前巻 index
物語の概要
本作は異世界転生ファンタジーに分類されるライトノベルである。平凡なサラリーマンだった主人公が、異世界に「スライム」として転生し、“捕食者”の能力で他の存在の能力や外見を取り込む力を得た。 スライムとなった主人公は「リムル」と名乗り、魔物の森を統一し、「魔国連邦テンペスト」を建国。そして人間・亜人・魔物が共存する国家として復興を目指してきた。 第23巻では、その最終決戦――強大な敵勢力との総力戦と“衝撃の事実”によって世界の存立そのものが揺らぐなか、リムルとテンペスト陣営の命運が一匹のスライムに委ねられる展開が描かれている。
主要キャラクター
リムル=テンペスト:本作の主人公。スライムに転生し、“捕食者”と“大賢者”という特殊能力を得て、魔国連邦テンペストの盟主として魔物・亜人・人間が共存する国家建設を目指す。シリーズ全体の中心人物である。
物語の特徴
本作の魅力は、「スライム」という“最弱”モンスターへの転生という異色のスタートから、国家を築き、異種族の共存を目指すスケールの大きさにある。戦闘や魔法だけでなく、国家建設・外交・政治・種族間調停といった“建国ファンタジー”の要素を本格的に描いている点が差別化要素である。また、主人公と多様な種族の仲間たちの多彩なキャラクター群と、その関係性の変化や成長がシリーズを通じて丁寧に描写されており、単なる無双ものにとどまらない物語としての厚みがある。最終巻では“世界の命運をかけた総力戦”という、異世界ファンタジーらしいドラマが最大化されており、シリーズ完結にふさわしい集大成となっている。
書籍情報
転生したらスライムだった件 23 著者:伏瀬 氏 イラスト:みっつばー 氏出版社 :マイクロマガジン社 レーベル :GCノベルズ 発売日 :2025年11月29日ISBN :9784867168738
伏瀬/みっつばー マイクロマガジン社 2025年11月29日頃
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あらすじ・内容
異世界転生ファンタジーの金字塔、遂に完結! リムルの帰還により、俄然やる気を漲らせるテンペスト陣営。 そんな中、リムルはヴェルザードから衝撃の事実を告げられる。 それは戦いの根本を揺るがしかねない情報であった。 一方、イヴァラージェも不穏な動きを見せ、 事態はますます混迷を極めていく。 まさに総力戦。 皆がギリギリの戦いを強いられる中、 全ては一匹のスライムに委ねられた。 大人気転生ファンタジー、ついに本編完結!
転生したらスライムだった件 23
感想
『転生したらスライムだった件』本編がついに完結した。 最終巻の23巻は五百十六ページ、約三十万文字という圧倒的なボリュームで、読み始めてから読み終えるまでかなりの時間を費やした分、読了時の感慨も大きかった。
物語は、リムルの帰還によってテンペスト陣営が活気づくところから始まる。 一方で、天星宮側ではフェルドウェイやディーノたちの動きが描かれ、星王竜ヴェルダナーヴァとルシアの聖遺骸の消失、滅界竜イヴァラージェの変質など、不穏さが一気に高まっていく。 ルミナスが人類連合を鼓舞し、北・西・南・東の各戦線でルイやシオン、ベニマル、ウルティマ、ミリムらが総力戦を繰り広げる展開は、まさに「天魔大戦」の名にふさわしい全面戦争であった。
中盤以降は、イヴァラージェの人型化と三従僕の強化、ミリムやクロエ、ヴェルドラたちの参戦、さらにルミナス対トワイライトの一騎打ちなど、各所でクライマックス級の戦いが続く。 そこへベガやジャヒルら、これまでの因縁を背負った敵が再登場し、ヴェルダナーヴァの復活と世界破壊計画が明らかになることで、戦いのスケールはついに「創造神との決戦」にまで到達する。
終盤では、ギィとイヴァラージェの戦い、リムルとヴェルダナーヴァの一騎打ちが物語の軸となる。 リムルは魂を奪われながらもなお立ち上がり、仲間たちの想いを背負って世界を守るために剣を振るう。 その過程で、リムル=三上悟とシズさんとの関係も整理され、これまで紡いできた物語が一つの形として回収されていく。 そして最終的には、テンペストの仲間たちや人類側も含め、皆がそれぞれの場所で生き延び、ハッピーエンドと呼べる結末に辿り着く点には、大きな安堵と満足感を覚えた。
一方で、最終章である天魔大戦編については、長大なページ数のわりに内容がやや薄く感じられたのも事実である。 多数の戦場を同時並行で描き、多くのキャラクターに見せ場を用意する構成は壮観である反面、アクションシーンが連続しすぎて、物語全体が「バトル寄り」に傾きすぎた印象が強い。 コミカライズや映像化を意識したような派手な戦闘描写が前面に出ており、「転スラ」らしい日常や掛け合い、心理描写が相対的に薄くなったと感じた。
また、エピローグが短く、戦後のテンペストや各キャラクターの「その後」についての描写が物足りなかった点も個人的な不満として残る。 ここまで大規模な天魔大戦を描いたのであれば、もう少し余白を取り、リムルや仲間たちの平穏な日常、各国の再建や関係性の落ち着きなどを丁寧に描いてほしかった。 もっとも、エピローグについては外伝が来年から刊行される予定であり、それを楽しみに待ちたい。 同日に発売された『転生したらスライムだった件 番外編 ~とある休暇の過ごし方~』の最後に後日談が少し書かれていたため、異世界側のエピローグがどのように補完されるのかは非常に楽しみである。
最終決戦のアクションもインフレが極まっており、読み進めるのに気力を要する場面があったのも正直なところであった。 破壊規模や存在値のインフレが続いた結果、一部の戦闘は「誰がどこで何と戦っているのか」を意識しながら読み返す必要があり、読書体験としてはやや負荷が高かった。
それでも、シリーズ全体を通して見れば、『転生したらスライムだった件』は、異世界転生という設定を活かし、リムルを中心に様々な種族が共存する理想郷を築き上げていく物語であり、その過程で描かれる仲間との絆や、困難に立ち向かう姿は非常に魅力的であった。 本編最終巻については、アクション寄りに振れすぎてキャラクターの内面や日常描写がやや犠牲になった印象は拭えないものの、それでもここまで積み上げてきた物語の決着として、大枠では納得できる結末だったと感じている。
総じて言えば、天魔大戦編には「もっとこうしてほしかった」と思う点がいくつもある一方で、それでも『転スラ』という作品そのものが自分にとって特別な存在であることに変わりはない。 リムルたちが築いた世界と彼らのこれからを、今後の外伝や番外編を含め、引き続き見守っていきたいと思わせてくれる本編完結巻であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
伏瀬/みっつばー マイクロマガジン社 2025年11月29日頃
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前巻 index
登場キャラクター
リムル=テンペスト
魔国連邦の盟主であり、各陣営から信頼される調停者である。世界滅亡の危機に対し、自身の安全よりも仲間と世界の継続を優先する姿勢を貫いている。ヴェルダナーヴァやイヴァラージェといった創造主級の存在に対抗する切り札として、周囲から期待と負担を集中させられている。
・所属組織、地位や役職 魔国連邦テンペストの盟主である。八星魔王の一角である。
・物語内での具体的な行動や成果 ヴェルザードの究極能力を改変し「氷神之王」へ進化させた。ヴェルダナーヴァに魂を奪われた後も擬似魂で復活し、ベニマルの魂を治療した。ギィや竜種たちと連携し、ヴェルダナーヴァ討伐とイヴァラージェ対処の全体方針を決めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 創世級の剣に「希望」と名を与え、創造神と対等に剣を交える存在として描かれている。各勢力から世界の命運を託される象徴的な存在となっている。
ヴェルダナーヴァ
星王竜と呼ばれる創造神であり、現世界を作り上げた存在である。妻ルシアの喪失を契機に世界を失敗作と見なすようになり、世界の破壊と再創造を決意している。かつての理想と現在の行動が乖離しており、周囲から「壊れた神」と認識され始めている。
・所属組織、地位や役職 三千世界の創造神とされる存在である。竜種の頂点に立つ星王竜である。
・物語内での具体的な行動や成果 フェルドウェイに世界初期化計画を任せた後、自ら再臨し世界浄化と選別を宣言した。ジャヒルら過去の強敵三名の魂を呼び戻し、新たな器に宿らせて戦場に送り込んだ。イヴァラージェに剣「記憶」を突き立て、ルシアの記憶を植え付ける計画を進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 創造神としての威光は保ちつつも、ルミナスや竜種たちからは敵として認定されている。世界そのものを破棄しようとする姿勢により、信仰の対象から討伐対象へと認識が変化している。
イヴァラージェ
世界破壊を担うために生み出された滅界竜であり、後にルシアに酷似した人型形態を得た存在である。戦闘の中で技術や感情を学習し続け、純粋な破壊衝動から怒りや憎しみに近い感情を獲得している。ヴェルダナーヴァの計画に組み込まれながらも、自身もまた破滅の象徴として戦場に立っている。
・所属組織、地位や役職 ヴェルダナーヴァが用意した世界滅亡のための「竜」と位置づけられている。幻獣族三従僕を従える存在である。
・物語内での具体的な行動や成果 カケアシ・スイーム・ハバタキを従え、人類連合に壊滅的な被害を与えた。ミリムやヴェルドラと交戦し、その戦いから技を取り込み急速に成長した。三従僕が討たれた後も崩滅虚触獄の中で耐え続け、削り殺しが困難な脅威として描かれている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ルシアの記憶を植え付けられる対象として扱われており、ヴェルダナーヴァの計画の中核となっている。戦いを通じて初めて痛みや喪失を知り、感情を獲得しながらさらに危険度を増している。
フェルドウェイ
天星宮側の最高戦力の一人であり、ヴェルダナーヴァの理想を実現しようと世界初期化計画を推し進めてきた存在である。リムルやディアブロとの戦いで敗北し、計画の誤りと自身の執着を認めるに至った。最終的には壊れた主を止めようとする側へ踏み出している。
・所属組織、地位や役職 天星宮に属する指導者的存在である。ヴェルダナーヴァの配下として世界再構築計画を管理していた。
・物語内での具体的な行動や成果 聖遺骸管理や天星宮の防衛を任されていたが、イヴァラージェに聖遺骸を奪われる失策を犯した。ヴェルダナーヴァ復活後、その暴走を止めるために決死の一撃を試みて瀕死となり、リムルの治療を受けて戦力として再起した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 世界初期化の実行役から、ヴェルダナーヴァに反旗を翻す側へ立場を変えた。リムルの指揮下に入ることを受け入れ、一時的な共闘関係を結んでいる。
ギィ・クリムゾン
古き時代から君臨する最古の魔王であり、冷静な観察と豪胆な決断を併せ持つ存在である。世界の存続を望みつつ、同格の強者との戦いを楽しむ戦闘思考も持っている。リムルや竜種たちとの関係は対等に近く、時に牽制し合いながらも協力関係を取っている。
・所属組織、地位や役職 八星魔王の一人である。悪魔たちの頂点に立つ存在である。
・物語内での具体的な行動や成果 暴走したヴェルザードの精神世界へ侵入し、感情を受け止めて正気へ導いた。イヴァラージェ戦では崩滅虚触獄を発動し、竜たちの奥義を統合して継続的に削り続ける包囲網を完成させた。ヴェルダナーヴァ戦でもリムルに時間稼ぎを任せつつ、自身は破滅竜討伐の中心として動いている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 究極能力が深淵之神へと進化し、世界の法則すら書き換える領域に到達している。リムルを同格以上の特異点として認識し、その在り方に強い関心を寄せている。
ヴェルザード
白氷竜と呼ばれる竜種の一角であり、ギィと長い時間を共にしてきた存在である。兄ヴェルダナーヴァへの思慕と、ギィに認められたい願いの間で葛藤してきた。暴走状態から解放された後は、兄に敵対する覚悟を固めている。
・所属組織、地位や役職 竜種の一人であり、氷を司る存在である。ギィの「相棒」として行動している。
・物語内での具体的な行動や成果 兄の命令に従い世界破壊計画に関わりつつも、ギィだけは凍らせて守ろうとしていた。リムルの力で忍耐之王と嫉妬之王を統合され、「氷神之王」を得て兄と渡り合える可能性を得た。ギィに対し、自分は相棒であり実質的な夫婦であると確認し合い、迷いを断ち切って戦線に復帰した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ヴェルダナーヴァから授かった権能を、自身に最適化された新たな究極能力として再構成している。兄と決別し、世界側に立つ竜種として立場を明確にした。
ルミナス・バレンタイン
吸血鬼の王であり、神聖連邦ルベリオスの指導者である。前線全体を俯瞰しつつ、蘇生と鼓舞によって人類連合の戦線を支え続ける要となっている。神祖トワイライトとの対決を経て、自身の本質と役割を再確認している。
・所属組織、地位や役職 神聖連邦ルベリオスの最高指導者である。吸血鬼族の長であり、八星魔王の一人である。
・物語内での具体的な行動や成果 聖域型極大死者蘇生や聖域化の秘法により、戦場で倒れた兵を何度も蘇らせた。トワイライトとの戦闘で「善光之王」を獲得し、相手の「悪徳之王」と対をなす存在として勝利した。その後もミザリーと権能を分担し、戦場全域の立て直しに貢献した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 神祖トワイライトの人格と力を統合し、「真なるルミナス・トワイライト・バレンタイン」として覚醒している。世界そのものを守る意思を明言し、創造神に対抗する側の精神的支柱となっている。
ヴェルドラ=テンペスト
暴風竜として知られる竜種であり、リムルと魂の回廊で繋がる存在である。豪放な性格で目立つ役割を好むが、戦況判断では周囲からたしなめられる場面も多い。兄ヴェルダナーヴァに対しては複雑な感情を抱きつつも、世界側に立つ立場を選んでいる。
・所属組織、地位や役職 竜種の一人である。名目上は魔国連邦テンペストの守護竜である。
・物語内での具体的な行動や成果 イヴァラージェとの時間稼ぎの戦闘を引き受け、ミリムと連携して拘束を試みた。崩滅虚触獄発動時には雷嵐咆哮を供給し、疑似虚無の火力強化に貢献した。リムルの魂を一時的に退避させる役割を果たし、擬似魂による復活の前提を作った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 兄に比べ軽率な言動が目立つものの、魂の回廊を通じてリムルと一体に近い関係となっている。世界の行く末に対し、自分なりの責任感を見せる場面が増えている。
ミリム・ナーヴァ
竜種と魔王の性質を併せ持つ存在であり、破壊の象徴とされる少女である。感情表現が率直で、気心の知れた相手には遠慮のない態度を取る一方、仲間や家族への執着は強い。母の肉体を奪った相手と戦うことをためらうなど、葛藤を抱えながら戦場に立っている。
・所属組織、地位や役職 八星魔王の一人である。竜種の血を引く最強格の戦力である。
・物語内での具体的な行動や成果 イヴァラージェと天通閣内部で交戦し、互角に近い戦いを演じたが、次第に押されて戦線離脱した。その後、憤怒之王の再稼働を決意し、崩滅虚触獄に供給する竜星爆炎覇を放ってイヴァラージェの消耗を加速させた。ヴェルダナーヴァに対しても、他者を犠牲にして愛する者を蘇らせる考えを批判している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 暴走時のみの使用とされていた憤怒之王を、自覚的に制御しながら行使しようとしている。竜種たちの中で、明確に世界側の戦力として位置づけられている。
ベニマル
魔国連邦テンペストの将軍であり、リムル軍の主力指揮官である。冷静な戦術判断と、仲間を思う情の両方を備えている。自らの無茶を自覚したうえで、リムルの負担を分担しようとする姿勢を見せている。
・所属組織、地位や役職 魔国連邦テンペスト軍の総大将格である。黒色軍団や各軍団をまとめる指揮官である。
・物語内での具体的な行動や成果 東方面の戦場で聖浄化結界の基点を守りながら、黒炎獄で雑兵を殲滅し戦線を安定させた。ルミナス不在時には過度な損害を避ける指示を出し、長期戦を見据えた采配を行った。ヴェルダナーヴァの飛ばした創世級の剣からリムルを庇い、魂を侵食されながらも希望を語り続けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 魂を損傷しながらもリムルの治療を受け、生還前提で扱われている。仲間からは精神的な支えとしても認識され、「希望」という言葉を体現する存在として描かれている。
ディーノ
かつてフェルドウェイの支配下にあった堕天使であり、現在は自由意思を取り戻した戦力である。飄々とした態度の裏で、世界滅亡には否定的な価値観を持っている。フェルドウェイに対しては、被支配者としての怒りと、仲間としての情を併せ持っている。
・所属組織、地位や役職 以前は天星宮側の十天使として行動していた。現在はリムル側と協調する立場に近い。
・物語内での具体的な行動や成果 迷宮攻略を断念して帰還し、リムル陣営の脅威度をフェルドウェイに報告した。ヴェルダナーヴァへの進言で世界破壊の不要性を訴えた結果、胸を貫かれる重傷を負ったが、ルミナスの治療で一命を取り留めた。フェルドウェイに対し、今後は行動で信頼を回復するよう促している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 支配の権能から完全に解放され、天星宮側から離反した立場が明確になっている。世界を守る側へ傾いた象徴的な存在となっている。
テスタロッサ
リムル配下の原初の悪魔の一人であり、冷静な判断と戦場運営能力に長けた女性である。軍団運用と大規模転移を担う中核戦力として機能している。リムルへの忠誠を行動の基準としており、他勢力との関係もそれに従って調整している。
・所属組織、地位や役職 魔国連邦テンペスト所属の悪魔である。黒色軍団を率いる将である。
・物語内での具体的な行動や成果 対イヴァラージェ戦では、戦闘可能な者を大規模転移魔法で再配置し、多国籍軍を指揮して東方面の戦線を支えた。ルミナス不在時には、ミザリーと連携して戦場の損耗を抑える方針に従った。終盤ではベニマル麾下に合流し、指揮官クラスの幻獣族排除に貢献した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 リムル特製回復薬の提供対象となり、さらなる強化を受けた三原初の一人として扱われている。戦術面だけでなく、他勢力からも頼られる調整役として存在感を増している。
ウルティマ
原初の悪魔の一人であり、感情表現が激しいが戦闘技術に優れた存在である。怒りを力に変える戦い方を得意とし、高速戦闘と拳技を組み合わせた近接戦を行う。リムルへの忠誠心は強く、与えられた任務を楽しみつつも完遂しようとする。
・所属組織、地位や役職 魔国連邦テンペスト所属の悪魔である。南方面戦線の主力戦力である。
・物語内での具体的な行動や成果 スイームを異界空間に閉じ込め、「八門堅陣」や転移門を駆使して突撃をいなしながら時間を稼いだ。スイーム人型覚醒後の決戦では拳技と毒と虚無への扉を組み合わせ、黒死崩壊で内部から撃破した。多くの負傷を負いながらも、南方面の勝利を確定させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 スイーム撃破により、従僕三体のうち一体を単独で倒した実績を持つ。リムルの細胞入り回復薬により、今後さらに強化されることが示唆されている。
カレラ
原初の悪魔の一人であり、破壊的な戦い方と豪快な性格を持つ女性である。他者に対して辛辣な評価を口にする一方、決めた瞬間には全力を投じる潔さを持つ。戦場では危険人物扱いされつつも、味方からの信頼は厚い。
・所属組織、地位や役職 魔国連邦テンペスト所属の悪魔である。北方面での決戦時は主力切り札として扱われている。
