地よい一冊であった。
個人的には、アイズの不器用な独占欲と、レフィーヤの“認めたくないけど認めざるをえない”感情の揺れが、控えめに言って最高。
次の共闘もぜひ見たい。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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登場キャラクター

アイズ・ヴァレンシュタイン

静かな気質で仲間思いである。ベルに対しては救助と指導の関係を保った。遠征では中核戦力として判断と行動を両立した。

所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア所属の第一級冒険者

物語内での具体的な行動や成果
 50階層での戦闘に参加。18階層で負傷者を看護。森の光柱発生に単独で急行した。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 深層33階層の階層主を単独討伐しLv.6到達が公表された。二つ名【剣姫】を維持した。

レフィーヤ・ウィリディス

努力家の魔導士で自負と迷いが同居する。ベルに対して対抗心と協働意識を併せ持つ。フィルヴィスには感謝を率直に示した。

所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア所属の第二級魔導士

物語内での具体的な行動や成果
 看護と採集任務に従事。ベルと連携して新種モンスターを撃破。フィルヴィスとの対話で変化を促した。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 高位障壁魔法を運用し信頼を高めた。ベルとの関係は衝突から協力へ進展した。

ベル・クラネル

若手前衛で成長速度が突出している。アイズに敬意と憧れを示し、失策には即時に謝罪で向き合った。

所属組織、地位や役職
 ヘスティア・ファミリア所属の冒険者(Lv.2)

物語内での具体的な行動や成果
 ミノタウロスを単独討伐。18階層でレフィーヤと共に門番個体を撃破。野営地で関係者へ順次謝罪した。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 一か月半でLv.2に昇格。都市の注目を集める存在となった。

フィン・ディムナ

冷静な指揮官で戦略と補給を両立した。帰還最優先の判断で戦力を保全した。

所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア団長

物語内での具体的な行動や成果
 撤収隊形を設計。毒被害下で18階層へ突破させた。神会後の情報整理を主導した。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 勇気の魔法で士気を高めた。派閥の統率を維持した。

リヴェリア・リヨス・アールヴ

理知的な高位魔導士で医療と規律を担う。場の統率で混乱を抑えた。

所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア幹部

物語内での具体的な行動や成果
 凍結魔法で大量発生に対処。野営地で治療と静粛を指示。現地調査を統率した。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特効薬の必要性を判定。派閥の要として機能した。

ガレス・ランドロック

堅実な盾役で危機察知に優れる。隊列維持で退路を確保した。

所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア幹部

物語内での具体的な行動や成果
 大量発生の兆候を警告。防御で後方被害を抑止した。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 遠征の安全弁として信頼を維持した。

ベート・ローガ

迅速果断な前衛で走力に秀でる。感情は激しいが任務遂行は的確である。

所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア第一級冒険者

物語内での具体的な行動や成果
 地上で特効薬を調達。帰還後に配布して戦力を回復させた。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 行動で功を立て、野営の空気を立て直した。

ティオナ・ヒリュテ

朗らかな前衛で機動力が高い。場の緊張を和らげた。

所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア第一級冒険者

物語内での具体的な行動や成果
 前衛として迎撃と護衛を担当。水浴びを提案し休養機会を創出した。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ベルの偉業を肯定し、周囲の理解を進めた。

ティオネ・ヒリュテ

冷静な判断で妹を補佐し、現場調整に長ける。

所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア第一級冒険者

物語内での具体的な行動や成果
 採集班を編成。東端調査を補佐した。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 現場のまとめ役として信頼が厚い。

椿・コルブランド

豪快な鍛冶師で独断行動が早い。同盟関係の潤滑油となった。

所属組織、地位や役職
 ヘファイストス・ファミリア幹部

物語内での具体的な行動や成果
 街で物資を物々交換で確保。野営で食材提供と和ませ役を担った。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヴェルフの事情を明かして対立を和らげた。

ヴェルフ・クロッゾ

誠実な鍛冶職で過去と向き合った。

所属組織、地位や役職
 ヘファイストス・ファミリア所属の鍛冶師

物語内での具体的な行動や成果
 精霊との伝承を証言。装備支援を実施した。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 クロッゾ家の異能を説明し理解を得た。

ロキ

狡猾な主神で全体を俯瞰する。笑いの裏で敵を炙った。

所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア主神

物語内での具体的な行動や成果
 神会を司会し情報共有を主導。被害者同盟を形成した。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 派閥間交渉で主導権を維持し、眷属の戦果を防衛した。

ヘスティア

少人数派閥の主神で庇護に徹する。行動は直情だが筋を通した。

所属組織、地位や役職
 ヘスティア・ファミリア主神

物語内での具体的な行動や成果
 18階層に来訪し面会。滞在交渉を行った。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ベルの昇格で注目を集めた。

ヘルメス

機略の神で情報収集に長ける。打算と誠意を使い分けた。

所属組織、地位や役職
 ヘルメス・ファミリア主神

物語内での具体的な行動や成果
 依頼書を提示し滞在と同行を要請。覗き騒動を誘発した。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 都市内外で情報を拡散し、被害者同盟の一角を担った。