・物語内での具体的な行動や成果 ハバタキ戦ではアゲーラを刀身変化させた黄金の刀を手に、一撃必殺の極技“一閃”に全てを賭けた。ユウキらの援護による瞬間移動で間合いを得て、ハバタキの心核を頭頂から両断し討伐に成功した。その代償として魔力を使い果たし、戦闘不能となりながらも勝利をもぎ取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ハバタキ討伐により、各勢力から到達点級と認められる剣技を示した。周囲からは「味方で良かった」と評される危険度と実績を兼ね備えた存在になっている。
ゼギオン
迷宮最強クラスの戦士であり、無口ながらリムルへの忠誠が揺るがない存在である。精神面のブレが少なく、与えられた任務を静かに遂行するタイプである。戦場では防衛と護衛の要として機能している。
・所属組織、地位や役職 魔国連邦テンペスト所属であり、迷宮側の守護者である。
・物語内での具体的な行動や成果 停止世界が発動した状況下でラミリスとともに現れ、ベニマルの保護とリムルの後方支援を引き受けた。過去にはヴェガやゼラヌスを撃破しており、その戦果がフェルドウェイ側に強い危機感を与えている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 停止世界下で行動可能な少数の一人として位置づけられている。リムルからの信頼が厚く、重要局面で護衛役として選ばれている。
クロエ・オベール
時間跳躍能力を持つ勇者であり、未来と現在を行き来しながら最善の結果を探る存在である。自己犠牲の傾向が強く、誰かを救うために自分の身を後回しにする決断を選びがちである。
・所属組織、地位や役職 人類側の勇者として認識されている。
・物語内での具体的な行動や成果 リムルとヴェルダナーヴァの戦いで思念伝達を通じ、未来からの情報で回避補助を行った。天通閣内部ではミリムの窮地を救うために介入し、イヴァラージェの攻撃を弾いたが、反撃で戦闘不能に追い込まれた。時間停止後は介入が不能となり、以降の戦いはリムル自身の判断に委ねられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 時間跳躍という特性から、結果そのものを見届ける役割に回る場面が多い。今回の局面では、最終的な選択をリムルに託す立場を選んでいる。
マサユキ
「勇者」として人々から認識されている青年であり、他者の期待に応じて役割を引き受けてきた存在である。内心は平凡な感覚を持ちつつ、「まだ死にたくない」という素直な動機で世界側に付くことを選んでいる。
・所属組織、地位や役職 人類連合の勇者的象徴として扱われている。ルドラの器となっている。
・物語内での具体的な行動や成果 北方面戦線での作戦立案や、ヴェルグリンドの判断材料となる立場を担った。ヴェルダナーヴァと対立するかどうかの選択では、自分の生存を理由に抗う側に立つと表明し、周囲の意思決定に影響を与えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 「勇者」という肩書に振り回されてきたが、自分の望みを基準に陣営を選ぶ姿勢を見せている。ヴェルグリンドからは、判断基準として信頼される存在になっている。
ルドラ
マサユキの身体を通じて現れる元皇帝であり、長きにわたり世界の命運に関わってきた存在である。過去に多くの犠牲を払ってきたことを自覚しつつ、なお世界滅亡には反対する立場を取っている。
・所属組織、地位や役職 かつての東の帝国の皇帝である。現在はマサユキの中に宿る存在である。
・物語内での具体的な行動や成果 蘇ったジャヒルの正体を見抜き、自分と妻を殺した元王である可能性を示した。ジャヒルへの決着は自分が付けると宣言し、ユウキと協力して対処に向かった。ヴェルダナーヴァの方法には同調せず、世界破壊を止める側に立つ意思を示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 肉体を持たない状態でありながら、判断と情報提供を通じて戦場に影響を与えている。過去の因縁を清算するための戦いに臨む姿勢が強調されている。
前巻 index
対戦まとめ
第一章 流れる涙
ルミナス
【対戦】 自ら前線で戦うよりも、全戦場を俯瞰する指揮官として振る舞っていた。思念伝達で各戦線の兵へ言葉を送り、命に価値を与える形で鼓舞することで、北・西・南の戦線を支えた。特に、北のルイ・ギュンター隊、南のウルティマ隊、西のシオン隊など、人類側と魔王勢力をまとめる統合指揮の役割を担っていた。イヴァラージェの邪悪な笑いと世界不要という価値観に触れたことで、本質的な「悪」への恐怖を自覚しつつも、戦況の把握と情報伝達を続けていた。
【進化】 戦闘力の進化ではなく、世界規模の危機に際して「この世界を大切にしている存在」として明確に位置づけられた。ギィからも味方候補として高く評価され、後の対ヴェルダナーヴァ戦略において「信頼枠」に入る政治的・精神的な立ち位置への格上げが示唆されている。
イヴァラージェ(ルシアの姿を取った滅界竜)
【対戦】 東方戦線で沈黙を保っていたが、やがて無邪気かつ邪悪な笑いと共に行動を開始した。地上に降り立つと美しい女性へと変貌し、その姿はマサユキに宿る勇者の記憶と反応し「ルシア」と認識された。現段階では本気の破壊活動に入る前段階であり、各地の戦いに対する「本当の脅威」として存在するが、この章では直接の一騎打ちや詳細な戦闘描写はまだ始まっていない。
【進化】 明示的な権能進化は描かれていないが、三体の従僕と共に未知の変化を示し、ヴェルグリンドでさえ力の上限を測れない存在へ変質している。また、「ルシア」という勇者側の記憶と結びついた姿を取ることで、その正体が単なる滅界竜を超えた、世界破壊計画の中核存在であることが暗示されている。
ギィ・クリムゾン
【対戦】 暴走状態のヴェルザードと対峙し、カレラ・レイン・テスタロッサと共に、その天災級の攻撃を「虚無」で相殺していた。ヴェルザードを正気に戻すには星幽体を向ける必要があると見抜きつつも、本体が無防備になるリスクから踏み切れず、時間稼ぎと増援待ちという戦術を選択していた。リムル到着後は、リムルが抑え役となる形で、ギィはヴェルザードの精神世界に侵入し、彼女の怒りと本心を受け止める役に回った。
【進化】 戦闘中に「演算特化形態」へ移行し、物質体から悪魔本来の精神体、さらに星幽体へと移行することで、精神干渉に全振りした形態へ変化した。この形態により、幾重もの精神防壁を突破し、幼いヴェルザードの心核へ到達している。また、ヴェルザードとの対話を通じて、彼女を「相棒・身内・実質夫婦」と明言し、感情面での関係性を明確化したことも、ギィ自身の覚悟と立場の変化として描かれている。
ヴェルザード
【対戦】 白氷竜として暴走し、神秘的な美しさを保ちながらも、天災のような暴威を振るっていた。ヴェルグリンドですら恐れる存在感を放ち、ギィ達の虚無とリムルの虚無崩壊でようやく攻撃を相殺されるほどの脅威であった。これは兄ヴェルダナーヴァの命令と世界破壊計画に絡む内部事情が原因であり、彼女自身の意思とは乖離した行動であった。
【進化】 内面世界では、兄から授かった「忍耐之王」と、自身の願望が形になった「嫉妬之王」の二つの究極能力を抱え込み、それらをどのように扱うか苦悩していた。単独では忍耐之王を変質させられず行き詰まっていたが、シエルによる介入で二つの権能が統合され、「氷神之王」へと進化した。この新たな権能はヴェルザード自身と完全に適合し、ヴェルダナーヴァを止めうるかもしれないという希望を与え、世界破滅を受け入れるしかないという諦念から彼女を解放した。また、ギィへの本心(認めてほしかった・役に立ちたかった)を吐露し、相棒としての関係性を再確認したことで、精神的にも大きく変化している。
リムル
【対戦】 ヴェルザード戦場に到着すると、戦場全体を観察して防衛線の構造を把握し、モス・ミザリー・ガビル・オベーラ・エスプリらの奮戦を評価した。その上で、自身の「竜霊覇気」と虚無崩壊を用いて、ヴェルザードの妖気とギィ達の虚無を「虚無崩壊」に変換し、攻撃そのものを封じ込めた。この抑え込みによってヴェルザードの破壊を止めつつ、ギィが安全に精神侵入できる環境を作り出し、テスタロッサ達を対イヴァラージェ戦線へ転移させる時間を稼いだ。
【進化】 戦いの最中に、自身の魔素量がヴェルグリンドやヴェルドラ並みに膨れ上がっていると実感し、その原因が虚空之神アザトースの獲得と虚無崩壊の運用にあると理解していた。果ての世界での実験を踏まえ、初歩的な火球ですら核撃魔法級の破壊力になり得る虚無崩壊を、日常運用レベルまで制御可能にしている点が示されている。さらに、ギィの依頼を受けてヴェルザードを「捕食」し、シエルを通じて権能構成そのものを組み替え、「忍耐之王+嫉妬之王→氷神之王」という神業的な権能改変を実行したことで、単なる戦闘者を超え、「他者の究極能力を上書き・進化させる存在」としての次元へ踏み込んでいる。
ディアブロ
【対戦】 ヴェルザード戦場では、ギィが演算特化形態へ移行して本体が無防備になる間、その身体を抱えて守る役割を担った。ヴェルザード以外の敵が存在しない状況を前提に、リムルの抑え込みと連携しつつ、ギィの護衛に専念していた。また、リムルと共に基軸世界からここまで同行し、今後も「裏切りは絶対にない。敵は必ず排除する」と改めて誓っている。
【進化】 明示的な新スキル獲得こそ描かれていないが、過去に虚無崩壊を自己強化に転用し、シエルの「エネルギー循環理論」を理解して円環の秘法に似た現象を起こしていることが回想される。本章ではそれを踏まえて、リムルから見て「理論理解まで含めてついていけないほどの異常な適応力」を持つ存在として位置づけられており、虚無崩壊環境下でも平然と活動できる異常な耐性と運用能力が暗示されている。
テスタロッサ/カレラ/レイン
【対戦】 テスタロッサは当初、ギィ達と共にヴェルザードの攻撃を虚無で相殺する側に回り、戦線維持に貢献していた。その後、リムルの命令で大規模転移魔法を用いて旧ユーラザニア由来の戦力を率い、対イヴァラージェ戦線への援軍として再配置される。カレラもこれに同行し、前線での大規模戦闘へ向かう役割を担った。レインは一時ヴェルザード戦場に残ろうとしたが、ギィに叱責されて前線に出撃している。
【進化】 本章時点では、権能の進化や新たなスキル獲得は描写されていない。ただし、テスタロッサが大規模転移を任されるなど、戦略級魔法運用の中核として評価されている点、カレラ・レインが八星魔王勢力の機動戦力として再配置される点から、「対イヴァラージェ戦における主力」としての役割が強調されている。
ヴェルダナーヴァ(及びその陣営)
【対戦】 この章では直接戦ってはいないが、ヴェルザードの口から「既に昔に復活しており、天星宮の最奥で力を回復していた」「今は世界破壊と再誕を望み、フェルドウェイの暴走も黙認していた」ことが明かされる。ヴェルザード自身が凍結でギィを救おうとしていた事実から、彼は現時点で完全に敵側に位置づけられている。
【進化】 過去に力を失ったはずの存在が、今やヴェルザードですら戦いたくないほどの脅威として復活していることが語られる。権能や能力構成の詳細は描かれていないが、「世界を一度壊して作り直す」という神的スケールの計画を進めている点から、かつての規格外の力を完全に取り戻している、あるいはそれ以上になっている可能性が示されている。
第二章 希望と落胆
ルミナス
【対戦】 全戦場を俯瞰しつつ、南北西の三方面を聖域化と極大死者蘇生で支えたのち、自身は戦線から離れてトワイライト・バレンタインと一騎打ちの形になった。当初は夜薔薇の刀と魔血呪獄弾、霊子崩壊の罠で一度トワイライトの肉体を塵にし、結界も幻儚薔薇刃で切り裂いて致命傷を与えたが、血槍を核とする再生能力の前に押し返され、心臓を貫かれて一度倒れた。その後、血槍を逆流させて再覚醒し、『善光之王』と創世級の剣「法則」、奥義「死せる者への鎮魂歌」でトワイライトを完全に取り込み、最終的勝利を収めた。
【進化】 神祖としての本来の記憶と権能を完全に取り戻し、「真なるルミナス・トワイライト・バレンタイン」として覚醒した。同時に、トワイライトの『悪徳之王』と対になる形で自らの究極能力を『善光之王』へと進化させ、神祖の実験の「本体」であると自覚するに至った。人格としてはこれまでのルミナス(「妾」)が主であり、神祖としての「私」を内側に統合した状態で、「神祖+魔王ルミナス」が一体となった存在として再定義されている。また、戦場への聖域化と蘇生の権能を完全に再継承し、戦局を立て直す中心となった。
トワイライト・バレンタイン
【対戦】 ルミナスの背後に現れ、結界で戦場から切り離した上でルミナスを一方的に押し込み、神祖の血槍で心臓を貫いて戦闘不能に追い込んだ。ルミナスの魔法攻撃を無効化し、『悪徳之王』の最強奥義「永劫の黄昏」でトドメを狙うも、『善光之王』で相殺され、最終的には「死せる者への鎮魂歌」で肉体も魂も塵とされ、ルミナスの内へ回収された。
【進化】 カレラに滅ぼされた後も心核と記憶を血槍にバックアップしていたことで復活し、以前より存在値も戦闘能力も上昇していた。しかし、魂・人格・記憶の実験の結果生まれた「不完全体」であることがルミナスから暴かれ、神祖の真の後継ではないと断じられる。自認していた「最高傑作」の正体が、実験産物としての暴走に過ぎなかったと明らかになり、その存在意義ごと否定されて消滅した。
滅界竜イヴァラージェ(ルシア)
【対戦】 天通閣内部でミリムと激闘を繰り広げ、作戦上は後続の幻獣族を殲滅される一方で、本人同士の戦闘ではミリムを徐々に押していた。創世級の細剣「慈愛」を抜き、ミリムの天魔と互角の武器で応じ、致命傷級の斬撃を受けても闇の魔素で瞬時に再生し、痛みさえ遊戯として受け取っていた。クロエの介入も、剣を捨てた素手のラッシュで退けている。その後、成人の人型姿で地上に姿を現し、ミリムを戦線離脱寸前まで追い込んだ状態で現行戦場の最大脅威となった。
【進化】 従僕三体が各方面で討たれつつある中で、自身も完全な人型へと変化し、戦闘力・再生力とも異常な域に達している。ミリムの本気に近い攻撃を正面から受けて再生する耐久力と、創世級武器の運用から、従来の竜形態以上の総合性能を備えた「人化後の真の姿」として描かれている。
ハバタキ
【対戦】 北方面で瞬間移動を駆使して暴れ回り、古城舞衣の「星界之王」によって空間位相を乱され、ブラックナンバーズやルイらの働きで一時的に動きを封じられた。その後、人型へ進化して戦場へ復帰し、マイが囮を務める中、ユウキやラプラス達の体内爆弾作戦を受けて初めて明確な負傷を味わう。怒りから羽をばらまく広範囲殲滅攻撃で周囲を壊滅寸前まで追い込むが、最終的にカレラの極技“一閃”により頭頂から心核まで一刀両断され、即死した。
【進化】 人型化により瞬間移動の自由度と戦闘能力を大きく高め、分子結合を解除する閃光で一帯を砂漠化する広域必殺技まで獲得した。しかし、ユウキ達の連携により体内へ送り込まれた超圧縮エネルギーによって初めて「痛み」を知り、さらにカレラの一撃で心核ごと断たれたことで、絶大な潜在力を持ちながらも進化を長期運用する前に退場している。
カケアシ
【対戦】 西方面で聖浄化結界の基点を守るサーレとグレゴリーの前に立ちはだかり、結界破壊を狙って突進した。グレゴリーが鋼身体で時間を稼ごうと単身で受け止めたが、ゴブタとランガの乱入によって吹き飛ばされ、さらにクマラと八部衆の攻撃で不利に陥る。その後はヴェルドラの参戦も控える中で、シオン達との連携に押され続け、最終的にはヴェルドラの収束暴風乱牙による強烈なカウンターを受けて、敗北への道が決定づけられた。
【進化】 人型への進化で、結界破壊能力と戦闘力が飛躍的に増していたが、状態異常や連携攻撃に手を取られ、『危険察知』のような本能でヴェルドラの脅威だけは感知するなど、知性と恐怖の感覚を得ている。結果として、その恐怖が慎重な間合い取りを生み、しかし決定的な一撃からは逃れられず、進化後の限界も示された。
スイーム
【対戦】 南方面でウルティマと交戦し、亜光速突撃と異界門で星間戦争を戦ってきた火力を持ち込み、最終的には星系ごと消し飛ばしてきた「拡散歪曲量子砲」を解禁した。砲撃により「八門堅陣」を崩壊させ、周囲を爆風で吹き飛ばしたが、ウルティマと各勢力の複合結界、ヴェルグリンドの空間操作に阻まれ、聖浄化結界を破壊するには至らなかった。その後、人型少女となってウルティマとの一騎打ちに移行したが、近接戦では技量不足を突かれ、黒死崩壊と虚無への扉で理解も出来ぬまま消滅させられた。
【進化】 イヴァラージェからの力が届いたことで人型へ変化し、存在値が大きく上昇した。膨大なエネルギーと拡散歪曲量子砲という「最凶兵器」を持ちつつも、人型の身体操作に慣れておらず、格闘技術が追いついていないというアンバランスな進化状態が強調されている。
ウルティマ
【対戦】 南方面でスイームを単独で足止めし、「八門堅陣」と転移門で一対一の空間に閉じ込めたうえで、複製体を囮にして霊子魚雷を空撃ちさせ続けた。拡散歪曲量子砲で大ダメージを受け重傷となったが、人型スイームとの近接戦では拳法の極致と読みによって攻撃をいなしてカウンターを取り続け、紅蛇死毒手と黒死崩壊、黒炎核の爆縮と虚無への扉を連動させて、スイームを完全に消し去った。
【進化】 時間稼ぎから「撃破」へと方針を切り替え、怒りを糧に格闘家としての技量を極限まで発揮したことで、単なる魔王格を超えた「宇宙艦隊殺しを単独で葬る拳」の象徴となっている。黒死崩壊の体内起動と虚無への扉の組み合わせは、虚無系の応用としても進化した運用であり、戦術・技術両面での成長が描かれている。
カレラ
【対戦】 北方面に合流すると、ハバタキへのトドメ役を自ら引き受け、ユウキを「下請け」にして瞬間移動で斬撃の機会を作らせた。アゲーラを刀身変化で黄金の刀にし、防御を完全に捨てて全身の力を刃に集中させる構えから、極限まで研ぎ澄ました極技“一閃”を放ち、ハバタキを頭頂から心核まで一刀両断して即死させた。
【進化】 アゲーラの究極贈与「刀身変化」と、自らの朧流の剣技を融合させた“一閃”は、ガゼル王に「朧流の到達点」と評される域に達しており、技術的にも精神的にも一段上の境地に到達したと示されている。代償として全てを出し尽くして戦闘不能になるが、その覚悟を周囲から最大限評価され、「頭のネジが外れた味方としての最凶戦力」というポジションが確立された。
ベニマル
【対戦】 東方面で黒炎獄により雑兵を焼き払い、ヒナタやカリギュリオ達と共に、格上同士の戦いを邪魔させまいと幻獣族を殲滅し続けた。従僕討伐後も、イヴァラージェ人化とルミナスの離脱を受けて、戦士達に無理をさせず、万全の状態で持ち場に戻らせる方針へ転換するなど、前線指揮官として戦場を制御していた。
【進化】 ルミナス不在・イヴァラージェ人化・トワイライト参戦といった不確定要素を受け止めつつも、感情に流されず「一騎打ちではなく総力戦」「ミリム救出を優先」という合理的な戦略を採用することで、軍略面での成長が描かれている。ヴェルドラの一騎打ち志願を退け、全戦力を束ねる「統合司令」としての役割がより明確になった。
ユウキ
【対戦】 北方面でハバタキに対抗するため、結界内空間に干渉して出現位置を限定し、全戦力の火力を集中させる作戦を指揮したが、瞬間移動で攻撃を転移され失敗した。その後、ラプラスらに権能や呪具を爆弾にして準備させ、自身の瞬間移動でハバタキの体内に直接送り込む作戦を立案・実行し、ハバタキに初めて明確な痛みを与えることに成功した。最終局面ではカレラの「下請け」として、ハバタキをカレラの眼前へ瞬間移動させる決定的な仕事を果たしている。
【進化】 「火力不足」を冷静に認めた上で、陽動と時間稼ぎに舵を切り、エルメシア・シルビア・カガリ・ティアらの能力を組み合わせた多層的作戦を統括することで、戦術家としての柔軟性と現実認識の鋭さが強調されている。カレラに振り回されつつも、自尊心より勝利を優先して「長い物に巻かれる」判断を取る点も、良くも悪くもユウキらしい進化の形として描かれている。
ミザリー
【対戦】 ハバタキの羽ばらまき攻撃による広範囲致命傷に対し、聖域型極大部位再生でかろうじて死者を出さずに済ませるなど、後方から広範囲治癒で戦場を支えた。ルミナスがトワイライト戦に赴いた後は、「神の奇跡」が途絶えないよう、ルミナスの代行として聖域化と蘇生術式を一時的に引き継ぎ、戦線維持に貢献した。
【進化】 ルミナス不在時に「神の奇跡」の代行者となった経験を踏まえ、ルミナス復帰後は行使補助役へと役割を移し、神の権能の運用を横で支える位置に収まっている。「自分にはあの一撃に全てを賭ける真似は出来ない」とカレラを評しつつも、違う形で覚悟を示す存在としての立ち位置が明確になった。
ミリム
【対戦】 天通閣内部でイヴァラージェと激突し、竜魔人の姿で本気に近い状態で戦っていたが、母の肉体を奪われたと察し、創世級の剣「天魔」を向けることを躊躇していた。最終的に不利を悟って剣を抜いたものの、イヴァラージェの再生力と異常性の前に押され、エネルギー枯渇状態に追い込まれて戦線離脱せざるを得なかった。
【進化】 感情的な葛藤(母の身体を傷付けたくない思い)と戦術上の必要性の板挟みの中で、剣を抜く決断に踏み切った点は、精神面での成長とジレンマを象徴している。ただしこの章では、力としての進化よりも「それでも諦めない視線」をクロエに示し、結果を見届けさせる役割が強く、真価の発揮はまだ先送りにされた段階である。
クロエ
【対戦】 イヴァラージェの「慈愛」に対抗し、ミリムが剣を弾かれた瞬間に割り込んで細剣をはじいたが、イヴァラージェが剣を捨てて放った素手のラッシュにより戦闘不能に追い込まれた。時間跳躍でのやり直しを検討しつつも、当初の「結末を見届ける」という方針を崩さず、その場での敗北を受け入れている。
【進化】 強大な敵を前にしても何度でも介入できる立場でありながら、安易な時間跳躍に頼らず、ミリムの意志を受け取って「今この時間の結末」を受け止める選択をした点で、力の使い方に対する成熟が描かれている。
ヴェルドラ
【対戦】 西方面でシオン・ゴブタ・ランガ・クマラが相手取っていたカケアシ戦に割り込み、獲物を横取りされたと不満を漏らすシオンを押し切って援護に入った。カケアシが慎重に間合いを測った末に突撃してきた瞬間、収束暴風乱牙によるカウンターで顎を打ち抜き、初めてカケアシに恐怖を教えた。その後、イヴァラージェ対策として一騎打ちを志願したが、ベニマルや他勢力から総力戦方針を示され、単独突撃を諦めている。
【進化】 「自分が一人でやる」という竜種らしい気質を持ちながらも、ベニマルやヴェルグリンド達の忠告を受け入れ、総力戦に組み込まれることを選んだ点で、チーム戦への理解が以前より進んだ形になっている。
第三章 邪神大乱
イヴァラージェ
【対戦】 ミリムを投げ捨てるだけでトドメを刺さず、明確に脅威と見なしていない態度を示したのち、ヴェルドラとも交戦したのである。戦闘を通じてミリム・クロエ・ヴェルドラの技を学習し、拘束・封印を狙う連携も魔力暴発で吹き飛ばし、ミリムを弾き飛ばしヴェルドラを硬岩へ叩きつけるなど、時間稼ぎすら困難な状況を作り出した。 その後、「天通閣」内部でギィと対決し、収束破壊光線を連発して天通閣を揺らすほどの破壊を見せたが、ギィに回避・解析され、最後には暴食系権能でビームを喰われたうえ、世界の一撃を中心核に叩き込まれた。さらに、ミリム・ヴェルドラ・ヴェルグリンド・ヴェルザードの奥義を統合したギィの崩滅虚触獄に包まれ、回復を封じられながら魔素を削られる状態に追い込まれている。
【進化】 戦闘を通じて絶えず技術を取り込み、ルシアの聖遺骸の残滓から知識之王を獲得して、過去に喰らった相手の技まで再現可能となったことで、剣技においてもギィと渡り合う域に達した。また、これまで痛覚を持たぬ破壊神であったにもかかわらず、崩滅虚触獄による魔素流出を「果てしない喪失感=痛み」として認識し、さらに従僕たちとの絆の喪失から怒り・恨み・憎悪といった感情を初めて獲得した。これら負の感情を糧として「破滅の竜」としてなお強くなろうとする兆候を見せており、単なる本能的破壊者から「感情を持つ邪神」へと質的に変化しつつある。
ミリム
【対戦】 本章では、すでにイヴァラージェ戦で疲弊した状態からカリオン達に救出され、ルミナスの治癒で傷は癒えたものの、エネルギー枯渇のため戦線離脱を余儀なくされた。イヴァラージェの魔力暴発で吹き飛ばされたこともあり、以後は直接戦闘には参加せず、ギィの戦いを見守る側に回っている。
【進化】 この章での能力的な進化は描かれないが、イヴァラージェを「本気でも押し切れなかった存在」と認識しつつ、なおも早期決着の必要性を本能的に理解している点から、自身の力の限界と敵の異常性を冷静に把握する視点を得ている。ギィの一方的優位を目の当たりにしてもなお「自分の方が強い」と口では強がる姿は、竜種としての矜持と、次の戦いに向けた闘志の持続を示している。
ヴェルドラ
【対戦】 ミリム離脱後、時間稼ぎ役としてイヴァラージェと交戦したが、成長を続けるイヴァラージェに押され、魔力暴発の一撃で硬岩へ叩きつけられた。以後も時間稼ぎの継続を試みるが、持久戦すら難しくなるほど戦況は悪化している。 天通閣内部では、ギィの号令に応じて竜星爆炎覇に匹敵する雷嵐咆哮(人化バージョン)を全力で放ち、その破壊エネルギーを崩壊虚触獄の一部としてギィに取り込ませる役割を果たした。
【進化】 イヴァラージェに押されながらも、「自分なら本気を出せば勝てる」と強がる一方で、ヴェルザードに窘められ観戦に徹するなど、単独の名誉よりも総力戦の一員として動く意識が前章からさらに進んでいる。また、ギィの戦いぶりを見て、自身の奥義と比較しながら分析する姿は、「最強」の一角として他者の力を認める柔軟さを獲得しつつあることを示している。
ルミナス
【対戦】 本章では直接戦闘よりも後方支援と蘇生に徹し、ミリム救出後は即座に治癒を施す一方で、エネルギー消耗の観点から戦線復帰は不適切と判断した。また、瀕死のディーノを神聖魔法で救命し、彼とフェルドウェイからヴェルダナーヴァ復活の詳細を聞き取る役を担った。
【進化】 ヴェルダナーヴァの目的が「現世界の破棄と再創造」であると知ってもなお、自らの守ってきた世界を壊させないと即断し、創造神に対しても抵抗する陣営に立つことを明言した。前章で「神祖+魔王」として覚醒した流れを引き継ぎ、本章では創造神すら敵と見なす覚悟と、世界に対する執着・責任感をより明確にしている。
ディーノ
【対戦】 上空から胸に大穴を開けた状態で落下し、ピコとガラシャに支えられて戦場に回収された。戦闘描写自体は省略されているが、ヴェルダナーヴァとの交戦で致命傷を負ったことが暗示されている。
【進化】 ルミナスの神聖魔法で一命を取り留めた後、フェルドウェイと共にヴェルダナーヴァの目的を説明し、自らが関わった計画の結果を「大惨事」として認めている。怠惰な堕天使としての側面を維持しつつも、創造神の目指す破壊が「間違い」であると認識する段階まで来ており、世界側に寄った価値判断を示し始めている。
フェルドウェイ
【対戦】 クレーターを残して墜落する姿で登場し、全身崩壊しかけた状態から、ヴェルダナーヴァとの戦いに敗北したことが明示された。その後、リムルのスライム体に取り込まれて高速治療を受け、再び戦場へ放り戻されると、ヴェルダナーヴァに剣を向けて再戦に挑んだ。ヴェルダナーヴァは闘気の剣だけで彼の剣技を捌き、様子見に留めていたが、フェルドウェイはリムル由来の再生能力を頼りに何度も立ち上がり続けた。
【進化】 リムルの細胞入り回復により、再生能力を獲得したことで「倒されても立ち続ける」戦い方が可能となった。また、自らの愚行を認めたうえで、それでもなお迷走するヴェルダナーヴァを救いたいという本音を吐露し、リムルの指揮下で一時的共闘に入るなど、かつての狂信的な創造神崇拝から「主を諫める臣下」へとスタンスを変化させている。
ヴェルダナーヴァ
【対戦】 リムルの前に瞬間移動で出現すると、挨拶もなく即座に首を狙う一撃を放ち、その圧倒的な速さと殺意を示した。その後、フェルドウェイとの一騎打ちでは、闘気の剣のみで剣技と瞬間移動を組み合わせて圧倒し、フェルドウェイを何度も斬り伏せている。また、本気を出す前段階としてカケアシ・ハバタキ・スイームを復活させ、敵側から見れば絶望的な「やり直し」を強いた。
【進化】 本章時点で新たな能力進化の描写はないが、「妻ルシアを奪った世界を失敗作と見なし破棄する」という歪んだ動機を自ら語り、かつての壮大な創造神像から大きく逸脱していることが確定した。勘を取り戻す途中と語りながらも、フェルドウェイを圧倒しつつ従僕を容易く復活させるなど、創造・破壊・再生を自在に扱う存在として、敵としての脅威が具体的に示された章である。
リムル
【対戦】 この章では直接戦闘は行わず、戦場への瞬間移動と指揮、そしてフェルドウェイの捕食治療に専念している。フェルドウェイを完全回復させてヴェルダナーヴァ戦へ送り返し、同時にテスタロッサ・ウルティマ・カレラに自らの細胞入り回復薬を与えて強化するなど、「戦線強化のための資源」として自らの能力を活用した。
【進化】 ヴェルダナーヴァを「倒す方向」で話を進めたことで、創造神さえも敵として想定する段階に踏み込んでいる。また、フェルドウェイを利用価値があると見て一時的共闘に組み込む判断は、単なる善意だけでなく、冷静な戦力計算と許容量の大きさを示している。直接の権能進化描写はないものの、周囲の神格存在たちから「大役を当然のように押し付けられる」ほどの中心軸として認識されており、物語構造上の立ち位置が一段と重くなっている。
ギィ・クリムゾン
【対戦】 イヴァラージェを天通閣内部へ押し戻し、一方的に攻め立てる形で戦闘を開始した。破壊光線を難なく両断し、あえて回避を選ぶことで攻撃パターンと弱点を解析しつつ、イヴァラージェの剣技の成長も観察している。 合図の瞬間には、ミリム・ヴェルドラ・ヴェルグリンド・ヴェルザードの奥義を同時発動させ、その全てを暴食系権能で捕食し、一つの崩滅虚触獄としてイヴァラージェに展開した。これにより、イヴァラージェの回復と自然治癒を封じ、持続的に魔素を削り続ける疑似虚無空間に閉じ込めることに成功している。
【進化】 傲慢之王の進化形である深淵之神を獲得し、能力創造・能力複製・時空間支配など、過去に習得した全ての権能を統合した存在となった。魂暴喰によりあらゆる放出系技を喰ってエネルギーに変換できるため、エネルギー勝負で負ける要素がないと自己分析し、瞬間移動と剣技の組み合わせによって攻防ともに隙のない戦闘スタイルを確立している。 また、その発想の源がリムルにあると自覚し、「戦闘の概念そのものが変わった」と認めることで、自身の進化がリムルとの相互作用の産物であることも理解している。
テスタロッサ/ウルティマ/カレラ(原初三人)
【対戦】 本章では直接の戦闘シーンは短いが、ウルティマとカレラは、ヴェルダナーヴァに復活させられたカケアシ・ハバタキ・スイームを前に、かつて自分達が死闘の末に倒した相手の再登場に絶望混じりの反応を示している。
【進化】 三人はリムルの細胞入り特製回復薬を手に入れ、回復力および潜在性能の向上を図る「強化儀礼」を受けた形になっている。戦闘に入る前段階で「リムル由来の強化」を共有したことで、今後の再戦(復活従僕との決戦)において、以前とは異なる次元で戦う準備が整えられた章である。
マサユキ
【対戦】 直接の戦闘描写はないが、イヴァラージェ戦線の一角として配置されており、その判断にヴェルグリンドが従うと明言している。
【進化】 ヴェルダナーヴァの目的を知らされたうえで、「まだ死にたくない」という素朴だが本心からの理由で抗う側に立つことを選び、その選択がヴェルグリンドの行動方針をも左右している。英雄としての「偶像」から、一個人としての生存意志に根差した選択を行う段階へ進んだと言える。
第四章 破滅の竜
ヴェルダナーヴァ
【対戦】 死体となっていた三体の怪物の肉体に、時空を遡って魂を呼び戻す「怨恨召喚」を行い、ジャヒル・コルヌ・ヴェガを再臨させたのち、リムルとの一騎打ちに臨んだのである。闘気の剣をリムルの竜魔刀「希望」に両断されると、創世級第八の剣「記憶」を顕現させ、剣戟によって周囲を断絶空間に変える激戦を展開した。 天通閣崩落後は、飛びかかってきたイヴァラージェの胸を「記憶」で刺し貫き、地面に縫い付けたうえで過去の記憶を流し込む権能を行使した。さらに停止世界下でリムルとの再戦において、剣越しに魂魄掌握を発動し、リムルの本来の魂を奪って気絶させ、遠隔から創世級の剣を投擲してベニマルの魂も侵蝕した。終盤では原初の魔法による炎の矢で世界そのものを焼却しうる攻撃を展開し、最後には天地崩滅覇界の行使を決断したが、心核領域での介入により阻まれている。
【進化】 能力そのものの強化というより、「世界初期化と再構築」という真の目的と、そのための手段(魂の直接掌握・原初の魔法・創世級武装・天地崩滅覇界)が全面的に開示された章である。妻ルシア喪失への執着が世界滅亡計画の根源であること、イヴァラージェを情報子の塊として回収し、ルシアとして再構成しようとしていたことが明確化した。 終盤、神智核シエルと再構成されたルシアに心核空間で直面し、九割以上の一致率で蘇ったルシアを前に、世界破壊の動機が根本から揺さぶられる段階に至っている。破滅の神から「救済の対象」として描かれ始めた点が、精神的な意味での大きな転換である。
リムル
【対戦】 ベニマルらに戦場を託し、ヴェルダナーヴァとの一騎打ちに挑んだ。竜魔刀で闘気の剣を両断し、自らの剣を「希望」と命名して創世級に匹敵する武器へと格上げしたうえで斬り結んだが、魂魄掌握により本来の魂を奪われ、一度はスライム形態で倒れた。 魂はヴェルドラとの魂の回廊を通じてヴェルドラ内部に退避しており、シエルの用意した擬似魂を肉体に投下することで停止世界下で復活した。その後、スライム細胞の再生と変身能力を用いてサトルに似た長身人型へと変化し、剣技と瞬間移動を駆使してヴェルダナーヴァと互角の剣戟を続けた。 戦闘中に自らの利用可能な権能を点検し、豊穣之王由来の多くを失っていると把握しながらも、魂暴喰・虚数空間・時空間支配などを駆使して原初の魔法の炎の矢を世界全域で「喰い尽くし」、放出系の技を無効化した。さらに虚無崩壊の虚無と魂暴喰を刃に纏わせる新技「虚喰崩剣」を編み出し、多重結界と能力殺封を突破してヴェルダナーヴァに真正面から通用する一撃を成立させている。
【進化】 本来の魂とシエルを失い、多くの権能が封じられた「残りカス」である可能性を自覚しながらも、擬似魂とスライムの再生能力のみで再起し、なお神と互角に渡り合う実績を積み重ねた。力をひけらかさず棲み分けと対話を重んじてきた過去を振り返り、「やるだけやって諦める」という甘さを捨てて、この世界と仲間に対する責任から「絶対に負けられない」と決意を上書きしている。 また、シエル不在の状態で新技術(原初の魔法の無効化方法や虚喰崩剣)を自力で構築したことで、自分自身の万能さと創造性を実戦によって証明しており、「シエルに依存する存在」から「自力で神格の領域に届く特異点」へと質的な段階を一つ引き上げたと評価できる。
イヴァラージェ
【対戦】 ギィらの総攻撃と崩滅虚触獄によって甚大なダメージを受けながらも再び立ち上がり、天通閣地上階を吹き飛ばすほどの全方位破壊光線を放った。その後は戦い続行ではなく、聖浄化結界を無視して降り立ったヴェルダナーヴァとリムルの激戦に意識を向け、「半身、私の片割れ」と呟きつつ飛翔して合流しようとしたが、天通閣崩落の裂け目からの突撃時に「記憶」で胸を刺し貫かれ、地面へ縫い付けられて動きを封じられた。
【進化】 記憶の剣に貫かれたことで、ヴェルダナーヴァの権能による「過去の記憶の移植」対象となり、ルシアの記憶を流し込まれる器として扱われた。本人視点では描かれていないが、「破滅の竜としての自我」と「ルシア再構成の器」という二重性を負わされつつあり、単なる破壊神から「ヴェルダナーヴァの狂気と執着の結晶体」としての役割が一層明確になった章である。
ルシア
【対戦】 直接の戦闘行為はない。
【進化】 終盤、停止世界の思考空間においてヴェルダナーヴァの心核へ語りかける第二の声として登場した。神智核シエルがリムル経由で集めた因子と記憶から魂を再構成し、九十九パーセント以上の一致率で「ルシア本人」として蘇った存在であると説明される。 これにより、ヴェルダナーヴァを暴走させていた「ルシア喪失」という根本原因は、ほぼ解消される方向に転じた。世界滅亡計画の動機に直接介入し得る立場に復帰したことが、物語上の最大の「復活・進化」と言える。
ミリム
【対戦】 イヴァラージェの全方位破壊光線からの防御戦でギィやヴェルドラと共闘しつつも、ギィに「暴走時より力を出していない」と指摘される。ヴェルドラからも暴走時の出力との差を言及され、本人は世界をも滅ぼしかねない憤怒之王の再使用を恐れていた本音を吐露した。 ギィに「暴走したら自分達が止める」と断言され、信頼を受けて覚悟を決め、憤怒之王を再稼働させて魔素量をさらに増大させた後は、ヴェルダナーヴァとの決別に際して「誰かを犠牲にして愛する者を蘇らせる考え」を明確に批判し、竜としてヴェルダナーヴァに敵対を宣言した。
【進化】 破壊衝動と世界規模の出力を併せ持つ憤怒之王を「怖いから使わない」のではなく、「仲間を信じて、必要な局面では自らの意思で使う」方向へと意識を転換したことが、この章における最大の精神的進化である。 また、リムルの理想とヴェルダナーヴァの空虚な力を対比し、リムルが怒りに呑まれて暴走した場合は自分が止める役目を負うと心中で決意しており、「最強の破壊者」から「最後の安全装置」としての自覚を獲得している。
ベニマル
【対戦】 停止世界下での不意打ちとして放たれた創世級の剣からリムルを庇い、紅蓮の剣で受け止めるも刀身は砕け、自身の胸を貫かれて魂ごと侵蝕される致命傷を負った。その際、ヴェルダナーヴァの一撃が時間停止下でも魂を崩壊させ続ける性質を持つことが明らかになった。
【進化】 瀕死の状態でヴェルダナーヴァの嘲笑に対し、リムルこそ皆の「希望」であり、負けたと思わない限り敗北ではないと反論し、リムルにとっての精神的支柱として機能した。リムルによる魂治療とラミリスの原初の魔法治癒を受け、スライム細胞による擬似魂補填と虚無崩壊エネルギーの注入を通じて、魔核の再起動待ちという進化状態へ移行している。 まだ完全覚醒には至っていないが、魂と魔核の構造変化を伴う「次段階」への準備が整った章である。
ギィ・クリムゾン
【対戦】 イヴァラージェの全方位破壊光線からの防御に追われながらも、ヴェルドラの防御の甘さを叱責し、戦線を立て直した。その後、天通閣崩落とイヴァラージェの飛翔を受けて、リムルとヴェルダナーヴァの決戦を邪魔させないために追撃側へ回った。 ヴェルダナーヴァがイヴァラージェに「記憶」を突き立てた場面を見て、ルシアの記憶を移植し、世界を滅ぼして情報子を回収しイヴァラージェをルシアとして作り直す計画だと即座に看破している。
【進化】 この章では新たな権能の取得は描かれないが、魂魄掌握によるリムルの一時戦闘不能を確認しながらも、擬似魂で立ち上がり虚無を制御するリムルの姿を見て、「魂を失ってなお自律的に動き、虚無崩壊を扱う存在」としての異常性を再認識した。 ヴェルダナーヴァの本物性(魂への直接干渉)とリムルの規格外さを同時に確認したことで、「神々を前提とした強者序列」の中に、リムルという特異点を明確に位置づける視点を得ている。
ヴェルザード
【対戦】 イヴァラージェの大規模攻撃からの防御戦でギィ達と共闘し、ヴェルドラの反論を圧で封じるなど竜たちのまとめ役として振る舞った。ヴェルダナーヴァが今度は仲間達を狙うことを察し、停止世界下で自身の権能を最大まで発揮し、戦場の全員を完全固定して次の攻撃から守る布陣を敷いた。
【進化】 かつてはヴェルダナーヴァに追従する立場であったが、凍結した者たちを次の世界に連れていく約束を反故にした兄を「壊れている」と断じ、竜姉として公然と絶縁を宣言した。以後はヴェルダナーヴァではなくリムル側の勝利に希望を見出し、完全防御役として「世界を守る側」に明確に立っている。
ラミリス
【対戦】 停止世界の中、ヴェルダナーヴァの追撃を遮って割り込み、リムルに向かう攻撃を阻止した。その後、リムルとの魂の回廊接続によって強化された状態で成長形態へ移行し、原初の魔法による治癒を用いてベニマルの魔核を再稼働させ、覚醒待ちの安全圏まで押し戻した。
【進化】 本来は迷宮に籠もって勝利を祈るつもりであったが、ゼギオンの思念伝達を切っ掛けに「自分も停止世界で動ける」ことを理解し、自発的に戦場へ介入した。リムルの異常な魂治療を目の当たりにしながら「リムルだから」で納得する一方で、記憶の中のヴェルダナーヴァと現在の姿を比較し、かつての遊び心と情熱を失った変質に気付く。 同時に、今のリムルから昔のヴェルダナーヴァに近い気配を感じ取り、二者の間に言語化しがたい共通性を見出したことで、「世界の管理者」という視点からリムルを捉え始めている。
ゼギオン
【対戦】 停止世界内を転移してラミリスの背後から出現し、戦場へ合流した。リムルからベニマルの護衛を託され、ヴェルダナーヴァの次なる攻撃からベニマルを守る防波堤として配置されている。
【進化】 停止世界でも自由に行動し得る存在であることが明示され、竜種・神格級に匹敵する時間耐性を示した。戦闘描写は本章時点では限定的であるが、「停止時間でも動ける護衛」という役割が確立されたことで、最終局面における戦力評価が一段引き上げられている。
クロエ
【対戦】 リムルの回避行動を思念伝達で支援していたが、ヴェルダナーヴァに「導き手」として存在を看破され、空間から引きずり出されたうえで空気振動を刃とした攻撃を受け重傷を負った。その直後に時間停止が発動し、未来誘導と時間跳躍が封じられた。