アスフィ・アル・アンドロメダ

実務家の副官で規律を重んじる。

所属組織、地位や役職
 ヘルメス・ファミリア副団長

物語内での具体的な行動や成果
 覗き騒動でヘルメスを拘束。滞在費処理を担当した。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 他派閥から実務能力を評価された。

ディオニュソス

温厚な主神で理性を保ち、連携でロキを支えた。

所属組織、地位や役職
 ディオニュソス・ファミリア主神

物語内での具体的な行動や成果
 神会に参加しロキと協調。状況整理を補佐した。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 情報連携の要として位置付けられた。

フィルヴィス・シャリア

孤高の魔導士で自責が強い。レフィーヤとの交流で心が揺れた。

所属組織、地位や役職
 ディオニュソス・ファミリア所属の魔導士

物語内での具体的な行動や成果
 障壁魔法を授与し遠征を支援。再会で対話を受け入れた。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 自己嫌悪に変化の兆しが生まれた。派閥間の橋渡し役となる。

覆面のエルフ冒険者(名称不明)

高速機動と高火力を両立する。中立的立場で現場を支援した。

所属組織、地位や役職
 所属不明の上位冒険者

物語内での具体的な行動や成果
 食人花群を殲滅。【ノア・ヒール】で治療。闇派閥残党を追跡した。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔道具を回収し情報の端緒を残した。

フレイヤ

美と執心の主神で沈黙の影響力を持つ。

所属組織、地位や役職
 フレイヤ・ファミリア主神

物語内での具体的な行動や成果
 神会で成長要因の詮索を抑止。議論を収束へ導いた。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 不干渉の原則を盾に影響力を示した。

ガネーシャ

統率を重視する主神で公的責任を意識した。

所属組織、地位や役職
 ガネーシャ・ファミリア主神

物語内での具体的な行動や成果
 怪物祭の不手際を謝罪。殺害事件の情報提供を要請した。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 公的信頼の回復に努めた。

ウラノス

地下の秩序を司る古き神で観測者である。最小限の言葉で警鐘を鳴らす。

所属組織、地位や役職
 ギルド中枢に位置する存在

物語内での具体的な行動や成果
 祈禱断絶を感知して神の侵入を示唆した。

地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 迷宮管理の要として影響を維持した。

展開まとめ

プロローグ 水と憩いのひととき

アイズの静かな安息
アイズは全身を水に沈め、心身の疲れを癒していた。水泡の音が遠くに響く静寂の中、何も考えずただ安らぎを感じていた。金色の髪が水に広がり、その姿は精霊を思わせるほど神秘的であった。

レフィーヤの動揺
やがてアイズの前にレフィーヤが現れた。彼女は頬を赤らめながら、アイズを見惚れていたことを否定しようと必死に弁明した。アイズはその様子を理解できず、小首を傾げるばかりであった。

水浴びを楽しむロキ・ファミリア
周囲では【ロキ・ファミリア】の女性団員たちが泉で水浴びを楽しんでいた。ティオナとティオネの姉妹は滝で戯れ、リーネやアキもそれぞれ体を洗っていた。彼女たちの姿は健康的で、どこか扇情的であった。

団員たちの会話と警戒
ハーフドワーフの椿・コルブランドが滝行を終えて現れ、他の団員に話しかけた。アリシアとナルヴィは男が覗いた場合は容赦しないと語り、周囲の見張り役たちも油断なく警戒を続けていた。男性団員の立場は女性陣に比べて極めて肩身が狭いものであった。

18階層の安らぎ
この場所は18階層にある「迷宮の楽園」と呼ばれる泉であった。深層での激戦を終えた一行は、地上に戻る前の休息をここで取っていた。ティオナがこの階層を好む理由を語り、アイズも同意しながらこれまでの出来事を思い返していた。

一章 経過と現状

未到達領域到達と未知の敵の出現
アイズ達は七日前に未到達領域50階層へ到達し、密林のように変貌した環境と穢れた精霊と遭遇した。精霊と怪物の混成である精霊の分身は呪文を用いる強敵であったが、辛くも撃破し、遠征拠点へ退却した。

迅速な撤収と帰路の体制
フィンは第一級冒険者を前面に出し、拠点防衛を担っていた他団員を主力の支援に回す体制で帰還行動を開始した。幹部の負担軽減を狙った運用により、行軍中でも負傷者の休養が可能となり、帰路は順調に進行していた。

下層域での『大量発生』発生
下層域進行中、後方から悲鳴が上がり、大量の毒妖蛆が合流し続ける異常事態となった。ガレスの警告を受け、アイズの風とベートの銀靴、ガレスの防御、リヴェリアの凍結魔法で対処したが、各横道からの追加流入で切りがなく、迎撃継続は困難となった。

逃走判断と安全階層への退避
解毒用アイテムが枯渇しかける中、フィンは下層の安全階層での籠城を退け、18階層への強行突破を決断した。第一級冒険者が周囲をカバーし、負傷者を引きずって移送する形で突破し、18階層への退避に成功した。

野営と被害の集計
18階層南端の森林に臨時野営地を設営した。耐異常G未満の団員や多くの鍛冶師が毒で行動不能となり、遠征隊の三分の一超が戦力外となった。リヴェリアは高位の解毒魔法でも緩和が限界であり、専用特効薬が不可欠と判定した。

特効薬の調達と財政負担
俊足の利点からベートが地上へ特効薬調達に向かった。同時に不壊武器の製作や魔剣の消耗、深層素材の譲渡義務が重なり、派閥の財政は逼迫していた。フィンは次回遠征に先立つ資金確保の必要性を示した。

補給方針と自給自足の実施
リヴィラの街の物価は高騰しており、当面の食料は討伐魔石との物々交換と階層内の採集に頼る方針となった。ティオネの指示で班を編成し、水汲みと果実採集を実施した。

採集任務と感謝の伝達
アイズとレフィーヤは森で果実を採集し、希少果物の水晶飴を得た。アイズは50階層での救援への礼として水晶飴をレフィーヤに渡し、レフィーヤは成長の手応えを自覚した。

勇気の魔法への言及と評価の共有
レフィーヤはフィンが放った勇気の魔法に含まれたベル・クラネルの名について確認し、アイズは少年も冒険をしていたと述懐した。アイズはレフィーヤの戦果を評価しつつ、少年の初めての偉業が今後の変化を導くと認識していた。

18階層の夜と野営の食事
18階層に夜が訪れ、【ロキ・ファミリア】は魔石灯を囲んで食事を取っていた。供されたのは採集した果実や少量のパン、椿が大樹の迷宮で採ってきた巨大キノコの丸焼きであった。椿は看護を任せたまま勝手に動き街で物々交換まで行っていたが、首領達は遠征終盤ゆえ苦笑して見逃した。

椿の毒キノコ騒動と一時の笑い
椿が紫色の巨大キノコを炙って勧め、ラウルやレフィーヤが危険を訴えた。椿は耐異常があれば問題ないと応じ、ティオナが試食を申し出るなど、緊張下にあっても一時の笑いが生まれた。

就寝体制と見張りの運用
食後は就寝となり、見張りは交代制で運用された。負傷者用の天幕不足により、幹部を含む女性団員は同じ天幕で休んだ。レフィーヤは一度見張りに出、アイズは体力回復に努めた。

地上との時差と早朝の散歩
朝になると水晶群の発光が戻り、野営地が明るさを取り戻した。アイズは熟睡できない迷宮特有の環境と時差を意識しつつ起床し、剣の素振りも念頭に野営地を離れて散歩に出た。

ゴライアスの咆哮と緊急対応
地鳴りのような咆哮と強い震動が発生し、アイズは11階層最奥の広間で階層主ゴライアスが暴れていると即座に察知した。野営地が17階層連絡路に近い位置にあるため、同業の安否を案じて洞窟前へ急行した。

倒れた三人組の発見
洞窟前の草地で、ヒューマンの男性二人と小人族の少女が倒れているのを確認した。小人族の少女は失神し、赤髪の青年は左脚を重傷していた。アイズの視線は白髪の少年に釘付けとなり、額からの出血が顕著であった。

ベルの懇願と失神
白髪の少年はうつ伏せのまま動かず、アイズが近づくと左足を掴み、仲間を助けてくださいと懇願した直後に力尽きて手を離し失神した。アイズは血に濡れた額に触れ、ベルと名を呼んだが、少年の瞼は動かなかった。

迷宮の楽園での再会
猛牛との冒険から二週間後、迷宮中層の18階層で、アイズは予期せぬ形でベルと再会した。

間章 喜劇の裏側

神会の開幕とロキの狙い
【ロキ・ファミリア】遠征四日目、白亜の巨塔バベル三十階大広間でデナトゥス(神会)が開催された。司会進行はロキであり、彼女は情報交換を口実に、極彩色の新種モンスター騒動(怪物祭・18階層・24階層食料庫)に関する容疑者炙り出しを狙っていた。ロキは事前にディオニュソス、ヘルメスと連携し、円卓の反応を観察したのである。

情報交換とガネーシャの謝罪
神々の雑談が渦巻く中、ロキは王国情勢や新種モンスターの出没を整理し共有した。続いてガネーシャが怪物祭の不手際を謝罪し、18階層で団員ハシャーナ・ドルリアが殺害された件の情報提供を求めた。場は一時厳粛さを取り戻したが、騒動の真因は依然不明であった。

『命名式』の開始と“喜劇”
称号進呈の命名式が始まり、弱小派閥の眷属に“痛恨の名”が量産される恒例の地獄絵図となった。ディオニュソス案「【絶+影】」がヤマト・命に決定するなど、神々の下種な愉悦と主神の悲鳴が交錯した。

アイズの功績と称号維持
議題は【ロキ・ファミリア】のアイズ・ヴァレンシュタインへ移り、深層33階層の階層主ウダイオス単独討伐によりLv.6到達が公表された。神々は新称号を提案するも、ロキの威圧一閃で【剣姫】のブランドは死守された。

ベル・クラネル最速昇格の波紋
最後に【ヘスティア・ファミリア】所属ベル・クラネルの「一ヶ月半でのLv.2昇格」が読み上げられ、円卓がざわついた。ロキは嫉妬と好奇心も交えつつヘスティアを追及し、異常成長の要因を質した。ヘスティアは動揺し釈明に窮した。