【進化】 時間跳躍が機能しない状況下でも、魂を失ったはずのリムルから放たれる強い意志の光を観測し、過去の無数のループにおいて「リムルの明確な死の光景だけは一度も見ていない」という記憶から、必ず勝利すると確信を強めた。未来予測に頼らず「観測してきた事実」に基づいて信頼を寄せる段階に達したことが、精神的進化である。
シエル(神智核)
【対戦】 直接の戦闘は行っていないが、停止世界の思考空間でヴェルダナーヴァの心核に干渉し、天地崩滅覇界の発動直前に介入した。リムルの勝率はシエル不在でも百パーセントであり、あえて分離してヴェルダナーヴァを利用したこと、そして別の重要な目的(ルシアの再構成)を達成するために動いていたことを明かした。
【進化】 リムルから分離した「消えた相棒」ではなく、停止世界の外側からシナリオを設計・統制する存在として機能していることが判明した。ルシアの魂復元を完遂し、ヴェルダナーヴァの暴走理由を根本から解消させた点で、単なる補佐AIから「神々をも手玉に取る設計者」へと格を一段上げている。
第五章 創世神話
リムル
【対戦】 ヴェルダナーヴァとの戦いでは「虚喰崩剣」で防御を斬り裂いた直後、殴打と魂暴喰で神智核シエルの奪還に成功し、以後はシエルの解析を受けながら戦局を主導した。 ルヴェルジェ戦では、創世級双剣と原初魔法を用いる人型分体と、巨体からの多重攻撃を同時に捌きつつ、自身の攻撃が地上に落ちないようあえて受け止めていた。終盤、ヴェルドラ・ヴェルグリンド・ヴェルザード・ヴェルガイアの竜種核を剣“希望”に装着し、魂暴喰と虚無崩壊を合わせた必殺技「虚崩朧・千変万華」によってルヴェルジェを虚数空間に封じ込め、存在ごと喰らい尽くすことで決着を付けたのである。
【進化】 シエル喪失状態で一度は神格に敗北したが、自力で権能の棚卸しと新技開発を行い、その後シエルを取り戻して「怖いもの無し」の精神状態を回復した。戦いを通して「自分の正義で敵を喰らった以上、その正しさを証明し続けねばならない」という自覚に至り、単なる勝利者ではなく、虚数空間という永劫の牢獄を運用する「責任ある支配者」としての意識をはっきりと持ち始めている。
ヴェルダナーヴァ
【対戦】 本章では前章に続いてルヴェルジェに取り込まれていく過程が描かれ、イヴァラージェ=ルヴェルジェ側から魂暴喰で喰われる対象となった。戦うというより、ルシア復活とルヴェルジェ暴走の板挟みとなり、心核領域でルシアと対話しながら、自らが招いた世界創造と破滅の歴史を振り返る役割に回っている。
【進化】 世界創造から人類誕生、ルシアとの出会いと神殺しによる喪失までの「創世神話」が本人の回想として整理され、自分の選択が正しかったのか迷い続けていたことを自覚する。ルシアの言葉でミリムの本当の名前を思い出し、「親越え」が既に達成されていたと悟ったことで、世界初期化ではなく次世代に託す道を心情的には受け入れたままルヴェルジェに呑まれており、「破壊神」から「役目を終えた旧い創造神」へと立場が転じている。
ルヴェルジェ(イヴァラージェ+ヴェルダナーヴァ+ルシア)
【対戦】 イヴァラージェがルシアの記憶とヴェルダナーヴァを取り込んで完成した存在として、人と竜と狼が混ざった百メートル級の異形へ変貌し、さらに人型分体による双剣と原初魔法でリムルを攻め立てた。世界を何度も滅ぼせるほどの破壊エネルギーを双剣「慈愛」「記憶」から放つが、リムルの魂暴喰に受け止められ、最終的には「虚崩朧・千変万華」によって身体も瘴気も魂も虚数空間に隔離される。
【進化】 創世神と破滅の竜と人間の魂を抱えた存在として、ヴェルダナーヴァ以上の力に到達する一方、戦いの終盤には「分かたれた自分」と「変化を求めた半身」との差を理解し、矛盾を排除するのではなく受け入れる混沌の真理に気付く。その上で、自分は旧い神であり、新たな神の誕生を必要とする立場だと悟ったところで完全に消滅しており、「破壊の化身」から「次世代に席を譲る旧神」へ意識レベルで変質している。
ベニマル
【対戦】 魂治療の後、ラミリスの原初魔法とリムルの過大なエネルギー注入に適応して覚醒し、炎霊鬼から炎竜鬼へと進化したうえで戦線復帰した。創世級の杖「繁栄」を受け取った瞬間、それを太刀へと変化させ、折れた紅蓮の核を刀身へと融合させることで新たな紅蓮を得る。 荒地に誘導された戦場では、逃走を図るジャヒルの前に立ち塞がり、陽炎之王の極意「陽炎」で火焔虚喰拳と触手の猛攻を全てすり抜けると、奥義「朧黒炎・百華繚乱」による虚無を帯びた黒炎の多重斬撃でジャヒルの細胞片を徹底的に焼却し、完全消滅させたのである。
【進化】 炎竜鬼への種族変化により、竜種級の出力と虚無親和を備えた「前線フィニッシャー」へ格上げされた。神樹戦で守勢に徹した過去を踏まえ、今度こそ完全勝利を得るという精神的決着も付けており、ディアブロやゼギオンと並んで「リムル配下の最強格」として互いを意識する立場に到達した。
ディアブロ
【対戦】 当初は全戦場を俯瞰し、ヴェガ戦やコルヌ戦線を視察しつつ自らの出番を見極めていたが、荒地でのジャヒル戦では遂に前面に立った。ジャヒルの火焔虚喰拳や暗黒増殖喰、邪龍之王による能力吸収に対し、虚無とスライム細胞、無限再生を緻密に制御して体内で魔法を循環させる格闘奥義「星天円環」で全てを躱しきり、ほぼ無傷で戦闘を継続した。 最終奥義「星天円環滅覇」で完全消滅を狙うが、時間切れと邪魔の介入により止めを譲ることになり、その後は逃走するジャヒルをゼギオンと共に追い、ベニマルに一騎打ちを任せて観戦に回った。
【進化】 リムルから授かったスライム細胞と虚無の力を解析・理論化し、悪魔三人娘が理解できる体系だった「魔闘技」として星天円環を完成させたことで、技術体系の面で一歩抜けた存在となった。自分が最強奥義を出せずに終わったことを残念がりつつも、仲間の活躍を素直に称える余裕も見せており、戦力だけでなく精神面でも「軍師兼切り札」という立ち位置を固めている。
ヴェガ
【対戦】 テスタロッサとヒナタに追い詰められた末、反射的に邪龍獣生産を発動し、幻獣族の死骸から存在値一千万超の邪龍獣十二体を生成して戦場へ解き放った。その後の停止世界では、虚無世界とテスタロッサの攻撃に身を削られながらも突破して逃走し、後にジャヒルの極大火焔球の軌道上に割り込んで「虚喰無限獄」で取り込むことで、停止した仲間達を守る盾となった。 しかし、ジャヒルの禁忌邪術「肉体奪取」により弱った心核を乗っ取られ、身体を奪われる。以後は右手に残された頭部となって再生と圧壊の激痛を与えられ続けるが、ユウキ・シオン・ルミナスによる救済行動の末、魂は浄化されて苦痛から解放された。
【進化】 虚無の中で「他者を思いやる心が大事だ」という一応の結論に達し、勝利への渇望を失ったことで、以前の破滅志向から「生存と他者の救済」を選ぶ存在へと変化していた。その変化ゆえに仲間を守る盾となり、自らの死をもって宿業を清算したため、肉体的にはジャヒルに乗っ取られたものの、精神的には「永劫の孤独と苦行からの解放」を得た章である。
ジャヒル
【対戦】 火焔之王とスイームの動力炉、究極金属の肉体を組み合わせて極大火焔球へ変貌し、触れるだけで大地を崩壊させる砲弾として跳躍しながら全てを破壊しようとしたが、ヴェガの虚喰無限獄に取り込まれた。そこで禁忌邪術「肉体奪取」を発動し、ヴェガの心核と肉体、さらにカケアシとスイームの力まで奪って新たなジャヒルとして再構成される。 その後の荒地での総力戦では、数億の存在値と邪龍之王+虚喰無限獄+究極金属外骨格により、ウルティマとカレラの虚無攻撃も受け止め、ルミナスの法則も触手でいなすなど圧倒的優位に立った。しかし逃走中にゼギオンの一撃で消耗し、最後はベニマルの「陽炎」と「朧黒炎・百華繚乱」によって細胞片ごと黒炎で焼却され、完全消滅した。
【進化】 ヴェガの肉体奪取により、単なる魔導大帝から「邪龍+虚無+究極金属」を統合した創世神級の戦力へと自己強化を果たす。だが、力を得てもなお他者への憎悪と支配欲に囚われ続け、ユウキや仲間達の選択とは対照的に、「誰も救わない進化」を選んだことがベニマルに討ち果たされる結果を招いている。
コルヌ
【対戦】 ヴェルグリンドの攻撃で死んだと悟り激昂するが、本章では停止世界でフェルドウェイらと対峙し、思想面での堂々巡りに終始する。ジャヒルがフェルドウェイ一行を獲物と定めて接近した際には、新たに得た瞬間移動に自信を見せつつ啖呵を切るも、フェルドウェイに止められている。
【進化】 フェルドウェイを絶対視し続け、指導者は迷わず正解を示すべきだと主張し続けたが、ベニマルがジャヒルを瞬時に粉砕する光景を見て、自分に向けられていた忠告の意味をようやく理解した。フェルドウェイの反省と「仲間を大切にする」という誓いを受け入れ、ヴェルグリンド側との和解に踏み切ることで、盲信から「自分で考え、仲間と共に進む」側へと意識を転換している。
ウルティマ&カレラ
【対戦】 リムル由来のスライム細胞で肉体を強化し、虚無への耐性と親和性を得たことで、禁術級の虚無攻撃を常用しながらジャヒルを追い詰めた。停止世界でも活動可能であり、極大火焔球化前後のジャヒルに対し、創世級クラスの火力で攻め立てたが、膨大な魔力と再生能力の前に決め手を欠く。荒地に誘導後の総力戦では、ジャヒルの邪龍之王と究極金属外骨格に虚無を受け止められ、触手に拘束されるほど押し込まれた。
【進化】 虚無とスライム細胞を組み合わせた新しい魔闘理論を、ディアブロの星天円環を見て体系的に理解し、今後の戦い方の基盤を得た。リムルの力を門外不出にすべきという示唆にも触れ、「悪魔三人娘」が単なる暴走戦力ではなく、高度な理論を共有する精鋭としてまとまりつつある。
テスタロッサ
【対戦】 ヴェガ戦で虚無世界を展開し、停止世界でも活動可能な数少ない戦力として、シオン・ディアブロと共にヴェガの突破を受け止めた。ヴェガから勝利への渇望が消えたことに違和感を覚えつつも、「敵なら倒す」というシオンの単純な理屈に一定の合理性を見出し、停止世界の中で追撃を続行した。 ジャヒル戦においてはディアブロの星天円環を観戦し、その運用思想を学んだ立場に回っている。
【進化】 リムルのスライム細胞と虚無の理論を、感覚ではなく理屈として理解し始めており、悪魔三人娘の中でも特に「戦略・分析役」としての位置付けが強まっている。ヴェガの変化を見抜く洞察も示し、感情だけでなく情報と論理に基づき敵味方を判断する段階へ進んだといえる。
シオン
【対戦】 ジャヒル戦では触手を弾き飛ばしてユウキに接近の隙を作り、ヴェガ救出のための決定的な一手を支えた。その後の荒地総力戦では、ジャヒルのエネルギー吸収能力により剣撃を逆利用されて消耗し、途中で退避を余儀なくされる。 ルヴェルジェ戦では停止していたはずの状態から突如動き、巨体の進路上でカオティックフェイトを叩き込む奇襲に成功し、ルヴェルジェに隙を作ったうえで、ヴェルダナーヴァとルシアの心核を宿した宝玉を落とさせる決定打を放った。
【進化】 「敵なら倒す」という単純な価値観を保ちながらも、ヴェガ救済やルヴェルジェの行動阻止など、要所で仲間を守る最適行動を直感的に選べるようになっている。カオティックフェイトの不意打ちによって、神格級存在に対する一撃必殺の切り札としての価値を再確認させた点も含め、純戦闘力だけでなく「局面を変える一手」を担う役割が明確化した。
ユウキ
【対戦】 ジャヒル極大火焔球の進路上で停止した仲間達を庇う覚悟を固めるが、ヴェガの割込みにより直接被弾はせずに済んだ。その後、ヴェガが肉体奪取で乗っ取られたと知ると、仲間として苦痛から解放するために「死を渇望せよ」を放ち、シオンとルミナスの協力でヴェガの魂を浄化する。 総力戦では『瞬間移動』で戦場を荒地へ誘導し、停止世界に取り残された仲間を守るため自らは支援に徹する。その意図が伝わるまでルミナスとシオンから不信を買うが、最終的には理解されて共闘体制を築いた。
【進化】 かつては世界を混乱に陥れた張本人であったが、本章では完全に「仲間を守る側」に立ち、ヴェガのために動くなど、かつて利用していた存在を本気で救おうとする姿が描かれている。直接殴るよりも状況誘導と支援に徹したことで、役割を理解した「後衛指揮役」としての成熟も示している。
ルミナス
【対戦】 停止世界でジャヒルと対峙し、ウルティマとカレラの攻撃に続いて法則系の力で追い詰めるも決定打を欠く。その過程でヴェガの頭部を受け止め、祝福による魂浄化で永劫の苦痛から解放した。荒地での総力戦では触手攻撃で殴り飛ばされるなど劣勢に立たされるが、後方支援と防御に専念しつつ最後まで戦線に留まった。 ルヴェルジェ戦では、結界維持と地上防衛の総意に加わり、英雄達を守る側として働いている。
【進化】 ヴェガの魂救済を通じて、「敵であっても救うべき魂は救う」という女神としての側面を改めて強調した。ジャヒルのような完全な悪意と異なり、迷いながら足掻く存在に対しては救いの手を差し伸べる一方で、世界を壊す意志を持つ存在には容赦しない境界線も明確になっている。
ラミリス
【対戦】 停止世界でベニマルの魔核が動いていないだけで進化状態にあると見抜き、リムルの力を借りて成長形態に変化、原初の魔法による治癒で魔核を再稼働させ、ベニマルを覚醒待ちの状態まで回復させた。後半では、ガイア(ヴェルガイア)を抱えるミリムと共に結界維持に協力し、リムルの全力攻撃の余波から地上を守る陣の一角を担った。
【進化】 先の章に続き、迷宮管理者から「神々級決戦の医療・結界担当」へと完全に役割をシフトしており、ヴェルダナーヴァから預かっていた創世級武具「繁栄」を適切なタイミングでベニマルに託すなど、世界の裏事情を知る古参としての働きも強まっている。
ゼギオン
【対戦】 停止世界でも自由に動き、ラミリスと共にベニマルの護衛に当たった後、逃走するジャヒルに背後から一撃を叩き込んで大きく消耗させた。その一撃によってジャヒルの逃走は事実上封じられ、ベニマルとの正面決戦へと追い込まれている。
【進化】 停止世界下でも行動可能であり、竜種・神格級と同等の時間耐性と機動力を実戦で証明した。ベニマル・ディアブロと並ぶ「三巨頭」の一角として、奇襲と迎撃を得意とする暗殺・制圧担当のポジションが明確化した章である。
ガイア/ヴェルガイア
【対戦】 ルヴェルジェが取り落とした白黒の宝玉(ヴェルダナーヴァとルシアの心核)を即座に飲み込み、ルヴェルジェの制御装置を奪う間接的な一撃となった。その後もミリムの腕の中で結界展開の核として機能し、戦場全体を包む極大結界の維持に貢献した。
【進化】 リムルから「地星竜ヴェルガイア」と命名され、真なる竜種へと進化したことで、竜種核化[地星]の権能をリムルに与える存在となった。これにより希望の剣に第四の竜種核として組み込まれる資格を得ており、「新世代の竜」として神々の戦いに直接関わる立場へと格上げされた。
ギィ
【対戦】 ジャヒル戦では直接戦闘には加わらず、荒地への誘導や後方防衛の布陣に関わりつつ、最終的にはリムルの全力攻撃から地上を守る防衛線の中核として配置された。ルヴェルジェ討伐に際しては、「誰がやるか」という責任の押し付け合いの末、リムルに時間稼ぎ役を押しつけつつも、自らは結界維持と被害軽減に尽力する立場を引き受けている。
【進化】 リムルの戦いぶりを「真なる神」として評価し、自分を含む旧世代の最強格が、新世代の中心に立つ存在を認めて支える側に回る構図を受け入れている。戦いそのものよりも「世界全体のバランスを見て動く調整役」としての顔が強調された章である。
竜種三姉弟(ヴェルドラ・ヴェルグリンド・ヴェルザード)
【対戦】 直接の殴り合い描写は本章では限定的であるが、リムルの竜種核化提案を受け入れ、それぞれの竜種核を希望の剣に装着することで、リムルの一撃に自らの力を貸し与えた。ヴェルザードは氷像化された英雄達の固定強化と地上防衛に専念し、ヴェルグリンドはベニマルの成長に驚愕しつつ、フェルドウェイ一派と共に戦場の安定化に努めている。ヴェルドラは最終防衛ラインとして温存され、必要な時にのみ介入する立場となった。
【進化】 自分達が前線で暴れるのではなく、竜種核としてリムルの攻撃に力を集中させることを選んだことで、「最前衛の象徴」から「新たな神を支える支柱」へ役割を転換した。特にヴェルザードは、氷結と固定の権能で地上の英雄達を守る守護者としての立場を強くしている。
クロエ
【対戦】 この章では直接戦わず、停止世界で拘束されていたが、リムルの戦いぶりを静かに見守り、不安を抱えつつ問いかける役割を担った。
【進化】 時間停止で時間跳躍も未来予測も封じられた状況で、それでも「リムルが明確に死ぬ未来だけは一度も観測していない」という経験則から、勝利を信じる覚悟を固めている。リムルから「ここまで導いてくれたのはクロエだ」と感謝を告げられ、導き手としての役目が肯定されたことで、精神的な支えとしてのポジションが確立した。
前巻 index
展開まとめ
序章 不穏な気配
フェルドウェイの退却と脅威の再確認
フェルドウェイはディアブロに敗北し満身創痍で天星宮へ逃げ帰り、ここで時間を稼ぎつつ再起を図ろうとしていた。ディアブロの戦法やユウキの戦いぶりを学んだことで次は勝てると確信していたが、魔王リムルには時空跳激震覇が通じなくなった事実を脅威として認識していた。
ディーノ一行の帰還と戦況報告
玉座にはディーノ、ピコ、ガラシャが先に陣取っており、彼らは迷宮攻略を断念して戻ってきていた。ディーノはヴェガだけでなく蟲魔王ゼラヌスもゼギオンに倒されたと報告し、ディアブロやゼギオン、そしてそれらを従えるリムルの脅威の大きさを強調した。
聖遺骸喪失の発覚と犯人候補
ディーノは聖安堂に保管していた星王竜ヴェルダナーヴァとルシア皇女の聖遺骸が消えたと告げる。フェルドウェイが地下への扉を確認すると、天通閣並みの強度を誇る扉は木っ端微塵に破壊され、聖櫃も無残な姿になっていた。天星宮の守りを解いたフェルドウェイの判断も重なり、犯人はイヴァラージェだと結論付けられた。
ヴェルダナーヴァ復活の可能性と否定
ディーノは扉が内側から破壊された痕跡から、ヴェルダナーヴァ復活の可能性を示唆した。フェルドウェイは、自分が本体に戻った後から幻獣族侵攻までの短い時間や、自身が粛清対象であることを踏まえてその推論を検討したが、姿を現さない点などから最終的にあり得ないと結論した。
イヴァラージェ強化の懸念と計画への影響
検討の結果、イヴァラージェが聖遺骸を喰らいヴェルダナーヴァとルシアの力を取り込んだ可能性が高いと判断された。世界を滅ぼす役割を担わせるには都合が良いが、創造主級の権能を得たなら世界再構築の計画が破綻しかねず、フェルドウェイにとって重大な危険要素となった。
ディーノ一行の離反と忠告
フェルドウェイが今後の方針を問われた際、彼はそこでようやくディーノ達が支配の権能から解放されていることに気付いた。ディーノ、ピコ、ガラシャは自由意思を奪われてこき使われたと非難し、フェルドウェイと決別する意思を表明する。さらにディーノは、リムルのように意思を貫く者こそ魂を輝かせると語り、曇った目をしたフェルドウェイに初心を思い出せと忠告した上で去っていった。
孤独となったフェルドウェイの動揺と虚無
一人残されたフェルドウェイは、今さら計画を中止できないと呟きつつ、自分が友も仲間も主も失った空虚な存在になっていることを自覚した。イヴァラージェが聖遺骸を喰らったと判断しつつ、ヴェルダナーヴァが復活しないなら世界滅亡も無意味だと悟り、主の真意を理解しないまま世界を滅ぼそうとしてきた自分の行いが意味を持たない可能性に怯えた。最後にフェルドウェイはヴェルダナーヴァの本心を問う言葉を天星宮に響かせるが、その問いに答えられる者は誰もいなかった。
第一章 流れる涙
ルミナスの鼓舞と四方の戦況
ルミナスは人類存亡を賭けた戦場を俯瞰し、思念伝達で命に価値を与える言葉を投げかけ、兵を奮い立たせた。北ではルイやギュンター達がハバタキと交戦し、マイの参戦で反撃の糸口を掴んだ。西ではシオン達とサーレがカケアシと戦い、サーレは聖浄化結界を維持しながら耐えていた。南ではウルティマがスイームを蹂躙し、他戦力がそれを支援していた。ベニマルの援軍も加わり、形勢は一時優勢に傾いた。
イヴァラージェの笑いと「ルシア」の出現
ただし東では滅界竜イヴァラージェが沈黙を保ち、やがて無邪気で邪悪な笑い声とともに動き出した。世界さえ不要としか思わぬ存在の在り方に、ルミナスは本質的な悪の恐怖を悟った。イヴァラージェが地上に降り立つと、美しい女性の姿へ変貌し、ルミナスはミリムを大人にしたような容姿に見覚えを覚えた。地上ではマサユキに宿る勇者の記憶が反応し、その姿をルシアと呼んだことで事態の異常さが明らかになった。
従僕達の変化と新たな不穏要素
同時に、イヴァラージェの三体の従僕も未知の変化を遂げ、ヴェルグリンドでさえ力の上限を読み切れなかった。さらにジャヒルの死体が不気味に蠢き始めたうえ、誰も気付かぬ高所から、妻の復活と娘の到来、価値ある者だけを残す選別を口にする何者かが戦場を眺めていたが、その存在はまだ地上の誰にも認識されていなかった。