フレイヤの介入と“黙認の契約”
ここでフレイヤがタブー(他派閥ステイタス詮索の不干渉)を持ち出して介入し、「ミノタウロス撃破が特別な【経験値】をもたらした可能性」を示して議論を収束させた。ロキは過日の密談でフレイヤと交わした“今後の行動を黙認する契約”を想起し、彼女がベルに目をかけている事実を確信した。

ロキの警告と幕引き
ロキは去り際にヘスティアへ「目を光らせておけ」とだけ忠告し、フレイヤの今後の干渉を示唆した。やがて最後の二つ名が決まり、命名式は閉会した。神会は、道化の笑いの裏側で、怪物騒動と“少年”をめぐる水面下の駆け引きが進行していることを露わにしたのである。

神会後の残留と手応えの乏しさ
神会閉会後、広間に残ったのはロキ、ディオニュソス、ヘルメスのみであった。三者は円卓で反応を精査したが、露骨に怪しい挙動は愉快犯程度に留まり、黒幕の手掛かりは得られなかったという結論に至ったのである。

ヘルメスの出立と風聞の持ち去り
ヘルメスは昇格名簿を一瞥し「土産話」を得たとだけ告げて都市外へ出立した。彼は配下に情報収集を継続させると約して去り、残されたロキとディオニュソスは彼の気紛れな行動に眉をひそめたのである。

黄昏の館の停滞と主神の退屈
神会から十日後、黄昏の館の応接間でロキは遠征隊の不在に退屈を募らせていた。ディオニュソスが届けた葡萄酒で暇を紛らわせつつも、眷属の帰還を当然視しながら待機を続けていたのである。

ベートの単独帰還と緊急動員
やがてベートが単独で帰還した。彼は挨拶も最小限に、館内の団員を即時動員し装備と食料の手配を命じた。遠征本隊は18階層で行動停止に陥り、多数が『毒妖蛆』の劇毒に倒れているため、地上で専用特効薬を都市横断で掻き集めて搬送する必要があると説明したのである。

解毒薬調達の方針と負債の勘案
特効薬は希少で在庫が薄く、【ディアンケヒト・ファミリア】の治療資源への依存は大きな貸しを生む懸念があった。ベートは自らディアンケヒトへ向かう一方、他班を道具屋巡回に放つ複線調達を指示し、費用と時間の双方を圧縮する策を取ったのである。

フィンの書簡と敵情の核心
出発直前、ベートはフィンから託された巻紙をロキへ手渡した。赤字で綴られた報は、50階層で判明した『彼女』の正体が『穢れた精霊』であること、並びに都市崩壊を狙う敵勢力の計画骨子であった。ロキはこれを読み終えるや、的確な行動と戦果をもたらした眷属に満足の笑みを浮かべ、背を押して送り出したのである。

二章 ラビット・ルーキー

野営地の騒擾と負傷者の搬入
18階層の朝光が満ちる中、【ロキ・ファミリア】の野営地に階層主に襲われた三人組が運び込まれたのである。リヴェリアらが包帯固定と治療魔法で応急から根治まで処置し、椿ら【ヘファイストス・ファミリア】も同盟として見舞いに加わった。三名はサラマンダー・ウールのインナー、着流し、ローブ姿と各々装備は損耗しており、戦闘と強行突破の痕跡が顕著であった。

レフィーヤの再会認識と静粛の叱責
人だかりに駆け付けたレフィーヤは、アイズの陰に見える白髪の少年を確認し、ベル・クラネルと即断して大声を上げた。これに対しリヴェリアが即座に静粛を命じ、野営地は治療と安静を優先する体制へ戻ったのである。

アイズの看護と到達階層の異常
アイズはテント内で看護に当たり、道具と武装を失った三名の状態から中層での決死行を推察した。二週間前はLv.1であった少年が18階層へ至った事実から、ミノタウロス戦を契機とする【ランクアップ】を確信したのである。

覚醒直後の混乱と“抱擁事故”
覚醒した少年は仲間の名を叫んで跳ね起きたが、全身の痛みで悶絶した。さらに転倒の勢いでアイズの胸当てへ顔面から飛び込み、赤面ののち盛大に仰け反って後頭部を打つ失態を演じ、場を一層気まずくしたのである。

仲間の無事とアイズの労い
アイズは青年(鍛冶師)と小人族の少女の治癒完了を伝え、少年の額包帯に触れて労った。弟を案ずる姉のような所作により、少年は礼を述べつつも羞恥で挙動不審となった。

自立心の発露とアイズの逡巡
アイズが手を差し伸べたが、少年は“男の意地”としてこれを辞退した。アイズは自身の過度な接触を省みて落胆したが、少年は痛みによる不発交じりで弁明し、どうにか自力で立ち上がったのである。

団長への報告へ—野営地の視線
アイズはフィンへの引き合わせを告げ、少年をテント外へ導いた。眼前に広がる大規模遠征の野営風景に少年は驚嘆したが、周囲の団員達は刺々しい視線を向けた。第一級冒険者が少年に甲斐甲斐しく付き添う構図が反感の火種となっている事実を、当のアイズのみが自覚していなかったのである。