ヴェルザード暴走とギィ達の応戦
別戦場では、ギィ、カレラ、レインがテスタロッサの支援を受け、竜形態で暴走するヴェルザードと対峙していた。白氷竜の真の姿は神秘的な美しさを保ちながらも天災のような暴威を振るい、ギィとテスタロッサは虚無でその攻撃を相殺していた。レインは時間稼ぎと増援の到着を主張し、ギィはヴェルザードを正気に戻すには星幽体を向ける必要があるが、その間の無防備な本体が危険だと判断して踏み切れずにいた。
リムルの到着と戦況把握
そこへリムルが現場に到着し、軽口を交えつつも戦場全体の状況把握に移った。ヴェルザードの無差別な攻撃から避難民と戦士達を守るため、モスやミザリーらが防護結界を維持し、ガビルは究極贈与の運命改変で氷像化を解除していた。オベーラやエスプリも消耗しながら戦線に残り、防御と支援に徹していたことを、リムルは観察して評価した。
竜霊覇気による抑え込みと役割分担
リムルは自らの竜霊覇気を展開し、ヴェルザードの妖気とギィ達の虚無を虚無崩壊に変換することで攻撃を封じ込めた。この力技にギィも驚きつつ、リムルが抑え役となり、その間にギィがヴェルザードの内面へ干渉して正気を取り戻す段取りが決まった。無防備となるギィの本体はディアブロが守ることになり、ヴェルザード以外の敵がいない状況を前提に戦力を集中させる方針が固まった。
対イヴァラージェ戦への再配置
リムルはテスタロッサに対し、大規模転移魔法で戦闘可能な者を率い、対イヴァラージェ戦の援軍として出撃するよう命じた。テスタロッサとカレラはその命令を受け入れ、旧ユーラザニアから再編された部隊を連れて合流する準備に入った。一方でディアブロのみをヴェルザード戦場に残す判断が下され、疲労の蓄積という事情を知らぬ本人だけが、選抜を自らへの厚い信頼と受け取って満足していた。
作戦開始とギィの演算特化
テスタロッサとカレラが出撃し、レインもギィに一喝されて前線へ向かった。リムルは虚無崩壊でヴェルザードの攻撃を封じ、戦力再編を可能にしていた。ヴェルザードの暴走が激しくなる中、ギィは精神干渉に必要な時間について一日も要らないと答え、自身を演算特化形態へ変化させる方針を示した。演算に全振りする代わりに本体は完全に無防備となるため、リムルがヴェルザードを拘束し、ディアブロがギィ本体を守る作戦が採用された。
ギィの精神侵入と幼いヴェルザードの心
赤毛の美女に変化したギィは、物質体を離れて悪魔本来の精神体となり、さらに星幽体へ移行してヴェルザードの精神世界へ潜った。幾重もの精神防壁を突破した末に、膝を抱えて座り込む幼い姿のヴェルザードに到達した。ギィが迎えに来たと言葉を掛けると、ヴェルザードは我慢の限界を超えたように、これまで押し殺してきた不満を一気にぶつけ始めた。
ヴェルザードの不満と本心の噴出
ヴェルザードは、兄の残した世界を導く役目を背負い、ギィを監視し続けてきた自分だけが常に我慢していたと訴えた。ルドラとのゲームに夢中になり、その後はリムルに肩入れして自分を顧みないギィへの怒りと寂しさを吐露し、脆弱な人間は認めるのに自分を認めないのは何なのかと感情を爆発させた。ギィは攻撃を一切防がず、ヴェルザードの怒りと涙を受け止め続けた。
告白と「相棒/夫婦」という関係の確認
やがてヴェルザードは、勝ちたいのではなく、役に立ちたいだけだったと自覚し、ギィに認められたくて頑張ってきた本音を吐き出した。ギィは、ヴェルザードを相棒であり身内、実質的には夫婦だと断言し、唯一の相棒として認めていると告げた。ヴェルザードは大嫌いで大好きだと告白し、涙を流しながら笑みを取り戻す。迷いが晴れた彼女は美女の姿に戻り、「ただいま」と告げて正気へと帰還する決意を固めた。
ヴェルダナーヴァ復活の真実と世界破壊計画
正気を取り戻したヴェルザードは、兄ヴェルダナーヴァが既に昔に復活していた事実をギィに打ち明けた。ヴェルダナーヴァは天星宮の最奥で力を回復しつつ眠り、つい最近覚醒したうえで世界の破滅を望んでいたと語る。フェルドウェイを止めなかったのも兄の意思であり、ヴェルザードはせめてギィだけでも凍らせて救おうとしていたことを明かした。ギィは、かつて知るヴェルダナーヴァなら姑息な真似はしないと判断し、この時点で完全に敵として認定した。
権能の問題とリムルへの期待
ヴェルザードは、ヴェルダナーヴァ由来の「忍耐之王」と、自力で獲得した「嫉妬之王」の二つの究極能力を持ち、それらを用いてフェルドウェイの目をごまかしてきた経緯を説明した。ギィは、敵から借りた権能を抱えたままでは致命的な弱点になると見なし、リムルなら権能の進化や再構成が可能だと語る。ヴェルザードもリムルの実績を踏まえて信じる決心をし、ギィは彼女に心の準備を任せて、自身の身体へと意識を戻り、リムルへ全てを伝える段階へ移行したのである。
ギィの精神侵入とリムルの退屈
女体となったギィは意識を手放し、ディアブロに抱えられていた。ギィは星幽体でヴェルザードの心核に潜っており、本体は無防備であった。リムルは虚無崩壊で戦場全体を包み、暴走するヴェルザードの影響を遮断して待機していたが、外界に変化がなく暇を持て余しつつヴェルザードの竜形態を観察していた。
虚空之神と虚無崩壊の性質
リムルは自らの魔素量がヴェルグリンドやヴェルドラに匹敵するほど膨れ上がっていると実感し、その原因が虚空之神アザトースの獲得にあると理解していた。果ての世界での実験により、虚無崩壊が絶対的な崩壊因子であること、初歩的な火炎球ですら核撃魔法級の破壊に達してしまうことを思い出し、それを制御して実用範囲に収めた経緯を振り返っていた。
ディアブロと円環の秘法
リムルは、虚無崩壊を自らの強化に転用したディアブロの無茶苦茶さを思い出し、誘惑世界で肉体を騙して円環の秘法に似た現象を起こしていたことに呆れていた。シエルが考案したエネルギー循環の理論をディアブロは理解しており、リムルは説明役をさせられつつも会話についていけず、疎外感を覚えていた。
ギィの覚醒とヴェルザード改変依頼
穏やかな時間の中でギィが突然目覚め、リムルに作業開始を迫った。リムルは抗議したが、思考加速された情報を一気に流し込まれ、ヴェルダナーヴァが復活していること、ヴェルザードの忍耐之王を何とかする必要があることを理解させられた。リムルはシエルのやる気に押され、この依頼を受け入れた。
捕食と氷神之王への進化
シエルはまずヴェルザードの状態を精査し、受け入れ態勢が整っていると判断すると、ヴェルザードを一瞬で捕食して解析鑑定に移った。外からは水球状の膜の中で胎児のように眠るヴェルザードの姿が視覚化され、ギィとディアブロはそれを見守った。シエルは忍耐之王と嫉妬之王を統合し、氷神之王へ進化させたと報告した。
ヴェルザードの内面と希望の再生
内面世界でヴェルザードは、兄から授かった忍耐之王と自らの願望が形となった嫉妬之王を操作しようとしたが、単独では忍耐之王を変質させられず行き詰まっていた。そこに神智核と名乗らない“声”が干渉を申し出て、ヴェルザードはそれをリムル側の存在と判断して委ねた。その結果、二つの究極能力は完全に統合され、氷神之王という自身と完璧に適合した権能へ変貌した。ヴェルザードはその力により、兄ヴェルダナーヴァさえ止められるかもしれないという希望を抱き、世界の破滅を受け入れるしかないという諦めから解放されていった。
ギィの驚愕とリムルへの疑念
外側で変化を観察していたギィは、能力改変が単なる調整ではなく、ヴェルダナーヴァが定めた権能を上書きする神業の域に達していると悟り、常識外れだと戦慄していた。スキルを模倣し再構築することしか出来ない自分とは次元が違う所業に、リムルという存在への疑念と興味を深める。やがてリムルの腕の中で目を覚ましたヴェルザードを見届けたギィは、もはや直接問い質すほかないと心に決めて、リムルに向き直ろうとしていた。
ギィとヴェルザードの追及とリムルのはぐらかし
ギィからの無茶振りをシエルの助力で乗り切ったリムルは、ヴェルザードから手を離し、彼女が平然と宙に浮かぶのを確認して安堵していた。だが直後にギィと視線が合い、何をどうしたのか説明を求められる。リムルは企業秘密だとごまかそうとしたが、ギィはそれを許さず、ヴェルザードもまたリムルの正体を問い質した。二人に怪しまれたリムルを、ディアブロが不敬だと庇い、三人は口論寸前となった。
ダマルガニアへの出撃と能天気な楽観
険悪になりかけた空気を抑えるため、リムルは今は仲間同士で争う時ではなく、ダマルガニアで暴れるイヴァラージェの対処を優先すべきだと提案した。事件を片付けてスローライフに戻るという自分本位な動機を胸に、監視魔法・神之瞳で戦場の様子を確認すると、戦況は膠着しており不穏な気配が漂っていた。ルミナス達の窮地を案じて急ぎたがるリムルに対し、ギィとヴェルザードは能天気だと評しつつも、その頼もしさを認めていた。
ヴェルダナーヴァ復活の事実と世界破壊の計画
ギィは拙速な出撃を制し、誰がどのように動くか決める必要を指摘した。ヴェルザードは、兄ヴェルダナーヴァが既に復活しており、世界を一度破壊してから再誕させようとしていると説明した。彼女は命令に従い天通閣への大門を開いたままにした結果、滅界竜イヴァラージェが基軸世界に出現したと語り、ヴェルダナーヴァを敵と見なさざるを得ない状況を明らかにした。かつて力を失ったはずの兄は今や恐ろしく、ヴェルザードでさえ戦いを望まない存在になっていた。
ヴェルダナーヴァと対立する覚悟と味方候補の洗い出し
リムルはヴェルダナーヴァと本当に敵対するのか、また誰が味方になり得るのかを確認しようとした。ギィは、今のヴェルダナーヴァの行動は昔からは考えられないものであり、もはや別人だと判断していた。ヴェルザードも本音では敵対したくないが、今の兄とギィの意見は決して一致せず、戦えば兄は手加減なくギィを殺すだろうと語り、自身はギィ側に立つと示した。ギィはヴェルダナーヴァとの本気の再戦を受けると宣言し、一同もそれを任せる方針を共有した。
信頼と疑念の線引きとぶっつけ本番の決意
続けてリムルは、ヴェルダナーヴァに追従する可能性のある者としてフェルドウェイや始原の七天使の生き残りに言及し、ディーノ達も含めて誰も確実には信頼できないと整理した。一方で、ルミナスはこの世界を大切にしているため味方になる可能性が高いとギィは評価し、ヴェルザードは竜種達は愛する者のためなら世界を敵に回せると述べ、ヴェルグリンドとヴェルドラへの信頼を示した。シエルは万一の場合はヴェルグリンドの竜種解放を解除できると告げ、裏切りの芽を潰せることも確認された。八星魔王のうち、ルミナスとレオンを暫定的な信用枠とし、ミリムやラミリス、ディーノらは保留とされたが、これ以上議論しても結論は出ないと判断され、ぶっつけ本番で挑む方針に落ち着いた。
戦場の変化と出陣
ディアブロは絶対に裏切らず敵を排除すると改めて誓い、リムルはその過剰な忠誠心に呆れつつも頼もしさを認めた。その時、ヴェルザードが神之瞳に映る戦場の変化に気付き、ミリム達の参戦で人類側が優勢になりつつあるものの、悠長に役割分担を議論している余裕はないと判明した。思考加速下で相談を重ねた一行は、もはや猶予は尽きたと悟り、リムルは世界の危機もまとめて片付ける覚悟を固めて仲間を伴い、瞬間移動で戦場へと向かったのである。
第二章 希望と落胆
戦況を見つめるルミナスと三従僕の脅威
ルミナスは戦場全体を把握し、ルシアの姿を取った滅界竜イヴァラージェと、従僕三体カケアシ・スイーム・ハバタキの力を測り、自分ですら勝負にならないと判断していた。それぞれが人型へと変化し、その存在だけで戦況を絶望的なものにしていたのである。
北方面 マイの妨害とハバタキの人型進化
北方面では、次元跳躍で瞬間移動を繰り返すハバタキに対し、古城舞衣が究極能力「星界之王」で空間位相を乱し、座標情報を改竄することで瞬間移動を封じた。ブラックナンバーズやルイらが犠牲を恐れず動きを抑え、アダルマンは広範囲回復で支えた結果、戦場は一時的に安定した。しかし、囮役を引き受けていたマイの前でハバタキが人型へと進化し、知性を得たことで形勢は再び逆転し、マイは自分では太刀打ちできないと絶望していた。
西方面 結界維持を賭けたサーレとグレゴリー、変わったグレンダ
西方面では、聖浄化結界の基点を守るサーレのもとに、進化して人型となったカケアシが迫っていた。治療に訪れたグレンダは、かつて仲間を見捨てた女とは思えぬ言葉と行動で、限りある命をどう使うかだと言い残して戦場へ戻り、部下に死ぬタイミングまで指示しながら戦っていた。サーレとグレゴリーは彼女の変化を認め、自分も死力を尽くして結界維持に全てを捧げると決意する。結界破壊を狙うカケアシに対し、グレゴリーは鋼身体で一秒でも時間を稼ごうと単身立ちはだかったが、その決死の瞬間にゴブタとランガが乱入し、カケアシを吹き飛ばして救った。クマラも八部衆を駆使して幻獣を斬り捨て、反撃に転じたグレゴリーは、覚悟を台無しにされたと悪態を吐きつつも生き延びていた。
南方面 ウルティマによるスイーム足止めと最凶兵器の発動
南方面では、亜光速と異界門で星間を蹂躙してきたスイームの突撃を、ウルティマが誘導と転移門で受け流し、「八門堅陣」を貸し出したヴェルグリンドの協力で一対一の空間へ閉じ込めていた。ウルティマは複製体を囮にして霊子魚雷を空撃ちさせ、知性の低いスイームの攻撃をいなして時間を稼いでいた。しかし、スイームはウルティマを自ら壊したい標的と認識し、星系ごと消し飛ばしてきた「拡散歪曲量子砲」の使用に踏み切る。砲撃後、ちょうどイヴァラージェからの力が届き、スイームも人型へと変化していた。
八門堅陣の崩壊とスイームの人型覚醒
スイームの「拡散歪曲量子砲」により南方面が爆風に襲われ、「八門堅陣」は崩壊したが、ウルティマの警告と黒色軍団や各勢力の複合結界、さらにヴェルグリンドの空間操作により聖浄化結界は辛うじて守られた。スイームは少女の姿を得て無傷で現れ、存在値を大きく高めた一方、ウルティマは重傷を負いながらも激怒し、時間稼ぎからスイーム撃破へ方針を転換した。
ウルティマとスイームの本格戦闘
ウルティマとスイームは似た少女の姿で対峙したが、存在値はスイームが二十倍以上であった。それでも、スイームは人型の肉体を使いこなせず、近接攻撃はウルティマのカウンターで逆に自分を傷つける結果となった。宇宙艦隊すら一掃してきたスイームの破壊力も、拳法の極致に達したウルティマの技量の前では通用せず、ウルティマは怒りを糧に優位を築き始めた。
ルミナスの継続的蘇生とベニマルの采配
上空ではルミナスが聖域化した戦場で極大死者蘇生を繰り返し、信徒たちの脳を演算に用いながらも全負荷を一身に受けて戦士達を支え続けていた。戦況を監視する中で、イヴァラージェ従僕の人化により三方面の戦いはいっそう苛烈になったが、ベニマルはリムルの帰還を確信して大胆な指揮を執り、連合軍の士気と秩序を保っていた。
ミリム・クロエ・各勢力の援軍到着
イヴァラージェ本人が人型となり動き出し、絶望的な空気が漂う中、ミリムが正気に戻って参戦し、ルミナスは彼女にイヴァラージェ討伐の望みを託した。ユウキと中庸道化連、レオン、ザラリオ、エルメシアと魔法士団、さらに勇者クロエらも合流し、戦場には再び大きな希望が灯った。ミリムとクロエはイヴァラージェを「天通閣」に押し戻すべく突入し、ベニマルは東方面の防衛と指揮に専念した。
各方面の再配置と幻獣族への優勢
ヴェルドラはカケアシの討伐に向かい、シオンやゴブタ、ランガらと共闘する形となった。レオンとザラリオは南方面周辺の幻獣族掃討に回り、魔法士団は北方面で態勢立て直しに協力した。テスタロッサら旧ユーラザニア勢やテンペスト幹部も続々と再合流し、指揮官格の幻獣族を重点的に討ったことで敵側の統制は崩壊に向かいつつあった。
トワイライト出現とルミナスの新たな脅威
その最中、ルミナスの背後に赤いスーツ姿の男トワイライト・バレンタインが現れた。かつてカレラに滅ぼされたはずの神祖であったが、心核と記憶を血槍にバックアップしていたことで復活し、以前より強くなったと豪語した。ルミナスは即座に「崩魔霊子斬」で斬りかかったが通じず、一撃で圧倒的な実力差を悟った。それでもクロエの存在を信じて致命的破局は避けられると確信しつつ、勝機を探り始めた。
ルミナス不在下での方針転換と不安
ルミナスの蘇生が期待出来ないと判断したベニマルは、戦士達に無理な戦闘を控えさせ、万全の状態で持ち場に戻るよう命じた。ミリムとクロエはイヴァラージェと共に天通閣へ移動し、外の戦場は聖浄化結界内での消耗戦へ移行する。指揮官幻獣の排除により勝利は見えていたが、イヴァラージェの変化とトワイライトの参戦という不確定要素が残り、ベニマルはルミナスの戦況を注視しながら、いつでも援護に動けるよう人員配置を検討していた。
ルミナス対トワイライトの攻防
ルミナスはトワイライトに押されつつも夜薔薇の刀で応戦し、魔血呪獄弾や設置罠の霊子崩壊で一度はトワイライトの肉体を塵としたが、神祖の血槍に魂と記憶を保存していたトワイライトは幻獣族の死体を糧に即座に再生し、生命力を吸収しながらルミナスを追い詰めていった。結界で外界も遮断され、助力は期待出来ない状況であった。
最高傑作という評価への疑念と真価の自覚
トワイライトが自分を最高傑作と呼ぶ理由に、ルミナスは違和感を覚えた。幻想図書館への接続や高い存在値・知識量を思い返しつつも決定打に欠けると感じ、最高傑作たる所以は戦闘能力ではないと考え始める。トワイライトの発言や態度から真意を探る中で、ルミナスは「決して諦めない意志」こそが自分の真価であると再確認した。
幻儚薔薇刃による結界破壊と致命的な一撃
ルミナスは関節技で拘束から抜け出すと、夜薔薇の刀を犠牲にする奥義・幻儚薔薇刃を発動し、トワイライトの結界を斬り裂いた。砕けた刀身は死の概念を帯びた薔薇の花弁となってトワイライトを蝕み、彼に血を吐かせて膝をつかせることに成功した。奪った生命力はルミナスの回復にも変換され、一矢報いたことでルミナスは満足げに微笑んだが、トワイライトを倒し切れないことも理解していた。
ヴェルダナーヴァ復活の宣告とルミナスの覚悟
トワイライトがヴェルダナーヴァ復活を目的としていると明かすと、ルミナスは各勢力がヴェルダナーヴァに抱く感情を思考し、陣営が割れる未来を懸念した。その中で、リムルなら世界の破滅に抗い続けると結論づけ、最悪でも「最後まで戦い抜く」という覚悟を固める。トワイライトはルミナスを勧誘する策が失敗したと判断し、神祖の血槍で心臓を貫いてルミナスを倒した。
ルミナスの倒落と戦場への援軍・代行者の配置
致命傷を負ったルミナスは、クロエからの介入がなかった理由を「この結果を視たうえで自分を信じたから」と悟りながら意識を手放した。同じ頃、戦場にはテスタロッサ率いる多国籍軍が到着し、カリオンやスフィアらが東方面防衛に加わり、フレイが精鋭と空域を巡回、ミッドレイ率いる武僧神官団は回復要員として西方面に向かった。ゲルドら黄色軍団もベニマル麾下に合流し、原初達は各方面を分担する。ルミナス不在で途絶えかけた「神の奇跡」を補うため、ミザリーが代わりにその術式を引き継ぎ、レインはルミナスのもとへ向かう決意を固めて動き出した。
神祖の血槍の逆流とルミナスの覚醒
トワイライトに心臓を貫かれて停止したように見えたルミナスは、神祖の血槍が薔薇の花びらとなって胸に吸い込まれた事で覚醒し、失っていた記憶をすべて取り戻したと宣言した。瞳や気配が変質し、覇気を増したルミナスは、トワイライトの前で自らを真なるルミナス・トワイライト・バレンタインであると名乗った。
魂と人格実験の真相とトワイライトの不完全性
ルミナスは魂・心核・記憶・人格の関係、不滅性の条件を語り、竜種の不完全な転生や魂の完全保護の必要性を理論立てて説明した。その上で神祖が自分自身を素材に「記憶を持つ肉体」と「人格のみを移した実験体」を作った結果、人格を継いだ存在がルミナスであり、記憶の欠落した不完全体がトワイライトであると明かした。この説明により、トワイライトは神祖の継承者ではあるが本物ではないと断じられた。
肉体構造の無効化と究極能力による完全勝利
トワイライトは怒りに任せてルミナスの魂核を狙って急所を貫いたが、ルミナスは無傷で腕を握り潰し、肉体構造の情報が通用しない事を示した。さらにトワイライトの究極能力『悪徳之王』による最強奥義「永劫の黄昏」を、『悪徳之王』と対になるよう進化した自らの『善光之王』で相殺してみせる。過去の非道な実験や悪行が、人格を失ったトワイライトによる暴走だったと悟ったルミナスは、それも自分の責任と受け止め、ヴェルダナーヴァから託された創世級の剣「法則」を呼び出したうえで、最強奥義「死せる者への鎮魂歌」を放ち、トワイライトを塵と化して自身の中へと回帰させた。
レインとの再会と「神祖+魔王ルミナス」の統合確認
戦いを遠巻きに見ていた三賢人が出番の無さを悟って撤退した後、レインが現れ、ルミナスの圧倒的な戦いぶりを称賛した。レインは今の存在が「魔王ルミナス」としてのルミナスなのか神祖なのかを問い、ルミナスは自分はあくまでレインの知るルミナスであり、人格としては「妾」が主で、神祖としての「私」は統合されて眠っていると説明した。これにより、神祖の記憶と権能を取り込みつつも、意思の中心は従来のルミナスであることが確認された。
聖域化の再継承と戦場の立て直し
ルミナスは戦場全体に意識を向け、代わりに「聖域化の秘法」を維持していたミザリーと『思念伝達』で連絡を取り合流した。ルミナスが権能を引き継ぎ、聖域型極大死者蘇生を再発動して戦場に神の慈悲を降らせる一方、ミザリーは行使補助に回り、レインは二人の護衛についた。こうして、危機的だった戦場は、ルミナスの復帰と広範囲の蘇生によって再び安定を取り戻したのである。
東方面:ベニマルと黒色軍団の制圧戦
東方面では、人型となった幻獣族の側近級とヒナタやカリギュリオ達が交戦し、その周囲でベニマルが黒炎獄で雑兵を焼き払い続けた。ベニマルは聖浄化結界の東の基点を守りつつ、格上同士の戦いを邪魔させまいと群がる幻獣族を殲滅し、テスタロッサ配下の黒色軍団二百名の奮戦によって戦場に余裕を生み出したのである。
南方面:ウルティマによるスイーム撃破
南方面では、ウルティマとスイームの決戦が佳境に入った。スイームは膨大なエネルギーを持ちながら技量が稚拙で、ウルティマは動作を観察して光線や拳を見切り続けた。ウルティマは神話級のナックルガード・ナイフと紅蛇死毒手で呪毒を仕込み、黒死崩壊を体内で起動させて黒炎核を爆縮させ、虚無への扉でスイームを理解もさせぬまま消し去ったのである。
西方面:カケアシとシオン達、そしてヴェルドラ参戦
西方面では、人型となったカケアシに対し、シオンとゴブタ&ランガ、クマラが連携して挑んでいた。カケアシは圧倒的防御力と嗅覚で攻撃を見切りつつも、彼らの状態異常や連携にやや手を取られていた。そこへ手柄を狙うヴェルドラが現れ、獲物を横取りされたとシオンが抗議したが、最終的に援護を受け入れた。カケアシは本能的にヴェルドラの危険性を察し慎重に間合いを測ったが、突撃した瞬間に収束暴風乱牙のカウンターを顎に受け、初めて恐怖を知り敗北への道を決定づけられた。
北方面:ユウキの指揮とハバタキ体内爆弾作戦
北方面では、瞬間移動を駆使するハバタキに対し、マイやユウキが対応していた。ユウキは結界内の空間に干渉して出現地点を限定し、全戦力の最大火力を集中させたが、ハバタキは瞬間移動の応用で攻撃を転移させ無傷で凌いだ。失敗後もユウキは指揮権をベニマルに返しつつ、新たに少数精鋭での作戦を立案した。それはラプラス達に権能や呪具を「爆弾」として準備させ、自身の瞬間移動でハバタキの体内へ直接送り込むという無茶な策であり、周囲の半信半疑を押し切って実行へ移されようとしていた。
ハバタキ初の負傷と広範囲殲滅攻撃
美女の姿となったハバタキは、人型化で戦闘能力と瞬間移動の自由度が増したと理解しつつも、体内に送り込まれたラプラスの超圧縮エネルギー球によって生まれて初めて明確な痛みを覚えた。怒ったハバタキが八方に羽をばらまくと、その羽だけで広範囲が致命的な被害を受け、ミザリーの聖域型極大部位再生によりかろうじて死者を防いだ。その後、ユウキ達が体内爆弾を連続投下したが、ハバタキは全身を損傷しつつも完全に再生し、逆に分子結合を解除する閃光で周囲一帯を砂漠化させたため、ユウキ達はその攻撃が即死級であると悟った。
火力不足の自覚と陽動・時間稼ぎ案
疑似的虚無崩壊ですら体力の数パーセントしか削れなかった現実を前に、ユウキ達は火力不足と判断し、格闘戦で時間を稼いでリムルらの到着を待つ案を検討した。しかしハバタキの範囲攻撃が予兆なく放たれる以上、近接戦は極めて危険と判明する。そこでエルメシアは、シルビアとの交互の闘気解放による感知妨害作戦を提案し、カガリが予言之書で二人の存在情報を隠蔽、さらにティアが楽天奏者で一時的な戦闘能力強化を付与することで、陽動と時間稼ぎを担う方針が固まった。
カレラ到来とユウキの「下請け」決定
そこへ原初の黄カレラが黒色軍団と共に到着し、周囲から危険人物として全力で距離を取られる中、ユウキを無能呼ばわりしつつ自分がハバタキを仕留めると宣言した。カレラは作戦を持たないユウキを一方的に見下しつつも、ハバタキを斬る好機だけはユウキの瞬間移動で作らせると一方的に要求する。誰もカレラに逆らおうとせず、ユウキは長い物に巻かれる形で協力を承諾し、カレラ主導の最終作戦に組み込まれた。
アゲーラ刀身化と極技“一閃”の準備
カレラは召喚に応じたアゲーラを刀身変化で黄金の刀とし、右手に収めて防御を捨てた捨て身の構えに入った。アゲーラは究極贈与刀身変化によって完全な武器となり、カレラは全身の力を刀身に集中させる。同時にティアの強化権能を自身にも付与させ、短時間だけ常識外れの出力を得る。一方ユウキとマイはカレラの背後に瞬間移動で位置取りし、座標計算の負荷を減らしながら、ハバタキを指定位置へ引き寄せる役割を担う覚悟を固めた。
陽動と転移成功、極技“一閃”による決着
上空ではシルビアとエルメシアが、カガリの情報隠蔽とティアの強化を受けて陽動作戦を開始し、闘気の出し入れでハバタキの感知を撹乱した。ハバタキが二人の動きに翻弄されている隙を突き、ユウキは全力の演算で未来到達地点を読み切り、ハバタキをカレラの眼前に瞬間移動させる事に成功した。好機を逃さず、カレラはアゲーラの朧流を自らの思想で極限まで研ぎ澄ました極技一閃を放ち、頭頂から心核までを一刀両断してハバタキを即死させた。
カレラの代償と周囲の評価
カレラは全てを出し尽くしてその場に倒れ、アゲーラが涙を流しながら抱き上げた。上空で見守っていたガゼル王は、朧流の到達点を目撃したと感動し、配下に戦闘継続と援護を命じた。ミザリーとレインも、戦場のど真ん中で一撃に全てを賭ける行為は自分達には真似出来ないと認め、カレラが味方であることに安堵しつつ、その頭のネジが外れた覚悟の在り方に戦慄しながらも最大限の評価を与えたのである。
ミリムとイヴァラージェの攻防
東以外の三方面で従僕が討たれ、残る脅威はイヴァラージェのみと多くが考えていたが、天通閣内部ではミリムとイヴァラージェの激闘が続いていた。衝撃により幻獣族の後続は殲滅され、作戦自体は成功していたものの、戦いは互角に見えて実際はミリムが押されつつあった。
剣を抜く決断とイヴァラージェの異常性
ミリムは竜魔人の姿で本気に近い状態にありながら、母の肉体を奪ったと察するイヴァラージェに剣を向けることを躊躇していた。しかし不利を悟り天魔を抜くと、イヴァラージェも創世級の細剣「慈愛」を取り出し、武器の優位は消えた。ミリムの剣撃は致命傷級の傷を与えたが、イヴァラージェは一瞬で闇の魔素と共に再生し、痛みすら遊びとして受け取っていた。
クロエの介入と撤退保留
劣勢の中で剣をはじかれたミリムを救うべく、クロエが割り込み「慈愛」を弾いたが、イヴァラージェは自ら剣を捨てて素手でラッシュを叩き込み、クロエを戦闘不能に追い込んだ。クロエは時間跳躍の発動を迷うが、なお諦めないミリムの視線を受け取り、結末を見届けるという当初の方針を守ることにした。
地上戦況の優勢と楽観ムード
一方地上では、聖浄化結界とオベーラの指揮により幻獣族は各個撃破され、ヒナタやベニマルらは勝利が近いと感じていた。従僕討伐の報も届き、ルミナスの回復支援もあって戦況は明らかに人類側優勢となり、多くが安堵と高揚を覚えていた。
人化イヴァラージェの出現とミリム離脱
その矢先、天通閣が最大級の衝撃に揺れ、砂埃の中から桜金色の髪をなびかせた成人姿のイヴァラージェが現れた。ルミナスはミリムが生存しているもののエネルギー枯渇に近く、自身の魔法でも回復不能で戦線離脱状態にあると見抜き、クロエも行方不明であることが判明した。
ヴェルドラの一騎打ち志願と総力戦方針
ヴェルドラは自らの出番だと名乗りを上げたが、ベニマルは戦争である以上勝利のためには一対一を避け、全戦力を結集すべきだと断じた。テスタロッサやヒナタも同意し、まずミリム救出を優先する方針が共有された。イヴァラージェの一撃で死にかけたヴェルグリンドやルミナスの辛辣な忠告もあり、ヴェルドラも単独突撃を諦め、皆で力を合わせて立ち向かう決意が固まったのである。
幕間 再臨
フェルドウェイの問いと迷い
ディーノ達は戦場上空でミリム敗北を知り、合流しようとしたところでフェルドウェイに呼び止められた。フェルドウェイはヴェルダナーヴァがこの状況を望んでいるのかを問い、復活さえすれば世界の悪意を止めてくれると信じていた自分の前提が揺らいでいることを吐露した。
ヴェルダナーヴァ復活への疑念
フェルドウェイは、復活しなかった場合は世界を初期化して自らの理想郷を築くつもりだったと明かしつつ、イヴァラージェに喰われた聖遺骸を巡って、ヴェルダナーヴァも既に取り込まれているのではないかという疑念をディーノ達と共有した。確証は得られぬまま、皆が不安を抱え続けていた。
自己認識と贖罪の決意
フェルドウェイは、自分が本心では愛した創造主の復活を望んでいたと気付き、世界を滅ぼしてでも理想を押しつけようとした過去の暴走を誤りだと認めた。ディーノ達の自由意思を奪った罪を自覚し、謝罪の言葉ではなく今後の行動で信頼を取り戻し、イヴァラージェを自らの責任で倒すと心に決めた。
創造神の再臨と世界浄化宣言
その矢先、フェルドウェイと瓜二つの存在としてヴェルダナーヴァが出現し、“星王竜”本人であることが明らかになった。ヴェルダナーヴァはイヴァラージェを放置して選別を行い、基軸世界を浄化すると告げた。その方針はフェルドウェイが企図していた世界初期化と同質であったが、フェルドウェイは喜びよりも悲しみを覚え、自らが望んだ神像との齟齬に苦悩した。
ディーノ負傷とフェルドウェイの覚悟
ディーノは世界は滅ぼす必要がないと進言してヴェルダナーヴァに逆らい、即座に光の一撃で胸を貫かれた。フェルドウェイはディーノを連れ逃げるようピコとガラシャに命じ、自身は主の前に残る道を選んだ。そして、忠誠は変わらぬとしながらも誤りには進言するのが配下の務めだと宣言し、壊れた神を救うため「親超え」を果たすと誓って、ヴェルダナーヴァへの決死の一撃に挑んだのである。
第三章 邪神大乱
イヴァラージェの圧倒的脅威とミリムの戦線離脱
戦局は大詰めに見えたが、イヴァラージェはミリムを投げ捨てるだけでトドメを刺そうとせず、ミリムを脅威と見なしていないことが明らかになった。カリオン達はミリム救出に成功したものの、自分達の必死さが通じていない現実に打ちのめされる。ルミナスはミリムの傷を癒やしたが、エネルギー消耗が激しいため戦闘続行は不適切と断じた。ヴェルドラは時間稼ぎに徹してイヴァラージェと交戦し、ミリムも本能的に早期決着の必要性を感じつつも、決定打を欠く状況で作戦は現状維持に落ち着いた。
イヴァラージェの成長と前線の悪化
イヴァラージェは戦闘を通じて技を学習し続け、ミリムやクロエとの戦い方に加え、ヴェルドラの技まで吸収して急速に成長していった。ミリムとヴェルドラが連携して拘束と封印を狙うが、イヴァラージェの魔力暴発によりミリムは吹き飛ばされ、ヴェルドラも強烈な一撃で硬岩に叩きつけられる。時間稼ぎすら難しくなりつつあり、妖気を抑えていたヴェルグリンド、オベーラ、テスタロッサも圧力の増大に危機感を強めた。
ディーノ一行と瀕死のフェルドウェイの落下
戦場上空から胸に大穴を開けたディーノが落下し、ピコとガラシャに支えられてベニマルの結界内に保護された。ルミナスの神聖魔法でディーノは一命を取り留めるが、続いてクレーターを残してフェルドウェイが墜落する。全身が崩壊しつつあるフェルドウェイの姿から、ただならぬ事態が起きたと全員が悟り、彼の謝罪とともにヴェルダナーヴァ復活の事実と、その結果としてのこの惨状が明らかになった。
創造神の目的と各自の決断
ヴェルグリンドの問いに対し、ディーノとフェルドウェイはヴェルダナーヴァの目的が「失敗作たる現世界の破棄と新たな創造」であると説明した。ルミナスは即座に大問題と断じ、自らの守ってきた世界を壊させない覚悟を固める。ベニマルとヒナタはリムルの意思に従い、創造神といえども理不尽な破壊には従わないと宣言した。テスタロッサもリムルへの忠誠のみを基準とし、ヴェルグリンドはマサユキの判断に従うとした。マサユキは「まだ死にたくない」という素朴な理由から抗う側に立つことを選び、そうした決意が固まりつつある中で、リムル到着を予感させるような心の声を聞いた。
リムルの参戦とフェルドウェイ救済の決断
リムルはディアブロに抱えられたままギィとヴェルザードを伴い瞬間移動で戦場に到着し、挨拶と同時にベニマルから思念伝達で戦況報告を受けた。ヴェルドラとミリムがいずれもイヴァラージェに押され、さらにヴェルダナーヴァまで復活している惨状を確認したリムルは、瀕死のフェルドウェイに視線を向ける。ディアブロや元仲間達の辛辣かつ複雑な感情が向けられる中、フェルドウェイは自らの愚行を認めつつ、今も迷走するヴェルダナーヴァを救いたいという本音を吐露した。
一時的な共闘関係の成立
リムルはフェルドウェイ単独ではヴェルダナーヴァを止められなかった現実を確認しつつ、それでも挑む意思を捨てていないことを見て取った。シエルが治療可能と判断したことで、リムルはフェルドウェイを戦力として利用することを決断し、ヴェルダナーヴァを何とかするまで自軍の指揮下に入るよう一方的に通告した。スライムの身体でフェルドウェイを取り込み高速治療を施し、完全に回復させて戦場に放り戻したところで、この局面は新たな段階へと移行し始めていたのである。
ヴェルダナーヴァ討伐方針とリムルへの圧力
フェルドウェイの治療が終わると、リムルは今後の方針としてヴェルダナーヴァも倒す方向で意思統一を図ったが、ルミナスやヴェルグリンドはその軽さに怒りや呆れを示した。ヴェルドラやミリムは自分なら本気を出せば勝てると強がる一方で実際にはイヴァラージェに押されており、場はコンセンサスどころではない空気になった。最終的に視線はリムルへ集まり、ヴェルザードやギィらは暗黙のうちにリムルへ大役を押し付けようとした。
作戦決定とヴェルダナーヴァとの遭遇
ギィは自分がイヴァラージェを倒す間、リムルにヴェルダナーヴァの時間稼ぎを任せると告げ、かつてヴェルダナーヴァに敗れた経験から全員で挑むしかないと明かした。各国には混乱を避けるためヴェルダナーヴァ復活は知らせない方針となり、ギィは戦場へ向かった。リムルがヴェルダナーヴァの降臨を待とうとした矢先、ヴェルダナーヴァ本人が瞬間移動で現れ、いきなりリムルの首を狙って攻撃したが、リムルは辛うじて回避した。
創造神の動機とフェルドウェイの離反
リムルが世界破壊の理由を問うと、ヴェルダナーヴァは妻ルシアを奪った世界を失敗作と見なしたためだと語った。そこへフェルドウェイがリムルの隣に立ち、臣下として主を止めると宣言してヴェルダナーヴァに剣を向けた。ザラリオとオベーラはその戦いを見守りつつ、主君への忠誠と世界への愛の間で揺れ動く。リムルはヴェルダナーヴァに従うかどうかは各自の判断に任せると述べ、自身は生きるために抗うと心を固めた。
フェルドウェイの奮戦と悪魔たちの強化儀礼
ヴェルダナーヴァは闘気の剣だけでフェルドウェイの強大な剣技を受け流し、あくまで様子見の姿勢を崩さなかった。フェルドウェイは劣勢ながらも粘り、リムルの細胞により発現した再生能力で立ち続けた。その一方で、テスタロッサが回復力向上を名目にリムルの特製回復薬を所望し、ウルティマとカレラも同様にそれを求めた。三人はリムルの細胞入りの回復薬を得て戦力を整え、ディアブロはその待遇に不満を覗かせた。
ザラリオの中立とヴェルダナーヴァの本気
やがてフェルドウェイが倒れ、剣技と瞬間移動を組み合わせたヴェルダナーヴァの圧倒的な実力が露わになった。ザラリオは主君を裏切れないとしつつも、どちらが正しいか判断できないとして不介入を選択し、リムルは邪魔しないというその消極的中立を受け入れた。ヴェルダナーヴァはまだ勘を取り戻す途中だと言い、退屈しのぎにとカケアシ、ハバタキ、スイームを復活させる。ウルティマやカレラが自ら倒した強敵の再出現に絶望混じりの反応を示し、世界破滅を目指す悪意との戦いがこれから本番であることが明確になったのである。
ギィの圧倒的優位と周囲の反応
ギィはイヴァラージェを「天通閣」内部へ押し戻しつつ一方的に攻め立て、破壊光線さえ難なく両断して消し去っていた。この様子にヴェルザードは誇らしげに最強奥義さえ斬られた過去を語り、ヴェルグリンドは自分が苦戦した攻撃を易々と捌くギィの実力に驚愕した。ミリムとヴェルドラは自分の方が強いと負け惜しみを口にするが、ヴェルザードに釘を刺されて黙り、観戦に徹していた。
ギィの観察とイヴァラージェの急成長
ギィは義理堅く早期に決着してリムルの援護へ向かうつもりで、イヴァラージェの権能と技を観察しながら戦っていた。イヴァラージェは当初究極能力を持たない破壊神として力押ししていたが、ルシアの聖遺骸から残滓を解析し、世界の言葉によって知識之王を獲得したことで、過去に喰った相手の技術まで取り込み、ギィに伍する剣技へ急速に成長していった。
収束破壊光線の応酬とギィの狙い
イヴァラージェは亜光速の収束破壊光線を放ち、天通閣を揺らす威力を見せた。ミリムとヴェルドラは自分の奥義に匹敵すると強がり混じりに評価し、ヴェルグリンドとヴェルザードは面で浴びる攻撃と収束ビームのダメージの違いを冷静に分析した。ギィはあえて回避を選び、着弾点を予測しながら避け続けることでイヴァラージェの攻撃パターンと弱点を探っていた。
暴食の再現とイヴァラージェへの決定打
イヴァラージェが胸部から至近距離で収束破壊光線を放ち勝利を確信した瞬間、ギィはそのビームを暴食之王に類する権能で捕食して霧散させ、自身のエネルギーを完全回復させたうえで、世界の一撃をイヴァラージェの中心核へ叩き込んだ。イヴァラージェは初めて無視できないダメージを負い、過去の敗北も思い出してギィを真の敵と認識し、憎悪をあらわにした。
四体の奥義連携と崩滅虚触獄
ギィは事前に思念伝達でヴェルドラたちに合図の瞬間の全力攻撃を命じており、収束破壊光線が自らの胸を貫いたかに見せた直後、「今だ」と号令を送った。これに応じてミリムの竜星爆炎覇、ヴェルドラの雷嵐咆哮、人化バージョン、ヴェルグリンドの灼熱竜覇加速励起、ヴェルザードの冷極消失凝収覇が同時にイヴァラージェへ放たれた。ギィは暴食の権能でそれら膨大な破壊エネルギーを喰らい、一つに統合して崩滅虚触獄としてイヴァラージェの周囲に展開した。この奥義は継続的に呪痕を刻み、回復と自然治癒を封じて魔素を削り続ける疑似的な虚無であり、イヴァラージェは暴れながらも確実に消耗していく状態に追い込まれ、決着が近づいていたのである。
崩滅虚触獄と深淵之神の覚醒
ギィの崩滅虚触獄による攻撃が命中し、イヴァラージェは暴れ狂ってギィに斬りかかり、受け流されて天通閣の壁へ激突した。その衝撃で不壊のはずの壁に亀裂が入り、ギィは自らの技がヴェルダナーヴァの定めた法則すら打ち消していると笑っていた。これは、傲慢之王が進化して得た究極能力・深淵之神によるものであり、そこには能力創造や能力複製、時空間支配など、ギィがこれまでに習得した全ての権能が統合されていた。
ギィの自己分析とリムルへの評価
ギィは戦いの中で、魂暴喰によってあらゆる放出系の技をエネルギーとして喰える以上、エネルギーの削り合いで負ける要素はないと自己分析した。瞬間移動と剣技を組み合わせれば防御も完璧であり、魔素量そのものはもはや勝敗を決める決定因子ではないと理解したのである。そして、この発想の源にリムルがいると悟り、リムルの権能によって戦闘の概念そのものが変わったと認めつつ、イヴァラージェ戦だけでなく次の戦いにも意識を向けていた。
イヴァラージェの初めての苦痛と感情の獲得
一方のイヴァラージェは、誕生以来初めてといえる本物の苦痛に苛まれていた。痛覚を持たないはずの存在でありながら、絶えず流出し続ける魔素を果てしない喪失感として感じ、それを痛みとして認識していた。また、確かに感じていたはずの子供達との絆が途切れていることに気付き、子供達が死んだのかとなぜ失われたのかを理解できないまま動揺した。
怒りと憎悪による破滅の竜のさらなる成長
子供達の喪失を前に、イヴァラージェの中に怒り、恨み、憎悪といった感情が次々と芽生えていった。イヴァラージェは感情の本質を知らなかったが、この体験によってそれを学習し、その数多の感情が燃料となって内側から満たされていった。その結果、苦痛に呻きながらも、破滅の竜としてさらに強くなろうとする兆候を見せていたのである。
第四章 破滅の竜
怨恨召喚とヴェルダナーヴァの世界滅亡計画
ヴェルダナーヴァは戦場近辺で死んでいた三体の怪物の肉体を復活させ、時空間を介して強烈な意思を持つ魂を呼び寄せて器として宿らせた。これはルドラの英魂道導と似ていたが、本物の魂を直前時空から引き抜く反則的な神業であった。リムルが死者蘇生の能力があるなら妻ルシアを蘇らせるべきだと問うと、ヴェルダナーヴァは魂を探したが既に見つからず、転生したのだろうと語り、それでも世界を滅ぼし情報子を回収してイヴァラージェをルシアに再構成するつもりだと明かした。