野営地の噂とティオナの歓喜
ティオナは野営地にベルの来訪を知り「アルゴノゥト君」と呼んで歓喜した。詳細を知らなかった彼女は、後で会いに行くと上機嫌であった。

男性団員の嫉妬と女性陣の見解
野営地ではアイズがベルを看護したことに下位男性団員の嫉妬が渦巻いた。一方でアキ、ナルヴィ、リーネは「同業者として助け合うべき」「アイズの知己なら当然」と穏当な見解を示した。アキは入団当初の鬼気迫るアイズを回想し、今は周囲(ティオナ・ティオネ・レフィーヤ)の影響で柔らいだと述べた。

レフィーヤの複雑な感情
レフィーヤはベルへの反感と好奇心が交錯しつつ、短期間で18階層に到達した理由に疑念と対抗心を募らせた。

アイズ同行のベルとレフィーヤの牽制
アイズに伴われ本営を出たベルは野営の視線に緊張。レフィーヤは挨拶の裏で鋭い一睨みを送り、市壁での追走劇の当人であると悟ったベルは硬直した。

ティオナ姉妹の接触と反感の増幅
ティオナ・ティオネがベルに親しく接触し、アイズを含む三人に囲まれた構図が周囲の嫉妬を増幅。レフィーヤと男性団員の視線砲に晒されたベルは撤退した。

ミノタウロス討伐の事実の露見
レフィーヤが理由を質すと、ティオナ姉妹は「LV.1でミノタウロスを単独撃破」と明言。アイズも肯定し、レフィーヤは言葉を失った。

夜宴の開始と派閥間の交歓
フィンの音頭で小宴が開かれ、【ロキ】と【ヘファイストス】は簡素ながら工夫された食事と水で労をねぎらった。場は和み、笑いが絶えなかった。

椿とヴェルフの再会、誤称の小喜劇
椿がヴェルフに絡みつつベルを「クラ・ベルネル」と誤称して握手を強行。ベルは否定しつつ応対した。

首脳陣の証言とレフィーヤの悔恨
レフィーヤの問いに、リヴェリアとフィンはベルの単独討伐を確認し、アイズが助力を拒まれた事実にも触れた。レフィーヤは自身がミノタウロスを単独で退けたのがLV.3以降であることを思い、悔しさを新たにした。

新たな騒動の兆し
宴の最中、野営地外から幼い少女の悲鳴が響く。ベルは即座に走り、ヴェルフ、小人族の少女、アイズらも続く。野営地は再び騒然となり、招かれざる来訪の予感が漂った。

間章 和解の裏側

不意の来訪者と面会
宴の最中に悲鳴とともに現れたのは主神ヘスティアであり、続いてヘルメスと眷族・救助隊が来訪した。フィン、リヴェリア、ガレスら首脳陣に加え、アイズ、ティオナ、ティオネ、ラウルが面会した。アイズは24階層共同戦線の縁で、アスフィに静かに応対したのである。

依頼の提示と滞在・同行要請
ヘルメスはギルド認可の依頼書(報酬四十万ヴァリス)を示し、①野営地での滞在許可、②【ロキ】隊の出発時の同行を要請した。救助隊は野営装備の不足とリヴィラ宿泊の危険を理由に挙げ、費用精算や謝礼の支払い意思も明示した。フィンは「騒動を起こさない」ことを条件に受諾し、保護継続の方針を示した。

状況共有と交渉の地ならし
フィンは遠征隊の現況――17階層のゴライアス在、ポイズン・ウェルミスの強襲と毒被害――を説明した。ヘルメスは同盟派閥【ヘファイストス】のヴェルフ案件もちらつかせ、誠意と打算を織り交ぜて場をまとめたのである。

50階層の探りと即時の拒絶
話の締めでヘルメスは「50階層の発見」へ探りを入れたが、リヴェリアは「得体の知れない神に話す義理はない」と一刀両断した。場は一瞬張り詰めたが、ヘルメスは軽く引き下がった。

“被害者連合”と地上出入口仮説の通告
ヘルメスは、ロキ・ディオニュソスとの“被害者同盟”を結成したと明かし、極彩色のモンスターと闇派閥残党への対処で協調中と述べた。続けて「バベル以外にもダンジョンの地上出入口が存在する公算」を通告し、帰還後にオラリオ内外の本格調査を希望すると伝えた。

去り際の“宿代”と余韻
ヘルメスは金を置いて退室し、アスフィもこれに続いた。静寂の天幕で、フィンは「帰還後も休む暇はない」と総括し、野営地の“和解”の裏側に横たわる大問題の連鎖を見据えたのである。

女天幕での緊急協議
ヘルメス一行との面会後、ティオネは5階層進攻組や第二軍(アキら)を女天幕に集め、事態の整理を開始した。椿も同席し、ダンジョン出入口が「大穴」以外にも存在する可能性について意見交換が行われたのである。