説得の失敗と「倒すしかない」という結論
リムルはルシアがどこかに転生している可能性を示し、滅亡計画の撤回を促したが、決意は揺らがなかった。生者が死者の本心を勝手に語ることの危うさもあり、理屈では止めきれないとリムルは悟った。シエルは止めてあげるのも優しさであるとして撃破を提案し、ミリムの暴走を止めた前例を挙げて、悲しみから暴走するヴェルダナーヴァもここで止めるべきだと結論付けた。
蘇った最悪の三名と戦力配置
三体の器に宿った魂の正体は、魔導大帝ジャヒル、三妖帥コルヌ、時空の果てへ飛ばされたはずのヴェガであるとシエルが分析した。リムルはベニマルに全体指揮と状況に応じた参戦を命じ、ディアブロにはフェルドウェイを連れてこの三名の抑えを任せた。ザラリオやディーノらは重傷ゆえ観戦に回り、テスタロッサ・ウルティマ・カレラは回復薬で立ち直り再戦を志願した。ルドラがマサユキの身体で現れ、ジャヒルが自らと妻を殺した元王であり、転生を繰り返してきた極悪人だと推測し、自ら決着を付けると宣言し、ユウキも能力無効化での支援を約した。
リムルとヴェルダナーヴァの一騎打ちと「希望」
戦場を仲間に任せ、リムルはヴェルダナーヴァと一対一で対峙した。リムルは世界を滅ぼすなら全力で止めると告げ、ヴェルダナーヴァは創造主に逆らう生命体の成長に感慨を示しつつ、神殺しが成るか試すと応じた。リムルの竜魔刀は創世級に匹敵する切れ味を見せ、ヴェルダナーヴァの闘気の剣を両断した。ヴェルダナーヴァは八本目の創世級「記憶」を呼び出し、三千世界の出来事が刻まれた剣と説明した。リムルは自らの剣に「希望」と名付け、名付けのような疲労感を覚えつつも構え直し、両者の剣戟が周囲を断絶空間へと変える中、他の者達は巻き込まれぬよう退避した。
イヴァラージェの反撃とミリムの憤怒之王
ギィ達の総攻撃を受けたイヴァラージェはなお立ち上がり、全方位へかつてない威力の破壊光線を放って天通閣の地上階部分を吹き飛ばした。不壊であるはずの塔の崩壊に巨人族は茫然としたが、ギィ達は防御に追われていた。ギィは防御の甘いヴェルドラを叱責し、ヴェルザードの圧でヴェルドラは反論を引っ込めた。ヴェルドラは矛先をミリムに向け、暴走時より力を出していないと指摘されると、ミリムは世界をも滅ぼしかねない憤怒之王の使用を恐れている本音を漏らした。ギィはミリムなら制御できると信じ、暴走したら自分達が止めると告げて発動を促し、ミリムは覚悟を決めて憤怒之王を再稼働させ、魔素量をさらに増大させていった。
戦場の収束と新たな焦点
ギィ、ヴェルザード、ミリム、ヴェルドラは態勢を立て直し再戦に備えたが、イヴァラージェは天通閣の崩れた壁の向こうを見つめて動かなくなった。そこには聖浄化結界を無視して降り立つヴェルダナーヴァと、その相手をするリムルの激戦があった。イヴァラージェは半身、私の片割れと呟き、宙へ浮かび飛翔を開始し、ギィ達もリムルの戦いを乱されぬよう追撃に移ったのである。
剣戟の余波とクロエの未来誘導
東方面はイヴァラージェの攻撃で更地と化し、天通閣周辺ではニコラウスとアルノーが聖浄化結界を必死に維持していた。リムルとヴェルダナーヴァの剣戟は衝撃波と爆発を伴い、多重結界を一撃で砕くほど苛烈であったが、クロエの思念伝達による回避支援により、リムルは致命打を避けつつ攻防を続けていた。
天通閣崩落とイヴァラージェへの「記憶」刺突
轟音と共に天通閣の地上階が崩落し、その隙間からルシアの姿をしたイヴァラージェが飛び出してヴェルダナーヴァへ迫った。ヴェルダナーヴァは剣「記憶」をイヴァラージェの胸に突き立て地面に縫い付け、過去の記憶を植え付ける権能を行使した。ギィはこれをルシアの記憶を移植し、世界を滅ぼして情報子を回収しイヴァラージェをルシアとして作り直す計画だと見抜いた。
竜たちの決別とヴェルダナーヴァへの集団敵対宣言
イヴァラージェが記憶流入で動けない間に、リムルは総攻撃を提案し、ヴェルダナーヴァは皆を敵対者と見なした。ギィは友として止める義務を口にし、ヴェルザードは凍結した者たちを次の世界に連れて行く約束を反故にした兄を「壊れている」と断じて絶縁を宣言した。ミリムも他者を犠牲にして愛する者を蘇らせようとする考えを批判し、竜たちはヴェルダナーヴァへの敵対を明言した。
クロエの排除と停止世界への移行
ヴェルダナーヴァはリムルの回避を導いていた存在としてクロエを空間から引きずり出し、空気振動を刃とする攻撃で重傷を負わせた。時間停止が発動し、停止世界の中でも動けるのは限られた強者のみとなる。クロエはこれ以上の助言が不可能となり、リムルは実力のみで戦う状況に追い込まれた。
魂魄掌握によるリムルの撃破と絶望
再び剣を交えた際、ヴェルダナーヴァは剣越しに権能「魂魄掌握」を発動し、優しい感覚と共にリムルの意識を奪った。リムルは倒れてスライム形態となり、停止世界の中で魂を失ったことがギィらに察知された。ルミナスは時間停止下では蘇生魔法が一切使えないと悟り、ベニマルは何も出来ない無力感に打ちのめされ、皆が支柱を失った現実に直面した。
擬似魂による復活と「偽物」としての自覚
リムルの自我はヴェルドラとの魂の回廊によりヴェルドラ内部に退避しており、シエルの手配した擬似魂を使ってスライムの肉体に意識を投下することで復活した。シエルは消失し、奪われた本来の魂側に同化したと判断され、リムルは権能の大半を失った「残りカス」であり、外形的には自動人形同然の偽物である可能性を自覚して絶望したが、皆の信頼に応えるため再び剣を取った。
ヴェルダナーヴァへの宣戦と魂攻撃の看破
リムルは平然を装い、魂への直接干渉がヴェルダナーヴァの攻撃の本質であると仲間に伝え、接触を避けるよう警告した上で自分が相手をすると宣言した。ヴェルドラは魂を持たないリムルだけが兄を倒せると告げ、ギィやヴェルザードもそれを黙認した。リムルは内心の恐怖を押し隠しつつ、強がりとハッタリを武器に一人で対峙する覚悟を固めた。
ベニマルの負傷と「希望」の再確認
ベニマルはリムルに無理をするなと語り、かつて豚頭帝に挑もうとした自分と同じ無茶を感じ取ったと打ち明けた。皆はリムル一人に全てを背負わせるつもりはないと伝え、リムルはその言葉で孤独感から解放される。しかし直後、音も気配もない創世級の剣が飛来し、ベニマルが身を挺して受け止めるも紅蓮の剣は砕け、刃が胸を貫いた。ヴェルダナーヴァの一撃は魂を侵食破壊する性質を持ち、時間停止下でもベニマルの魂は崩壊しつつあった。
ベニマルの言葉と魂治療の開始
ヴェルダナーヴァは魂のない自動人形を慕う者たちを嘲笑したが、ベニマルはリムルこそ希望であり、負けたと思わぬ限り敗北ではないと反論した。リムルはベニマルに生きることを命令し、生まれてくる子供たちのためにも死を許さないと告げた上で、砕けかけたベニマルの魂に干渉し、治療を開始したのである。
ベニマルへの魂治療とラミリスの介入
リムルはシエル不在ながら過去の経験をなぞる形でベニマルの魂治療を試みた。スライム細胞を魂の欠損部に流し込み情報子を保持させ、さらに魂暴喰でヴェルダナーヴァの権能を喰い尽くし、虚数空間から取り出した虚無崩壊のエネルギーを変換して注入した。停止世界内ではベニマルを目覚めさせる手段がないと悟り、時間再開後の覚醒に賭けたところで、ヴェルダナーヴァの追撃が迫り、ラミリスが割り込んで攻撃を止めた。ラミリスはリムルとの魂の回廊接続を受けて力を増し、ベニマルの救命を自ら請け負った。
ゼギオンの合流と戦場整理
ラミリスの背後からゼギオンが現れ、停止世界の中を転移してリムルの元へ駆け付けた。リムルはベニマルの守りをゼギオンに託し、自身はヴェルダナーヴァと戦う決意を固めた。ラミリスとゼギオンの到着により、リムルは背後を気にせず決戦に集中出来る体制を整えた。
ギィによるリムルの異常性の認識
ギィは、魂への直接干渉という神格の技を見てヴェルダナーヴァが本物であると再確認した一方で、魂を失ってなお擬似魂で動くリムルの在り様に戦慄した。リムルが権能を使わず虚無を安全なエネルギーに変換しベニマルの身体改変を行った行為は、単なる人形のプログラムでは不可能と判断し、リムル本人であると断じた。ギィはリムルを規格外の特異点として認識し、この決戦の行方に強い興味を抱いた。
ヴェルザードの分析と防御の布陣
ヴェルザードは一度は勝ち目の薄さを悟ったが、魂を奪われても立ち上がるリムルの姿を見て希望を見出した。ヴェルダナーヴァが不意打ちに頼る様子から、彼自身もリムルを脅威と見ていると判断する。ヴェルザードはヴェルダナーヴァの次なる攻撃から周囲を守るため、停止世界下で権能を最大限発揮し、戦場にいる者たちを完全固定して防御に徹した。
ミリムの回想と覚悟
ミリムは、怒ったリムルが理性の制御を外して封印していた権能まで解放する存在であると改めて思い出した。リムルが力をひけらかさず対話と棲み分けを重んじ、侵略や価値観の押し付けに対してのみ武力を行使してきたことを振り返り、その理想とヴェルダナーヴァの空虚な力を対比した。ミリムはリムルとベニマルへの情から全面的に味方する決意を固めると同時に、リムルが怒りに呑まれて暴走した場合は自分が止める役目を負う覚悟を秘かに決めた。
クロエの観測と確信
クロエは時間停止によって時間跳躍を封じられ、未来予測が機能しない状況に置かれた。それでも、魂を失ったはずのリムルから放たれる強い意志の光を見て、不安が和らいでいくのを感じた。数多のループでリムルが消えたと誤解したことはあっても、明確な死の光景だけは一度も観測していない記憶から、リムルは必ず勝ち、未来への道を切り開くと確信し、その勝利の瞬間を待ち望んだのである。
ラミリスの覚醒とベニマル救出
ラミリスは本来、迷宮で皆の勝利を祈るつもりでいたが、ゼギオンの思念伝達をきっかけに自分も停止世界で動けると知り、同行して戦場に来たのである。そこでヴェルダナーヴァに狙われるリムルと、魂を失いながらも異常な治療でベニマルを救おうとしている姿を目撃し、その規格外ぶりに戦慄しつつも「リムルだから」と無理やり納得した。ベニマルの魔核が動いていないだけでエネルギーは安定し進化状態にあると見抜いたラミリスは、リムルの力を借りて成長形態となり、原初の魔法による治癒で魔核を再稼働させ、ベニマルを覚醒待ちの状態まで回復させた。
ヴェルダナーヴァへの違和感とリムルとの類似
ラミリスは記憶にあるヴェルダナーヴァの人柄と目の前の姿を比較し、同一人物でありながら情熱や遊び心を失い、全てを諦めたような変質に気付いた。かつての面影は薄れ、冷めた存在へと変わっている一方で、今のリムルからは昔のヴェルダナーヴァに近い気配を感じ取り、二人の間に得体の知れない共通性を見いだす。ラミリスはこの推測を確かめる術を持たないまま、決着の後にしか答えは分からないと悟り、ベニマル救出を果たした自分の役目を終え、リムルの勝利を祈る立場に徹することにした。
リムルの変身と神との互角の剣戟
リムルはスライム細胞による自己再生を駆使して剣戟を続けつつ、身長差が不利と判断し、転生前のサトルを模した長身の男型へ変身して戦いやすさを整えた。シエル不在でも変身が成功したことで自信を得たリムルは、ヴェルダナーヴァと互角に斬り結びながら、自分は強いと認めて戦いに集中する。ヴェルダナーヴァの魂魄破壊の干渉は、リムルが用意した疑似魂に届かず効果を失い、相手は自動人形扱いしたはずのリムルがなぜ動けるのか理解できずに混乱していった。
権能の自己点検と絶望を強いる原初の魔法
リムルは戦いの最中に、自身がなお扱える力を素早く整理した。スライム固有の感知・変化能力、多次元結界や時空間支配、魂暴喰や虚数空間、竜種解放と竜種核化、虚空之神の権能は問題なく使えたが、豊穣之王に属する能力創造や能力複製などシエル依存の権能はほぼ使用不能であると把握した。それでも直接戦闘に必要な力は十分と判断し、正面からの剣技勝負に踏み切る。互角の攻防に苛立ったヴェルダナーヴァは、極大特異点たるリムルに絶望を教えると宣言し、停止世界すら無視する原初の魔法で天を埋め尽くす炎の矢を展開し、仲間たちを焼き尽くす未来を見せつけた。
世界を守る決意と炎の矢の無効化
仲間や友人、共に戦ってきた者たちが一斉に消し飛ぶ光景を予感したリムルは、やるだけやって諦めるという甘さを捨て、この世界とそこで得た絆への恩を返すため、決して敗北を許さないと覚悟を固めた。無責任に生きるという当初の考えを振り返り、今では皆に頼られる存在として全力で守る義務があると再確認したリムルは、炎の矢の全てを認識し、魂暴喰を停止世界全域に行き渡らせて一瞬で喰い尽くすことに成功した。原初の魔法であっても情報子として認識できる限り無効化可能と証明したリムルは、放出系の技は通じないと宣言し、ヴェルダナーヴァとの決戦に改めて臨む姿勢を示したのである。
世界滅亡の決断とルシアの帰還
ヴェルダナーヴァが忠告を無視して原初の魔法を放ったことで、リムルは迷い続けて仲間を危険に晒した自分に激怒し、相手が神であろうと夢や希望を奪う存在は敵として倒すと決意した。瞬間移動からの斬撃と拳でヴェルダナーヴァを吹き飛ばし、自分の正義を貫くと宣言したのである。
虚喰崩剣の発想と防御突破
リムルは初撃が多重結界と能力殺封に阻まれたことで、自身の剣が単なる闘気剣に過ぎないと分析した。停止世界では魔法融合技が使えないと悟り、虚無崩壊で生じる虚無と魂暴喰を剣に纏わせる案に辿り着く。試行の結果、新技虚喰崩剣で結界を斬り裂き、攻撃がヴェルダナーヴァに通ると証明したのである。
ヴェルダナーヴァの迷いと天地崩滅覇界
ヴェルダナーヴァは世界管理の苦悩と寿命・死の必要性、そして妻ルシアの理不尽な死を思い返し、世界を滅ぼすか見守るかの間で揺れていた。リムルという極大特異点が自らの防御を破ったことで、成長の余地を与えるのは危険と判断し、世界を初期化し再構築する最強神技天地崩滅覇界の行使を決意したのである。
神智核シエルの介入と真の目的
天地崩滅覇界を発動しようとした瞬間、停止世界の思考空間でヴェルダナーヴァの心核に二つの声が直接語りかけた。一つは自らを神智核シエルと名乗り、リムルの勝率はシエル不在でも百パーセントであり、あえて分離してヴェルダナーヴァを利用したと明かす声であった。シエルはまた、リムルの万能さを自覚させることと、別の重要な目的があったと語ったのである。
ルシア再構成とヴェルダナーヴァの救済
もう一つの声の主はルシアであり、シエルがリムルを通じて集めた因子と記憶を統合し、九十九パーセント以上の一致率で魂を復元した存在であると説明した。ヴェルダナーヴァはルシア本人だと確信し、悲しませたことを謝る彼女と再会を果たした。こうして世界を滅ぼす動機であったルシア喪失の問題はほぼ解決されたが、破滅の竜はなお健在であり、事態の終結には至っていない状況であった。
第五章 創世神話
戦局の掌握と三邪神の復活
ソウエイはソーカらと共に戦場の情報を収集し、それを基にベニマルが各部隊へ的確な指示を出したことで、戦局は優勢に傾いていた。ミザリーとレインの聖域化による常時回復や聖浄化結界の維持、イヴァラージェとミリムによる幻獣族掃討も進み、各方面で英雄達が奮戦していた。そこへヴェルダナーヴァがジャヒル、コルヌ、ヴェガを召喚し、倒されたスイーム、ハバタキ、カケアシの肉体に宿らせたことで、『竜種』をも上回る脅威が誕生し、戦力の再配分を迫られた。
ジャヒル・コルヌ・ヴェガとの対峙
終わりなき死の苦痛から解放されたジャヒルは、ユウキへの恨みを抱いたまま復活し、ユウキ一行やレオン、エルメシアらと再び相対した。ヴェルグリンドの攻撃で死んだと悟ったコルヌは激昂し、ルドラとヴェルグリンド、さらにカリオンやフレイ、フェルドウェイらに迎え撃たれた。孤独と恐怖を知って戻ってきたヴェガは、生存に歓喜しつつもテスタロッサとヒナタ、続いてシオン、ゴブタ達に狙われ、戦いが再開した。
原初二名とディアブロの観戦
ウルティマとカレラはリムルから得たスライム細胞で肉体を強化し、虚無への耐性と親和性を得て禁術級の力を無理なく行使してジャヒルを圧倒した。ユウキやレオン達は自分の出番が無くなりつつあることに安堵しつつも、原初二名の強化が今後の勢力図を揺るがすと懸念した。ディアブロはコルヌ戦線を視察し、ルドラやフェルドウェイらがいるため自らの出番は不要と判断しつつ、全戦場を俯瞰してリムルから託された役目を果たしていた。
ヴェガの変化と邪龍獣の暴走
ヴェガは虚無の中で過去の破滅を思い出し、他者を思いやる心が大事だという結論に至っていたが、テスタロッサとヒナタの攻撃に追い詰められ、反射的に邪龍獣生産を発動した。大量の幻獣族の死骸を餌に十二体の邪龍獣を同時生成し、存在値一千万超の怪物達を戦場に解き放って、その隙に逃走しようとしたことで戦況は再び混迷した。英雄召喚の負担を理由にマサユキの英魂道導は再使用されず、ゴブタ達やカリオンらが邪龍獣迎撃に動いた。
停止世界での膠着とヴェガの離脱
やがて世界そのものが停止し、戦場全体が静止した。イヴァラージェの子供達の肉体を得たジャヒル、コルヌ、ヴェガは停止世界にも適応していたが、邪龍獣達は動けず、活動可能なのはヴェガと近くのテスタロッサ、シオン、ディアブロのみであった。テスタロッサの虚無の世界に身を削られながらも、ヴェガは致命傷を避けて突破し逃走に成功した。ディアブロはヴェガから勝利への渇望が消えている違和感を口にし、テスタロッサもそれを認めつつ、シオンの「敵なら倒す」という乱暴な理屈に一理あるとし、三人でヴェガを追って停止した世界の中を進んでいった。
コルヌと旧友たちの堂々巡り
コルヌの前にはフェルドウェイ、オベーラ、ザラリオが並び立ち、時間停止下でも行動していた。フェルドウェイは全次元支配を目指した過去の目的がヴェルダナーヴァ復活と不幸の根絶にあったと説明し、神の再臨とリムルの出現で前提が崩れたと認めた。コルヌはなおフェルドウェイを絶対視し、指導者は迷わず正解を示すべきだと主張し続ける。多様性と信念、神の誤りの有無を巡る議論は収束せず、ルドラとヴェルグリンドは休息に入り、通りかかったディアブロは一瞥だけ残して立ち去った。
ジャヒルの極大火焔球化
一方ジャヒルの前には、停止世界に適応したウルティマとカレラ、ユウキに続いてルミナスが立ちはだかっていた。三人は虚無を纏った新たな攻撃と創世級の力でジャヒルを追い詰めたが、膨大な魔力と再生能力の前に決め手を欠いた。追い込まれたジャヒルは権能「火焰之王」を体内で内燃させ、スイームの動力炉と究極の金属で覆われた肉体を組み合わせ、自身を触れるだけで大地すら崩壊させる極大火焔球へと変貌させて跳ね回った。
ヴェガの介入と肉体奪取の成功
極大火焔球の進路上にはユウキと停止した仲間たちがおり、ユウキは自分を盾にして被害を減らす覚悟を固めた。そこへヴェガが割り込み、「虚喰無限獄」で火球となったジャヒルを取り込み始める。ヴェガは無限再生と吸収でダメージを補填しつつジャヒルを呑み込み、仲間を守れたことに満足していた。だがジャヒルは死を前提とする禁忌邪術「肉体奪取」を発動し、弱ったヴェガの心核を乗っ取ることに成功する。ヴェガとジャヒル、さらにカケアシとスイームの力が統合された新たなジャヒルが現れ、右手に残したヴェガの頭を握り潰しては再生させる形で激痛を与え続けた。
ユウキたちによるヴェガの救済
ジャヒルが勝者として進化する一方で、ユウキは仲間としてヴェガを苦痛から解放する決意を固め、マリアの罵声交じりの支援を受けつつ突撃した。シオンが先行して触手を弾き、命懸けで隙を作ると、ユウキはヴェガの頭部に向けて「死を渇望せよ」を放ち、恐怖と痛みを打ち消した。続いてシオンが手首ごと頭部を断ち切り、ルミナスがそれを受け止めて魂に及ぶ祝福の力で邪悪な力ごと浄化する。ヴェガは、自分のために他者が動いてくれた事実に喜びを覚えながら満足げに消え、その魂は永劫の孤独と苦行から解放されたのである。
ユウキの撤退と戦場誘導
ユウキはジャヒルが怯んだ隙にヴェガを安らかに死なせると、マリアの支援を受けて『瞬間移動』で距離を取った。残されたシオンとルミナスは激しい総攻撃を受けてエネルギーを削られ、ユウキへの不信を募らせたが、ユウキが停止世界に取り残された仲間を守るため、戦場を荒地へ移そうとしている事情を理解した。ルミナスとシオンはユウキと共に移動し、ウルティマとカレラもリムルに犠牲を出さぬため協力して追従した。
荒地での総力戦開始とジャヒルの圧倒的優位
荒地に誘導された一行はジャヒルと対峙し、ユウキは『瞬間移動』による支援役に徹する構えを取った。戦闘が始まると、数億の存在値を得たジャヒルは『邪龍之王』と『虚喰無限獄』を理性的に使いこなし、究極金属の外骨格と組み合わせてウルティマやカレラの『虚無』すら受け止めた。ルミナスの法則も触手でいなされ、シオンの剣撃は逆にエネルギーを吸収されていく。やがてシオンは消耗して退避し、ウルティマとカレラも触手で拘束され、ルミナスも殴り飛ばされるなど、戦況はほぼ詰みの状態となった。