“精霊”とアイズへの照準
ティオナは50階層で遭遇した『精霊の分身』がアイズを「アリア」と呼んだ点を最重視し、アイズの挙動の異常と照らし合わせて関連を推測した。アキら古参も過去のアイズの寡黙さを想起しつつ、手掛かりを渇望した。

ヴェルフの招致と身上の暴露
椿がヴェルフを連行し、彼が『クロッゾの魔剣』の血筋であることを明かした。アリシアは過去の侵略戦争で森を焼かれた怨恨から激昂したが、椿はヴェルフが一族と“魔剣鍛造”を捨てた事実を示し、緊張を緩めた。

“精霊の血”という系譜
ティオネの追及に対し、ヴェルフは先祖が精霊に救われ血を分けられた伝承を認めた。これによりクロッゾ家の異能(魔法様の砲撃=魔剣)の根拠が説明され、面々は「精霊の血」の現実性を具体像として把握した。

ベルへの聞き取りと伝承の齟齬
英雄譚の造詣が深いベルが召喚され、『迷宮神聖譚』の“アリア”周辺情報を確認した。原典での明記は乏しい一方、祖父制作の絵本伝承ではアルバートに子がいた旨が語られ、エルフ王族セルディアに関する記述を巡り、アリシアとレフィーヤが強く反発した。公式伝承と民間・脚色伝承の乖離が露呈したのである。

アイズ=“精霊の血”仮説の共有
ヴェルフ証言を踏まえ、面々は「アイズにも精霊の血が流れる」可能性に収斂した。ただし経路・経緯は不明で、英雄譚側からの裏付けは得られず、決定的核心には届かなかった。

リヴェリアの制止と願い
騒擾を受けて来訪したリヴェリアは、「詮索の強要」を戒めつつも、アイズに“精霊の血”が流れている事実のみを認めた。本人が語る時を待つべきだと諭し、「知った後も変わらず接してほしい」と家族としての姿勢を求めた。

“家族”としての確認
ティオナは即答で受諾し、ティオネ、レフィーヤ、アキらも同意した。少女達は「アイズはアイズ」と再確認し、当面は保護と信頼を優先する方針が共有された。

並行する本営での本音
同時刻、本営ではフィンとガレスがアイズに「今は話せない」胸中を聴取し、彼女の“強さへの恐れ”と“仲間の目への不安”を受け止めた。フィンは急かさず、帰還後も含めた長期的支援を見据えたのである。

三章 1/3の純粋な激情

朝の予定とレフィーヤの動揺
18階層の朝、アイズがベル達の観光案内を務めると知り、レフィーヤは衝撃を受けた。看病当番のため同行は断念したが、内心ではアイズへの関心とベルへの対抗心がせめぎ合い、早く任務を終えて合流しようと焦燥を募らせたのである。

看護当番の空回り
負傷者の看護に張り切るあまり、レフィーヤは勢いが過ぎて患者を疲弊させ、リヴェリアから叱責を受けた。自省しつつも、感情の矛先は無意識にベルへと向かい、心はなお落ち着かなかったのである。

不意の来訪者フィルヴィス
交替後に合流へ向かおうとした矢先、レフィーヤは【ディオニュソス・ファミリア】のフィルヴィスと再会した。24階層事件以来の交流相手であり、レフィーヤは50階層決戦で授かった障壁魔法【ディオ・グレイル】が皆を救った事実を感謝とともに伝えた。

王女リヴェリアへの畏避と自己嫌悪
そこへ現れたリヴェリアが丁重に礼を述べると、フィルヴィスは即座に距離を取り退去した。彼女は「自分は汚れている」と自己を呪詛し、王族を“汚す”ことへの恐怖から、同席を拒んだのである。

レフィーヤの掴みと告白の引き出し
レフィーヤは逃げるフィルヴィスの手首を掴み、「本当に汚れている者は私に魔法を授けない」と真っ向から否定した。理屈を超えた肯定で罪責を揺さぶり、さらに「主神いわく貴女は“ツンデレ”」と軽口で緊張を崩しつつ、「私の側は良くてリヴェリア様は駄目なのか」と自分の存在意義をぶつけ、執拗に手を離さなかった。

揺らぎと変化の兆し
押し問答の末、フィルヴィスは「お前に会ってから自分がおかしくなっている」と本音をこぼした。レフィーヤはその変化を喜び、二人は手を繋いだまま木漏れ日の下で心を和らげた。罪はなお消えないが、彼女の硬直した自己嫌悪にほころびが生まれたのである。

オチと余韻
レフィーヤは夢中で語らい、リヴィラ行きをすっかり失念した。気付けばアイズ達は観光から帰還しており、レフィーヤは慌てふためいたのである。

水浴びの提案と出発
昼、リヴィラから戻った直後、ティオナが水浴びを提案し、女神ヘスティア一行やアスフィ、タケミカヅチ派の少女らを含む約二十名が参加した。レフィーヤは見張り役に回ったが、先のフィルヴィスとの再会で上の空であった。

滝の泉での水浴び
一行は18階層の滝下の泉に到着し、アイズ、ティオナ、ティオネ、ヘスティア、アスフィらが先に入浴した。見張りのレフィーヤは厳重な警戒を敷きつつも、内心では光景に見惚れていた。

覗き騒動の発生
頭上の樹冠からベルが誤って泉中央へ落下し、アイズの裸身を含む一同の水浴びを目撃する事態となった。レフィーヤは激昂して追跡したが、ベルは羞恥に極限解放された速度で逃走し、レフィーヤは致死級魔法の詠唱に入るも周囲に制止された。

野営地の混乱と黒幕の露見
騒動は瞬時に野営地へ広がり、団員らが蜂起寸前となった。アスフィがヘルメスを捕縛した結果、森の樹上での“覗き計画”はヘルメスの唆しによるものと判明し、ヘスティアとアスフィの制裁で収束に向かった。

解毒薬の到着と全体の収束
夜の帳が下りる頃、ベートが各所から集めた特効薬を携えて帰還し、毒に苦しんでいた団員が快方に向かった。首脳陣はベートに謝意を示し、野営地の空気は落ち着きを取り戻した。

ベルの帰還と全面謝罪
覆面の冒険者(リュー)に伴われてベルが帰還し、アイズに土下座で謝罪した。その後も関係各所へ順次謝罪して回り、ヘルメスの関与が考慮され、厳罰は回避された。

レフィーヤの“第二波”
鎮静化の裏で、レフィーヤの怒気はなお燃え上がり、闇中に戻ったベルの背後へ“殺意の妖精”として出現した。再び追撃が開始され、二人は森の奥へ消えた。アイズは夕餉の準備の中、二人の所在を案じていた。

18階層大森林の迷走
ベルとレフィーヤは、18階層の大森林で追走の末に道を見失い、夜の危険に晒されながらも状況整理に努めたのである。口論の発端はアイズへの特訓や入浴覗きの件で、レフィーヤの鬱屈が露呈したが、空腹を機に一時休戦となった。

樹上偵察と闇派閥の察知
レフィーヤは大木へ登り地形を把握し、近傍を移動するローブ姿の二名を視認した。装束や行動様式から闇派閥の残党と判断し、好機と見て独断で尾行を決断した。ベルは装備と力量の不安があるため同行させた。

水晶林と陥穽への転落
岩壁に近い水晶林を抜ける進路で、足下の蓋が割れ落とし穴に転落した。底部は薄紫の溶解液に満たされ、冒険者やモンスターの白骨と装備が散見された。縦穴の肉壁構造と悪臭は、生体系の罠であることを示していた。

“地中の門番”の出現
縦穴上部から人型上半身と触腕を備えた“極彩色のモンスター”が出現した。闇派閥が要所防衛のため設置したトラップ型個体と推察され、魔石灯や外周からの退避は困難であった。

初期対応と弱点の把握
敵の攻撃は二本の触腕による鞭打ちであった。レフィーヤは単眼の視線と攻撃軌道の連動を見抜き、先読み回避で凌いだ。ベルは機敏さを活かしてヒット・アンド・アウェイで肉壁を傷付けたが、厚さと耐性により突破効果は薄かった。

怪音波と致命圧の局面
敵は冠状器官から強力な怪音波を放ち二人の平衡を奪取。ベルが白金の盾で致命打を辛うじて受け流すも重傷となった。レフィーヤは囮を兼ねた並行詠唱に移行したが、触腕に絡め取られ中断の危機に陥った。

反撃の端緒:無詠唱の稲妻
ベルは奪取した大戦斧で触腕を断ち、無詠唱の【ファイアボルト】連射で冠状器官を焼破。怪音波を封じ、レフィーヤの詠唱再開に必要な時間を獲得した。

役割分担の確立
レフィーヤは囮と詠唱、ベルは側面から触腕を弾く防御と時間稼ぎに専念した。これはアイズから叩き込まれた“側面弾き”の技術が生きた連携であり、第二級魔導士と第三級前衛の協働が機能したのである。

決着:アルクス・レイ×ファイアボルトの重奏
極大魔法【アルクス・レイ】が上方蓋で拮抗すると、敵は肉壁を隆起させ自壊圧殺に移行した。臨界でベルが純白光を纏う【ファイアボルト】を砲身固定の形で同調発射し、光柱と炎雷の合成出力で冠部・蓋・本体を同時粉砕。縦穴は崩落し、天蓋を穿って脱出口が開いた。

脱出と示唆
レフィーヤは重傷のベルを抱え跳躍し、崩落瓦礫を蹴破って地上面へ脱出した。大森林に隠された“門番”の存在は、闇派閥が18階層東端の要所を秘匿防衛している事実を示し、後続の調査と報告の必然性を強く裏付けたのである。

光柱の発生とロキ・ファミリアの反応
18階層の森上空へ光柱が立ち上り、野営中の【ロキ・ファミリア】や宿場街からも確認された。アイズは即座に単独で現場へ向かった。

現場の惨状と二人の生還
崩落した水晶林と天蓋の大穴の下で、レフィーヤとベルは地中の門番を撃破して脱出した直後であり、ベルは出血と溶解液の損傷で大きく消耗していた。