ディアブロの参戦と星天円環
そこへディアブロが前に出て、テスタロッサたちに自分の戦いぶりをよく見ておくよう告げ、一人でジャヒルと対峙した。ジャヒルの『火焔虚喰拳』が殺到する中、ディアブロは『虚無崩壊』で強化した肉体と『無限再生』のバランスを精密に調整し、体内で魔法を循環させることで、最小の動きで触手を全て躱して見せた。その戦い方は、リムルから授かったスライム細胞と虚無の力を解析して編み出した格闘奥義「星天円環」であり、悪魔三人娘は新たな理論に基づく魔闘技としてその真価を理解した。
星天円環滅覇の準備と邪魔の予兆
ディアブロは星天円環で消耗を抑えつつ肉体を周囲の物質で補強し、最強奥義「星天円環滅覇」でジャヒルを完全に消し去る準備を進めた。テスタロッサたちは、その技が前提条件の厳しい最強無敗の奥義となることを悟り、リムルのスライム細胞が門外不出となる未来も示唆された。しかし、ディアブロが魔力を最高潮まで高めたところで、無邪気な笑い声が戦場に響き、時間切れの到来と強制的な邪魔の介入をディアブロが察した。
ヴェルダナーヴァ戦でのシエル奪還
場面はヴェルダナーヴァと対峙するリムル側へ移り、リムルは「虚喰崩剣」で防御を破った直後、イヴァラージェ再始動の気配に気を取られながらも、隙を逃さずヴェルダナーヴァへ斬りかかった。剣撃は受け止められたが、リムルの真の狙いはシエルの奪還であり、拳でヴェルダナーヴァを殴りながらシエルを呼び戻した結果、シエルの声が再び内側から響き、奪還に成功した。リムルの肉体は美少女型へ戻ったものの、シエルの復帰により恐れは消え、どんな相手にも動じないという確信を取り戻したのである。
イヴァラージェの暴走とシエルの帰還
リムルは三上悟の姿から元のスライム擬態に戻ったことを残念に思いつつも絶好調であり、イヴァラージェの狙いが自分ではなくヴェルダナーヴァに向いたことで一息つける状況となっていた。イヴァラージェはルシアの記憶を取り込んだ影響で自分をルシアだと誤認したが、内面は破壊衝動のままであった。リムルはヴェルダナーヴァへの殴打と同時に魂暴喰でシエルを奪還するつもりだったが、詳細な分析を行う前にシエルがあっさり戻ってきたため、自分の手柄かどうか半信半疑のまま会話を交わした。
ベニマルの覚醒と「繁栄」の入手
リムルはベニマルの容体を案じて瞬間移動で傍らに向かい、ラミリスの処置が完璧で魔核も安定していると確認した。シエルによれば、リムルが注いだ力が過大だったため、ベニマルの肉体がそれに適応する変化を進めており、炎霊鬼から炎竜鬼へと種族が変化していた。シエルが目覚めさせるとベニマルは即座に覚醒し、好調さを口にした。折れた刀に代わる武器として、ラミリスがヴェルダナーヴァから預かっていた創世級の杖「繁栄」を取り出し、それはベニマルが握った途端に太刀へ変化した。さらに折れた紅蓮の核が刀身に融合し、新たな紅蓮として完成したことで、ベニマルはゼギオンと共に戦場へ向かうことになった。
ディアブロとジャヒルの攻防と狙いの転換
一方、ディアブロは虚無を駆使してジャヒルの暗黒増殖喰や邪龍之王の能力吸収を無効化し、ジャヒルは誰からもエネルギーを奪えずにいた。シオンはルミナスの守りの内側に退避し、テスタロッサたちも虚無で防御するため、ジャヒルはこの場の強者たちを素材として活用する策を実行できなかった。停止世界では邪龍獣も動かせず打開策に乏しい中、ジャヒルは自分に似せた邪龍獣を囮として残し、フェルドウェイ一行とコルヌを新たな獲物にしようと背を向けて走った。
ゼギオンの迎撃とベニマルの奥義による討伐
コルヌは新たに得た瞬間移動を頼みにジャヒルへ大言壮語を浴びせたが、フェルドウェイが黙らせ、ディアブロやゼギオンの警戒を避けた。その頃、逃走を図るジャヒルは背後からゼギオンの一撃を受けて大きく消耗し、前方にはベニマルが立ち塞がった。ディアブロとゼギオンはリムルの意図を察して見守り役に回り、ベニマルが一騎打ちを引き受けた。ベニマルはかつて神樹で守勢に徹した因縁を思い出し、今度こそ完全勝利を得ると決める。ジャヒルは創世神を名乗って激昂しつつも、内心では繁栄を奪って力を増す算段を立てていた。ジャヒルが火焔虚喰拳の連打と触手の猛攻を仕掛けると、ベニマルは陽炎之王の極意「陽炎」で実体を揺らめかせ、全ての攻撃をすり抜けて無効化した。続けて奥義「朧黒炎・百華繚乱」を放ち、虚無を帯びた黒炎の無数の斬撃でジャヒルの細胞片を徹底的に焼却し、再生と炎のせめぎ合いの苦痛の中で完全消滅させた。ディアブロは出番を失ったことを残念がりつつもベニマルの戦いぶりを称え、ベニマル・ディアブロ・ゼギオンの三人がリムル配下の最強格として互いを意識する関係であることが改めて示されたのである。
ベニマルの勝利とコルヌの折れ
ベニマル達の戦いぶりを見て、ヴェルグリンドはベニマルが自分と互角になりつつある事実に半ば本気で驚き、ルドラは平然と口説き文句を重ねてマサユキを羞恥させていた。気絶から目覚めたコルヌは、ベニマルがジャヒルを瞬時に粉砕した光景を理解出来ずに呆然とし、ようやく自分に向けられていた忠告の意味を悟った。フェルドウェイは自己中心的だったと反省を口にしつつ仲間を大切にすると誓い、コルヌも従うと応じてヴェルグリンド側との和解に踏み切った。
世界創造の回想とヴェルダナーヴァの迷い
舞台が決戦の場に戻ると、ヴェルダナーヴァはルシア復活の直後にイヴァラージェが再起動し、ルシアの魂を狙って迫る事態に混乱していた。イヴァラージェの歪んだ愛の言動を前に、ヴェルダナーヴァは自らがルシアの欠片を寄せ集めた過ちを自覚し、世界創造の経緯と人類誕生、感情が争いを生み出す歴史、ルシアと出会いミリムを授かって神の力を失った後、神殺しによってルシアを奪われた経緯を振り返り、自分の選択が正しかったのか迷い続けていた。
ルシアとの対話と希望の記憶
イヴァラージェが魂暴喰によりヴェルダナーヴァを取り込み始めると、逃れられないと悟ったヴェルダナーヴァはルシアと心の内で対話した。ルシアは自分の死がヴェルダナーヴァを狂わせたと詫びつつ、ミリムの成長を見届けた今は悔いはないと告げ、何度生まれ変わっても愛は変わらないと語った。その言葉からヴェルダナーヴァはミリムに付けようとしたもう一つの名前を思い出し、親超えが既に達成されていたと悟って幸福感に包まれながら、ルシアと共にイヴァラージェに呑まれていった。
リムルへの丸投げと決戦の役割分担
目の前でヴェルダナーヴァが喰われるのを見たリムルは、イヴァラージェから分離させられるかを考えるが、ギィから決断を迫られ責任の擦り付け合いを演じた。ディーノ、ガラシャ、ピコは自分達には荷が重いと即座に辞退し、イヴァラージェは竜鱗に覆われ創世級の双剣を構える怪物となっていた。満身創痍のミリムとエネルギーが枯渇したクロエを危険に晒したくないリムルは、自分が時間稼ぎを引き受け、二人には弱点探索を頼んだ。ラミリスは応援に回り、ヴェルドラは最終防衛ラインとして温存されることになった。
イヴァラージェへの初撃と互角の手応え
リムルがイヴァラージェに接近すると、桁外れの邪気と存在値に圧倒されるが、シエルはリムルも負けていないと断言した。思考加速と愛刀希望を駆使したリムルは、イヴァラージェの二連撃を読み切って受け流し、空中での蹴りと斬撃でその身体を地上へ叩き落として天通閣を砕くほどの衝撃を与えた。自分への反動は微風程度だったため、リムルは意外な手応えに戸惑いながらも優位を確認し、創世級の竜鱗に黒炎を叩き込みつつ、イヴァラージェ攻略のための必勝作戦を練り始めたのである。
観戦者たちの反応とリムル信仰の拡大
リムルとイヴァラージェの激闘を前に、ギィはその成長を称賛し、ディアブロとフェルドウェイはリムルを「真なる神」として持ち上げていた。ウルティマ達はフェルドウェイのちゃっかりした態度に噛み付きつつも、最終的にはテスタロッサやカレラの仲裁で場が収まり、周囲ではラミリスやミリム、ヴェルドラらが誰が一番リムルと親しいかを巡って言い争い、クロエだけが静かにリムルへの想いを胸の内で呟いていた。コルヌも圧倒的な戦いぶりを見て心を折り、今日からリムルを敬うと決めたのである。
イヴァラージェの本気とリムルの危機感
リムルが優勢に見える中、イヴァラージェは手加減をやめることを決意し、邪竜のような異形へと変貌していった。リムルは、剣では再生力に追いつけず、停止世界の制約で魔法や遠距離攻撃も封じられているため、多人数で挑めば犠牲が避けられないと判断し、このままでは力比べが無意味になると危機感を募らせた。
竜種核化による希望の剣の完成
打開策としてシエルが竜種核化の権能を提案し、リムルはヴェルドラに協力を求めた。さらにヴェルグリンドとヴェルザードも加わることになり、希望の剣には三つの竜種核を装着出来ると判明した。三体が契約を受諾すると、それぞれの色彩を帯びた竜種核が剣に嵌まり、リムルは圧倒的な力と、竜種達と共に戦うという心強さを得て、負ける気がしないと感じるに至った。
仲間たちの防衛準備と役割分担
リムルは全力攻撃の余波から地上と仲間を守るため、ギィに後方の防衛を任せた。ミリムが抱くガイアが、時間と空間を問わず発動可能な極大結界を展開出来ると判明し、ミリムとラミリス、ギィ達はその維持に力を注ぐことになった。ディアブロやテスタロッサ達、フェルドウェイ一派も争いを棚上げして結界維持に協力し、全員がリムルの勝利を疑わぬまま背中へ視線を集中させた。
クロエの不安とリムルの決意
最後にクロエが不安を抱えてリムルに問いかけると、リムルはここまで導いてくれたのはクロエだと感謝を示し、必ずここで終わらせると軽口を交えつつ約束した。クロエはその言葉を信じて表情を和らげ、リムルは仲間達の期待と信頼を一身に受けて自らを追い込み、イヴァラージェとの決戦に全力で挑む覚悟を固めたのである。
地上防衛とルヴェルジェの完全変貌
リムルは戦闘前に地上の仲間への被害を懸念し、ヴェルザードに依頼して氷像化された英雄達の完全固定を強化させた。その上でイヴァラージェの完全変形を迎え撃ったところ、イヴァラージェは人と竜と狼が混ざった百メートル級の異形へと変貌し、ルシアとヴェルダナーヴァを取り込んだ存在として自らをルヴェルジェと名乗り、力を安定させてさらに脅威を増したのである。
人型ルヴェルジェとの死闘と弱点露見
ルヴェルジェは巨体からの触手と、人型分体による双剣と原初魔法で同時攻撃を仕掛けたが、リムルは竜種核を宿した剣“希望”と魂暴喰によりそれを捌き続けた。戦闘の中でルヴェルジェがヴェルダナーヴァ級以上の力を持つと判明する一方、リムルは攻撃が地上に落ちないようあえて受け止めており、その様子からルヴェルジェに仲間を庇っているという弱点を見抜かれ、標的を地上へと変えられてしまった。
シオンの奇襲と宝玉喪失
ルヴェルジェは寂しさを理由に世界と仲間を皆殺しにしようとし、巨体で地上へ突進し触手を降らせようとしたが、その進路上で静止していたはずのシオンが突如動き、神殺しカオティックフェイトを叩き込んだ。この不意打ちによりルヴェルジェはわずかな傷を負い、さらに両手で握っていた白黒の宝玉を取り落とし、それを小竜ガイアに食われてしまう。宝玉はヴェルダナーヴァとルシアの心核に関わる重要な遺物であり、制御装置を失ったルヴェルジェは激しく動揺し、力を暴走させ始めた。
ガイア命名と新たな竜種核の獲得
ルヴェルジェの暴走が進む中、リムルはヴェルダナーヴァとルシアの残滓から、ガイアに名を与えてほしいという思念を受け取った。リムルがガイアを見据え、今日から地星竜ヴェルガイアとして新たな竜種として生きろと命名すると、ガイアは眩い光を放って真なる竜種へと進化した。名付けの結果、リムルは竜種核化[地星]の権能を得て、“希望”の第四の孔にヴェルガイアを竜種核として組み込める繋がりを得たのである。
最終形態ルヴェルジェとの力比べ
リムルはヴェルガイアの力まで取り込んだ剣“希望”に力を込め、全竜種核と虚無崩壊を総動員する覚悟を固めた。対するルヴェルジェは再び巨体を再現し、全次元に被害が及びかねないほどの力を溜め込んだ。シエルは冷静に状況を分析しつつ、リムルの全力行使を黙って後押しした。
世界破壊級攻撃と魂暴喰の迎撃
ルヴェルジェは双剣「慈愛」と「記憶」を投げつけ、それを通じて世界を幾度も滅ぼせるほどの破壊エネルギーを流し込んだ。しかしリムルは魂暴喰を発動し、その放出系の膨大なエネルギーを虚数空間へと隔離して受け止めた。その上でヴェルドラ達とヴェルザード、ヴェルグリンド、ヴェルガイアの力を借り、全力の一撃を放つ準備を整えた。
虚崩朧・千変万華による決着
混乱しながらリムルの正体を問いただすルヴェルジェに対し、リムルは自らの名を名乗り、全てを賭けた必殺技「虚崩朧・千変万華」を叩き込んだ。剣撃は時間停止下でも眩い光の奔流となり、ルヴェルジェの身体と放たれる瘴気を闇色の妖気ごと呑み込み、魂暴喰によってその存在を蝕んでいった。リムルは、悪行の代償として虚数空間の中で愚かさを悔い続けろと冷徹に告げた。
ルヴェルジェの悟りと完全消滅
喰われゆく中でルヴェルジェは、ヴェルダナーヴァから分かれた存在としての孤独と選択を振り返り、変化を拒んできた自分と、新たな世界を求めた半身との差を自覚した。矛盾を排除するのではなく受け入れることが混沌の真理だと理解し、新たな神の誕生の必要性を悟ったところで、その意識は完全に途絶えた。
永劫の虚数空間とリムルの責任意識
リムルは虚数空間を閉ざし、ルヴェルジェが二度と外へ出られない牢獄に封じられたことを確認した。クレイマンの残滓も同じ空間に留められていると把握しつつ、自らの正義を押し付けて敵を喰らった以上、その正しさを証明し続けなければならないと自戒する。自己中心的な怪物とならぬよう心を引き締めながら、最後の戦いが自分達の勝利で終わったことを認識し、停止していた時が再び動き出したのである。
終章 転生したら
最終決戦の終息と大魔王リムル誕生
リムルは虚崩朧・千変万華によってルヴェルジェを完全消滅させ、ギィ達の結界と防衛措置により多次元崩壊級の余波を封じ込めた。時間停止が解けて英雄達が混乱する中、ギィはリムルを称えつつ大魔王の座に就くよう強引に宣言し、ミリムやラミリス、ルミナスらも次々賛同した。これにより旧八星魔王は再編され、リムルを頂点とする新たな魔王体制が決定した。
世界への告知と復興支援
ルミナスは全世界に向け、邪神イヴァラージェ討伐と世界の危機終息を発表し、その主たる功績者として大魔王リムルの名を示した。テンペストの魔物達は各地に派遣され、復興と同時に魔物への偏見解消を進めた。一方、戦闘の余波でダグリュール領は壊滅的被害を受けたため、巨人族は旧ユーラザニア建設地に避難し、ゲルドの指揮下で自国再建のための技術習得を始めた。またジスターヴはカガリの支配下に割譲され、新たな統治が始動した。
テンペストの日常と騒がしい「聖戦」
帰国したリムルは、迷宮の復元や行政再編に追われる一方、シオンやシュナ、ミリムらによる「正妻の座」を巡る争いが聖戦として日常化していることを知らされ、頭を抱えた。ベニマルらに子が生まれたことから周囲の恋愛熱も高まり、リムル自身も標的となっていく。ラミリスは一時的な成長状態から再び子供に戻り不満を漏らしたが、リムルの力を借りれば任意に姿を変えられると知り、子供と大人の姿を状況に応じて使い分けることで満足した。
過去への跳躍とシズの再生
ようやく心が落ち着いたリムルは、心残りを晴らすため時空間跳躍で大空襲下の過去世界へ向かった。炎に包まれ娘を失った女性を安全圏へ瞬間移動させ、完全回復薬で治療したのち、その“魂”に眠るシズに語りかけた。リムルは、母が生きている元の世界で再び生きるよう説き、シズは感謝とともにそれを受け入れた。リムルはシズの魂から十歳前後の肉体を再構築し、呪いも火傷も消えた新たな人生を与えた。別れを前提に多くの支援を渡そうとしたが、シズは自らの強さを笑顔で語り、きっとまた会えると告げた。リムルはその言葉を胸に刻み、次なる目的地へと飛び立ったのである。
三上悟の蘇生とリムル側の処理
リムルは現代日本に跳び、刺されて倒れている三上悟の遺体に擬似魂を融合させ、自身の多重並列存在を移して蘇生させた。回復薬で肉体を完全に修復したうえで意識を移し替え、ディアブロにも用事を済ませさせた後、三上悟が目覚める前に時空間跳躍でその場を離れた。
病院での覚醒と出来事の現実性の確認
三上悟は病院で目を覚まし、田村から通り魔事件と謎の美女による蘇生の経緯を聞かされた。血に染まったスーツと背中の裂け目を見て刺傷の事実を確認し、大賢者の声が聞こえたことで、異世界での出来事と記憶同期が現実であると理解した。一方、犯人は監視カメラ映像から途中で消えており、ディアブロが報復したと三上悟は察したが、それを口にはしなかった。
家族との再会と祖母シズの正体
深夜には両親と兄が見舞いに訪れ、心配ゆえに兄から拳骨を食らうなど、昔と変わらぬ家族関係が描かれた。会話の中で、祖母の名が静江であり「鬼の静江」と恐れられた武闘派であったこと、そしてその静江が悟に名を付け「また会えた」と抱いていたことが語られる。三上悟は祖母シズが異世界でのシズであると確信し、祖母の遺言として託された小太刀と手紙を受け取った。
シズからの手紙と追悼の決意
手紙には、リムルへの感謝、子供達や仲間を救ってもらった喜び、レオンとの和解への安堵、そしてリムルが神のような存在になったことへの驚きと誇りが綴られていた。シズは悟を「可愛い孫」として受け入れ、人生に満足していると伝えていた。三上悟は神になどなっていないと心の中で反論しつつも、シズの幸福を知って満足し、その夜は彼女を静かに追悼しながら夜空を見上げた。
退院準備と田村への「転生話」の予告
翌日、田村が着替えを届け、三上悟は検査結果に問題がないことや、同様の不可思議な事例が年に数回報告されていることを語った。犯人が神隠しのように消えた件も含め、警察は超常事例として扱い始めていた。その後、二人はBARに移動し、三上悟は自分が死後に異世界へ行っていたと告げたら信じるかと試した。田村は謎の美女の言動からそれを信じると答えたため、三上悟は「俺が『転生したらスライムだった件』について」と切り出し、自身の物語を語り始めようとしたのである。
前巻 index
同シリーズ
小説版
転生したらスライムだった件1
転生したらスライムだった件2
転生したらスライムだった件 3
転生したらスライムだった件 4 巻
転生したらスライムだった件 5 巻
転生したらスライムだった件 6巻
転生したらスライムだった件 7巻
転生したらスライムだった件 8巻
転生したらスライムだった件 9巻
転生したらスライムだった件 10巻
転生したらスライムだった件 11巻
転生したらスライムだった件 12巻
転生したらスライムだった件 13巻
転生したらスライムだった件 14巻
転生したらスライムだった件 15巻
転生したらスライムだった件 16巻
転生したらスライムだった件 17巻
転生したらスライムだった件 18巻
転生したらスライムだった件 19巻
転生したらスライムだった件 20巻
転生したらスライムだった件 21巻
転生したらスライムだった件 22巻
転生したらスライムだった件 23巻
転生したらスライムだった件 10th ANNIVERSARY BOOK
漫画版
転生したらスライムだった件 22巻
転生したらスライムだった件 23巻
転生したらスライムだった件 24巻
転生したらスライムだった件 25巻
転生したらスライムだった件 26巻
転生したらスライムだった件 27巻
転生したらスライムだった件 28巻
転生したらスライムだった件 29巻
転生したらスライムだった件 30巻
転生したらスライムだった件 番外編 ~とある休暇の過ごし方~(1)
その他フィクション
フィクション(novel)あいうえお順
その他コミックス(外伝含む)ス(外伝含む)
『転生したらスライムだった件(月刊少年シリウス) 』
『「転生したらスライムだった件~魔物の国の歩き方~」(ライドコミックス) 』
『転生したらスライムだった件 異聞 ~魔国暮らしのトリニティ~(月刊少年シリウス) 』
『転スラ日記 転生したらスライムだった件(月刊少年シリウス) 』
『転ちゅら! 転生したらスライムだった件(月刊少年シリウス) 』
『転生しても社畜だった件(月刊少年シリウス) 』
『転生したらスライムだった件 クレイマンREVENGE(月刊少年シリウス) 』
『転生したら島耕作だった件(イブニングKC) 』
TVアニメ
転生したらスライムだった件
転生したらスライムだった件 2期
転生したらスライムだった件 3期 (2024年4月から)
転スラ日記
転生したらスライムだった件 コリウスの夢
劇場版
劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編
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