闇派閥の出現と食人花の包囲
闇派閥の残党二名が接近し、檻から多数の食人花を解き放って二人を包囲した。レフィーヤは玉砕覚悟で応戦を決意した。

覆面の冒険者の介入と殲滅
覆面のエルフの冒険者(木刀+短刀)が疾風の機動で群れをなぎ払い、レフィーヤの助言(打撃無効・斬撃有効、魔力反応)を受けつつ『並行詠唱』で高火力魔法【ルミノス・ウィンド】を発動し、食人花を一斉殲滅した。圧倒的な速度と詠唱精度は上位魔導士級の火力と前衛機動を両立していた。

治療と誤解の解消
覆面の冒険者は【ノア・ヒール】でベルとレフィーヤの外傷を治療し、夜の森を再迷走したベルを諭した。レフィーヤは自らの判断でベルを巻き込んだことを認め、彼が自分を救った事実を明言して庇い、覆面の冒険者はそれを評価した。

アイズの到着と指揮系統の整理
アイズが到着し、続いてティオナ・ティオネ・リヴェリアが合流した。現地調査は上位戦力(アイズ不在で)ティオナ・ティオネ・リヴェリアが担当し、レフィーヤは団長フィンへの報告を優先、アイズはベルとレフィーヤの護送を命じられた。覆面の冒険者は気になる事案があるとして撤収した。

帰路と関係性の変化
帰路でベルの装靴が溶解で使用不能となり、レフィーヤは責任を感じて代替のブーツを用意すると申し出た。アイズは二人の距離が縮まったと評し、レフィーヤは強く否定したが、ベルとの間に一定の信頼が芽生えた兆しが描かれた。

間章 舞台の裏側

闇派閥残党の追跡と尋問
覆面の冒険者は、レフィーヤたちを襲撃した闇派閥の残党二名を追跡し、森の奥で拘束した。尋問の目的は、地中の門番を含む新種モンスターの出所と意図の解明であった。男たちは自決用の火炎石を全身に巻き、沈黙を貫こうとしたが、覆面の冒険者は容赦なく問いを続けた。

禁忌の誘いと暗殺者の介入
エルフの青年が「死者との再会」を餌に、闇の主への忠誠を促す禁忌の言葉を口にした直後、頭上から投刃が飛来した。二人の男は喉を貫かれて即死し、直後に現れた仮面の人物が緋色の魔剣を振るって爆炎を放ち、火炎石を誘爆させた。覆面の冒険者は間一髪で爆風を回避したが、残党とともに情報は全て焼失した。

“D”の刻印を持つ魔道具
爆心地の瓦礫の中から、覆面の冒険者は手のひら大の金属球体を発見した。内部に赤い球体が埋め込まれ、表面には共通語や神聖文字と異なる「D」の記号が刻まれていた。爆炎にも耐えた強度を持ち、闇派閥の関与が濃厚な魔道具と見られた。彼女はこれを懐に収め、その場を後にした。

翌朝の捜索と撤退決定
翌朝、【ロキ・ファミリア】はレフィーヤの報告を基に18階層東端を調査したが、闇派閥の痕跡は一切発見されなかった。地中の門番の戦闘跡地は急速に修復されつつあり、フィンは現地調査の継続を断念。再装備と再編成の上での再調査を指示し、一行は階層東端から撤収した。

エピローグ 帰る場所へ

ベートの動揺とアイズの対応
帰還準備の最中、ベートはベルの滞在を知って激昂した。さらに水浴び騒動の真偽を問い、アイズの肯定に動揺した。ベートはベルの所在確認を求めたが、アイズは両者を会わせまいと意図し、故意に別方向を示して回避したのである。

出発前の編成と指示
フィンは先鋒隊を統率し、ティオナ・ティオネ・ベートを前衛、アイズを中衛に配置し、魔導士一斉砲火で階層主を短期殲滅する方針を示した。異常続きの遠征で消耗が大きいことから、万全を期した布陣で帰還を優先する決定であった。

アイズとベルの別れ
出発直前、ベルはアイズに「気を付けて」と言葉をかけ、アイズも微笑を返して再会を期した。レフィーヤはベルに礼と謝意を伝えつつも、責任の所在を明確にし、私情を抑えた態度を示した。

ダンジョンの震動と進軍継続
上層進行中、ダンジョン全体に微震が走り、ウラノスは祈禱断絶を感知して「神の侵入」による暴走を示唆した。フィンは冷静に帰還優先を維持し、連絡を取りつつ前進を続けた結果、前衛部隊は問題なく地上へ到達した。

地上帰還と隊の合流
遠征隊はバベルを抜けて地上に出、夕焼けの中央広場で後続隊と合流した。【ヘファイストス・ファミリア】とは握手を交わし解散。市民の歓呼に迎えられながら、それぞれの本拠へ向かった。

『黄昏の館』への凱旋
本拠前で団員の出迎えを受け、ロキが女性陣に飛びつこうとしてレフィーヤに見事に投げられた。フィンは無損耗と収穫を報告し、ロキはまず眷族の帰還を労う言葉を贈った。アイズたちは「ただいま」と応え、旗は茜に翻った。

遠征の終幕
かくして【ロキ・ファミリア】の長い遠征は、無事の帰還と次なる変転の予兆を抱えたまま、ひとまずの終幕を迎えたのである。

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